Re:ゼロから苦しむ異世界生活 作:リゼロ良し
オリ主、ツカサ分が当分無くなっちゃいそうだったので、ちょっぴり横道逸れます……
時系列は、少々過去に戻って――――番外編、メモリースノー編です\( 'ω')/
突然の寒波
とある日の朝。
アーラム村にて。
「あれ、スバル。こんな時間に村に来てるなんて珍しいな」
「んげっ!!? 兄弟っ!? 何故ここにっ!??」
「……人の顔見るなり『ゲッ!』とは随分なご挨拶だな。何故って、オレ元々アーラム村を生活の拠点に~って話してるし」
近頃はロズワール邸でお世話になってる事が多いから、スバルも錯覚したのかもしれないが、元々はツカサはアーラム村の【なんでも屋】。別にこの場所にいても何ら不思議じゃないのだ。
「それにスバルには色々と貸しがあると言うか、もう簡単には返しきれない程度に積りに積もってる、ってオレ認識してるんだけど?」
「その節は、マジで世話になりました!! 兄弟には足向けて寝れません! 感謝感激多謝でございますっ! 今後ともどうぞ御贔屓にでございまするっ!!」
流石にスバルも失礼極まりない、と思ったのか綺麗に90度腰を折って謝罪。
親しき中にも礼儀あり、と言う事だろう。土下座せんばかりの勢い~~だったが、それは止めた。
ツカサ相手なら何ら問題ない―――とスバルは思っている。原因は村の子供たち。
何故子供たちかと言うと……喧しそうな声が聞こえてくるのだ。地に頭をこすり付けてる場面は1度見せてるが、今はそんなシリアスな場面じゃない。
だから、あまりに無防備な姿を見せてしまえば、その時点で玩具にされて、貴重な時間を失ってしまう、と考えたからである。
あの魔獣騒動から数日後。
もう、ウルガルムは相当数討伐した。
ロズワールは勿論 エミリア・パック組も相当念入りに調べているから、恐らくはあんな事は起こらない、もう大丈夫―――だとは思うけど、朝の日課として自発的にツカサも見回りに来ているのだ。
確かに魔獣は掃討。
結界も機能してる。
でも、あの主犯とされる魔獣使い、メィリィと名乗る少女にも逃げられている今、警戒は幾らしていても問題ない筈だ、と言う理由もあった。
アーラム村を拠点にして生活基盤を整えるのが当初の約束、エミリアやラムを助け、徽章を取り戻す為の御礼だったのだが、ここ暫くはロズワール邸で居候させて貰ってるので、そろそろ なんでも屋業を再開しても良いかな………っと、村の子供たちを相手にして考えてると、屋敷に通じる道から人影が見えた。
それがスバルだった、と言う事だ。
「ツカサ~~! ボールまだぁ~~?」
「そろそろ空飛ぼうよ、ツカサ~~」
「「「「あっ!!」」」」
因みに、子供たちの事を相手にしていた―――と言う事は傍に子供たちもいる訳で、当然スバルにも気付く。
「スバルだーー!」
「スバルきたーー!」
「ヘンなかっこ~~!!」
「この、かっこつけ~~!!」
「こわいかお~~!!」
「後半全部悪口じゃねーか、こんガキど―――もっ!??」
あっと言う間に取り囲まれてしまった。
そしてあっと言う間に押し倒されてしまった。
体躯の差などなんのその。リュカ達の一斉攻撃には成す術なし。
もみくちゃにされて、これを数百倍は凶悪にしたものが、あのウルガルムにガブガブされてる、と言う場面になるのだろうか。
「ぐっはぁぁぁぁ、オレめっちゃ忙しいのにっ! めっちゃ極秘ミッションだったのにっっ!!?」
「みっしょん? って言うのはよくわかんないけど……こんな目立つ格好して、堂々と村横切って、極秘も何もないでしょ」
「そーだよ、スバルー。凄く目立ってたよ」
「うぐっっ、そりゃそーだけど、気分っつーか何つーか……、ってか、ツカサにペトラ! 手ぇ、空いてたら助けてくれ~~! こいつら、デートん時も邪魔に入ってきそうで厄介なんだよ~~!」
リュカ達に押しつぶされかけてるスバルからの悲痛な声に苦笑いするのはツカサで、ペトラは聞きなれない単語に反応した様で首を横に傾けた。
「スバルー。でいと、ってなに?」
「デートってのは愛し合う2人の嬉し恥ずかしの秘密のお楽しみ、ってヤツだよー! ってか、お前らマジで邪魔すんじゃねーぞ!?」
「……むっ」
デートの意味を知り、スバルの言葉を聞いてペトラは頬を膨らませた。
まだまだ子供……とはいえ、ペトラだって女の子。想う所の1つや2つはあると言うモノだ。
「十中八九、そのお楽しみの中に皆が入ってくるな」
「不吉な事言わないでくれよ兄弟!! 兄弟はラムちー姉様といちゃいちゃラヴラブ出来てて良いのかもだが、オレのエミリアたん成分はいつも不足気味、欲してるんだからよぉぉ!」
「……いちゃいちゃもらぶらぶ、もあまり聞かない言葉だけど、なんか恥ずかしくなってきた」
「……ツカサは、ラム様が好きだもんね? それでスバルは…………むぅ」
やっぱりペトラはむくれている。
勿論、ペトラもツカサ同様《いちゃいちゃ》や《らぶらぶ》は知らない。
でも、何となく解る。スバルが言っていた愛し合う2人~の件を聞けば大体解る。
だからこそ、むくれて頬を膨らませているのだ。
勿論ペトラが頬を膨らませる理由はスバル。
色々あって、ペトラはスバルの事を気にし始めているから、である。
ツカサも同じ土俵と言えばそうなのだし、最初こそ優しくてとても強いツカサに惹かれる~となりかけていたのだが、あのラムの存在があまりにも大きく、あまりにも隙が無く、あまりの圧だったので、完全に芽生える前に圧されてしまい、無意識に気になる方向性を変えられたのだ~~~と言うのは、誰も知らない事実である。
そんなペトラの様子に気付いたのか、ツカサは頭に手を置いた。
「それはちょっと間違い。皆の事だって好きだよ。この村が大好きだから、頑張れたんだ」
「~~~~っっ、こ、こども扱いしてるでしょ~~~!!」
頭を撫でながら非常にこっぱずかしい言葉を臆面もなく言うツカサに思わず赤くなって抗議するペトラ。
スバルはスバルで、散々いちゃいちゃだのラヴラヴだのデートだの言っておいて今更だが、それ以上にストレートな言葉を聞いて、いたたまれなくなってしまっていた。
勿論、子供たちの追撃が止む訳ではないが。
「あ、秘密だったらオレ達もあるもん!」
「知ってる知ってる! 秘密の場所~~! さ、いこうスバルっ! 今からいこうスバルっ!!」
「ツカサーー! ボール遊びはまた後でねっ!?」
「はいはい。あの場所に行くんだな。んじゃ、皆。スバルの案内と世話をよろしく頼むよ? さっき言った通り、オレちょっとムラオサに用事があるからさ」
「「「「はーい!」」」」
「ちょっと待てぃぃ!! なんだよ! オレの世話って!? 兄弟いかねーの!?? オレ1人だけにガキども押し付けて去るっての!??」
「少しの間だけ、って約束してたんだよ今日は。取り合えずがんばって!」
スバルは抗議の声を張り上げるが、ツカサはただただ笑顔で手を振って見送るだけだ。
「ペトラも、皆の事よろしくな。結界を超えるのだけは駄目だよ? ああは言ったけど、やっぱペトラが一番頼りになる。……正直、スバルよりも」
「ッ! うん! 任せて」
頼りにされてる事が嬉しかったのか、ペトラは目を輝かせながら手を挙げた。
そして、それもしっかり聞いていたスバルの猛抗議が再び場に木霊するのだった。
「――――うん。今日も平和だ」
暖かな風が頬を撫でるのを感じる。
アーラム村のなんでも屋業は、現在村に来たついでに、頼みを聞く~と言う限定的な営業になっているが、こうやって村の皆が元気で過ごしてるのを見るだけで、十分英気を養ってもらっている。
色々と騒がしいが、それでもあれだけ血に濡れた、殺伐とした日々が、繰り返してきた日々がまるで嘘のよう。そんな陽気な朝――――の空に変化が見られたのは ほんの直ぐ後のこと。
「………? あれ? 空が――――」
切っ掛けは、ほんの些細な事。
何となく~程度の違和感から、あの騒動が始まるのだった。
次の日の朝。
まだ意識が覚醒する前だったが、明かな違和感を覚えた。
身体の半身が感じるのは温かくて、とても心地良さ。
中々に形容しがたい。語彙力の無さ故か、ピタリと当てはまる表現、言葉が見つからない。
どうにかこうにかして、例える事が出来た。
言うならばこれが『幸せの形』なのかと思える様な多幸感だ。
だが、それは永遠ではなかった。泡のように消えて軈てなくなり、意識が覚醒段階に入ると同時に、次に感じるのは異様に寒さだった。寒さが意識覚醒を加速させて……軈て目を見開く。
「ん、ん………」
「朝よ。起きなさい」
「……おはよぉ、らむ………」
目を擦って、身体を起こすと―――そこにはいつもの光景。
鬼姉妹の姉、桃色の髪の少女、ラムの姿。
朝目が覚めると必ず彼女が傍に居てくれる。
最初こそは驚いたり慌てたり、如何にラムとはいえ、女の子に寝顔を覗かれてる……と言う事に顔を赤くさせたりしていたが、慣れとは怖いモノだ。
色々と飽き性で、ロズワール関係以外は案外ズボラ、スバル関係では忘却する様な少女だが、ツカサ事に関しては、特にこの
色んな意味で自分に正直な少女なのだ。
「
「一体誰に突っ込んでるのかは、敢えて言わないでおくよ……、くぁ………」
ラムの姿をハッキリ視認すると、ツカサはあくびを1つしながら、身体を起こす。
しっかりとかけられた布団を捲り、改めて気のせいじゃなかった、と認識する。
それは、覚醒する前の多幸感――――ではなく、目覚めてからも感じている異常な気温に、だ。
「なんだろ? 今朝は物凄く冷えない? メイザース領内ってここまでの気候変動がある地域……だったりするのかな?」
「いいえ。少なくとも、ラムたちがロズワール様にお仕えする様になってから、この時期にここまでの寒波は無かったわ」
「ん―――」
1度や2度くらいなら、寒暖差程度で有りうる話だと結論するだろう。
その程度なら、天気が曇りだったり、雨が降ったりとすれば簡単に下がるからだ。
だが、ここまでのは普通ならば考えにくい。正確な外気温が分かる訳じゃないのだが、少なくとも体感で10℃以上は下がってる。
「(……また厄介事? クルルに探らせてみようかな……?)」
因みに、例によってクルルは現在ベアトリスの所に半居候状態になってる。
基本的に平和状態だったら、クルルを活用する場面が激減するので、ベアトリスの元へと連れて行ってるのだ。
体よく厄介払い~な感覚で。
ベアトリスからすれば、クルルに対する扱いに抗議の1つや2つ盛大にする案件なのだが、寂しがり屋な所がある彼女だ。口で文句を言いつつ、頭の中でははしゃぎ回ってる。宛ら子供の様に。
つまり、誰にとっても良い事なのだが、やはり有事の際は、あのクルルの力も借りなければならない。ツカサがクルルに完全依存していると言う訳ではないが、いるのといないのとでは、使える力、その幅広さが全く違うから。
ツカサは色々と考え事をした後、不意にラムの顔を見た。
「ラムって、寒いのは大丈夫だったんだ?」
ラムのメイド服はロズワール邸仕様なのかカスタマイズされている。少々目のやり場に困ってしまうが、胸元や肩口など、露出部分があり、どう見ても冬用―――とは言えない服だ。
でも、ラムは平気そうにしていた。
「……
「へぇ……。ん? 今のラム??」
何処か意味深な言葉を出すラムに首を傾げていると。
「きゅ~~!」
「っと!」
クルルが戻ってきて、ツカサの肩に乗った。
「ベアトリスさんに迷惑かけてない? 大丈夫?」
「きゅきゅっ!」
「……まぁ、話半分にしとくよ、お前の場合は。っとそれより、クルル。昨日見た
「きゅ~………」
先ほどの疑問は、もう気にならなくなり、早速この寒波についての話題になった。
クルルとツカサが話をしているのを横で聞いていたラムは、仄かに頬を赤く染める。
頑張って平常心を取り戻した筈だったのに……、また顔を赤く染めた。幸いな事にツカサは気付いていない様だが。
「……ラムは十分温もりを堪能したもの。ツカサはこの世の至福、その最上を甘受していた筈なのに、全く気付いてない。………ご愁傷様、ね」