Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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つまらない野暮用

 

 

 

クルルの様子は少々おかしかったが、取り合えずツカサは追及する事はしなかった。

その理由は、背後に《ナニカ》が居ないであろう、と本能的に察したからだ。

ツカサの中で、人格否定しているのは《ナニカ》だけであり、クルルに関しては信頼している。……ただ、いつクルルに扮してナニカが出てくるかが解らないから、完全に心を許す――――なんて事は出来ないが。

 

無論、それは有事の際は省く。

 

 

「(……意図的にクルルが何か隠し事をするとしたら、多分……)」

 

 

愉快犯じゃないと言うのであれば、恐らくこの屋敷に来て直ぐに向かった禁書庫で何かがあったのだろう。つまる所、ベアトリスとパック、或いはロズワールも絡んでいるかもしれない。

 

 

「……とは言っても、今の所そこまで被害被ってる訳じゃないし、良いか。気温もまだ大丈夫だし」

「そう。良いと言う事はつまり今日も暇と言う事。ラムの仕事を手伝いなさいツカサ」

「………そういう意味での良いか、じゃないんだけど、うん。了解」

 

 

隣にいるラムが突然仕事を押し付け………仕事の手伝いを依頼しているが、当然の様にツカサは了承した。

以前までは、それとなく~~自然に~~~と、ラムの仕事をツカサが手伝う様に持って行っていたのだが、最近は小細工なしのストレートで手伝ってくれ、となっていた。

 

 

勿論、ツカサは断らないし、ラムの事をよーく知ってるので、全く気にしてない様だが。

 

 

「大丈夫よ。報酬ならしっかりと支払うわ。バルスの給金から」

「うん。ありがと。これでも一応、アーラム村の何でも屋だからね。報酬は素直に嬉しいよ」

「――――って、うぉいぃぃ!! 何でそーなるんだよっ! 兄弟もナチュラルにうなずいてんじゃねー!! オレとエミリアたんの愛の逃避行の為にもお給金は絶対超必要なんだよっ! そもそも、兄弟はべらぼうにお給金貰ってるって話も聞いてるぞ! 格差社会反対反対!!」

 

 

因みに、直ぐ傍にはスバルも居たりする。

屋敷中の掃除をレムと行ってる最中。少々ラムとツカサから距離は離れていたが……、スバルにも聞こえるくらいの大きさの声でラムは話をした様だ。

つまり、確信犯と言うヤツである。

 

 

「ハッ。どの口でほざいてるのかしら。ツカサとバルスの仕事量を鑑みれば当然と言うモノよ。それともバルスはツカサに見合うだけの成果を出せるとでも言うのかしら?」

「うぐぐぐぐぐっ………」

「あー、いや……、そもそも、基本お手伝いさんな仕事なのに、上も下も無い気がするんだけど……。勿論、スバルの給金貰おう、なんて思ってないからね? 一応念のため」

 

 

ラムの会心の一言にぐうの音も出ずに項垂れるスバル。

確かに魔獣騒ぎの事やら、ツカサ自身の力やらを考えてみれば……対等などと口が裂けてでも言えない。本気で言った訳じゃないのだが……改めて現実と言うモノはかくも苦しい、と認識せざるを得ないのだ。

色々とフォローをツカサは入れてるが、あまり効果はなさそうである。

 

 

「大丈夫ですよ。スバル君は素敵ですから。直ぐにでも、姉様やツカサ君も納得する成果を魅せてくれる筈です!」

「っ~~~~~! れ、レムの無条件持ち上げが傷に染みるっっ!! 頑張りますとも! 今後とも是非に御覧になってくださいだとも!!」

 

 

レムはレムで、スバルを甘やかす――――訳ではなく、常に至上に置き、期待に満ちているので、ある意味スバルの監視人的になってる。こうまで期待された目で見続けられたら、サボったり弱音吐いたりが出来ないのだ。

それだけ期待してくれるのはスバルにとってもありがたい事だが、目指すべき頂きの高さがヤバい事も解って貰いたい気分でもある。

 

無論、エミリアの為にも下を向いたり、後ろを向いたりする暇はないのだが。

 

 

「近頃は平和だし。頑張ってよスバル。オレもオレで色々と頑張るから」

「うぅ、強者の余裕オーラが可視化するってもんだぜ兄弟。兄弟の頑張る、と色々はマジ最強コンボの最難関クエストだったりしそうで……っとと、ちょっと待て。兄弟、よく見て見りゃ、その格好寒くね? オレの服より余裕で薄地、つーか夏仕様じゃん」

 

 

スバルがここで着目したのは、話題逸らしにも使ったのが今のツカサの格好だ。

子供たちの相手をしていた事や今は朝もそれなりに早い事もあり、動きやすいラフな格好になってるが、それでも肌が露出している所が所々ある仕様の服で、ハッキリ言ってメチャクチャ寒そうなのだ。

 

 

「ハッ。無粋ね。ラムが傍に居るのだから、当然全く問題ないわ」

「何が当然で、何が全く問題ないのかわからん……。って、そうか!? お肌とお肌で温め合ってましたってか!? そりゃ、朝目覚めたら傍にはメイドさんがいて、そんでもって、そんな事(・・・・)してくれた日にゃ、神が10個はつきそうなシチュエーションだな!! ……でも、まだ村の子供も起きてる様な時間ですよ、姉様。アダルティな話は夜の方が良かったりしません事?」

「問題ないわ。いつまでも成長しない子供は目の前にもいる様だけど、ラムは全く気にしにないもの」

「子供で悪かったな!! 恥じらう姉様、ってのも全然期待してなかったよ! つーか、これそもそもただの嫉妬だよ嫉妬!! オレだってエミリアたんと温めあいたぁぁい! 兄弟がう~ら~~や~~ま~~し~~~いぃぃぃ~~~」

 

 

ラムとツカサが触れ合いながら体温を維持してる~なんて、想像しちゃったスバル。

男女のそれで行われるその光景を想像しちゃったスバル。

あまりにも羨ましすぎる様で、わき目もふらずに頭をぶんぶんと振りまわしている。

 

因みに、ツカサはラムのいう事は話半分に聞いていたりする。

寝顔を覗かれる、起きたら傍にいる―――って事は多々あるが、肌と肌を~~の部分が話半分の原因だ。

流石にラムがそこまでするとは思ってないからと言う事と、ツカサ自身覚えが無いからだ。

 

……もしも、寝ている時、それもそれなりに深い眠りの時だったら……? と聞かれれば……。

 

 

「あれ? こんなところで皆何してるの?」

 

 

そんな時、ひょっこりとやってきたのはエミリア。

彼女の来訪もあって、ツカサは考える事を一時止めた。

でも、スバルは今も狂乱してる様に頭を振り回してる。その欲求をぶつけたい相手? が目の前に来ていても気づかない様子だ。

 

ちょっぴり憐れだと思ってしまう。

 

 

「おはようございます、エミリアさん」

「子供なバルスが生きるのが辛くなり、癇癪を起して物に当たりそうだったので、レムとラムが注意していた所です。聞く所によれば、どうにも発作が出てしまって様で、余命幾ばくも無い可能性が有るとか、無いとか」

「ええっ! そうなの!? スバル、そんなに辛いなら言ってくれれば良かったのに。私やパックもいるし、王都の方に行けば治癒術の専門の人だっているから、安心して。……ぁ、でもツカサの様に治癒術を受け付けない様な発作だったら……どうしよう……。スバルにも私、全然恩返せれてないのに……」

 

 

ラムの冗談に本気で心配してしまうエミリア。

流石に、ここまで来たらスバル自身も気づいたようで、取り乱して振り回していた身体をぴたっ! と止めるとエミリアに向き直った。

 

 

「違う違う違う! エミリアたん! オレすっげーー元気! めっちゃ元気!! 生きるのに辛くなったりしねーし!! だって、オレにはエミリアたん、って言うエミリアたん(EMT)が存在するんだぜ! それにオレは二十歳未満だっつーだけで、それだけでずっと子供扱いしてくるの止めてくんないかなぁ!? 姉様。確かに、酒は飲めない、保護者がいねーと裏サイトも覗けない年齢だって事は認めるけど!」

「また、変な事言い出した……。余計に話が拗れちゃうってヤツじゃない? これ」

 

 

ツカサの何処か呆れた様子にスバルは、きょとん……とした。

 

 

「そんな変な事言った? オレ」

「うん。酒が飲めない云々は、年齢制限があるから仕様が無いと思うけど、その【うらさいと】って言うのは聞いたこと無いから。まぁ、オレの勉強不足かもしれないけど、スバルって変な言語いっぱいしってるから。オーケーとかマジとか」

 

 

ツカサはそう言いながら、皆の方を見た。

 

 

「うーん……、確かに私もお勉強中だけど、その【うらさいと】って言うのはなにかは知らない言葉ね……。あ、お酒はルグニカじゃ15歳以上から飲んでも問題ないわ」

「レムも解りません。流石はスバル君。博識です!」

「バルスの様子を見る限り、イヤらしい言語であるのは間違いないと思うわ。汚らわしい」

「姉様1人だけ毒舌相変わらずっ!! ってか、15歳からいけんの? ならオレは大丈夫だわ。兄弟は?」

 

 

一応、ツカサの言う変、と言う意味は理解した。

確かに現代っ子以外じゃ、相応に思春期を迎えて、ピンクな妄想を膨らませている様な青少年たちじゃないと解らない単語だ、と認識しつつ―――思うのはお酒が飲める年齢。

日本じゃ二十歳から、となってるがこの世界、ルグニカ王国はもっと早く、緩い様だ。

 

 

「ん~……。正確な年齢ハッキリしないからなぁ。でも、流石に15歳以下って事は無いと思う」

「そりゃそっか。……こんな子供居たら驚くわ」

「更に泣きたくなる、の間違いじゃないの」

「姉様うっせ――――っ!」

 

 

ラムの毒舌も絶好調。

そんな彼女の視線がツカサの方に向いた。

 

 

「ツカサは、お酒を嗜んだ事はあるの?」

「いいや? 旅してた時も周囲の警戒があって、皆飲むって感じじゃなかったし、王都でもそう。だから飲んだことは無いよ」

「そう」

 

 

ラムは意味深に考える。

そして、その横顔は何処か妖艶さを醸し出していて、何やら只ならぬ雰囲気に。

 

 

「レムレム……。姉様何考えてるっぽい?」

「ふふふ。さぁ、レムにもわかりません。ただ、姉様はとても素敵で、とても可愛らしい、と言う事くらいしか解らないですよスバル君」

「うわっ、解ってそうで黙ってるっぽい??? ………いや、何となくだけど………」

 

 

スバルは、ツカサの肩に手を乗せて、そして耳元でぼそりと呟く。

 

 

「18禁な展開にするんじゃねぇぞ? 兄弟。怒られちゃうからな?」

「いや、何言ってるのかわかんないんだけど。その変な笑みヤメテ!」

 

 

 

「それより、スバルの体調は大丈夫、って事で良いのかな? 私すごーく心配なんだから。もう少ししか生きられない、まだ何も返せれてないのに、そんなの嫌よ?」

「おぉぅ、EMT! エミリアたんマジ天使……! そこに戻っちゃうのね。だいじょびだいじょうび! ラム姉様の冗談だよぉ、エミリアたん。オレ元気元気! 今日も頑張って仕事熟してるよぉ!」

「そう。なら良かったわ。もうっ、ラムもあんまり驚かせないでよ?」

「申し訳ありませんエミリア様。バルスが騒いで」

「オレのせいなのっ!??」

 

 

スバルの言ってる事、その意味がちょっと解らない~と常々エミリアは言ったりしているが、流石に余命幾ばく~~等は解る。

ラムの冗談だと言うのは察しているが、一応スバルに直接聞いておきたかったようだ。

 

 

「ふふふ。あ、そうだ。私はもう大人だから、そのスバルの言う【うらさいと】? って言うのに、保護者として一緒に見てあげても良いわよ」

「おおぅ……、そこにも戻って、言っちゃいますか、エミリアたん! やっさしぃ~~~! ……けど、天使なエミリアたんがそんな事言っちゃ駄目! 裏サイトの件はすっぱり忘れてくれてOK! 特殊な言語だからね!」

「………イヤらしい」

「だぁからぁ、そんなのじゃねーよぉ!(……でも、強く反論できないのがきつい!!?)」

 

 

ラムは見事に裏サイトの本質部分を察知出来た様子。これまでのスバル言語ではぐらかすのは初めてだと言う事もあるだろう。

 

 

「きゅきゅ~♪」

「わっ! クルル」

 

 

そんな時、エミリアの頭にクルルが飛び乗った。

いつもはパックの定位置なのだが、今パックはいないようなので、クルルがそこを陣取ってる。

 

 

「エミリアたんの頭に乗りたい………って言うのは無茶だよねぇ」

「それは当たり前、っとと、すみませんエミリアさん。ウチのヤツがいきなり」

「あ、やっ、別に良いの大丈夫っ! クルルにはすごーく、すごーーくお世話になってるから」

 

 

ツカサが謝罪して、クルルに戻る様に指示しかけた時、エミリアが頭の上のクルルの両手を掴んで、手を繋いでふりふり、と左右に揺らせた。

 

 

「ほ、ほら! ベアトリスとベッタリばっかりだったから、私とも交流して欲しいなぁ~って。私、おっちょこちょいだから、逆にクルルに迷惑かけちゃわないか心配で!」

「おっちょこちょい、ってきょうび聞かないよ、エミリアたん。つーか、オレの方がエミリアたんとベッタリぬくぬくしたい……。てな訳で! エミリアたんっ! 明日のデートよろしく~~っ!!」

 

 

スバルは、デートの事を今思い出したのか、悲痛だったり取り乱したりな先ほどの狂乱から一転、両頬に手を添えて、その頬は仄かに赤みを帯びて、クネクネと身体を動かしていた。

傍から見ても普通にキモチワルイ動き。ラムは軽蔑と侮蔑と嫌悪と―――色んな視線でスバルを見据えていて、いたたまれなくなったスバルはラムに抗議をするのが定番! である。

 

 

ただ、少しいつもと違うのはエミリアだった。

明日のデート、と言う言葉を聞いて、慌てていたエミリアの表情がまた変わる。

 

 

「! そっか。そうだった。明日は、スバルとでぃとで………」

「うんうん! 兄弟とラムちー姉様の様にお肌とお肌で~~ってのは、まだ早いにしても。色んな所に2人で行って、沢山思い出を共有して、沢山遊んで! 今エミリアたんと出来る事、沢山したいんだっ! 明日は早く起きて楽しみにしてるからなぁ!」

「………そ、そう。それは楽しみね!」

 

 

「ん? 何だかエミリアさんの様子が変じゃない?」

「バルスと会話するのも疲れるから仕方ない事よ。それにエミリア様もバルスに割く時間が勿体ない、と思い直したのかもしれないわ」

「辛辣……。でも、そんな感じじゃない気もするけど。……それにクルルと接してた時も」

 

 

何処かぎこちない。

エミリアは常々、スバルに対しても多大なる恩があると言っていたし、出来る事ならなんだってする精神だ。下心満載とはいえ、デートの言葉の意味も知っても尚、その程度で良いの? と拍子抜けした程。

今更スバルとの約束を反故にするなんて到底思えないのだ。

 

 

「明日は晴れて温かくなれば良いなぁ~~って、あれ? そう言えばエミリアたんもラムみたいに薄着だね。その格好で寒くないの?」

「えっ!!? さ、寒くなんて全然ないけど? 寧ろ暑いくら? すごーくポカポカ……」

 

 

ここまで来たらスバルだってわかる。

エミリアの様子が明らかに変わった事に。

 

 

「……どったのエミリアたん、急に様子が?」

「え? いえ、なんでも無いわ! それじゃ、私は野暮用があるから! すごーく急な野暮用なの! あ、ツカサ。ごめんなさい、ちょっと今日暫くクルルと一緒に居ても良い? すごーく急な野暮用にクルルがとても必要でっ!」

「ん。大丈夫ですよ。エミリアさんに迷惑かけないようにな?」

「きゅきゅ~~!」

「ありがとっ! じゃあねっ!!」

 

 

エミリアの頭に居るクルルは手を振って答えた。

エミリアはぎこちない動きであっと言う間に出て行ってしまった……。

 

 

 

「………………」

 

 

 

あっと言う間にエミリアがいなくなってしまって、何だか、イヤな沈黙が流れた――――。

そのイヤな沈黙、雰囲気を流してるのはスバル。

 

 

 

「ハッ」

 

 

 

そして、そんな沈黙を破るのはラム。

当然ながら遠慮のえの字すらない。

 

 

 

 

「野暮用と言うのは、取り立てて言う程ではない、つまらない用事の事。つまりバルスはそんな野暮用以下の存在って事ね」

 

 

 

 

そんなラムの言葉は、デートを明日に控えたスバルにとってこれまでのどの毒舌よりも威力が高い。本日一番の超高威力。

 

それは刃となり弾丸となり砲弾となり――――見事、スバルのハートを打ち抜くのだった。

 

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