Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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極寒

 

 

「んっん……、取り合えずオレには教えておいた方が良いんじゃない? 何かあった時に動けるように」

「きゅ~~きゅ~~♪」

「はぁ……、そんなわざとらしい誤魔化し方しなくても良いよ。言わないって分かったから。………なんかイラッてきそうだし」

 

 

クルルがたまに帰ってきてはエミリアの所へと訪問している。その理由は未だに教えてくれない。エミリアも同様だった。兎に角誤魔化す、はぐらかす、論点逸らすばかりだ。

ただ、本人はそれで誤魔化せてると本気で思っている様で、それがまた面白かったりするのだが。

 

 

「ラムと一緒に居る様に、と大精霊様は告げているとのことだけれど、それはただツカサがラムと一緒に居たい理由付けに大精霊様を利用している様にも思えるわね。それも夜も更けたこの時間。……成る程、とうとうツカサも獣の様な欲を抑えきれなくなったのね。美少女であるラムを前にしたら、仕方のない事だわ。よく我慢した方だと褒めてあげなくもないわ」

「うーん……、ラム物凄い事考えてるけど、今回のは結構気にしてるし、心配もしているからね? エミリアさん達の件だし、危ない事はないって思うけど……正直、今の クルル(こいつ)が言う事は無視できないから」

 

 

ツカサが寝泊まりしている部屋には、ラムが一緒に来ている。

勉強時間や朝のご奉仕(と言う名の目覚まし)、仕事の合間などラムと一緒に居る事は結構多いので、今更ながらのクルルの指示———なのだが、正直な所 今回はいつもと違う様な気がするから、ある程度の注意はしている。

 

クルルの中に居る愉快犯(ナニカ)が遊んでる……可能性も否定できないが、それでも注意しておくに越したことはない。

 

 

「……女を察しなさい。何度も言うけれどツカサに足りないのは、そういう所(・・・・・)よ」

「そういう所って言われても……。あぁもう。それよりもオレはスバルの事も心配だよ。だって、アイツが死んじゃったら、今度こそオレもヤバいかもしれないんだしっ! だ、だからそーいうことで他は考えられないのっ! も、もっとほら、有意義な話、対策とかいろいろとっ!」

 

 

ラムがそっと腕を絡ませて、耳元で囁く。

すると、ツカサは顔を真っ赤にさせて、耳まで赤くさせながらもフイっと顔を背けた。

腕を振り払ったりまではしてない。そんなツカサの姿が可愛らしくてラムは笑みを浮かべる。これまでも何度かある展開。今日もガードが固くて手を出してきたりはしない……と思うが、その辺りはじっくりと、だ。ラム自身がこの展開を楽しんでたりするから。

 

 

「――――まぁ、冗談はここまでにしておいて」

 

 

ラムはあらかた満足したのか、腕を離してツカサに向き合った。

全てが冗談……とは言えないだろうが、ラムも色々と気になっている様なのだ。

この異常に冷える気温。寒波が来る季節ではないというのに。

 

 

「……また、危機が迫っている、と言うのかしら? ロズワール様の領地内、いえ このロズワール邸での不貞行為。もう流石に怒りを禁じえないわ。……ツカサはどう思うの」

「正直に言えば、危機って呼ぶ程の事はない、って言うのがオレの今の感想……かな。本当に危ない事だったら、エミリアさんだって変に黙ったり誤魔化したりしないだろうし、それはクルル(こいつ)にも言える事だし。……ただ、1つだけ気になってるのは――――――――」

 

 

 

その日は、夜通し今後について話をしよう、としていたツカサ。

 

実はラムと夜通し同じ部屋で……と言うのはこれまでに無い。いつもはラムが先に寝てしまったら寝室に運ぶし、夜寝て起きたらラムの顔がある……と言うのが定番で、一緒に寝て一緒に起きる……なんて事は今回が初めてだという事と、先ほどのラムの挑発めいた言動もあってしっかり目がさえてしまったのである。

 

 

ラムの好意やその想い、少々刺激が強いアピール。

全てツカサには届いているが、それでも受け取る事が出来ないのは本人の心に起因する問題。

そして、ツカサ本人は知る由もないが、自身のその心に巣くう闇に対しラムも気づいていた。

 

 

そしていつか、いつの日か、ツカサの闇に触れる所、その深淵まで踏み込みたい―――、近づきたい――――と、心に強く思うのはラム。

でも、ツカサの方から打ち明けて貰えたら嬉しい、と言う想いもある。

 

 

 

いつの日にか―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日。

 

 

 

 

 

いつの間にか寝てしまったラムとツカサだったのだが、とある異常が起きて、叩き起こされた。

と言うより、直ぐに起きてなかったら危なかった。気づかなかったらそのまま死んでいたと言っても良いレベルの異常だ。

 

 

 

「………これは、只事じゃない、な」

「ッ、ッッ……ッッ……」

 

 

 

部屋の中が、目に見える全てが氷結し、部屋の中が辺り一面銀世界と化していたのだ。

 

当然、昨日とは比べ物にならない。この極寒地に身体を震わせ、温もりを求めてツカサに抱き着いてるラムの姿もある。

 

でも、これはラム自身もここまでするつもりは無かった。

不可抗力だと言って良いし、こんな風に距離を詰めるつもりも無かった、と言う気持ちもある。

 

でも、そんな気持ちなど関係ない。ただただ心の温もり……じゃなく体温的な物理的な温もりを欲してツカサに抱き着いたのである。そうしなければ、本当の本当に命の灯まで消えてしまいかねないから。

 

 

「いつの間にこんな氷点下に……? 窓だけじゃない。全部凍り付いてる。あ、空気中の水分が凍って光ってるみたい……。これダイアモンドダストってやつ……かな? まさか部屋の中でそんなのが見れるなんて………」

「ッ~~~。つ、つかさ。布団、毛布にくるまり、なさい。ラムも一緒に、許すわ。はやく、はやくっっ! はやくっっっ!!!」

 

 

冷静に色々と分析し、見渡している時、勢いよく抱き着いてツカサの中でガクガクと震えているのはラムだ。

 

何だかこういう時のラムは、色恋~と言うより庇護欲を覚えさせられる。守ってあげなければ、とより強く思う。

 

だから、ツカサは頭をよしよし、と摩りながら軽く抱きしめる。

 

「ラム寒いの苦手だったんだね」

「も、物事には限度、と言うモノがあるのよ。それに得手不得手なんて主観的な問題に過ぎない、わ。勝手な事言わないで。ひ、日頃からよくやってるツカサに、ラムからの御褒美と思って、抱擁を受け取りなさい。もっと、もっと強く……!」

 

ラム自身もガタガタと身体を震わせながら、ツカサの温もりを求めて強く抱き寄せる。

ツカサは、ラムの様子に苦笑いをしつつ、ラムがかなり震えてるのは密着しているから解る。恥ずかしい以上に、結構危ないのでは? と思った。体調を崩してしまうかもしれないし、下手したら凍傷にもなりかねない。それにこの極寒を流石に体温だけでカバーするには心もとない。

 

 

「出来るかどうか……わかんないけど」

「ッ、ッッ???」

 

 

ツカサは、指先に力を集中させて、色々と試してみるのだった。

―――現在、クルルが居ない事もあって結構難しい……と眉間に皺を寄せながら。

 

 

そんなツカサをラムは身体を密着させながら上目遣いで眺める。

当初こそ、余裕の《よ》の字も無かったが、ツカサの試し(・・)が成功すると同時に、余裕を取り戻し、そのまま色々と堪能するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほっ……。オレが無事だから大丈夫だとは思ってたけど、兎に角無事でよかったよスバル」

「ぶぶぶぶぶ、ぶじなもんかよぉぉ、ど、どうみても異常気象だろぉぉぉっっ!! おかしいだろぉぉ! す、すいぶん、あ、ありとあらゆるすいぶん、凍らされて、は、鼻ツララ、マジでできててっっ、これ死んじゃうヤツじゃないのかよぉぉぉっ!!」

 

 

台所へと赴いてスバルとレムを発見した。

どうやら、レムは寒さで死にかけてたスバルを救ってくれたとのこと。冗談抜きで命の恩人だから感謝しなければならないだろう。

 

スバルはどうにか温かい紅茶を流し込んで体温保持に勤しんでる様だが、それでも全くおいつかず、ただただ冷気と戦っていた。

 

 

「え、エミリアたんとの、でーとは、ちゅうしに、なるわ、夢で天に召されかけて、それが正夢になりかけるわ、さ、さんざんな目に、あった、ぜ……」

「ハッ。あまりにも貧弱過ぎて嘲笑を禁じ得ないと言った所ねバルス。少しはツカサを見習ったらどうなの。これからの自分見てくれ発言に責任を取らない無責任で無能な男、それがバルスと言う男。己を律する事も出来ず、負けた憐れな姿。エミリア様には同情するわ」

「そんな、明かな暖房設備ばっちしなヤツに言われてもねーぇぇ!! どーせ兄弟暖房仕様になってんだろっ!?? このままだと殺意に繋がりかねないよ姉様!!」

「ええ。バルスが望むというのであれば、受けて立つしかないわ。短い付き合いだったわね、バルス。永眠なさい」

「よっしゃぁ、受けて立つ!! って言いたいが、結局どうあがいてもオレが死ぬしかねーのでやっぱナシの方向で頼んますよ姉様!」

 

 

ラムは虫けらを見るかの様な目で、スバルを嘲笑う。

しっかりと毛布を羽織って、ツカサの傍にぴっちりついてて、ぬくぬく状態である事はスバルの目から見ても明らか。

そもそも、先日……急に外気温が急降下し出した辺りから、ラムのサボり癖が一気に加速した所から見ても、どう考えてもラムは寒さに強い、なんて有りえない。有りえそうにない。

なのにも関わらず平然としているのに違和感を覚えない者がいる訳もないだろう。

 

 

「兄弟ッッ、ほ、ほっとどりんく、てきなの、のんで、さむさにつよくなった! とかだったら、いっぱい御馳走してください、どうかたのんますっっ!!」

 

 

 

顔を青くさせて、紫色にもさせて、歯をガチガチ震わせて鼻水ずるずるさせて、レムに介抱して貰ってるスバルはツカサの方を見て懇願する。

 

 

「流石にそんな器用な事はムリだよ。一応、エクスプロージョンとテンペストの応用で、身体周囲に膜を張ってるけど、適温調整しながら、これを広げるのは凄く難しい……、一番難しいのが、適温に保つ事だ。もっと練習時間が有れば解らないけど……。ほんと火の魔法って扱い難しい。汎用性も低いし……」

 

 

これまで、代名詞の様に風の魔法テンペストを使っていたツカサ。

火の魔法は確か魔獣相手(ギルティラウ)に使ったくらい、だろうか。あの火災旋風はスバルも見ているので、気を抜いたら火炎地獄になってしまうのを想像してしまうと、今以上に顔が真っ青になってしまう。

 

 

「ハッ。バルスは、レムと言う世の至高の妹から介助されてるも同然だというのに、更にツカサを求めるというのかしら?」

「恐縮です、姉様!」

「か、かかか、かいじょ!? そこまでいってねーよぉ!!」

 

 

介助の意味くらいスバルも知っている。

入浴やら食事やら……排泄までも支援を必要としている―――人な訳ない。

確かに、レムは鼻紙を持って対処してくれてるけど、入浴サービスやトイレサービスまで受けるつもりは毛頭ないから。

 

 

 

「はい! スバル君の介助はレムにお任せください!」

 

 

 

でも、当の本人はヤル気満々な様子。時折頬を赤くさせてる所を見ると……スバルとのあれやこれやを想像している様だ。レムはムッツリさんな所があるのだろう。

 

 

「いや、たのまねーから! そこまでいってねーから! だいじょうぶだからっっ」

「なら、ツカサに抱き着こうとしている、と言う事かしらね。男色家の気があるとは薄々感じていたけど、両方なんて心底軽蔑するわ」

「もっとちげーーから!! エミリアたんとまだ触れ合えてないってのに、だからって男に逃げたりしねーから!!」

 

 

こんな感じで、楽しそう? に騒いでいたら。

 

 

「おーゃおや、随分と楽しそうな声が聞こえてくるじゃなーぃか」

 

 

屋敷の主であるロズワールもやってきた。

バッチリ着込んでいて、防寒対策問題なさそうな出で立ちで。

 

 

「楽しそうじゃねーーよ! あまりに寒すぎて、喜怒哀楽の感情の内、怒以外忘れそうなんだけどぉぉ!! 怒すらも忘れたらその先は死以外見えない気がするんだけどぉぉぉ!!?」

「おーやおや? 確かによーぉく見てみると、確かにスバル君は気分が悪そうだねーぇ」

「悪いじゃなくて寒い、だろ!! 幾らなんでも異常気象過ぎねぇ!? 一日で一体どんだけ下がってんだよ! お天気お姉さんも真っ青だよ!」

 

 

この場で凍えてるのはスバルだけであり、何だか自分以外の皆が不正? してる様な気がしてならないスバルは、大きく声を張り上げた。

寒さもある程度誤魔化せて―――――無い。ただただ只管に寒い。

 

 

「やれやーれ、弱気な事だぁーね。心身ともに己を高く保つ事でどれだけ気温が下がろうと平常心を忘れずにいられる、と言う事をしっかり学んだ方が良いと思うよーぉ」

「ンなモコモコの服きたヤツに言われても説得力ねーよ!! 何でもれなく俺以外の面子は快適環境保ててんのよ! 職場改善要求!! 労基に訴えたくなってきたよ!」

「ロズワールさん、おはようございます」

「おーやおや。ツカサ君も一緒だったのかーぃ。じぃーつに対照的な2人だーぁね。随分器用なマナの使い方をしている様だ。――――これはこれは、わたぁーしも実に刺激になってるじゃなーいか」

「スゲー嫌味! でも、笑い飛ばせる余裕もねーよ!! そこで魔法談義する前に、暖房設備導入を検討してくれよお願いします!」

 

 

 

会話の流れをぶった切る感じであまり好ましくないかもしれないが、家主であるロズワールに朝の挨拶をするのは当然の事、とツカサは軽く頭を下げた。

ラムもレムも同様に、主に一礼をする。

つまり、騒いでるのはスバルのみ、である。

 

 

「ふむふむ。今回の1件。ツカサ君の大精霊様がまた対処してくれるのでは? と思ってた部分もあるにはあるのだけど、流石にもう限界かーぁな?」

「………なんだよ、それ。この異常気象の原因知ってるって感じがすっけど? つーか、クルルが対処って、兄弟も知ってたって事か?」

「そんな恨めしい顔しないで。オレも何も聞いてないよ。アイツが、ここ数日何か色々と隠してるのには気付いたけど、頑なだから」

 

 

ツカサも呆れた様にため息を吐く。

その態度から、ツカサは嘘をついてないだろう、とスバルは納得し……改めてロズワールの方に向いた。

 

 

「いやいや、クルルでも抑えられない怪奇現象でも起きてるってのかよ。なら一丸となって、それやっつけなきゃならねーんじゃねぇの!?? ほら冬将軍、みたいなのやってきて大変だって言うんなら、皆で頑張って大急ぎで対処しよう! 先生、兄弟、お願いします!」

「一丸となって、って言いつつ他力本願じゃん……」

「こちろら英雄見習いなつもりなだけの、ただの一般ピーポーだよ! 超級クエストに受注するにゃ、参加資格ってのが足りねーの。解ってくださいよ兄弟!」

 

 

何かを話し終えると直ぐに鼻水が出てくるからレムに拭いて貰って、また話してレムに拭いてもらって、の繰り返しだ。もう既に介助されてると言っても良い気がしてきた。

 

 

「スバル君の方は結構寒いの苦手だったりするんだねーぇ」

「冬は寒い事に文句を言い、夏は暑い事に文句を言い、春は眠い事に文句を言い、秋はマツタケが高い事に文句を言う、模範的な英雄見習いだよ、こんちくしょー」

「ハッ。自分で言ってるだけね。本気で言ってるなら返上しなさい。身の程ってものを弁えたでしょ」

「弁えてるよ! でも心で思ってるくらい良―じゃないの!! 俺の心ん中のカンフル剤なんだよっ!」

「……十分口に出して言ってたけどね。まぁ、それは兎も角。そろそろ本題に入りません? ロズワールさん」

 

 

ツカサが落ちの見えないやり取り、その流れを断ってロズワールに言った。

 

 

「見た所、この現象は屋敷周辺……村まで届いてない範囲で留まってます。……それと先日までのやり取りやさっきのロズワールさんの期待とか、その他諸々全部合わせて考えてみると……色々と予想はつきますが」

「へ? そーなの!? ……そりゃよかった。村の畑とか、雪かきとか大変だと思ってた」

 

 

寒さに喘ぐだけでなく、一応スバルも村の心配はしていたのだ。

 

 

 

「……流石だねーぇ。確かに、冷気が外に漏れない様に、しっかり頑張って結界を張ってくれた子達がいるよーぉ。精巧な結界、それを目で捉えるなんて、やぁっぱり、規格外の言葉がキミには似合いそうだねーぇ」

「……何となく、ですよ。やっぱり村も心配なんで。この寒波は流石にきついでしょう?」

 

 

 

これ程の異常気象が村全体にも襲っていたとしたら?

下手をすれば犠牲者が出かねない。ムラオサや村長を筆頭に、高齢者も村にはいるのだから。

 

 

「ふっ……。領地を預かる身としても、君たちが村人と、子供たちと仲良くしてくれてるのは嬉しい限りだねーぇ」

「住まわせてくれてますし、お世話にもなってますし。相応に報いないと、ですから」

「あ~~、俺はたまたまだからな。それに子供に関しちゃ異議ありだ。なんせ俺は我儘で無鉄砲な子供って生き物は好きじゃねーんだし? 懐かれちまったから多少・仕方なく、義理堅く、相手してやってるだけに過ぎねぇよ」

 

 

実に対照的な返事を返す2人。

だが、その根幹部分は変わらないのも解る。2人ともが村に対して友好的であろうと、大事にしようとしているんだという事が解る。

 

 

「なーるほど、なるほど。ツカサ君。これが以前スバル君が言っていた《ツンデレ》と言うヤツだと思うよぉーお。ツカサ君はどう思うかねーぇ」

「実に、符合する点が多くあるかと。これ程わかりやすいのは他にありませんね。同意見です」

「成る程。……バルスがすると嫌悪感以外ないわね」

 

 

「あああああ~~~、レム! 何だか鼻が出てきたわ。ずびび~~、を頼む! 鼻がやばいわぁぁ」

「はいっ、スバル君のずびびはレムにお任せください!」

 

 

照れ隠しなのか、スバルはレムに鼻紙を貰って――――ではなく、レムにしっかりと鼻水を処理してもらうのだった。

 

 

そして、ロズワールは踵を返すと、振り返りながらウインクをする。

 

 

 

 

「さて、そろそろ現場へと向かうかい? この寒さの対処をしてくれている3人の元へ、あぁ~ぁ、片方は会う事が出来るのはスバル君とツカサ君に限り、だったりするけどねーぇ」

 

 

 

 

ロズワールの言葉を聞いて合点がいく。

ここまでくればスバルも解る。

 

寒さを対処してくれている3人。

 

 

「容疑者確定じゃん。今いない3人、って事だろ?」

「寒さの原因が誰なのかも、言わずもがなって所かな。冷気、氷系統を扱うって所を考えても、やっぱりパックしかいないよ」

「ぁ………」

 

 

この場にはロズワール、ツカサ、ラムにレム、そしてスバルの5人が居る。

そしていないメンバーの数をかぞえてみたら……。

いやいや、それ以上にスバルは何故解らなかったのだろうか、と頭を抱える。

 

 

だって身近にいたから。

氷を用いて暴れ回ったあの見た目可愛らしい、モフモフしたいその①、パックの存在を。

 

 

 

 

 


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