Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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結構長くなっちゃいましたが、この話にてメモリースノー編は終了です!m(__)mm(__)m


雪の記憶

 

 

 

「凄かったね。あの雪兎の雪像……。まさに優勝って感じだったよ」

「………まぁそうだな、すごかったな」

「?? 歯切れ悪いねスバル。(と言うか棒読み?) 人一倍はしゃぎそうな気がするんだけど、妙に大人しかったし、何かあるの?」

「べっつにー……」

 

 

 

 

第1回チキチキな雪まつりは終わりを告げた。

 

 

 

 

 

今大会の優勝は、雪兎の雪像を作った【ペトラ】に決まった。

審査員全員が盤上一致で決定だ。

 

 

その出来は、凡そ雪像とは思えない、と言うより生き物を象ったとも思えない程に細部が細かく仕上がっており、今にも動き出しそうな装いは、まるで雪に命を吹き込んだかの様だ。

でも、生き物とも思えないので命を吹き込む~と言う表現は聊か語弊がありそうだが気にしない。

 

 

因みに、見事と言うのであれば、レムとラム、そして村の子供たちが拵えた【スバル】や【ツカサ】の像も上手く出来ていると言えるのだが、更に1段階、否2段階は上だと言わざるを得ない。

ありとあらゆる部分を曲線ではなく直角に表現したあの出来、ロズワールもベタ褒めする程だ。

 

 

「ふん。バルスの要素さえなければ、だわ。このラムとレム、姉妹愛と技術を結晶させたあの像の負けは皆無だった筈よ」

「審査員がオレって解ってた癖に、オレを踏みつけた雪像作るとか、配慮無さすぎるのにも限度ってもんがあるだろっ!? どこの世界に審査員の1人にケンカ売る様なの作るってんだよ!」

「ハッ。バルスごときに売る物なんて何も無いわ。どうしても、と懇願すると言うのなら考えて上げなくもないかしらね」

「嫌ですーー!!」

 

 

毒を吐くラムだったが、真っ向から言い返すスバル。

レムの構想、頭の中ではスバルが縁の下の力持ち~と言った感じで皆を支える! をコンセプトに、巨大な力を持つツカサが敵を屠る! だったのだが、アレはどう見ても背中と頭に足が設置してる時点でそう判断するのは難しい。

どう見てもツカサがスバルを踏みつけている。百歩譲ってスバルで空を飛ぼうとしている? 場面だ。……そんな場面起こりえないが。

 

それに聞けば、ラムたっての希望で最終的なあのポーズになったのだから、レムは否定できないし、アレこそが至高の出来だと信じて疑わないので、性質が悪いのにも限度がある。悪意の塊だろう。

 

 

「でもでも、姉様は特別賞を受賞出来た訳ですし!」

「……ええ。そうね。まぁ、当然と言えば当然。その審査員はまともだっただけのこと」

 

 

そう言うと、懐から取り出したのはネックレス状にして首から下げている薄赤色の石。

まるでラムの桃色の髪の様な色合いの石で、それこそがツカサからの特別賞。

 

 

「全く、俺の優勝賞品が掠んじゃうじゃねーかよ、兄弟!」

「いや、(アレ)はクルルに完全に任せた石で、そんな大したものじゃないと思うよ? 皆で楽しく吹雪を超えようが本当の目的だし、そこまで良いのじゃなくても良いかな? って思ってたけど……、正直、あのくらいで良いのかな……? って思っちゃった程で……」

「いやいや、あんな綺麗なの殆ど宝石だから! クルルの額で光ってるヤツみたいだったから! 優勝賞品がお菓子で、審査員賞が宝石とか、どんだけの格差!? 暴動が起きかねぇぞ!?」

 

 

優勝賞品は、スバルの世界から持ってきたという【コンポタ】と言うお菓子。

そして審査員(ツカサ)賞は、スバルが言う通り宝石。

 

確かに、格差が惨い……と思わなくもないが。

 

 

「ペトラも皆、嬉しそうに楽しそうに食べてたから大丈夫大丈夫。それに……、たまたまこの賞は公にせずに授与したから、皆も何を貰ったか解らないって事になってたし」

「……まぁ、不機嫌なラムを宥める為に、やった、って感がにじみ出てたけどな」

 

 

優勝を逃したラムの様子は確かに明白だった。

私は不機嫌です。と言葉にせずともハッキリ伝わる程で、正直ツカサの賞も身内贔屓が否めないけど、ラムの機嫌が良くなったのと個別授与だった事も合わさって結果オーライなのだ。

 

 

「む~~~、私の出来もすごーく良いって思ったのに。点数が9点なんて! ベアトリスなんて7点よ? すごーく不服」

 

 

そして、直ぐ横でラムとはまた違った意味で不機嫌です! を体現しているのはエミリアだ。

3人が10点満点で採点している今回の大会。

エミリア9点、ベアトリス7点と言う事は平均3点以下な2人。

残念な出来、と言う事になる。ベアトリスも不満で不服なのか解らないが、評価後はさっさと戻ってしまった。

 

でも、ベアトリスは兎も角、あのエミリア大好き人間なスバルも辛辣な点をつける程の出来だった、と言う訳だから相当なモノだと言える。

 

 

「今回の催し者はリアとベティーにはちょっと難しかったから仕方ないよ。芸術性を追求すれば、ひょっとしたら一発逆転、が有ったかもしれないけどねぇ……」

「きゅきゅ~~」

「ってほらほら、クルルだって慰めてるし、モデルのパックだってそう言ってるんだからエミリアたんもそろそろ機嫌直して~。やっぱりほら、厳正かつ公平に、が審査の原則だからさ? 芸術性より、より被写体に似る様に作成する方がポイントが高い訳で……」

 

 

エミリアが拵えたのはパックの石像。

でも、そのパック(疑)の雪像は、とうの本人が横に並んでいても解らない程の《めい(・・)作》だった。

物凄く垂れた口と目。潰れた餅の様な顔。猫の造形とは思えない何処か別の星から来た様な生物……。似通ってるのは片耳が垂れてる部分だけ……と、失礼ながら言いたくなる。

いつもはエミリアの頭上はパックの定位置なのだけど、今はクルルがぴょこんっ、と飛び乗ってエミリアの頭を撫でている。

癒される場面で、実にほのぼのとしているのだけど、当のエミリアはまだ納得いってない様にプリプリしている。

 

 

「ええー! でもこのパック、ちょっとだけ大味かもだけど、すごーーく似てる出来だったでしょ?」

「怒るエミリアたんもかわいい~~~~けど、この件に関しては……。えっと、その辺、モデルなパックさん。コメントはどうでしょ?」

 

 

エミリアの事はなんでも愛す! となるスバル。

完全に丸投げである。

 

 

「んっん~~、リアの目にボクがどう映ってるのか怖くなっちゃうけど。アレだよ。普通の人には芸術過ぎて理解出来なかったんだと思うよね~」

「きゅっ、きゅきゅっ! きゅーきゅー!」

「クルルもまた次頑張れば良い、ってさ。今日で採点方式解ったでしょ? って。後他の人も凄かったから~って」

「そっか……。そうだよね。次頑張れば……か。うん、確かに優勝したあの子の作品も、ラムとレムの作品も凄かったもんね」

「流石パックさん、それにクルルも。まさに100点満点の回答です。……まぁ、クルルはきゅーしか言ってないから、パックの捏造って事も有りえるが」

「失礼しちゃうにゃ~。そんな訳にゃいじゃん」

「きゅんっ!」

 

 

何とかエミリアも納得? してくれてる感じがしているのでヨシとしよう。

この手の評価点は、万人が納得するようなモノではないので難しい事極まれりなのだから、エミリアにもその辺りを学んでいってもらえれば良いと思う。

 

 

「ツカサくんツカサくん」

「ん?」

 

 

そんな時、レムに呼ばれたツカサは振り返った。

そして、耳打ちする。

 

 

「姉様へのプレゼントをありがとうございます」

 

 

レムから耳打ちされたそれは、姉に対する礼の言葉だった。

でも、ツカサはこれこそちょっと不服気味。プレゼント、ではなくつかみ取ったモノだから。スバル風に言う賄賂や袖の下~と言う訳じゃない。

 

 

「いやいや、レムとラムの2人の実力だよ。こればっかりは贔屓って思われるかもしれないけど、出来はロズワールさんやムラオサ、スバルだって評価してたしね? 優勝こそ出来なかったかもだけど、十分。……でも、2人の合作だから正直2人に用意したかったんだけど、クルルが短期間じゃ無理だって文句言ってて……」

 

 

そして最も不服なのは賞品の件。

結果的にラムにだけ授与となったのがツカサにとっての不服だ。

そもそも、あの作品は姉妹の合作~と銘打っているが、殆どレムの力作。ラムは横から指示していただけ、と言う話も上がってきてるので。

 

でも、レムはそんな事は全く気にならない様で、ただただ笑顔で応える。

 

 

「いいえ。レムは姉様のあの素敵な笑顔が見れただけで十分満たされてます! それでも足りない、と思ったらスバル君の今日の寝顔で補いますよ!」

「……あ、あはははは。それは良かった……ケド、寝顔云々はスバルと交渉してね?」

「はいっ」

 

 

レムの場合、スバルを起こすという重大かつ重要な仕事を任されている為、交渉以前に道は整えられているので、無駄な事なのだ。

でも、スバルにとって良い事か? と問われれば間違いなく複雑かつ恥ずかしい事なので、一応ツカサがそう言っただけに過ぎない。

 

それに―――――。

 

 

「…………」

 

 

微笑みながらあの赤石を眺めてるラムを見たら、何だかツカサ自身もスバルと同じ様に恥ずかしくなってくるのである。

色々見られたり触られたりしてるのはお互い様なので。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の打ち上げ兼宴会。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大成功を収めたパックの発魔期対応+雪祭りを記念・祝して盛大に執り行おう! とスバルの計らいでロズワールからも許可を得て、合成な食事・ワイン等をどんどん取り出して並べた。

 

 

「ええ~~、本日はロズワール邸雪まつりにご参加、ありがとうございました! そしてお疲れ様でした!」

 

 

勿論、その音頭をとるのはスバルだ。

発案者であり、結果まで出したのだから、主役だと言って良い。

 

 

「俺もなんだかんだで楽しかった! 来年パックがまた発魔期になったら、その時はまた雪祭りを! 今度はもっと派手にやろう! ――――って事で」

 

 

スバルはグラスを高く上げて乾杯宣言。

勿論、皆それに乗って唱和した。

 

 

「カンパイ!」

【カンパ~イ!】

 

 

これは今日の大成功を記念した打ち上げ。

主も使用人も分け隔てなく、皆で1つになって盛り上がる。

 

御馳走を前に、スバルは勢いよく腹の中にかきこむ。

パックは、何故かティーカップの中で寛いでいる。どうやら、カップの中には酒が入っていて、所謂酒風呂を楽しんでる様だ。

クルルは、そんなパックの横でビスケットをサクサクサク、と小刻みに噛んで食む。幸せそうに、美味しそうに。

愛玩動物と言っても全然イケル2匹の精霊の姿は、見る者を魅了すると言って良い。

 

と言っても、目を輝かせているのは直ぐ隣のベアトリスだけなのだが。

 

 

「ラム、今日はお疲れ様~~~……って」

 

 

ツカサも、グラスを片手に、料理を皿に盛りつけつつ、ラムの所へと足を運んで……ちょっぴり絶句。

何せ、もうラムの前のテーブルには、さっき乾杯をしたばかりだというのに、空き瓶が2本程あるから。……勿論、それで終わりな訳はなく、次の酒瓶を、ワインを開ける開ける。

 

 

「ぺ、ペースが速いんじゃない? 大丈夫?」

「問題ないわ。鍛え方が違うのよ」

 

 

顔色を一切変える事の無いラムは一息でグラスの中身を飲み干した。

そして、視線でツカサに飲む様に促す。ツカサ自身は口をつけた程度だったんだけど、致し方なし、とラムに倣ってグラスの中身が半分になるくらいには飲んだ。

 

まだ飲み干してないけれど、一先ず口を離し、今度はニコリと微笑むと、ラムの空いたワイングラスを取って注ぎこむ。

 

 

「何だかんだ言って、ラムも参加してくれて凄く嬉しかった。ありがとう」

「礼を言われる様な事じゃないわ。ラム自身がラムの意思で参加をしたかった。だから参加した。それだけの事よ」

「ふふ。でも、言いたいから、だから俺の意思で勝手に言わせてもらうね?」

「……好きにすると良いわ。存分にラムを崇め奉りなさい」

「はは~~、ラム様ありがたや~ありがたや~~」

「ん。……ん?」

 

 

あれ? ツカサはこんな感じの受け答えだったっけ? とラムは一瞬違和感を覚え、改めてツカサの顔を見た。

その顔は普段のソレとは全く違っていて――――。

 

 

「もう酔ったのかしら?」

 

 

まだ自分のグラスの半分も減っていない様だが、ツカサの様子を見る限り、十中八九間違いない、と思うのは仕方がない。

 

 

「いいや、酔ってない酔ってない。オットーにも、オレ酒強いって言ってたようだし。これくらいじゃ全然酔ってないよ」

「そう?」

 

 

くいっ、と残ったグラスを空けるツカサ。

益々赤みを帯びるその顔。

千鳥足~こそにはならないが、身体が左右にゆっくりと揺れてる様な気もする。

いつも気を引き締めてる様子のその表情が綻び、ふにゃりと崩れている。

スバルがよく近くに居るからか、色々と比較してしまって大人びている風貌にいつも見えていたのだが、今は年相応な顔に……、否 幼くも見える。

 

そして、こんな機会は早々あるもんじゃない、とラムは揶揄いたい衝動に苛まれ~~~一瞬も我慢せずに行動に移した。

 

 

「ツカサ。こっちに来て座りなさい」

「んっん~~? りょーかい」

 

 

100%間違いない、と思いつつ、ラムはツカサを椅子に座らせた。

 

 

「えっと、どしたの? ラム??」

 

 

赤くなって、顔を緩ませてるツカサは、ニコニコと笑いながらラムの顔を見た。

普段の笑顔とはまた違うその顔を見れて、ラムは何処かご満悦。

そして、いつもはツカサに甘やかされてる場面が多いと思ったラムは。

 

 

「今日は、ツカサこそがお疲れ様よ。バルスの面倒を見るのはそれこそ面倒だった筈。ラムからの労わりを受け取りなさい」

 

 

ツカサの頬を摩り、軈て頭を撫でた。

ラムの身長でもツカサを撫でる事が出来る様に……椅子に座らせたのである。

 

 

「?? おれ、がんばったのかな? ほんとに??」

「…………」

 

 

きょとん、とするその姿は、あまりにも無防備なツカサ。

 

 

「ええ。よく頑張ったわ。流石はラムのツカサ(・・・・・・)ね」

 

 

どさくさに紛れて、そんな事を言ってみたかったり。

頭を摩ってみると、その感触は何とも形容しがたく……、心地良い。レムを撫でる、撫でられる時とはまた違った多幸感が、達成感に似た何かもラムの中で芽生えつつあった。

或いは無償の愛に似た感覚なのかもしれない。……ただ、ラムはこれでもか! と見返りを求めたい気持ちが有るので、その境地にまで至っていないと断言はできる。

あくまで、似た感覚、とだけ。

 

当のツカサはラムの言葉を細かに聞き取れるだけの脳の働きは出来てないらしく。

 

 

「そっか~~。それはよかったよ。うれしいっ。みんなと仲良く、いつまでも、仲良く、いっしょに」

「ええ。それは叶うわ。ただ、1つだけ条件があるわよ」

「うん? なーに? ラム」

「今後、お酒を飲むときは必ずラムの直ぐ近くに居る事。約束しなさい」

 

 

確実に大物になる男であるツカサ。

こういった場面は幾つも今後体験していくことだろう。

出来うる事ならば、自分の手の届く範囲内に留めて貰いたいと思う。

 

 

「ん。りょーかいです。ラムに従いますっ。あ、もう1杯……」

「まだ駄目よ。もう少し、ラムのなでなでを堪能しておきなさい」

「ん! たんのーしますっ! ……きもちいいね」

「当然よ。この世の至高とも呼べるものなのだから」

 

 

頭を起こそうとするツカサの額に、ラムは手を押し当てて横になる様に促す。

また、きょとん……とするツカサだったが、直ぐにふにゃりと表情を綻ばせて、言われるがままにするのだった。

 

 

 

「おーやおや、成程。ツカサ君にも、こーぉんな所があったんだねーぇ。とっても可愛らしいじゃないか」

「可愛らしいというか、最早別人と言っても同義なのよ。一体アイツは誰なのかしら?」

 

 

ロズワールとベアトリスは一緒にワインを嗜む―――程ではないが、あのツカサの状態を見て、それとなく部屋を出て行こうとしたベアトリスは歩を止めて、ロズワールは口端を歪ませて、その様子を見入っていた。

 

 

「無防備な姿を晒せるだけ、信頼しきってくれていると考えると、嬉しい事じゃなーぁいかい?」

「ベティーは別に何とも。アイツがどこで何をしようと関係ないかしら」

「そうかな? ツカァーサ君が我々の陣営に居てくれる、と言う事は――――」

 

 

ロズワールは頭上を見上げる。

すると、そこにはクルルの姿が有った。

パックと共に愛玩動物の様になっていたのも束の間、何時の間にか、自分のグラスをその小さな手で持ってワインを器用に飲んでいるではないか。

きゅはー、と可愛らしく。

 

でも、ツカサの様に酔っぱらう様な様子は見せない。

 

 

「大精霊様とも共に有れる、と言う訳だ。ベアトリスにとってしても、これは良い事だと思わないかい?」

「………まぁ、クルルと一緒なのだけは、認めてあげても良いかしら」

「ふふ。素直じゃないねーぇ」

「ベティーはいつだって素直かしら。冗談は化粧とその性癖だけにするのよ」

 

 

ベアトリスはふんっ! と鼻息荒くさせると、同じく手に持ったワインを口まで運ぶ。

偶然なのか狙っていたのかは解らないが、頭上で飲んでいたクルルもロズワールとベアトリスの間に降りてきて、グラスを差し向けた。

 

こちんっ、と3人で合わせて、再び嗜むのだった。

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様です、スバル君」

「レムもお疲れ~、色々手伝ってもらってありがとな。今度また埋め合わせするからな」

「大丈夫ですよ。スバル君には寝顔をいつも見せて貰ってますので」

「おう! ……って、ちょっと待って。今何か変な事いった?」

「いいえ。変な事は言ってませんよ?」

 

 

そして別の場所では。

豪華な御馳走を胃袋に入れて、それなりに腹が起きてきた所にノンアルコールを嗜むスバルと、そのスバルと一緒に飲む為にやってきたレムがいた。

日頃の感謝、今日の感謝を互いに伝える。ただ、レムが言ったトンデモ発言は無かった事にされた様だが……。

 

 

「そっれにしても兄弟酒弱いんだなぁ~~、なんつーか、ベタ過ぎてこっちが赤くなっちまうよ」

「ふふふ。いつもいつも、姉様がツカサ君に甘える事はあっても、逆の事は中々ありませんからね。アレだけ無防備なのは、スバル君と同じで眠っている時だけでしょうか」

「まぁ、幾ら超人兄弟でも寝てる間くらいは休息タイムってわけで―――――いやいや、やっぱ変な事言ってるよね? レムさん?? オレが寝てる時ナニカしてんの!?」

「いいえ? 変な事は言ってませんよー。それに、スバル君は変じゃありませんから」

 

 

会話がかみ合わず、堂々巡り。

ただ、あまり触れてはいけない……、自分自身の恥部な部分も明らかにされそうな気がするので、スバルはそれ以上は踏み込まずに忘れる事にするのだった。

 

 

「おーやおや、スバル君はお酒は飲まないんだねーぇ。ツカサ君の様に、独特なスバル君も見てみたい、って思ったりしてるよーぉ? 《今夜は帰りたくないの……》とか言い出しちゃうスバル君だったりする?」

「なんだ、その合コン的なノリのヤツは。噂程度にしか知らないけど、こっちでもあるとは思いもよらなかったよ。オレは積極的に酒を飲んだりした事はねーよ。未成年だしな」

 

 

こちらの世界では14歳から酒OK。

だから、厳密に言えばスバルも飲酒OKなのだが、五体に刻まれたDNAが、日本人は酒とタバコは20歳から、と警笛を鳴らしているから手に着けていないのである。

 

ただ、ツカサに関してはしっかりとした年齢が解っていないという事も有るが、明らかに14歳以下ではないだろう、と言う事でオットーと旅をしていた時から飲んでいたとか。

……その時の様子はどうだったんだろう? と何やらむず痒くなってくるが、その辺りは闇な部分として疑問点は忘却する様に務めた。

 

 

それは兎も角として、ロズワールにとってしてみれば想定外。

 

 

「おーやおや。スバル君の性格からしたら、絶対に粋がって嗜好品には手を付けるモノだと思ってたーぁのに」

「駄目よ。子供がお酒飲むなんて。背が伸びなくなっちゃうんだから」

 

 

スバルは絶対に飲むだろう、と思っていたから。ツカサが飲むのなら猶更。

そして、そんな会話に割り込んでくるのはエミリアだ。彼女はまだ酒を一滴も飲んでいないらしい。

 

 

「ちょっとちょっと、エミリアたん! オレだって王国の法律破る程幼くねーからね! 今年で18だから! 大人大人!」

「ハッ。どこのバルスが大人だというの。思わず嘲笑してしまうわ」

「年齢的な意味でね、姉さま!! それ言っちゃ、そこで甘えっ子になっちゃってる兄弟(ツカサ)だって怪しく見えちゃうよ!?」

「これはラムの特権。今日の賞品の様なモノよ。バルスの残念な頭では理解しきれない事も世の中にはある。よく覚えておく事ね」

「何、その無茶苦茶な論理!? つか、何時の間に兄弟自体が特別賞扱いになっちゃってんのっ!?」

「ばるす、うるさい」

「って、兄弟!?? マジキャラ変わっちゃってるよ!?」

 

 

未だにごろごろ~と借りてきた猫の様に頭を撫でられ、目を細めているツカサを見て叫ぶ。

と言うか、最早あなた誰? 状態だ。酔っぱらったらこうなる人も居るのかぁ……と1つ勉強になった。

 

まぁ、酒乱するよりはこっちの方が良いと思うが。酒のんで暴れたりしたら、手が付けられない。

 

 

「バルスとツカサを一緒にするなんて、身の程知らずも良い所だわ」

「いやいや、オレだって飲んでねーけど、そんな酒癖悪い大人にならないつもりだから! つーか、相変わらずな読心術止めちゃってくれるかなぁ!?」

 

 

わーわー喚いてるスバルを見て、エミリアはしみじみと思う。

 

 

「スバルって18歳なんだ……。なんだか、すごーく意外」

 

 

大人だったら、自分の事を大人大人連呼したりしないと思うし、もっと落ち着きがあっても良い、とエミリアは思ってるから。

でも、スバルはどう見てもかけ離れている、としか言えない。

 

 

「――――つかぬ事をお聞きしますがエミリアたん。エミリアたんの中ではオレって一体いくつになってるの?」

「え? えーーっと、えっと……じゅう…………」

 

 

考えに考えて、頭の中を整理して、これまでスバルに抱いていた感想の1つ1つをかき集めて――――導き出した結果がこれ。

 

 

「12! あ、いや、13歳!」

「いやいや、それじゃフェルトより年下じゃないか!! 12も13も大した差無いからね!! ってか、エミリアたんこそ幾つなの? 女性に年齢聞くなんてデリカシー……って言いたいけど、気になってきた」

「私は13歳じゃありません。お酒はまだ飲んだ事無いけど、飲める歳ですっ」

「そこは疑ってないよ。エミリアたんが13歳ならオレが犯罪者になっちゃうから」

「え? なんで??」

 

 

13歳……、小学生が終わり、中学生になったばかりの子に恋心を抱き、デートデートと言ってる自分は間違いなく補導対象の危険分子(ロリコン)だ。

 

でも、それは絶対に無いと断言できる。

エミリアが持つ色気、この場でNo.1の豊満なぼでぃ……それが13歳なんて考えられないから。 

 

 

「それに、パックがお酒飲んじゃ駄目だって。でも、今日は飲んでみようかなぁ~って思ってるの。ツカサも楽しそうだし」

「ええ~~、聞いてないよリア。前にも言ったでしょ? お酒は悪い大人の飲み物! リアの前に出されたお酒は全部ボクが責任をもって飲み干しちゃうからね!」

 

 

パックが間に入ってなぜかシャドーボクシング。

虚空に乱れ射ちをして、仮想敵? であるお酒をモノの見事に全て撃破してご満悦。

 

明らかに自分が飲みたいだけだろ、と言う無粋なツッコミは無しだ。

 

 

「まぁまぁ、今宵くらいは良いんじゃないかい? 折角の酒蔵から見つかった年代物のお酒がこんなにもあるのだからねーぇ」

 

 

エミリアの保護者は反対気味だけど、ロズワールは進めてくる。

そして―――。

 

 

「そーだよぉ、エミリアさん。おさけ、すっごく美味しいよ?? のみすぎ~に注意したら、大丈夫っ! 美味しいし、楽しいし、良いトコしかないからぁ。ささ、ラムもグラスあいてるよ」

「はいはい。頂くわ(それにしても、これ以上泥酔、変化はないのね)」

 

 

頭をなでなでしていたラムとされるがままだったツカサはいつの間にかこちらへやってきていた。

その手にはしっかりとグラスが握られているし、口調や表情、……性格? が普段と違っていても、足取りはしっかりしている。

オットーがツカサは酒が強い、と言っていた様だが……それは気を使っての類ではなく、本当に強いのかもしれない。

ただ、ラムはこれ以上の変化は無いのか……と少し残念そうにもしていたが、いつも以上に接近したりしても、離れる事の無い飲酒モードのツカサも良い、としていた。

 

この状態か、或いは寒波のせいで離れられない状態にでもならないと……直ぐに飲酒とは違った意味で顔を赤くさせてツカサは距離を取ろうとするから。

 

 

「ん~。じゃあ、やっぱり私も頂くね」

「……はぁ~~しょーがないにゃ~~」

「って、パックはしっかり買収されてるじゃねーか。クルル。お前いつの間にパックの傍に?」

「きゅきゅんっ♪」

 

 

エミリアはロズワールから酒を受け取った。ツカサからの後押しも有った。

ここで、パックがエミリアから酒を奪い取って飲み干す~~~となったかもしれないが、それはクルルによって阻止される。

いつの間にやら、パックに酒グラスを渡していたから。

頬を赤くさせながら、美味しそうに飲むパックは今は酒に夢中。酒と言う新たなステージに足を踏み入れようとしている娘そっちのけで。

 

 

「まぁ、楽しけりゃヨシ、ってか」

 

 

スバルは特に深く考えもせずに、成り行きを見守り―――――――――そして、楽園(エデン)が眼前に開かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん~~~~~っっ、どーしたのぉ、スバル~~、へんな顔して~~」

「~~~~~~!!」

 

 

まずエミリアの豹変した。

白く透き通った肌に健康的? な赤みが加わり、それが幼さがまだ残る美少女に色気として表に出ていて、更に更に頭を左右に揺らす事によって、その豊満な胸も一緒に揺れる。

いつもは決して見せないはしたない姿に、スバルは言葉にならず完全に魅了されてしまった。

 

 

「スバルへんな顔~~~! それに、こんなに増えちゃって~~~ずるいっっ!」

「うへぇっ!?」

 

 

エミリアの視界の中のスバルは一体どうなってしまっているのだろう?

酩酊状態なエミリアには、スバルが変な顔で(いつも?)、更に複数に増えてるらしい。

 

 

「ふえちゃって、こんなにふえちゃって~~~、おかし、ひとりじめするんだ~~~!」

「わひぃぃっ!??」

 

 

最後には、スバルを押し倒してしまった。

 

 

「あはははっ。エミリアさん、ってば。だいじょう~~~うぇっ??」

 

 

同じくらい酔っていても、様子が一向に変わらないツカサが、押し倒した2人を助けようとしたのだが、それはラムによって止められた。

 

 

「バルスにとって、生涯一度限り、一生に一度の至福の時よ。それを奪ってしまっては、流石に可哀想だわ」

「え? え? そーなの??」

「ええ。酔ったエミリア様の介護は、ツカサでは荷が重すぎる。バルスに任せるべきよ」

「ええ~~。でも、ほらほら。レムも来たよ?」

 

 

ツカサの指摘通り。

エミリアに押し倒されたスバルの横にレムが付いていた。

何やらスバルの事を、かぷりっ! と。

 

 

「あはははっ。2人ともたのしそうっ。それにカワイイなぁ~」

「…………ツカサはラムだけを見て居なさい」

「え?」

 

 

ぐいっ、ぐりっ、とツカサの頭をひっつかんでラムの方に強引に振り向かせた。

 

 

「ラムはどう?」

 

 

真っ直ぐに見つめるラムを見て、ツカサは笑いながら言った。

 

 

「もちろん、ラムだってカワイイし、すごくたのしそうだよっ」

「……当然ね」

 

 

きゅっ……っと、ラムはツカサを抱きしめる。

適当な答え、正しい答え、欲しい答えを一発で当てて見せたツカサへの御褒美と言わんばかりに。

 

 

その後も暫くラムは言わせたり、撫でたり撫でられたりを繰り返す。

ここが大っぴらな場所でなければ寝室に―――――と思ったり思わなかったり。

取り合えず粗方堪能したその時、スバルが声をかけた。

 

 

「お楽しみの所申し訳ありませんが、ラムちー姉様にお1つご質問いいですか?」

「……………ハッ」

「YESと取りますぜ、姉様。レムって酒弱いの? 鬼ってオレの知識の中じゃ酒強いイメージなんだけど? 現にラムは全く酔ってないし。酔って無防備な兄弟を頂こうとする気満々だし」

 

 

暫くスバルに噛みついていたレムは、気づけばスバルの膝で眠ってしまっていた。

エミリアもスバルの肩に寄り掛かって夢見心地状態。

 

記憶を遡っても、そんなに飲んだ様には思えない。エミリアもレムも。何だったらツカサも。

 

 

「鬼族が種族的に酒に強いのは事実ね。小さい頃からラムもよく大人たちと飲み比べをしたものだわ」

「当たり前の様に未成年時代の飲酒を告白してくれたなぁ~~」

「あはははっ。ラムは今も昔も、すごくかわいい、ってことだね~~」

「……兄弟が酔うとこうなるのか、取り合えず誰でも彼でも褒めちぎる、みたいな? ……よし、覚えておこう」

「ばるす、すばる? とにかく、がんばりなよーー。しんじゃ、だめ、だからねーー」

「…………オレに関してはいつも心配されんのね。後、目潰しの呪文はラムちー姉様だけで十分だから。スバルでよろしくどーぞ」

 

 

ちょっぴり切なくなったスバルは、頑張ろうと心に決めた。もう何度目か解らないが、それでも何度でも、何度も頑張ろうと。

心配をかけず、そして自分自身の力でエミリアの力になれる様に。

 

 

 

 

 

 

その後———1人で外のテラスで飲んでいたベアトリスと合流。

皆で一緒に星空を見上げながら楽しんだ。

スバルの名が星由来と聞いて、皆で驚いたりバカにしたり。

ツカサの名の由来は全く解らずただただ覚えているのは名だけだった、とちょっぴりしんみりとした雰囲気になりかけていたり。

最後のは、正直聞くんじゃなかったとスバルは後悔したが、当の本人は本当に楽しそうで、殆どが酔っぱらっていた事もあって、直ぐに楽しい雰囲気戻って大丈夫だった。

 

 

パックの発魔期もこれにんて最後。

 

 

 

「最後のマナを使って、王都の皆にも雪の御裾分け~~~~!」

 

 

 

空に向かって放たれた神々しいマナは、大気中に散らばり、軈ては鮮やかな白の雪を世界に彩る。極寒地獄の様なモノではなく、皆を楽しませる。皆の記憶に残る雪を降らせたのだ。

 

 

「たのしかった。それに、凄く綺麗。皆の記憶にも残ると良いな……」

「そう簡単に忘れられねーよ。……ま、兄弟はメッチャ酔ってっから、ひょっとしたら忘れちゃってるかもしれないな」

「んーーーー、それは辛い所。酒が強いっていわれたけど、自分じゃわかんなかったしさ」

 

 

酔った時の記憶は定かではない。全然有りえる話だし、ベタな話でもある。

だからこそ、そこに付けこむ者も絶えない訳で……。

 

 

「ハッ。イヤらしい」

「何も言ってねーですけど!? どっちかっつーと姉様の方がヤベーんじゃねーですかね? 性欲に素直だし、鬼らしく鬼の様に兄弟襲っちゃうシーンが目に浮かぶって感じですよ!? 18禁になっちゃう」

 

 

 

 

本当に色々と楽しかった。

この宴の記憶がひょっとしたら消えちゃうかもしれないのは寂しいけれど、それでもきっと少しは残る筈。皆で見上げたこの雪の記憶。楽しい記憶。

カラッポだった自分に少しでも満たしてくれるように降り積もっていく記憶を抱いて、ツカサは空を見上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

レムは酔っていたが、しっかりとスバルよりも先に起きてその寝顔を楽しむ。

エミリアとスバルは約束通りに2人でデート。

 

3人とも心行くまで楽しんだ。

 

 

だけど、ツカサは過去最高最大に飲んだ様で、初めての二日酔いを経験。

記憶も正直あやふやであり、楽しかった事は覚えているが、この経験に関しては今回限りにして貰いたい、と頭を抱える。

折角の楽しい(筈の)記憶が、二日酔いの苦しみで上書きされてしまいそうだから。

 

ラムはそんなツカサの看病をする。

看病をしながら……ツカサは嫌がるかもしれないが、まためでたい時に、それこそ来年のパックの発魔期の時にでも同じく酒を進めて、酩酊状態ツカサとまた飲み交わそう、と思うのだった。

 

 

 

 

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