Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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そうだ! 雪祭りをしよう!

 

ラムにより案内されたのは大浴場。

 

 

「こ、これは―――――マヨネーズ…………?」

「はいっ! マヨラーのスバル君の為に頑張って作っている所ですっ!」

 

 

そこはどこもかしこも凍り付いていて、このままじゃ機能しないだろう……と思っていたのだが、そこはファンタジーな世界。火の魔石を利用し、温めれば必ず溶ける。何なら、火を扱う事が出来る凄いのが2人はいる。

だから大丈夫……と、意気込んで付いてきたのだが……。

 

 

「何ていうか……あれだね。マヨネーズが凍るとこうなっちゃうんだ? 匂いは……うーん、完全に冷気に閉じ込められちゃってるって感じかな。匂いは全然しない?

……寒さで鼻が効かないのかもだけど」

「ええ。だから残念ね。浴場でラムの裸体を拝むのは無理そうよ。恨むならバルスを恨みなさい。惜しいことをしたわ」

「だ、だーかーらっ、考えてないってば! ラムは一体俺の事どんな風に見てるのさ!」

 

 

普段のスバルなら、ツッコミの1つや2つ、間髪入れずにする所だったが、そうもいかない。

いちゃいちゃ(死語)している2人に気を取られる訳でもなく、ただただスバルは固まっていた。

 

確かに溶かす事は出来るだろう。

でも、その後どうしろ、と言うのだ? これは由々しき事態、トンデモナイ事態だ。

ロズワール邸下男として、掃除するにしても大変だ~~ではなく、ただこのマヨネーズの行く末を憂いている。

 

これらを処分するなんてマヨラーとしてどうなのか。

そんな罰当たりな真似が出来るというのだろうか。

 

 

そんな風に固まってるスバルに気づいたツカサは、ラムからの攻撃? を誤魔化すかの様にスバルに話しかける。

 

 

「ほら、以前スバルがマヨネーズ風呂に入った時の話、覚えてる?」

「……忘れる訳無いだろ。あんな光景。おまけにあの時の俺は死にかけてる」

 

 

返事が出来るところをみると、取り合えず、スバルは聞く耳はあったようだ。

なので、ツカサが言う以前の事件を思い返す。

 

 

予備知識も無いままに、日本人のDNAに刻まれた温泉魂を解放する様に、加えて言えばその日はマヨネーズをこの世界に降臨させて、その味を堪能出来て、世界が輝いている! と豪語する程のテンションだった事件当日。

 

この現場で輝きを放ってる湯船。

 

多分そう言う類の濁り湯だと思って飛び込んだ……結果、大変な目にあった。

 

全身に纏わりつく形容しがたい感触、理解不能な状況。

身体が上手く動かせず、油故に物凄く滑る。目も口も鼻も全て閉じられて、本当に死ぬ―――と思って一口舐めてみたら、あら不思議。自分がよーく知ってる味、何ならついさっきまで感涙しながら食べていた味とそっくり――――どころじゃなく、その味そのものだった。

 

 

「レムが頑張ってスバルの要望に応えた結果だよ。つまり、スバルの責任」

「なんでだよぉっ!! 頑張る方向性おかしいだろ!? それにあの時、レムの事叱ったしッ!??」

「『バッカじゃねぇの!?』 とか『全世界のマヨラーを冒涜したぞ!』 くらいしか言ってなかったじゃん。上手く説明しきれてないスバルが悪い」

「えええ!! マジで俺が悪いの!?」

「だって、ねぇ? レム」

 

 

くるり、とレムの方を見た。

レムは本当に解ってない、と言わんばかり。

それでいて今回は会心の出来、と言わんばかりに目を輝かせて、鬼には無い筈の尻尾や耳を嬉しそうに動かして(る様に見える)。

 

 

「はい! 前回は量が少ないから怒られてしまいまして。スバル君はマヨネーズ風呂に入らないと命の危機と、どっぷり浸からなきゃ大変な危険域、命拾い、とおっしゃってました。ですから、今度は前回以上の量のマヨネーズ風呂、に仕立てました」

 

 

この量のマヨネーズを作る労力を考えたら……涙ぐましくも思ってしまう。

それだけの愛や情熱を込めて作ってくれたのだ。

 

 

「えへへ。褒めてくれても構いませんよ?」

 

 

ニコニコ笑ってるレム。

取り合えず、ツカサもレムに笑みを向けて―――スバルの方へ。

 

 

「ね? スバルがちゃんと言わなかったのが悪い。レムは一途に頑張っただけ」

「いや、どっちかってーーと、姉様の教育の賜物だから姉様が悪い」

「ハッ。自分の不出来を他人に擦り付ける。程度の知れる男だと自ら言ってるも同然ね。言うまでも無い事だけど」

「…………」

「ん?」

 

 

ラムの毒舌。

いつものスバルなら色々と騒いだりツッコんだりの連発だった筈だが、妙に大人しい。

 

 

「あぁぁぁぁ………も、もったいない……」

「ああ、なるほど……」

 

 

このマヨネーズ風呂を前に項垂れてしまった様だ。ツッコミ等出来ないぐらいには。

 

このマヨネーズ風呂を利用する訳にはいかない。

かと言って、これを沸かして食べる気にもならない。

ちゃんとした調味料入れに入ってるマヨネーズじゃなかったら……。

エミリアやレム、ラムと言った美少女の残り湯で作ったマヨネーズ~と言うのなら、スバルも赤面もの、最大級、最強、最高級クラスのマヨネーズになっていただろうが、残念な事に、この大浴場を利用しているのは美少女たちだけじゃないのだ。

自分も利用しているし、……ツカサもそう。更に言えば……ロズワールも(当然だ)

 

野郎成分がすこぉぉぉしでも混入、異物混入している時点で、この目の前のマヨネーズは廃棄処分以外の道無しなのだ。……悲しい事に。

 

更に更に言えば、マヨネーズの汚れを落とすのは難しい……。このレベルになってきたら、ちゃんとした風呂に入れるのは一体いつになる事やら…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大浴場に居てもただただ寒いだけなので、取り合えず暖炉のあるダイニングルームへと戻ってきた。寒さも更に増して来て、兎に角暖を取ろうと毛布に包まり、暖炉の前で火に当たる。

 

 

「ぅぅぅ……、さ、寒ぃぃ……、暖炉の傍でこの寒さかよぉ……」

「ハッ。情けない。心身ともに己を高く保てば、どれだけ寒くなろうとも、平常心を保てる、と言うロズワール様の有難い教えを受けて、何も成長しないなんて。ハッ。憐れね」

「一度に二度の『ハッ!』御馳走さんです! それよか兄弟と嬉し恥ずかし、サービスシーン満載な行動してるねーさまに言われたくねぇよ!! なんなら、兄弟からちっと離れてみてくれや!! ほんのちっとでも良いから!」

「ハッ。何を言っているの。これは日頃のツカサの働きを、ラムと言う至上の美少女の抱擁を持って、応えているだけに過ぎないわ。つまり、ツカサへの代価。この状況とは何にも――――」

 

 

ここでツカサがひょい、っと素早く離れてみた。

すると、これまでの暖が取れていた空気の層から外に出てしまうラム。

一瞬で身体が震えて、足先から頭のてっぺんまで震えると即座にツカサの方へと駆け寄った。

 

 

「……………」

 

 

そこには鬼が、否、鬼と阿修羅の複合体? がいた……。

殺気だけで、ここまで具現化させてしまうとは……。

 

 

「ご、ごめん、ほんとごめん。ちょっぴり揶揄ってみたかっただけで………」

「……………」

「ぅ」

 

 

なので、早々に謝罪をするツカサ。

ラムはと言うと、再び暖を取る事が出来ると同時に、外の冷気にも負けない程の極寒の視線をツカサに浴びせ続ける。

暖を取った事で鬼阿修羅は姿を消した様だが、それでもその視線は非常に痛い。

 

ツカサもラムの視線を受けて、数秒前の自分を殴りたくなる気持ちだ。今、この瞬間も下手な言い訳やら揶揄ったりやらは絶対してはいけない、と警笛が頭の中で鳴り響いていた。

 

 

「許さないわ。このラムを虚仮にしたのよ。相応の報いを受けるべきね」

「……ゴメンなさい」

 

「めっちゃ必死じゃん……。ったく、ニンゲン湯たんぽ持ってるラムちーはほんと羨ましいこった!! あああああ、さむいさむいさむいさむいさむいさむい……」

 

 

スバルもスバルで、苦言の1つでもラムに言ってやろうと思ったのだが……、触らぬ鬼に祟りなし、と言う事で特に何も言わず。

取り合えず2人のメロドラマを見せられて、体温が少々上がる想いではあるが、もうその次元で解決できる寒さじゃなくなってきた。

 

兎に角火を、火を身体に当ててどうにか体内から温かくしないと死に直結してしまう。

 

 

「あっはは。ほんとツカサってば面白いしカワイイよね。ボクの冷気を防いじゃってるのも流石だけどさ、ラムとのやり取り見てたら、こっちまで微笑ましくなっちゃうよ~~。気、抜いちゃってこのままマナぜ~~んぶ出しちゃいそう」

「出しちゃ駄目です!! 何考えてんだよバカ」

 

 

後ろでは、可愛らしい、愛らしい言葉を言っているな~~と思いきや、まさかの発言にぎょっとするスバル。

まさに死神。死神がそのまま鎌を振り上げて、魂を刈ってくる。そんなのスバルが了承する訳もない。

心なしか、吹雪が発生した様な気もしなくもない。

 

 

「つーか、俺に影響のない所でやってくれよ! 例えば屋敷の外! 外でテキトーに大魔法ぶっ放す! とかできねーのか!? ほら、大空に向かって……ハァァァァ!! みたいな!」

 

 

屋敷の中でちびちびと行ってるから、じわじわと木綿で首を絞め続けられてる様な苦悩を味わってしまうのだ。

だから、この際一気にドカンッ! と行ってもらいたいのがスバルの願い―――だったが。

 

 

「へぇ~、つまりキミはぼくにくれる、って言うのかい?」

 

 

パックはニコニコと笑いながら……軈て、歯を剥き出しに、目を鋭くさせ、凍てつく殺気を剥き出しにして改めてスバルに告げた。

 

 

 

 

 

 

「この世界を滅ぼす――――滅亡許可書を」

「あげねーーけど!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

全力で拒否した。

つまり、そういう事らしい。

パックが全力で空に放ったからと言って、自分が大丈夫な訳が無い、と。

世界を担保にしているところを見ると…………。

 

 

「臨界点だからって、核兵器空にぶっ放せ! って言ってる様なもん、ってことかよ……。メルトダウンだよ。真っ青だよ。生き残れる自信皆無だよ」

 

 

間違いなく、傍に居る自分もアウト。平気そうなのは自分以外の皆さんだけど、ツカサがもれなく道連れになってしまうので、その案は絶対に却下される。ラムがまさに鬼になる。

 

 

「あはは。冗談だよぉ。そんな事したらリアに叱られちゃうしね」

「叱られるからやらねぇって答え結構怖いんだけど!?? エミリアたんが天使でマジ良かった! マジ、EMT!」

 

 

エミリアが世界征服~なんて考えだしたらパックはあっと言う間に世界ぶっ壊しちゃいそうだ、って事だから。

 

 

「そんな事態になったら、王国側だって黙ってないだろうし。……嫌だよ。そんな戦争みたいなの起こさないでよ」

「……兄弟、よくそれで話したり出来るよね。それ息出来てんの?」

 

 

ラムにしがみ付かれている。何なら顔にまで埋もれてる。

なのに、ふがふがっっ! って、ギャグ漫画みたいな台詞じゃなくて、ちゃんとした声が聞こえてくるのは何故でしょうか?

 

「そして何より――――う、羨ましくなんか、ないんだからねっ! エミリアたんにそれしてもらいたい!! なんて思ってないんだからねっ!!」

「………なんだ。スバル結構余裕じゃん」

「ツカサもね。ラムが此処までしてるというのに」

「……………」

 

 

ラムはちらり、とツカサの顔を見た。

どう見ても、何処からどう見ても赤く染まってるのが分かる。ラム自身も確信犯。スバルに絡んだのもどうにかこうにか逸らせようと、平常心でいようとしている心の現れ。

何だか楽しい。間違いなくドがつくS属性なラムは、このまま暫く様子を伺いつつ、包容力? を徐々に強めていくのだった。

 

 

「ふふふっ。レムも嬉しくなってきます」

 

 

そんな(ラム)の様子をしっかりと共感覚で解っている(レム)

流石に、スバルに同じ様な事は出来ないが、今のスバルの様子を、一挙一動の全てを脳内に収めよう。そして少しだけ、ほんの少しだけ……妄想の中で至福を得ようとするのだった。

 

 

 

 

「ぅぅぅぅ~~~さむむ……ってかよぉ。この発情期……じゃなく、発魔期って精霊だけに起こる事なのか? ロズっちやベア子は?」

 

 

どうにか寒さを紛らわせる為にあれやこれやと考えては口に出すスバル。

そうでもしないと、雪山で遭難したノリで眠くなって永眠して戻ってツカサぼろぼろ、ラムにぼこぼこ、な未来しか見えないから。

 

 

「ワタシの場合、日常的に魔力を使って調整しているからねーぇ。以前までのお勤めはツカサ君に任せて以来、マナの全体使用量は減っちゃったけれど、オドには常に余裕を持ってるよーぉ」

「おー……成る程。ってか、ラムちー姉様? ひょっとして男とっかひっかえ……あべしぃっっ!!?」

 

 

ロズワールがツカサに譲った発言を聞いて、ラムはひょっとして交代交代でロズワールとツカサを……と邪な考えを持ってスバルはラムに聞こうとしたのだが、有無を言わせない風のマナを使った魔法フーラ(撲殺ver)でスバルをぶっ飛ばした。

 

 

「変な事言わないで。ぶっ飛ばすわよ」

「ぶっ飛ばしてから言うんじゃねーよ!! つか寒い!! 寒い寒い寒い!!!」

 

 

暖炉からぶっ飛ばされて、冷気100%な場所に。おまけに毛布も飛んだので、半ば半泣きになりながらも必死に、懸命に定位置へと戻った。

 

 

「べ、ベティーも似たようなもんかしらぁ。禁書庫と扉渡り、あ~~つ、ついでに言うと、メイド姉の様に口やかましい、さむいさむいわめく情けないニンゲンをぶっ飛ばすのにもや、やく、立ってるのよ」

「人をサンドバッグみてーに言うなよなっ! つーか、ベア子も寒すぎてちゃんと舌回ってねぇじゃん!」

「――――つーん」

 

 

ベアトリスも見た通り、いっぱいいっぱいな様子。

パックの事が大好きで大好きでたまらない彼女……でも、流石に極寒の中、何でもないを装うのは難しい様だ。

 

 

「はぁ、かわいいかわいいベア子は、とりあえず置いといて」

「む―――!!」

 

 

切って捨てられた。

それもスバルに。

思わず怒りそうだったベアトリスだが……寒いので、無かった事にした。

 

ちらり、と今度はレムとエミリアの方を向くと、レムは直ぐに左右に首を振る。

 

 

「発魔期が発生する程の強力な資質は、それこそ限られた方だけなので」

「私も、魔法使いとしてはあんまり見たいで、だから発魔期とは無縁なの……あ、で、でもパックの事で経験は豊富なの! だから今回はゴメンなさい……。反省してます」

「いや、今日のエミリアたん自虐ネタヤバいよぉ。そんなエミリアたんもプリティーだけど、笑ってるエミリアたんの方が良いから」

 

 

気にしないで、とスバルも言っている。

ツカサだって時折フォローをしている。

 

だけど、エミリアは意気消沈から昇って来ない。

それ程までに責任を感じているのだろう。口ぶりから察するにある程度の自信もあったのかもしれない。それが打ち砕かれてしまったので、余計に気落ちしていると推察できる。

 

 

「ん……。パックはここ最近で効率よくマナ消費出来たのってあった? このままじゃ、責任感の強いエミリアさんが可哀想だ」

「大賛成。俺も参考にしたい」

「ん~~~、2人ともリアの事心配してくれて、ほんとありがとね~~。だから、当事者としてボクもちゃんと協力しなきゃ! ん~~~~~~~~っと、最近じゃね……」

 

 

パックは暫く考える。

屋敷での騒動は大体がスバル・ツカサ・ラム・レム・最後にロズワールで解決したから、あの騒動……、魔獣騒動に関してはパックはノータッチだ。

つまり、それ以前の話になってくるわけだから、スバルもツカサも知らない……筈だったんだけど。

 

 

「王都で黒い女の子と戦った時かな? だってほら。マナ切れしちゃったくらいだし?」

 

 

パックの説明を聞いて、ゲンナリするのはツカサだ。

 

 

「全然知ってたよ、心当たりあるどころか、俺も当事者だったよ……。頬染めながら腸腸言ってくる人は駄目な方向で」

「右に同じだよ! あんな物騒な相手もう一度連れてこい、って言ったって無理だから! 俺、実際腹割かれちゃって大変だったから! 凍死か腸かってどんな究極な二択だよ!!」

「いや、別に来ても腸くれてあげるつもりは毛頭ないからね? 凍死もさせるつもり無いよ。いよいよ駄目なら冷凍保存してどうにか超えさせてあげよう、って思ってるから。それとあの異常者も流石に無謀な突撃はしてこないでしょ。今いるメンバーを考えても」

「いやいや、真面目な答えを待ってたわけじゃねーからな。解ってても、トラウマってのは拭えないからトラウマって言うの! つか、冷凍保存の件まだ生きてたの!?? それも絶対ダメッッ!!」

 

 

以前、スバルがコロコロポコポコ死ぬもんだから多大なるダメージをツカサが負ってしまっただから、これ以上死ぬのなら、冷凍保存して封印して逃げる~とツカサは言っていたのだ。……本気じゃないとは思うが。

 

 

「う~ん、後は森にリアを迎えに来たロズワールが1番かなぁ? 恥ずかしいけど、随分大騒ぎしちゃった気がするしね?」

「あ~~ぁ、あれは確かに刺激的でした。ワタシもあれだけの魔法合戦を繰り広げたのは、人生でも初めての出来事だった、かーぁもしれませんね」

 

 

これは初耳。

どうやら、パックとロズワールは激突した事がある様だ。

以前、エミリアの故郷? と言って良いのかはわからないが、ロズワールと出会ったのは、エリオール大森林、と言う話は聞いた事があった。でも、そこでパックと戦った、と言うのは初耳だ。

 

 

「そんな事があったんですね?」

「うん……。パックもロズワールもすごーくやり過ぎて。パックなんか、変身までしちゃって大変だったの。地形がいくらか変わって、地図書き換えちゃったくらいで」

「いや、どんなのだよそれ。パックのヤツ、変身とかあるんだな。……つーわけで、強敵と書いて強敵(ともだち)作戦は却下します!」

 

 

地図書き換える程の大魔法合戦をやられた日には、この屋敷はおろか、村も全滅しかねないので当然却下。

 

 

「えぇ~~! 今回はほら! ツカサだっているんだよ? 三つ巴でもっともっと面白い事になりそうじゃんっっ!! どっちの勢力に彼が加勢するか? で、ボクだって絶対危なくなりそうだから、今後危機感持って戦えるかもなのに~~?」

「シレっと兄弟まで抱き込もうとしない!! そもそもケンカで地形変えないの! 伊能忠敬に謝れ!」

「タダタカさん、ごめんなさーーーい。これで良い?」

「あのー……、俺、そんなの参加しないからね? 巻き込まれてるだけで、基本戦いが好きだって訳じゃないし。必要に迫られて、だから。後、そのただ、たか? って誰?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、エミリア・スバル・レムの3人は薪の準備。

火を絶やさない様にする為には必要な事だ。

そして、ラム・ツカサ・ベアトリス・ロズワール・パックは火の番。

 

燃やすモノが有っても、火種が消えてしまってはシャレにならない。

少なくとも、火を扱える魔法使いは必要な訳で、その使い手が2人は確実にいるので。

 

 

「こうも巧みに火のマナを扱える所を見るとね。ワターァシも、王国筆頭と呼ばれて長いけーれど、ツカサ君にその称号を譲りたくなってきた、かーぁもね」

「いえいえ。そんな事無いですって。俺の場合は大体クルル(コイツ)をこき使ってるだけなので」

 

 

火の番をしているのは主にツカサだ。

時折、薪が燃え過ぎず、それでいて適温に保てる範囲で火を絶やさない様にしつつ、ついでに氷漬けにされている暖炉周囲も温めておいて、微調整に微調整を重ね続けてた。

周囲は超寒波で最悪かもしれないが、実に快適な気温、気候が生まれている様な感じだ。

勿論、こいつ、と言ってるクルルの力のおかげ。

 

 

「こういう時の為の、クルル(こいつ)ですから」

「ずーぅいぶんと辛辣に当たる様だ。その様な精霊使い、ワターぁシが知る限り、ツカサ君が初めてだーぁよ」

「………まぁ、何でそんなに? って質問はしないでくださいね。記憶が定かではないですし。……ただ、なんていうか、生理的嫌悪感に似てる感じで」

 

 

上手く言語化出来ない、自分自身の語彙力の無さを嘆きたくなる気持ちではあるが、それでもクルルとの関係性はハッキリと口に出来ない。

これは心からの本心だから、読心術を嗜む者であっても読む事は出来ないのだ。

 

 

「クルルの愛らしさを前になんたる言い草かしら!」

「まぁまぁ、ベティーも落ち着いて。ああ口では悪く言っても、ちゃんと2人は通じ合ってるってボクたちなら解るでしょ? ほら、えっと~~スバルが言ってたヤツ……。アレだよ。【ツンデレ】って言うヤツだよ」

「取り合えず、パックのそれは否定しておきます」

 

 

クルルを心の底から愛でているベアトリスは憤慨。

パックは、そんなベアトリスを諫めつつ―――読心術が効かないからって、結構テキトーな事を言ってて、ツカサがそれを全力で否定した。

 

 

「ふむ。スバル君の言ってたつんでれ……。確かに、ちょぉ~~っと違うかもねーぇ」

「ちょっとじゃないです。デレ? が有りませんから」

 

 

ぶんぶん、と頭を振って拒絶するツカサ。でも、少々加減はしている。

何故なら、自分の膝の上にいるラムに気を使ってるから。

 

 

「すぅ……すぅ……」

 

 

いつの間にやら、ツカサに抱き着いていたラムが膝枕にシフトチェンジしているのだ。

軽く頭を撫でて髪を梳いて……色々とやってるんだけど、ここで危機感を口にした。

 

 

「……うーん、ロズワールさん、雇い主、主を前にして ラムってば大丈夫なんですか? 異常気象だから幾らかは目を瞑るにしても……。その辺り、どんな感じです?」

 

 

ラムに対して苦言を……と言う気持ちは勿論あるが、それ以上に心配している。

普段からレムが主流となって屋敷の業務を行っているのだが、ここまでだらけたら如何にロズワールでも、お叱りの1つや2つ、ラムに対してあるのではないか、と思っているから。

 

ラムは、あの毒舌の切れ味から忘れそうになってしまうが、ロズワールに対しては敬愛精神を持っているのだ。ロズワールからの言葉だったらラムにとっては高威力となりうるから……心配だったりするのだ。

 

 

「……ほんっと、ツカサってば優しいよね。こんなに心読んで気持ちよく、気分よく感じるのって、物凄く久しぶり……いや、初めての事かもしれないし、本当に好ましいよ」

「ッ……」

 

 

パックの読心術を忘れていた訳ではないが、こうもストレートに心情を読み、好ましいと言われたら流石に照れてしまう。

ロズワールも少々含み笑いをしながら続けた。

 

 

「ラムは、ワターシが可愛がってる従者の1人。大精霊様と同じく、私も実に好ましい限りだねーぇ。……結論から言うと、ツカサ君。君の心配は無用だ」

「――――と言うと?」

 

 

ツカサは、ラムの頭を撫でていた手を止めて、パックからロズワールの方に視線を移した。

 

 

「ワターシが、ラムに命じているからねーぇ。レムがスバル君専属である様に、ラムはキミ専属の侍女だ。そして、自然体でキミに接する様に、と。可能な範囲内とは言ってあーるが、心を許せる相手足りえるならば、不興を買わなければ如何なる事をしても良い、とも伝えてある」

「……え、えっと、それって……」

「なぁーに。浅はかな考え、浅慮な考えと笑ってくれたまえよツカサ君。キミは白鯨を撃退し、此度王都より褒賞が得られる程の勇の者。現在は王選を控えている。……なるべく、心強い人材は手元に置いておきたい、と考えるのは至極当然の事、だーぁからねーぇ」

 

 

それを今バラしても良いのだろうか? と思わず思ってしまうが……、ツカサに関してはスバルの死に戻りの件は不動、当然として、それ以上にラムやエミリア、レムたちと一緒に居たから、アーラム村の皆とも交流をしてきたから。

今更、別の所に行きたいとは思わないし、思えないから……。

 

 

「そっ。そんなツカサだからこそロズワールは打ち明けたんだろうね。……まぁ、この子があまりにも自由にし過ぎてたら、流石に不自然だからこれ以上黙ってるのもメリット無い、って思ったのもあるかもね」

「んっふっふっふ」

「成る程……。なんというか……その、……恐縮です」

 

 

ラムを宛がってまで、引き留めようとした。

ラムとロズワールの繋がりが強固である事はツカサも解っているからこそ、恐縮し過ぎて萎縮してしまいそうになる。

 

 

あのレムとの死別の件で。選択の余地は無かったかもしれないが、信頼をくれと言って応えてくれた時点で、ラムは心を開いてくれてるとツカサ自身は思っている。

 

 

 

でも―――――だからと言って、ツカサ自身がその心に、心に入っていけるかどうかは別の話なのだ。

今も尚、燻ぶる心の中の闇が、ラムの存在が日に日に大きくなるにつれて、より濃く、深く、確かに存在する深淵の闇が晴れない限り………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時、だった。

薪の追加を取りにいっていたスバルが勢いよく中に入ってきて。

 

 

 

【第1回チキチキ ロズワール邸雪祭りの開催だ!!】

 

 

 

騒いだのは。

 

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