Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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寒さを凌げっ!

 

 

「そろそろ、娘の情操教育に悪いと思うから、その辺にして貰いたいんだけどね、ツカサ」

「えええ!! 俺が望んでやってるみたいな事言わないで!!」

 

 

ラムに押し倒されそうになる寸前の所で、ふよふよ~と普段よりはゆっくりゆったり空中遊泳しながら傍にやってきたパック。

何処か、ニヤニヤ~と表情を緩ませていた様にも思えるが、やっぱりエミリアには見せられない、と言う親心の方が勝ってるので、止めに入った形なのだろう。

その表情は、エミリアが見てなければOK、とでもいうのだろうか。

 

 

「と言う訳で、ロズワール。話も先に進めたいし」

「まぁ、そうですねーぇ。ラーム」

 

 

パックに言われた時は止まってなかったラム。

その手の動きがどことなくヤラシさが見えていたので、止められない止まらない~状態だったが、流石にロズワールに言われたともなれば聞かない訳にはいかない。

 

淀みない、スムーズな動きで元の定位置に戻ると。

 

 

「はい、ロズワール様」

 

 

まるで、何事も無かったかの様に一礼した。

 

 

「ツカサ君の調査(・・)は、また別の機会で、と言う訳でどうかねーぇ? 流石のラムも皆が見てる状態で、とはいかないだろう?」

「いいえ。ロズワール様のご命令とあらば、どのような事でも。そして、ご命令通り逢瀬(ちょうさ)は別の機会に致します」

 

 

と言う訳で、ツカサは捕食される? 前に離された。

 

 

「兄弟……、次に会う時は気を付けとけよ? その、処女(いろいろ)喪失しないようにな。後ろの穴注意、だぜ」

「変な事言うなっっ!!」

 

 

何処か心配している様で、それでいてやっぱり楽しんでる様子、加えて生々しいR18なシーンを面前で繰り広げられるかもしれないという、男の子な部分なちょっとした期待。

スバルも色んな意味で大変だったのだ。

 

兄弟と言う程信じているし、信用しているし、信頼しているツカサと性格や口の悪さはさておき、間違いなくこの世界に来ても五指に入るであろう美少女のラムの逢引……。

 

ちょっぴり想像してしまった事くらいは許して貰いたい。

ツカサが重ねる相手がエミリアだった場合は全力で阻止する気概は絶対に持ってるので。

 

 

———と、誰に咎められるわけでもないのに、自己弁護するスバルだった。

 

 

 

 

「え? え? じょうそう教育ってどういう教育? 私、覚えなきゃいけない事はどんなことでも覚えるよ?」

「だーーーめっ!! 情操教育は大切だけど、兄弟とラムのヤツは天使なエミリアたんが覚えちゃダメなヤツですっ! 今はもっと他に大切なお話あるでしょっ!?」

「???」

 

 

 

パックに止められ、スバルが言ってた事が気になり、更に若干赤らめてるラムやいつも見ないツカサの様子から更に興味をそそられる事になったエミリアだが……、取り合えず止められたのでそれ以上は言わない様にした。

 

何より―――。

 

 

「ぁ……、そ、そうよね。パックの発魔期の事が、あるもんね。ごめんね……」

「わ~~~お!! 別にエミリアたんを責めてる訳じゃないのよ!! それとこれとは話が別なの。だから、そこん所注意しといて!!」

 

 

スバルは慌てて落ち込むエミリアを宥めようとし、そして視線をベアトリスに向ける。

 

 

「ってか、ベア子! 話がいつまでも進まない、っつっといて、めっちゃ脱線させてんのお前だろー!! ほらほらほらほら、話元に戻してどーぞ!」

「ふんっ! ベティーにとってもお前の無知を補完する事なんかより、あの男の事を知る方がよっぽど為になる、ってものなのよ! それくらい知っておくかしら!!」

「なにおーー!」

 

 

ベアトリスと勢いで口喧嘩する事によって、話を逸らせようというスバル高等技術だ。

取り合えず、それが功を成した様で、ベアトリスも半ば呆れ果てながらため息を吐き。

 

 

「オドの説明、だったかしら」

 

 

何処まで話したか……、とベアトリスは腕を組んで少し考えて―――続ける。

 

 

「にーちゃ程のオド、マナを溜め込む器であったとしても、容量には限界ってものがあるのよ。その溢れ出るマナを発散させているのが今の状況。発魔期と呼ばれるものかしら」

 

 

取り合えず話は元に戻ってくれたのをヨシ、としつつスバルは自分なりに掻い摘んで解釈をする。

発情期———ではなく、発魔期について。

 

 

「成る程、つまりお腹が爆発する前に出す、って感じで……」

 

 

 

一息ついたベアトリスは、改めてレムに入れて貰った紅茶を口に運び―――。

 

 

「だから便秘みたいなもんか」

「ぶーーーーっっ!!」

 

 

スバルのトンデモ解答を聞いて盛大に口から吐き出した。

 

 

「クルルガード」

「きゅきゅきゅっ!」

 

 

口から噴射される紅茶が眼前に迫ってくるのが分かったので、色々あって正直ツカサ自身もグチャグチャしていたのだが、その辺りはクルルを使ってガード。

クルル自身も、風を使って水滴の一粒も残さず巻き上げて、ラムが用意したゴミ箱の中にインサート。

 

 

「おお~~、なんか芸術的。紅茶が空中で凍ってて、ダイアモンドダストオブ紅茶ってか?良かったな、ベア子。お前の吹き出しシーンを綺麗に、見事に回収してくれたぞ」

「わけわかんない事言うんじゃないかしら! 誰のせいだと思ってるのよ。言い方ってヤツを考えるかしら!!」

 

 

スバルに盛大に文句を言うベアトリスだったが、取り合えずツカサはクルルを押し付けて何とかあやすと。

 

 

「スバルの例え話は俺もどうかと思うけど、取り合えずこの状況の原因は解った。パックのオドが限界で溢れ出たマナが周囲を凍結させてる。氷の系譜で良かったよね。これが火を扱う大精霊(・・・・・・・)だったら、ここら一帯が火の海になってたんじゃないかな?」

「まぁ……そうかもしれないね」

 

 

ツカサの火を扱う大精霊、と言う話を聞いて、一瞬眉を潜めた。

それを扱う大精霊の事を、パックは勿論、エミリアも知っているから。

 

精霊とエミリアの絆の物語の序章で、その存在と対峙したから当然だ。

でも、それをツカサが知る訳もない、と少し首を振った。

 

 

「随分とまぁ、はた迷惑な便秘解消法だな、オイ」

「う……、黙っててごめんなさい……」

「いや、エミリアたん責めてる訳じゃないのよ? つーか、子の責任は親のもの、親の責任も親のもの、なんだからエミリアたんが謝る必要なんて無いから! それよか、この発情期……、じゃなく、発魔期についてもっと解説して貰いたい、って気持ちの方が強い」

 

 

スバルは、意気消沈し、今にも泣きそうな顔をしてるエミリアを宥める為に必死に言葉を取り繕う。

 

 

「例えば、ホラ。これ定期的に行われるイベントだったりするの? とか? 今までどうしてたの~って」

「え、えと。年に2回くらいは……。今まではエリオール大森林で皆に迷惑掛からない場所だったから……って、今は思ってます……」

「うん、森でリアと暮らしてた時は定期的に発散してたし、特に問題なかったからね~。でも今はこっちに来て、ボクも大人しくしてたからその反動が出ちゃったんだよ。てへへ☆」

「てへへ、じゃねーよ。全く。……魔力の発散が必要な事だってことは理解したし、特に問題ねぇ。……でも」

 

 

スバルは周囲を見渡した。

確かにここ数日で一気に冷え込んだ。

掃除をする為に水桶に張った水はあっという間にシャーベット化するし、厚着してたのに異様な寒さで夜は凍えた。

 

だが、命の危機を感じたのはたった1日だ。

 

 

「この2~3日で急激に影響強まったのは何でだ? 加減してたんじゃねーのか?」

「……その辺の答えは、多分コイツも絡んでくる、って思う」

 

 

スバルの疑問に対して、それの答えを求める様に、ベアトリスの元で戯れてるクルルに、ツカサは視線を送る。

 

 

「王都での戦いで、パックを助けた時の応用、マナを吸収しようとでもしたんじゃないのか? クルル。んで、吸収する方が譲渡するより遥かに大変で、思わず――――って感じ?」

「きゅきゅきゅっ!」

「そのとーり、じゃないよ、バカ! つーか、俺にもそれ連絡くれてても良かったじゃないか」

 

 

ツカサの言い分も最もだ。

一緒に居たら何か出来るかはわからないが、少なくともクルルが何度か時間遡行をして調整をしていた様に、ツカサにもそれは出来るから、もっと適度にやらせる事だって出来た筈。

クルルが時間遡行を使うのは、恐らく緊急事態くらいだろう。周りに気を遣う~なんて事をするキャラじゃない筈だから。

 

そう言うとパックが手を振った。

 

 

「ああ、その辺はホラ。あまりクルルには怒らないで上げてよ。ボクが秘密裏に、ってクルルにお願いしたんだ。ツカサは働き過ぎで、それに全然恩も返せてないのに、ってリアが気にしちゃったからね。後は、少しずつやってたんだけど、クルルも楽しそうだったし、ボクもついつい、もっともっとイケルっ! 皆気付いてないし、チョロいチョロい! もっとカモンカモンっ! って感じでやってたら、こうなっちゃって」

 

 

大変だったのは解るし、結局マナが周囲に溢れて銀世界になっちゃったのも理解したんだが……、やっぱり想像の通りだ。杜撰なマナ管理、アソビでマナ管理した結果がコレ。

間違いなくクルルを操作した方が皆に迷惑かけなかったのに、と頭を抱える。

 

ただ、エミリアの気持ちも解るので、ツカサはそれ以上は何も言わず苦笑いだけをして頷いた。

 

 

「仕事雑だろそれ! 結局兄弟に迷惑かけちゃってるじゃねーの!」

「ぅぅぅ……… ご、ごめんなさい……」

「あああ!! ごめんごめん、エミリアたん!」

 

 

でもスバルがちゃっかりエミリアの地雷踏んじゃって、また落ち込むのだった。

 

 

「これで解ったかしら?」

 

 

やれやれ、と改めて紅茶を啜るベアトリスが続ける。

 

 

「発魔期は、にーちゃ程の大精霊なら切っても切り離せない問題なのよ。同じ存在であるクルルの手を借りてもこうなってしまうのであれば、もう必然と言って然るべきかしら」

 

 

どうしようもない天災の様なモノ。

ヒトは疎か、大精霊でさえも避けて通れぬ道、とベアトリスは断言する。

 

 

「このクルルとにーちゃ、2人の愛くるしい存在を前にすれば、そんなものは些細な問題、と認識するが良いかし―――」

 

 

そして、最後まで言い切る事は出来なかった。

何故なら、底冷えしてきたのか、或いは我慢の限界だったのか、ベアトリスの鼻から一筋の体液が流れ出てきた……。

どうにか踏ん張って【ズビビ~】と引き戻す。

 

 

「お前も無理してんじゃん! 鼻啜ってんじゃん!! ってか、読めたぞ。そもそもクルルでどうにかしよう、って言いだしたのはお前だな? ベアトリス。んでもって、クルルの力でもどうにもならなかったから、今度は慌てて結界を張ったりして小細工した、と。正直に言えよ、ここまで状況証拠が揃ってりゃ、次はクライマックスの自白シーンだ」

「ちーんっっ!! ………何の事かさっぱり解らないかしら」

「鼻かんでる~~」

 

 

取り合えず、事情は分かった。

分かったからこそ、安堵もする。

 

 

「取り合えず、村の皆が無事だって分かっただけでも十分だよ。この範囲内だけに限るって言うなら不幸中の幸いだけど、安心だ」

「欠片も安心できねーんですけど!」

「でも、クルルも抑えきれないんじゃ、どうしようもないよスバル。ただでさえ、抑えてる状態でこれ何だから。極寒地に野宿しに来た、って思ってマエムキに」

「危険満載じゃねぇか!! 冬将軍も真っ青だよ!」

 

 

残念ながらスバルはただの人間。

いや、厄介極まる人間だ。

超寒波の耐性は無く、このままだと凍死する危険性・可能性大。

 

 

「でも、ある程度発散出来たら収まるのが、発魔期って事だから。案外直ぐかもしれないよ? その辺りはどうですか、エミリアさん」

「えと、その……、うん。ツカサの言う通り、あとほんのすこ~しだと思うの。そうよね? パック」

 

 

願う様にパックに聞くエミリア。

だが、その淡い期待は……。

 

 

「うん。そうだね~。後2日くらいこのペースのままやらせて貰えればバッチリだよ。ツカサとクルルには苦労駆けちゃうけど、もうちょっと付き合ってもらえないかにゃ~?」

「まぁ、仕方ないね。元々、クルル(こいつ)の事はコキ使ってくれて良いって認識だから、俺の事は気にしないで良いよ」

 

 

イイ感じで話がまとまりそう――――な訳がない。

 

 

 

「まてまてまて~~! このままのペースでやられたら明日の朝には、俺の凍死体が転がってるよ! それに、ラムだって絶対ヤベーって! 兄弟って湯たんぽなけりゃ、絶対にアウトだ! 賭けたって良いね! だろ? ラム。寒さに強い! な訳ないもんな? 今朝だって寒さを理由に寝坊しようとしてただろ!?」

 

 

 

スバルの問いに対し、ラムは鼻で笑う。

 

 

「ハッ、愚問ね。このラムがツカサから離れるとでも思ってるのかしら」

「ほら駄目なんじゃねーか!!」

 

 

この超寒波を乗り越えれる。

それは勿論ツカサ在りきな話。

四六時中ひっついてくっついてゴールインする気満々で、心なしか、寒さのせいじゃない。ラムの表情がその桃色髪並に赤くなってる気がしてきた。

 

 

「てか、ずーるーいー! 俺も兄弟式の湯たんぽプリーズ!」

「ぷりぃず?」

「ああ、頂戴! 下さい! お願いします! の意。この山場を抜ける為にも兄弟の力が必要なんですよ、先生たのんます」

 

 

つまり、ツカサの身体をスバルも求めている、と言う構図になる。

それを想像したベアトリスは、寒さのせいじゃないだろう青くなった表情をスバルに向けた。

 

 

「オマエ、その娘の色香に惑わされただけでなく、男色の気があるなんて、度し難い所の話じゃないかしら。広く害成す存在と言われても仕方がないのよ。絵的にも存在的にも」

「すげーーー全否定された!! ちょっとまてまて!! だから、俺はエミリアたん一筋なの!! でも、ほら、こう―――――湯たんぽをマナに乗せて、俺の身体に打ち放ち、こう……適度な外気温を確保したり、空気の層を作ったり!!」

「……そんな器用な事出来ないよ。ロズワールさんは出来そうですか? 俺はムリです」

 

 

ちらり、とクルルの方を見ても首を横に振る。

自分で制御して、自分の周囲だけ~~と言うのならまだしも、別のモノに付与するのは非常に難しい所の話じゃない。攻撃属性を持たせるのは、風の剣をスバルに渡す事が出来たので実証済みと言えばそうだが、風と火とでは扱いの難しさが段違い。

 

火が危ないのは、村の子供でも知ってる事だから。

 

 

「それは扱いが難しいねーぇ。ちょっとでも力加減を間違えればスバル君は、ぼんっ! だし、コントロールをミスすれば、それでもボンっ。……いーやぁ、或いはボワッ! かもしれないねーぇ」

「ぼんっ! もぼわっ! も怖すぎるよ! 凍死体か焼死体かの二択とか、何処の地獄だ!? 極寒と焦熱か!?」

 

 

スバルが盛大にブーイングを飛ばす。

だから、ツカサも改めて首を横に振った。

 

 

「王国筆頭魔導士であるロズワールさんを以てしても難しいんだ。だから、一番現実的なのは、スバルが頑張って思いっきり着込んで、暖を取って寒さをしのぐ―――が一番じゃないかな?」

「解ってると思うけど、もし死んだら10回は殺すわ。そのつもりで」

「姉様こえーーよ!!! いや、マジで冗談抜きでそれしか無いか……。超える自信マジでないけど。……っとと、着込むっていや1つ」

 

 

何かを思い出したのか、スバルはエミリアの方を見た。

まだ申し訳なさそうに顔を俯かせている彼女に、少しでも明るくなってもらえれば―――と思ったのか、或いはただの欲、性欲を持て余し過ぎたのか。

 

 

「エミリアたんはその格好、そんな薄着で寒くないの~? 冬服のエミリアたん見たい~~!」

 

 

エミリアの容姿について、だ。

無論薄着の方が色々とふくよか、豊満に実ってるたわわを拝めて、ありがたや~~~! なのだが、それでもそれ以上に心配になる。エミリアの柔肌が凍傷にでもなったら大変だから。

そして何よりもイメチェンしたエミリアを見たい、と言うのが8割。

 

 

つまり、欲求を抑えられない後者がスバル。

でも、そんな俗世なスバルに対してもエミリアは真摯に答える。

 

 

「あ、あのね。私はパックと契約……してるでしょ? だから、パックの魔法から受ける影響を調整できるの。………なので」

 

 

両手の人差し指をそれぞれ合わせて……再び沈む。

 

 

「この寒さでも……大丈夫なのです」

 

 

皆がこんなに大変な目に遭ってるのに、その元凶(とは少し違うが)の自分が何も問題ない現実に押しつぶされそうになってしまっていた。

 

 

「エミリアさんは全然悪くないし、パックの方も仕方ないんだし、そこまで気落ちしなくて大丈夫だから!」

 

 

あまりの沈みように、ツカサも慌ててフォローに入った。スバルではないが、エミリアの消沈っぷりを目の当たりにしたら、庇ってあげたくなる気持ちにさせられるから。

 

 

「それにラムは……まぁ、大丈夫だと思うけど、レムはどう? 大丈夫かな?」

「はい。確かに少々堪える寒さかもしれませんが、レムは問題ありません。暖かな姉様やツカサ君、何よりスバル君の傍に居れば、レムはポカポカなんです」

 

 

震えてる様子も全く噯にも出さず、直立不動で責務を全うするレムは、速攻で即答した。

大丈夫だと。

 

 

そして、当然ながらロズワールとベアトリスも……。

 

 

「ベアトリスさんは、大丈夫?」

「平気かしら。禁書庫に居れば全くを持って問題ないのよ」

 

 

今はダイニングルームに居るからだ、と言わんばかりに身体を少々小刻みに震わせるベアトリス。見た目幼子な姿だから心配になるけれども、ベアトリスも大精霊が一角。問題ないだろう。

 

 

「ロズワールさんは……まぁ、心配する方が失礼、ってものだし」

「いーぃや、ツカサ君。このわーたしを心配してくれるなーぁんて、嬉しい限りだねーぇ。とまぁ、一応言っておくと、心配は杞憂である、と答えておこう」

 

 

頭をスっ、と形式的に下げるロズワールの姿を見て、本当に大丈夫・心配皆無、であると実感できる。

 

 

「だから、ほんと。スバルだけだからさ? エミリアさん。だから、そんなに落ち込まないで。落ち込むくらいなら、ほら、発魔期を終えた後のスバルとの、でぃと? を盛大に思いっきりやってご褒美上げる~で良いと思うし」

「!!! 兄弟最高じゃん!! そうだよそうだよエミリアたんっ! 兄弟の言う通り! 悲しそうな顔してるエミリアたん見るの辛い~~! エミリアたんはEMT! だから、そんな顔せず笑って笑って。そんでもって、まぁ俺だけがヤベーのは事実は事実。だから前向きに対処法を考えようよ」

 

 

ツカサやスバルの言葉を聞いて、少なからずエミリアの表情にも光がもどる。

 

 

「それよか、兄弟の方が心配なんじゃね? 眠ってる間に、ラムに食べられちゃう~~な~~んて事があるかもよ??」

「まっさか。幾らラムでもそんな………」

 

 

振り向いてみると、ラムは速攻で顔を逸らせた。

 

——大丈夫、だよね?

 

と小首を傾げながら言っても返答無し。

それがそれで非常に怖い。

 

 

 

「とまぁ、兄弟が色々卒業する前に、娘に迷惑かけてる親の尻ぬぐいを考えようぜ――――はッッ!!」

 

 

 

ここで、スバルに天啓が舞い降りる。

誰よりも一番危険な位置だからこそ、誰よりも一番生きたい、エミリアとデートしたい、と言う気持ちが強いからこそ、回避する為に脳がフル回転したのだ。

 

 

「あれじゃん! 何も俺たちが屋敷に居る必要なかったんじゃん!! 寒さは、ベア子やクルルがどうにかしてくれてる! だから、パックが言う2日で終わるってペースでやってる間に、屋敷の外で過ごせば!!」

「流石スバル君です! レムは感服致しました!」

 

 

スバルの(自称)名案に、レムも色めき立つ。

 

 

「今の季節、本来の季節は暑くも無く、寒くも無く――――」

「スバルスバル」

「へ?」

 

 

ツカサがくい、と向ける先には大きな窓があり、曇り硝子な為外側がよく見えない。

でも、ひょいと風のマナ、テンペストを応用して外を開けてみると……。

 

 

気付かなかった。氷結地獄の中だったから、無音だと勘違いしたのか?

かなりの土砂降りで、雨音が屋敷中に響き渡っていた。

 

 

「見た感じ、当分止みそうにないかしら」

「なんで!!?」

「わぁ……まだ陽日なのに真っ黒な空……。この分じゃ野宿は無理そう」

「でも! 大丈夫だって! このくらいの雨ならテントでも張れば!!」

「……よーく見て聞いてよ。風だって拭いてるし、時折凄い音もしてるよ? テントなんて飛ばされたりしない?」

「そーもそも、この屋敷の主たる私にも野宿をしろと言いたいのかなーぁ? スバル君?」

「ロズっちは、普通に屋敷の中に居てもモーマンタイってヤツじゃん……。別に淋死するってわけじゃないだろうし……」

 

 

どうしたものか、とスバルは考える。

最悪身体的に迷惑をこうむってるのは自分だけ。だから、テントを外に張ってどうにかこうにか……とも考えられるが、魔獣騒動の件もある。また何かの事件があった時に単独だと危険だろう。

だから、ロズワールやツカサも一緒に……と考えては居たが、流石にこの大雨、嵐の中連れてくのは無理だし申し訳がない。

レムなら無条件で付いてきてくれそうだが、その間の屋敷の仕事はどうなる?

もっと言えば、スバル自身も下男。働かざる者食うべからず、だ。

 

 

「考えろ、考えろ……、こうあったかくて、ぽっかぽかで、心も身体もリフレッシュして、甘~~~いひと時—————はッッッッ!!?」

 

 

 

そして、再びスバルに天啓が舞い降りる。

 

 

「そうだそうだ!! 物理的にも心的にも、ぽっかぽっか、顔は真っ赤っか! ある! 乗り越えれる!」

「スバル、それってどんな?」

「ふっふっふ―――。それはこうだ! 屋敷中の火の魔石を全て集めて、大浴場の湯を沸かす! ―――で、2日間皆で――――――温泉大作戦ってのはどうだ!? お肌とお肌で温もり合う! 雪山でも古来からやってる神聖な儀式だぜ!! 邪な考えはないよ! ないんだよっっ!!」

「流石スバル君です! レムは感服致しました!!」

 

 

エミリアやレムの裸————を想像しなかったわけではない当然ながら。

勿論水着的なモノを着用する事は間違いないだろうけれども、それでも心と体は確実に5℃は上がる。のぼせてしまう危険性を考慮しなくちゃいけない。

 

 

「うん。良い考え……ってあれ? でも今大浴場って……」

「ヤラシイ。ラム以外の裸も見たいって想像しているのね」

「凄い誤解。節操なしじゃないし、皆の、ラムの裸、……想像してないから。……何なら、俺の方が……その、みられちゃってる、わけだし………」

 

 

ラムから理不尽気味なツッコミを受けた瞬間は、スバルの様に想像してしまった感は否めない。でも、それ以上にラムには生まれてきたままの姿を見られてしまった事に対する羞恥心がまた脳裏にフラッシュバックしてしまって、顔を赤くさせた。

ある意味、隠蓑に出来て良かったと言える。

 

 

「…………ふふ」

 

 

ラムもどことなく妖艶。

色気がむんむんと出てきそうな勢い。

 

でも、それはそれとして事実は伝えておかなければならないだろう。

 

 

「バルスの醜い獣欲が発散される事は出来ないわ」

「ものすげーー失礼な言い方だな、姉さま!! 獣欲云々はさておき、最適解にして、最高の手じゃん! 暖炉の火よりも広範囲で、屋敷中の火の魔石の力なら、そこら中から湯気が出て、サウナっぽくもなって―――――」

 

 

スバルが意気揚々と性欲を省いて説明に入るが、ラムはツカサの腕を取って立ち上がった。

 

 

 

「論より証拠よ。何故発散される事がないか、その目で確かめてみれば良いわ」

「だから発散なんか元々しねーーよ! ………うん、しねーよ……」

「声小っさ………」

「う、うるせっっ」

 

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