死ぬなよ、絶対に死ぬなよ! ※コレは、フリではありません。   作:リゼロ良し

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ナツキ・スバル、再スタート&ダウン

 

 

ナツキ・スバルは見知らぬ場所で目を覚ました。

 

見知らぬ場所、その天井をいつまでも眺めてられる程、じっとしていられない性格。故に早々に身体を起こし、この場所を探検。

 

時折愚痴を零し、苦言を呈し………そして辿り着いた。

 

 

 

 

「――――で、元居た部屋がループの脱出口とはな……、それにしても本って以外と場所取るし、重いから数持つのも困るよなー、ここって、まさしく書庫って呼ぶしかない場所だし? 場所取るってレベルじゃねーけど」

 

 

 

まず最初の関門は無限にループする廊下。

現代っ子なスバルは、早々にループ現象を把握。

この廊下は同じ所をぐるぐると周り続ける、このまま餓死するまで放置か? とも思ったが前向きにとらえる。

 

そして、ループ物のラノベを漫画を読み漁ってきた事と、元々自身が持ってるフラグクラッシャーを思い出して、突破した。

 

 

スバルは、以前から相手が丹精込めて構築した手順を……あら不思議? あっさり破って一足飛び足で、と言うのが日常だった。

 

 

俗に言う《空気読めないヤツ》なのである。

 

 

 

 

 

「いきなり他人の書架をずけずけ眺めた挙句にため息。……なんて腹立たしいヤツなのよ。屋敷にやってきた人間の男2人。こうも性質が違いすぎるとなると、狙ってやってきたとしか思えないかしら? クルルとの一時、余韻。気分が全部台無しになったのよ」

 

 

そして、その空気読めなさは、眼前で座っている幼女の事も半ば無視していた……が、流石に無視し続けるワケにはいかないので、今度は バッチリと目を合わす。

 

 

「おっと、第一村人発見! さぁさぁ、君の名前、教えてくれ!」

「イキナリやって来て、名乗れとは礼儀知らずにも程があるのよ。お前に名乗ってやる名なんて無いかしら」

 

 

明らかに気付いていた癖に、と言うツッコミは無しだ。

ただただ、広いオデコに皺が寄ってるだけで。

 

 

「そーんなツンツンしてるとかわいい顔が台無しになるぜ? ほれほれ、スマイルスマイル♪」

「フンッ、ベティーが可愛いなんて当たり前かしら。お前に見せる笑顔なんて嘲笑だけで十分なのよ」

「はっはっは! ってそれよりもさぁ、村人兼キティちゃん」

「ベティーかしら!! 礼儀知らずにも程があるかしら!」

 

 

押せば押しただけ反応が返ってくる。

あまりにも面白い、とスバルは益々調子を上げていく。

 

 

「ほうほう、成程! 村人兼ベティーちゃんね! まっ、不機嫌なのは粗方想像がつく。オレがこの部屋を簡単に見つけたからだろ?」

「お前が無礼極まりないからに決まってるかしら!! 何で此処まで極端なのよ!!」

「さっきから性質が違うだの極端だの、それって アレか? オレ以外にもここに来たヤツ………えっと、名前は………あ、聞いてない!」

 

 

命の恩人の名を聞けてないとは何たる醜態! とスバルは大袈裟に頭を抱えた。

 

だが、それもほんの一瞬。

スバル自身の最大最高の目標は、エミリアを助ける事であり、彼女の名を聞く事だったから。名は聞けてないが、この屋敷に居る事は解ったので、それだけで良しとする。

 

 

「えっと、ほれ! 緑色のモフモフ、キラキラした動物飼ってた―――名前は知んねーけど、カーバンクル連れてた男もここに来てる、って事で良いのか?」

「ふんっっ! 応えてやる義理なんてベティーには無いのよ」

 

 

ぷいっ、と顔を背ける仕草をしても愛らしい可愛らしい、からかい甲斐がある。

なので、スバルは調子を落とさずに尚も詰め寄った。

 

 

「おいおーい、簡単に見つけちゃったのは謝るからさー? 昔っからこういうの1発で正解引き当てちゃうんだよ、オレ」

「別に。珍しい事でもないかしら。お前に破られたのは腹立たしいけれど、扉渡り(・・・)を破ったのはお前だけじゃないのよ。ただ、お前の場合は全てが腹立たしいから、余計に胸糞悪くなるかしら」

「なぬっ!? オレ同等の空気読めないヤツだったのか! まぁ? エミリアたんが触れ合おうとしたとき、負けらんねー感が沸々とオレの中に闘志として湧き上がってた覚えはあるし? つまりアレだ! 宿命のライバル! と言うヤツなのだ!! ………ケンカしたら一瞬で負けるけど!」

 

 

ベアトリスは、座っていた椅子からゆっくりと立ち上がった。

 

 

「お前が情けなくて、1人でサラッとやられて、今の今までグースカ寝っぱなしだったって事はベティーはよく知ってるのよ。………モツを戻す時、テキトーに崩してやった方が良かったかしら」

「あん? なになに?? オレっちの傷治しちゃってくれたのは エミリアたんだぜー? 手柄横取りは堪忍できませんな! うんうん」

 

 

エミリアの治癒魔法に関してはスバルは間近で見ている。

斬られたロム爺のかなり大きい切傷が閉じていく摩訶不思議な光を見た。そんな神業を見た。それに、この目の前の幼女、それも明らかに嫌悪感満載の幼女が治療してくれるワケない、とも思ったから、エミリア以外ない、と結論付けたのである。。

 

 

「……ここまで疲れるヤツなのよ。ロズワールも、勝手を許すからこんなわけわかんないヤツと会う羽目に。……ほんと折角クルルと出会って気分良かったのに、全て台無しかしら」

「さっきから聞いたし、何となく聞いた覚えもあったけど、クルルって可愛い名だな!! っとと、それよりもまぁまぁ、お互い様って事で水に流そうぜ! ってな訳で、ここどこよ? 場所教えるくらい良くね? 良くね? 今後○○部屋には近づかない様にしよー! とか、検討する事出来るし?」

「……ベティーの書庫兼寝室兼私室かしら」

 

 

確かに、場所の名前を教えたら、もう来ない、来ない様にする、となれば良いと思い、ベアトリスは質問に答えた……のだが。

 

 

「………おお、釣れてくれるとは思わなかった。オレは きっと、ここには近づかないよ! って雰囲気を装った事で額面通りの答えをして貰った事にガッカリすべき? それとも寝泊まりとか自分の部屋が無いのを憐れむべき? それとも書庫を私室扱いしちゃう部分を微笑ましく思うべき?」

「なんたる言い草なのかしら!!」

 

 

さらっと嘘である事を告げられて、再び激怒。

そして、ベアトリスは 立ち上がって イラつき、少し抱えていた頭を元の位置にまで戻す。

僅かにその縦ロールのヘアースタイルがバネの様に動き、ますますスバルの悪戯心を刺激する……が、それも出来なかった。

 

 

「そろそろベティーも限界なのよ。ちょっと思い知らせてやった方がいいような気がするかしら」

「おいおい、ちょっと待てって。捕虜虐待とか前時代的だ。やめよー? オレ戦闘力0の村人だぜ?」

「―――動くんじゃないのよ」

 

 

スバルの軽口にも、もう付き合わない。

そして、スバルはその瞬間、背筋に冷たいモノを感じた。ゾッとするとはこの事を言うのだろうか。これまで感じていたからかう為の楽しい空間、弄れば弄る程楽しい反応が返ってくる憩いの場の様な空間が消し飛んだ。古い紙の匂いがしていた筈なのに、それも吹き飛んだ。

 

ただただ、極寒の冬空の下で、キンキンに冷えた冷水を頭からぶっかけられたかの様な、寒気。震えが止まらない。

 

 

「何か言いたい事でも?」

 

 

ベアトリスは既に手の届く位置まで居た。

見れば見る程ただの幼女。手の届く位置からしても、真っ直ぐ前に伸ばして スバルの腹部。

無邪気な幼女が突如、何かに代わった瞬間でもあった。

 

これ以上は触れてはならない、と最善の手を模索する、現状を打開する一言を選ぶに選んだ結果……。

 

 

「い、痛くしないでね」

「度胸だけは褒めてやるのよ。ベティーを前に、ここまで軽口も徹底してるとなると。……生憎、痛いかどうか、それはお前次第じゃないかしら? それに―――もう1人の男(・・・・・・)は、普通に立ってたのよ」

「い、いや、アイツの実力は半端ないって言うか……、オレは戦闘力0の一般人……っっ!?」

 

 

ベアトリスの手がスバルの腹部を優しく撫でたかと思ったその瞬間、まるで全身を炎であぶられたかの様な錯覚が起きた。

 

 

 

熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い。

 

 

 

身体の中を何かが暴れまわっている。

 

 

「ま、所詮は 多少頑丈な程度なのよ。比べたベティーが悪かったかしら?」

「ッ、ッッ……、な 何しやがった………、このドリルロリ……」

 

 

ベアトリスは、崩れ落ちたスバルの前で膝を追って視線を合わせた。初めて真っ直ぐ見た気がする。そして漸く気付けた。その瞳は……、その瞳は人のモノではない、と。

 

 

「ちょっと体の中のマナに聞いただけなのよ。凡庸なのに、変な魂の形をしてるかしら? ゲートも閉じっぱなしみたいだし。敵意がないのは確かめられた。これまでベティーに働いた散々の無礼も今のマナ徴収で許したげるかしら」

「おまえ……、人間じゃねぇな……? この場合、性格的な意味、じゃなく……、そのみょうちくりんな、目は……」

「まだ軽口を言える余裕があるのよ。もうちっとマナ徴収すべきかしら?」

「っっ……!!」

 

 

あの衝撃が再び来る、痛いのと熱いのが無限に襲ってくるような感覚。

恐怖を覚えた。嫌だと思った。憤怒する気概すら消し飛ぶ。みっともなく流れる涙の意味も変わってくる。―――懇願に。

 

 

そして、ベアトリスの手がスバルに伸びかかったその時だ。

 

 

 

「きゅきゅきゅ~~♪」

「こら! 明日って言っただろ!」

 

 

扉の先が騒がしくなってきたのは。

不意にベアトリスはスバルから手を離す。

 

 

すると、扉をバンッ! と開くや否や、閉ざしかけたスバルの視界の端に、あの緑の小動物の姿が映った。

 

 

「クルル!」

「きゅ~~♪」

「……ベアトリスさん。スミマセン……。こんな時間にコイツ、目を覚ましちゃったみたいで……。会いたい会いたいって聞かなくて。(クルルが気に入ったのか、中身のヤツ(・・・・・)の仕業なのか、もうほんと解らん……)」

 

 

クルルはベアトリスの胸の中に飛び込むと、ベアトリスもクルルを抱きとめた。

 

 

「って、アレ……!? なんでこんな所で寝てるのスバル。寝相がここまで悪い、とか?」

「そんなん……、じゃ、ねぇ………」

 

 

息も絶え絶えと言った様子のスバルを見て、ベアトリスも見て……、その表情も見て大体察した。

 

 

「ベアトリスさんとケンカでもした? 見知らぬ所で大きく出ようとするのは危ないよ、いや、ほんと……。ある程度は大人しくした方が絶対良いと思う」

 

 

来訪者であるツカサは、スバルの肩に手を回して担ぎ上げた。

 

 

「ケンカなんて幼稚な事してないのよ。散々無礼を働いた分、身体中のマナを弄って徴収しただけかしら?」

「………なるべく、なるべく穏便にお願いしますね」

 

 

身体を痙攣させてるスバル。

まだ意識は途切れてない様だ。

 

だが、その苦しみは表情を見ればよく解る。

 

 

「スバル、死んじゃ駄目だからな? 絶対に。……色々と確認(・・・・・)しないといけない事があるから」

「だれ、が……、しぬ……かよ。……あの、どりる、ろり、にもう一言………」

 

 

クルルと戯れているベアトリス。もうスバルの事は興味ないと言わんばかりだ。

 

 

「訂正……だ。あいつ、性格的にも……人間じゃ、ねぇや…………ガキ」

 

 

 

そこまで啖呵切った所で、ナツキ・スバルは意識を失った。

 

 

「……ここまでの力の差を見せつけられて、生殺与奪も握られた状況で、それでも悪態をつけるって言うのは真勇か蛮勇か……いや、多分間違いない…………」

 

 

完全に気を失ってるスバルの身体を抱きかかえると、ベアトリスの方を見た。

 

 

「すみません、ベアトリスさん。クルルの事、ちょっと頼めますか? そのお礼にマナ徴収ならしてくれて良いんで」

「良いのよ。クルルの面倒はベティーが見ててやるかしら? それと、マナの方は良いのよ。………お前にはもう既に、貰えるだけ貰ってる(・・・・・・・・・)かしら」

「ははは……」

 

 

苦笑いしつつ、部屋を後にしようと背を向けたその時。

 

 

 

 

「――――お前、何者かしら?」

 

 

 

 

背後から、ベアトリスの声が聞こえてきた。

ツカサは、ゆっくりと振り返って答えた。

 

 

「さっきの晩餐会の時に説明した以上の事は………。一応、パックにも嘘はついてない、悪意・害意はない、って太鼓判はしてくれましたが」

「………それはベティーも解ってるのよ。………お前、お前は…………その人(・・・)なのかしら?」

 

 

ベアトリスの真剣な顔がツカサの表情に刺さる。

ツカサは少しだけ考えて―――答えた。

 

 

 

「オレには失った記憶がありますから、完全に取り戻せてない記憶が。……だから、軽はずみな判断はできません」

「……解ったかしら」

 

 

 

 

 


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