Re:ゼロから苦しむ異世界生活 作:リゼロ良し
「エミリア様。朝早くから失礼致します。ちょぉ~~っと、宜しいですか?」
取り合えず、容疑者確定であり、状況証拠もそれなりに有るので、ロズワールを先頭にスバル、レム、ツカサ、ラムの5人はエミリアの部屋の前へと来た。
冷気が可視化されていて、いつもの雰囲気とは程遠い。極寒地獄をその扉に感じるのは決して気のせいなどではないだろう。
あのスバルでさえ、エミリアの部屋の前~といつもならテンションが高い筈なのに、只管に険しい顔をしていた。
「ツカサ。どう?」
ピッタリとツカサの身体から引っ付いて梃でも離れないのはラム。
腕を抱いたまま、上目遣い……までは流石にロズワールも居る手前、していないようだが、ツカサに聞く。
読み通りであるかどうかを聞く為に。
「ん……。間違いないよ。
ツカサはそんなラムに対してもうツッコミや在り来たりな【動き辛い】などの文句は言わず、いつも通りだと流して受け答え。
風の魔法、テンペストを操り色々と感知していた。攻撃系当の魔法ならばともかく、万能系、応用系な魔法はクルルが居る状態といない状態とでは、比べるべくもないが、この程度ならば問題なさそうだ。
エミリアの事はよく知っているつもりだ。
いつも一生懸命で頑張りやで……兎に角、周囲に迷惑をかける事を嫌っている。
パックはエミリアがやりたい様にしろ、といつも言っているが、彼女はいつも他人を優先する傾向にあるのも事実だ。勿論、自分の願いを叶える為にも頑張っているが。
そんな彼女が、この状況をヨシとしているとは思えない……と言うのがツカサの本音。
『ろ、ロズワールっ!?』
「………エミリアたーん。俺も居るんだけど~~」
『ええっ!? スバルもいるのっ!?』
そして、色んな意味で複雑なのはスバルだ。
自称・エミリアの騎士であり、エミリアの事を一番よく解ってる下男スバル。
ツカサ以上に、エミリアの様子が気になるつもりだし、
この面子の中では一番ダメージを受けている以上、スルーをする訳にもいかないから、ロズワールの次に声をかけたのだ。
慌てた様な声が中から聞こえてくるが……直ぐに出てくる気配はない。
『えと、えとえと、ちょっと待ってねっ!? もうちょっとだけ!』
「じゃ、ここはスバルが先陣と言う事で」
「右に同じだーぁよ。すーばるくん?」
「ん―――――」
このまま待つわけも、待つつもりも無い……のは言うまでもない。
スバルは、特攻隊長を任された気分ではあるが、エミリア関係なのだから、第一陣を譲ってもらって断る訳にもいかず、小さく頷くと扉のノブに手をかけた。
だが、その手は直ぐに離される事になる。
「っ~~~~めたっっ! なんだこれ!? ドライアイスかっ!?? って、エミリアたん平気なのっ!? こんな状態で!!」
あまりにも冷たすぎて、凍傷になりかけた。
一瞬でも持ってられなかった為、直ぐに手を外して手をモミモミと擦り合わせる。
「ハッ。情けないわね、バルス。エミリア様に対する想いをいつも口にしている割には、その体たらく。情けない事ここに極まってるわ」
「しょうがねーでしょ!! こんなん!! 俺、今生身だよ!? 文句言うなら、その立ち位置変わってくれよ!」
「ハッ。幾らバルスが男色家に目覚めたとしても、ツカサを譲るつもりは無いわ。ラムのモノだもの。諦めなさい」
「大丈夫ですよ。レムは、スバル君が男色家だったとしても問題ありません!」
「いや、問題大ありだよ! 大いにありだよ! 風評被害来ちゃったよ! そんな気無いから!! 極寒地では、あったか装備は常時しておきたい、ってだけだよっ!!」
「………人を暖房器具みたいな扱いされてるの、凄く複雑……」
目の前の問題から脱線して楽しそうに言い合っているのは結構なのだが、エミリアを放っておいて良いのだろうか?
と思っていたんだが、エミリアの方からの返答が早かった。
『えええ! ほ、他の皆もいるのっ!?』
ロズワールやスバルだけじゃなく、ラムやレム、それにツカサまで部屋の前に集まってる。
その状況に、明かな焦りが……、最初から焦りはその声に現れていたのだが、それ以上の焦りがエミリアの声色に現れていた。
「そーだよ、エミリアたんっ! なんか、俺ホモ疑惑かけられててスゲー心外でさっさと誤解徳から! エミリアたん一筋だから!! その一筋なエミリアたんに聞くけど、これほんとどーなってんの!? いう事色々あるでしょ!?」
『………え、えっと、いうこと、いうこと』
スバルの言葉に少しだけ間を置いて――――。
『お、おはようございます?』
本日初めての顔合わせ(厳密には合わせてないが)。
だから挨拶からスタート。
挨拶から始める一日生活
間違ってはないが……。
「って、違うよ!! ああもう、ホモも嫌だし、エミリアたんも心配! だから開けるぞ? もし着替え中だったらありがとうっ!!」
『ええ! ごめんじゃなくて!?』
冷たさくらい我慢できる! とスバルは堂々と扉を開けた。
本当に冷たかったが、この場面を打開するにはエミリアの部屋に入り、エミリアに事情を聴く事が一番だと思ったからだ。
セクハラ発言については目を瞑って貰いたい。
勿論……大いに興味があるエミリアの着替えシーン。興味津々で有れば、男色家の気が無い事の証明になったりしなくもない……? と思ったから……。
「ハッ。汚らわしい、イヤらしい」
「それでこそスバル君ですっ」
だが、そうは問屋が卸さず、益々嫌な評価になりそうな感じだったのだが、もう後には引けない。
ばんっ! と部屋に乗り込んでみたらあらビックリ。
ビュオオオオ―――――!!
と、ここは何処の雪山ですか? どんな吹雪ですか? と言いたくなる様な銀世界が広がっていた。スバルの部屋が可愛く見えるくらい、どんな模様替えすればこんな部屋になるのか解らない。
兎に角、部屋の中から吹きすさぶ氷結の嵐はスバルの全身を鋭利な刃物で突き刺して来る様な寒さだった。
これで吹き飛ばなかった自分をほめてあげたい気分だ。
「さ、ささささ、さむぅぅうぅぅ!! な、なにこれ!?? ほんと、どーいうこと!!?」
それでも堪えきれず、倒れそうになるが、そこはツカサが背を支えてくれた。
「―――
「きゅきゅっ!」
「おはようっ! じゃないよ、全く……。一言相談しろ、っての」
丁度扉の頭上辺りに、冷気を懸命に止めていたクルルの姿があった。
扉の外が凍り付いてないのは、あの扉がこの猛吹雪の圧で吹き飛んでないのは、多分クルルがある程度守っていたから、だろう。
片手を上げて『やっ! おはよっ!』とでも言いたそうな所作には正直イラッとするが、間違いなく良い事をしている。楽しんでるのかもしれないが良い事をしているのは間違いないので、あまり言えないのが現状。取り合えず頭の中で、心の中で毒吐く程度にしている。
そうこうしていると、エミリアが強引な入室にハッと振り返り―――。
「だ、駄目じゃない! 部屋の持ち主が許す前に入ってきちゃうなんて、失礼っ……そう、すごーく失礼でしょ!?」
どうにかこうにか、この吹雪を生み出しているであろう場所を、発生させてるであろう原因を隠す様に両手を広げて猛抗議。
でも、なかなか思う様な上手い言葉が出てこない。
何とか考えて、考えて――――。
「だから、ほら……あのっ、だからっ! やり直してっっ!!」
つまり、入ってくる前からやり直せ、と。
目の前で起こってる事実は綺麗さっぱり頭の中から消して……。当然そんな事はムリな訳で。
「取り合えず、
「きゅっ♪」
パっ、とクルルが手を離した。
すると……。
「うごごごごごごごごごごっっっ!!??」
更に一段階威力が増した氷の暴風がスバルの全身を叩いた。
どうにもこうにもならないので、取り合えずツカサはクルルを手元に戻すと、スバルの方へと向かわせる。
ぴょこんっ! と頭の上に乗って暫くすると―――。
「ここ、殺す気か兄弟っっ!!」
「そんな訳ないでしょ。何度その逆の事言ったと思ってんの……。ほら、大分マシになってない?」
「ぁ……そう言えば………でも寒いっっ!! メッチャ寒いっっ!!」
「その辺は我慢して。流石大精霊の力! すごいっ! って感じで」
「どんな感じだよっ!? すごい、じゃなくて迷惑! だよ!!」
「スバル守ってるのも、一応精霊なんだけど?」
「すごく、すごーーーーく助かってますとも!! ぁぁ……取り合えず先に進めねぇとな……」
猛吹雪で体力気力共に奪われ続けていたスバル。
絶対にないとは思うが、万が一にでもまた戻ろうものなら、今度こそヤバいと自覚してるので、ツカサはスバルの守護をクルルに任せたのだ。
色々と凄い力の持ち主ではあるんだが、そこまで万能ではないのか、本気で鎮める気が無かったのかは不明だが……、現時点では出来るのはこのくらい、エミリアの手伝いもこのくらい……と言う訳なのだろう。
「あっ、ちょっっ、く、クルル!?」
「えっと、エミリアさん? 一応、クルルの持ち主は俺になってるので……エミリアさん風に言っちゃえば、持ち主だから構わない、よね?」
「あ、あぅ、あぅあぅあぅ……」
クルルはエミリアと一緒にバレない様に工作をしていた者の1人。
どうにか黙っていてもらえていたのに、ここに来て……、でも、ツカサが言う通りクルルはツカサの精霊だ。だから、本当の意味で縛る事なんかできない訳で……。
「そーんなモジモジしてるエミリアたんカワイイ~~、EMTぃ~~~、って言って楽しんでいたいけど、問答無用で先に進めるよ。ロズっち」
「はいは~~い?」
「この部屋はエミリアたんのモノ。んで、この屋敷の所有者はロズっちだ。……どうする?」
「入室を許可しま~~す!」
ロズワールもロズワールで大概楽しんでる様だ。
イイ感じの笑顔で許可を出した。
これでもう、エミリアの論理は破綻している。屋敷本来の持ち主、その主が許可を出した以上はムリ。
元々ムリがある発言だったのだけど、そこは目を瞑ろう。
「ろ、ロズワール……っ! す、スバルもだめ、だめだったらぁ……」
「ぅ、凄く色っぽい!! とか邪な考えしちゃいそうだよ、エミリアたん! んで、俺にとってはご褒美なんだけど、今は問題解決が先! 寒さの原因はアレだろ? パック! 娘が頑張ってるのに、隠れてて良いのかーー」
パックの名を出した途端、エミリアは突然気を付け!! と言われんばかりに直立不動でぴんっ! と背筋を正し、明後日な方角に視線を泳がせながら―――。
「え? え? 何の事?? 原因ってなに?? 全然、じゃないけど、わかんないっ!! パックなんて知らないから!!」
最後のあがき、と言わんばかりに訴える……が。
「いいよ~リア。どっちにしろそろそろ隠すのは限界があったからね。でも、ぼくの事知らない! はちょ~~っと傷つくなぁ~」
パックは隠れてたわけじゃない。
エミリアが両手を広げて隠していた? 先に……そのベッドの上に居た。
「もぅっ! パックのバカっ!! ほら、その……言葉のあや? って言うのかな? ……それより、もうちょっとで誤魔化せそうだったのに」
「いやいや、後100年かかってもムリだったから。エミリアたん俺の事なんだと思ってんのさ?」
「ハッ」
「ハイそこ、姉様! 嘲る様に笑わないで!」
そうこう言い合ってる間に、ツカサがひょい、と横から覗き込んでパックの姿を確認した。
「やっぱりパックだったね……。見た感じ、内包するマナ。抑えきれないマナが外に溢れ出してる、って感じで良いのかな?」
「うんうん、そんな感じの認識で良いよ。詳しく言えば、発魔期、って言うんだけど、その説明も改めてするよ。ツカサもクルルに怒らないで上げてね? ぼくを頑張って助けてくれようとしたからさ」
パックの言葉に、スバルの頭の上に居るクルルが反応して、片手を上げて《きゅっ!》と鳴いた。
パックもパックで、いつも通りな掛け合い、《にゃっ!》と手をあげた。
「おーや、おや。何でもやってしまう型破り、規格外と称しても良い大精霊様にも、出来ない事があった事が驚きだーぁね。逆に」
暫くの間、やり取りを楽しそうに眺めていたロズワールだったが、此処でまた知的好奇心でも出たのか、パックとクルルの双方を見ながらそう呟く。
「お前なぁ……。パックの枯渇したマナを戻したりして上げれたんだから。今回のだって、その……色々と応用? して出来たりしなかったの?」
「きゅ~~……、きゅ! きゅきゅきゅ?? きゅきゅっ!」
「―――――ん!! ……それなら仕方ない。絶対仕方ないよな……解った。ありがとう」
クルルの言葉? を聞いて、イヤな顔をするツカサ。
いつもクルルには文句を言ってるイメージがあるんだけど、直ぐに仕方ない、と言えるとなると相応な理由があると思うのだが……、感謝まで伝えているのは尋常ではない(スバル談)
「とりあえず、場所移動しない? クルルの言語翻訳もして貰いたいし、はつまき、だかは発情期だかの説明もして貰いたいし」
スバルの提案で、皆揃ってダイニングルームへと移動した。
丁度、ベアトリスも居たので、ロズワール邸メンバー全員で。
その道中―――
「クルルにナニ言われてたの?」
「いや、何度か
「へ? 戻した? ……それって、もしかして、もしかしなくても……」
「十中八九そう。……スバルの死」
「マジかよ!! なんでそーなんだよ!!? あ、いや……今朝も正直ヤバかったし、有りえる話と言えば、そう……なのか? ………いや、マジで感謝だぜクルル……。寒いからってわけじゃねーけど、肝冷えた……」
クルルの件をスバルに説明。
何でも、発魔期で色々と皆に内緒で抑える方法を模索していたら、ちょっと手が滑って色々台無しになりかけた……とのこと。
そこでクルル自身の判断で何度か
ツカサが出来るのだから、クルルが出来ても全くおかしくないのだが、色んな意味で人外なクルルだとは言え、あの身体がバラバラになる様な極限の苦痛のペナルティが全くいかないのが、正直納得しかねる、と言うのがツカサの率直な感想だったりする。
「えー、それでそれで? 俺にも解る様に説明して貰いたいな。その発情期ってのは何なんだ?」
「発情期じゃなくて、発魔期だよスバル。そもそも動物じゃあるまいし、ぼくに発情期なんてないよ、失礼しちゃうにゃ~~」
「それはわざとかな? わざと猫っぽい仕草してんのかな? あらゆる角度からコメントに困るんだが」
パックは猫な見た目だが、その正体は大精霊であり、終焉の獣とも言われる四大精霊が一角だ。
とんでもない存在―――なんだが、今の仕草は猫そのもの。舌で毛繕いして、顔をコスコスと洗って……どこからどう見ても喋る猫と言うヤツだ。
「さっき、兄弟が言ってたから、大体の状態ってのは頭に入ってるつもりなんだが……、そのハツマキ? ってのは誰にでもあるもんなのか? ほら、魔法使う人達全員、みたいな?」
「いいえ。発魔期は一部の強い魔力を持った存在だけに起こる現象です。魔力の強さは、オドの資質に左右されるので、本当に限定的なんですよ」
つまり、パックの様な強大な存在の様に、溢れんばかりの魔力を持つ者達にしか発生しない持病……みたいなモノだろうか。本人は大した事無さそうだが、周囲に甚大な被害を齎す持病だから、ある意味厄災と称しても良いのかもしれない。
嫉妬の魔女の件があるから、案陰そう表現をしたりはしないが。
「おど? おどってーと……、え~~……」
「その辺りは、ベアトリスさんの所でちょっとだけど勉強してたでしょ? もう忘れた?」
「う゛……、しょ、しょーがねーじゃん……。まだまだ、文字覚えてる最中の身なんだし」
「ハッ。元々常識を疑ってたレベルだから今更バルスがどれ程無知だったとしても聞き流せる、と言うものね。浅慮浅薄が今まさにその身に溢れているわ」
「全く聞き流せてねーし! 普通に毒吐いてるし! 俺はこれからベンキョーして賢くなって、エミリアたんの隣に立つのっ!! 大器晩成型なのっ!!」
「ハッ」
「うわっ! 斬って捨てられた!!」
面白おかしくやり取りしている面子を見て、眉間に皺を寄せつつ唸ってるベアトリスが助け舟を出した。
「全く、お前達に任せると話がちっとも進まないかしら。はぁ……まぁ、知らないのはそこのバカだけだけど、知らなかったら知らなかったでうるさくしそうだから、仕様がなくベティが教えてやるのよ」
「それ全然感謝出来ねぇよ! せめて名前で呼んでくれっての!! ――――って一応ツッコミつつ、話を先に進めたいのは俺も同じだから、よろしくどーぞ」
盛大に駄目だししたつもりなのに、もう受け入れたのか何なのか、変な笑顔で両手を差し出すスバルに、違う意味で皺がベアトリスの広いおでこに出来そうだった。
「イラっとするかしらっ!! ……はぁ」
でも、スバルのペースに巻き込まれて、百害あって一利なしなのは明白、と言う事でため息を1つして説明をする。
「オドは魔力の器。ゲートから取り込んだマナを溜め込む気管かしら。つまり、優れたオド程、多くのマナを扱えるかしら。でもどんな器にも容量の限界があるのよ」
ベアトリスが説明していく。
その間スバルは、あっ、そう言えば。それ知ってるかも、と茶々を入れてきたが、構わず続けた。
そして、ロズワールもベアトリスから繋げる形で講釈する。
「限界を迎えたオドからはマナが溢れ出てしまうかぁーらね? その前に発散させる必要がある、って事だーぁよ?」
「そういう意味じゃ、ニンゲンにしては優秀な分類のお前にも発魔期があっても不思議じゃないかしら。でも、見たところそれは感じられないのよ。クルルも含めて。―――お前とクルル。一体どう云う構造で、どういう理屈、原理なのか、今更ながら好奇心が湧いてきたかしら」
オドの講釈から、明かに資質と言う意味では一級品であるツカサ。
大精霊の分類で、今回の騒動を防ぐ事は出来なかったものの、異常な力を持つクルル。
この2人にも起こりえる話だ。そして発魔期に関する知識も無かったから上手く対処していた、とも思えない。
戦いで発散出来ていた、と言う事もあるにはあるが、魔獣騒動からそれなりに平和な時間が続いていたのでパックの様に起こっても不思議じゃなかったのだが、クルルも問題ない、と言っていた。
知らない知識を欲するベアトリス。……それは彼女の親の影響あっての事……だったりするが、それはまた別の話。
「きゅきゅ?」
「どう、って言われても……。そもそもオドを意識したり知覚できたりもしませんし、意識して対処してるってわけでもないですよ。結構酷使してきたので、それが良い具合に発散されたかもしれませんが……調べるのにも限界があるとも思います。誰よりパックが一番よく知ってるのでは?」
ツカサが倒れた時、身体のマナを直接診たのはパックだ。それでいて実を言えばベアトリスも診ている。
その2人が解らない以上、どうしようもない、と言うのが結論だ。
パックが此処までな影響を周囲に及ぼしているのを見ると、今後自分にも――――――と不安にならないか? と言われれば不安に思う。
でも、今はどうしようもないから、その時になって考える……としている。
少なくとも、秘密裏に事を済ませよう、と言うのはムリだという事が解ってるのも大きなメリットだ。
「なるほど。つーまり、ツカサ君の身体をよぉ~~く、ふかぁ~~~く、調べてみれば。その特異性をもっと知る事が出来るかもしれない。ツカサ君にとっても己を知るという事は悪い事でもない筈だーぁしね? ここは1つ、ラムに調べさせてみようかーぁな?」
「はい。ご命令とあらば、この命に代えましても、ラムは責務を全う致します」
「……ん? え?」
何だかロズワールはいつも以上にその道化具合に磨きがかかった様に表情を歪ませて笑い、ラムはラムでいつもの仕事以上な気合が面に現れていて、そして何よりも頬が赤く染まっていってる感じもする。
抑えられない情熱? をこの極寒な部屋の中に発生させたのか、魔法で温かくしているツカサよりも遥かにラムの方が熱を帯びた。
これは、ラムの発魔期―――――いや、どちらかと言えば発じょ………
「と言う訳でツカサ。あなたの身体を隅から隅まで、ラムの手で調べさせて貰うわ。これは仕方の無い事よ。ロズワール様の命令をラムは全うします」
「え、い、いや、その、なにがと言う訳? と言うかなんか怖い……よ? ラム。何でそんな話に? あれ?」
「今更気にする事無いし、恥ずかしがる事も無いわ。もう既にツカサの身体はラムは見ているのだから」
その後、ラムの手により、ア―――――ッッ、な事があったとか、無かったとか……。