Re:ゼロから苦しむ異世界生活 作:リゼロ良し
...( = =) トオイメ目 なんとかがんばります……m(__)m
―――遺跡、と呼べば良いのだろうか。
この場所は間違いなく遺跡。
如何に異世界転生を果たしたスバルとて、そのくらいは解る。
ただ、解らないのはなんでこの場所に自分が来てしまったのか? だ。光輝き、気づけばこの場所に居た。
だが、現状に嘆いている暇はない。兎に角、不明点は多いものの、先へと歩を進める事にする。一歩、また一歩、足を踏み出す事に反響音が響いてくる。この感覚はあの怠惰ペテルギウスと出会った時の洞穴の感じと似ていると感じた。
あの狂人の顔を思い浮かべた結果……こんな場所で、最悪なヤツを想像をしてしまった、とスバルは軽く自己嫌悪に陥ってしまうが、気を紛らわせると言う意味では良かったのかもしれない。
永久の闇と言うものは、精神を蝕んでくる。如何に最凶を既に経験済みとは言え、だ。
「―――――」
歩いて、歩いて……何も見えてこない。
ほんの数メートルさえも得ない闇の中。
何処までも続く様な深い闇、歩を幾ら進めていても、まるで終わりがないように思えてくる。
「しゃらくせぇ! ってな。……終わりが視えねぇ闇ってのは、もう既に経験済みだ。全く痛くねぇ闇なんざ、怖れるに足らない、ってな!」
精神が幾ら蝕まれたとしても、それでスバルの心を折る様な事にはならない。
積み上げてきた経験が糧となり、極小ではあるものの、間違いなく非力で一般人程度の力しかないスバルを成長へと促しているから。
特に肉体面よりも精神面だ。歩を止める訳がない。
「……諦めるかよ。諦めねぇよ」
次に考えるのは、ラムより聞き出した事。
ラム自身は話すつもりは無かった、と言っていたから、多分偶然にも聞き出す事が出来たのは、この遺跡に……この先に【答え】があるかもしれない、と言う事。
最後の最後まで、格好をつけまくって、頑張って背を追いかけてきたつもりなのに、果てしなく先まで行ってしまった兄弟が、ここに居るかもしれない。
無論、心配もある。
共に一緒に来た少女たち……エミリアとレムの事。
男である自分が守らなければ!! とスバル自身も最高に格好良い事を言いたい気分ではあるが、彼女達は悲しきかな……自分よりも何倍、何十倍も強いから。
でも寄り添って、一緒に歩いて、生き続ける事くらいは自分にもできる。できる、つもりだ。
「―――なんの力もない、無能な俺。出来るのは命使って身体張って、前へ進む事くらいだ。……でも、そうすりゃ、届く……よな? 俺もあの会話が最後の言葉~なんて認めたくねぇよ。リアルな死亡フラグってのがこの世界に実在してたまるか」
誰もいない静寂が支配する中、気丈にふるまおうと、自身を鼓舞しようと声を上げながら先へと進み続ける。
ひょっとしたら……、もしかしたら……と淡い期待も込めて。
もしも、万が一に会えたのなら――――。
「ラムに恨まれちまう、かもな。……んだが、貸し作っておくのも悪くねぇ」
「――――その娘がキミを恨むかもしれない? 成る程成る程、でもボクも君を何だか恨みたい気分なんだけど、その辺りは キミとしてはどう思ったりする? 興味深くないかい?」
ふいに、声が響いた。
何処となく不吉を体現しているかの様なその声。
ありとあらゆる負が内面に押し寄せてくるかの様な声が、頭の中に響いてきた。
でも、それでもスバルは耐える。
世の地獄があるとするなら、間違いなくあの死の体感。それ以上は無い、と確信できるからだ。
強靭な精神で、その声に臆する事なく反応しつつ―――足を止めた。
そして、その次に感じた事は……。
―――アレ? 何だか不吉って言うより、棘があるって感じか? ひょっとして……。
色々と頭の中で考え事をしていたら、いつの間にか終わりを見失っていた筈の闇の中だったのだが、……唐突にその闇が終わりを告げた。
あっという間に、闇は瞬きの間に晴れて、色を亡くした筈の世界が鮮やかに彩られていく。
足元は、遺跡特融のごつごつとした感触、色気の無い石造りの畳だった筈なのに、一面緑の草原が広がっており、先を見ると小高い丘が視える。
そして、そんな大自然―――と言って良い場所に、何だかアンバランスな存在が、ぽつん……とあった。
「いつまでそこにいるつもりだい? こっちへきてはどうだい? ほら、話をしようじゃないか」
あまりの光景にスバルは硬直してしまっていた様だが、その声でどうにか身体を反応させる事が出来た。
小高い丘の上に、置かれたアンバランスな代物……大自然の真っ只中にぽつん、と置かれているのは日除けのパラソル、白いテーブルに白い椅子。本当にそれだけ。
どうやってこの場にそれだけを運んできたのだろうか? 車でもあるのだろうか? ただ地平線の果てまでが緑だ。何処にもプレハブ小屋の様な資材置き場は見当たらないし、この場所からどうやって目の前の存在は帰ると言うのだろう?
「ここはボクの城だよ。なんでボクが自分の城から帰らなきゃならないんだい? こここそがボクの居場所。………ず~~~っと、添い遂げる気満々だったのに、何だか色々と記憶の節々に穴が開いて、自分自身でもよく解らない状況が極めて不愉快だね。また新しい自分に会えた事を好ましく思うよ」
何処へんが好ましいんだ?
言葉に発する事は出来ないが、どうやら目の前の少女――――真白の色だけがすっぽりと抜け落ちたように白い印象の少女は、相当御機嫌ナナメらしい。
一見すれば全てが妖艶。背中に掛かる程の長い髪、露出の少ない白い肌、目を奪われてしまう程白く、細い肢体、そして漆黒のドレス。端的な美貌。……魔貌。
そんな少女にスバルはかつてない程の戦慄を覚える。怖れを覚える。怖気を覚える。
目の前の少女の存在感は、これまで相対してきた敵―――独り立ちを意識したペテルギウスよりも、皆で協力して勝鬨をあげたあの白鯨よりも、遥かにデカく……とてつもない圧迫感だ。
「しゃら――――くせぇ……!」
「おお」
だが、それらを一掃する様にスバルは一歩また前に出た。
あの闇の深淵具現化した様な少女との距離を詰める。
「へぇ……」
ここで、頗る機嫌が悪かった少女の表情が一変した。
口端は少し上がり、面白いモノでも見つけたかの様に微笑みを向ける。
「ふむ。ボクとした事が少々大人気なかったようだね。驚かせてしまって悪かったよ。とりあえず自己紹介といこうか? ……キミはきっと、ボクの事が知りたいと思う筈だし。ボクもキミを知りたい。――――お互いに
「ッ――――!?」
目の前の狂人の言葉に目を思わず見開くのはスバル。
どうにか一喝できた。前へと歩を進める事が出来た。だが、それだけだ。それ以上はなかなかに時間がかかってしまいそうだ、と思っていた矢先の少女の言葉。
欲している存在?
もしも――――いや、ほぼ間違いない。
ラムの言葉と、その場所に佇むこの人外の少女、全ての状況が1つの解を指示している。
「ボクの名はエキドナ。―――【強欲の魔女】と、そう名乗った方が通りが良いかな? ああ、キミに八つ当たりしちゃったけど、これはボク自身の詰めの甘さ、脇の甘さが原因だ。【強欲】あるまじき失態を犯しちゃって、只今意気消沈気味でもある。それはキミにとっては関係の無い事だ。―――改めて、謝罪をしよう」
そして―――時は少し巻き戻る。
ロズワール邸へと帰還を果たし、レムとも再会を果たした。
エミリアやレム、愛しの2人を、最愛の2人との再会を果たす事は出来た。
だが、この場においてやはりまだ足りない。
「………姉様」
レムも話を聞いてからラムに付きっ切りになっている。
帰還した当初こそ、仔犬の様に尾を振ってスバルの元へと馳せ参じていたが、ラムと会い、全てを聞き、姉を支える事に注視する事にしたのだ。
他の誰でもない、スバル自身がそれを願った。
あまりにも力不足だから。
他の誰でもない、レム以外に適任はこの場において誰もいない。
「大丈夫よ。余計な事をバルスに吹き込まれた様だけど、全くをもって問題ないわ」
気丈―――と言う言葉とは少し違う。
一縷の希望を胸に抱いているラムは、本当に見たところは完全に通常に戻っている。
ただ、レムだけは共感覚でラムの精神にダイレクトで感じる事が出来るから、敏感になってしまっている。
特に、カルステン邸に居た時のラムの状態を共感覚で感じている為、猶更だ。
「スバル様の気遣いも、ラムの前では形無しですわね」
「いや、ほんと。……でも、それでよかった、って俺は思ってるよ。マジで」
「レムレム、バルスってば罵られて快感を覚える変態みたいよ」
「姉様姉様、スバル君がどんな性癖を持っていたとしても、レムは愛しています」
「こうやってディスってくんのも、日常って感じで良いよな、こんちくしょう!」
「ふふふ。スバル様はお優しいですから。ラムもきっと解っていますよ。本当、人を今にも殺しそうな眼付ですのに、とてもお優しいですわね」
「フレデリカまでディスってんのかよ! 傷つく心だって俺持ってるからね!?」
ラムとレムには性癖と弄られ、フレデリカに関しては変えようのない目つき、身体的特徴でい弄られ、この場は更に笑いに包まれる。
そう、笑う方が良い。――下を向いている暇はない。
「スバル」
「! エミリアたん」
そうこうしている内に、エミリアがやってきた。
「オットー君には取り合えず客室で待ってもらってるけど、一緒じゃなくて大丈夫?」
「なんで、俺とオットーセットにしたがってるのよ、エミリアたん! 一緒に居たいのはエミリアたんとレム、俺の両手は塞がってます! そもそも野郎は対象外!」
「ふふふ」
ゆっくりとした仕草で、愛らしく笑う。
ラムの気が紛れる相手がレムだとしたら、現時点でスバルはエミリアの方だろう。
レムには申し訳ない。聖域へと向かった後の出来事がかなり濃かったから。
「……取り合えず、今後の事を話しましょう」
エミリアの一声に身体の芯が引き締まる思いだ。
彼女も思う所が沢山あるのだろう、何処となくその声色はこれまで以上に凛々しいモノに感じられた。
「おっと……そうだそうだ。エミリアたんゴメン。ちょっと話遮っちゃっても良い?」
「はい。大丈夫よ。今後の話をするんだもん、スバルから話してくれても問題なしです」
「あ、いや。横やりは居れても、司会進行する気はないんだけど……こほんっ。ここに帰ってきて、まだ
スバルの言う人物、一体誰の事なのだろうか……? と考えるまでもない。
この場の誰もが解っている。
「ベアトリス……」
ロズワール邸の禁書庫を守る大精霊ベアトリス。
最後に出会ったのは、あの狂人ペテルギウスと相対する前。
必ず戻ってきて、アソビ倒してやる、と宣言してきた。
……兄弟の言伝も預かってその分、過剰気味にベアトリスには接してきた。無論、その後直ぐにぶっ飛ばされたが、それでもハッキリと残してきたのだから、帰還報告はしなければならない、それが筋だ。
「ベアトリス様の禁書庫に、魔法で隔絶された空間に、大精霊様がご自身の魔力で以て、外界から遠ざけている部屋に入る事が出来るのは、この場においては、スバル様くらいですわ」
「無力なバルスでも、ベアトリス様とは仲は兎も角、相性だけは良いから、出来る事のようね」
「なんか、この手のやり取り懐かしい気がしてきたよ! んでもって、ラムがそういったと同時に、ベアトリスは一言文句言いに来る! ってのが定番なんだが……」
ちらっ、とスバルは扉を見た。
そう、何度もラムにはスバルとベアトリスの間柄について、揶揄い半分で弄ってきている。その都度、【そんな訳ないかしら!!!】と怒声と共に扉が開かれるのが、スバルの中でも十分過ぎる程定番となっているのだが…………ベアトリスがこの場へとやってくる気配はない。
「寝ちまったんじゃねーのか? あいつ………。兎も角、一声かけてくる。エミリアたん、良い?」
「うん。大丈夫。ベアトリスによろしくね」