Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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貰ったモノは資格だけ

 

 

 

「だぁぁぁぁもうッッ! とっとと先に進めるぞ!」

「おお、そうだったね。済まない、ボクとした事が少々夢中になってしまっていた様だ」

「少々か? アレで? ……ほっといたら年単位でこの自称・ボクの城に一生放置される、って思ったぞ」

 

 

ばんっ! とスバルは感慨耽ってるエキドナに対して、テーブルに両手を強く叩きつける。

正直、後々考えてみれば、これは聊か強引で何より危険ではないか? と思った自分も居た。何せ相手は【強欲の魔女】ツカサが居なくなってしまった元凶である【強欲】の名を冠する魔女なのだから。

 

でも、どうやら心配は杞憂だったらしい。

エキドナも我に返った様で見た目可愛らしく頬に人差し指をついていたから。そんな様子を見れば杞憂だった、と思うのが正解だ。

 

それにこのエキドナの様子、絵的に見れば十分過ぎる程魅力的な光景なのだが、生憎エキドナを知った以上、そんな気は更々ない。

 

 

「うむうむ。ボクにすれば君自身にも当然興味があるし、新鮮さと言えば間違いなく喜びの感情も出ている」

「あんま嬉しくねぇな……。兄弟の次いで、って感じなのが特に」

「いいや、未知と言う意味で語ると言うのなら君も同等だよ。ただ、情報量には天と地以上の差がある、と言わざるを得ないが」

「上げといて落とすのかよ、ほんっとに魔女ってヤツは。……まぁ、別に良いけど」

 

 

スバル自身もツカサについて、ひいてはあの中に存在していた《ゼロ》について比べられたとしても存外、何も思わない。

と言うより、スバルの中では《ゼロ》こそが、転生モノのお約束、神様的なポジションの存在だと思ってるので、天と地の差、と言われてもその通りだ、と納得しかない。……いや、何れは人類は宇宙まで飛びたてる~と言う事を鑑みると、まだまだ弱い気もするが。

 

 

「んじゃ、話を纏めるぞ。……お前」

「ボクの名はエキドナだよ。強欲の魔女、エキドナ。どうせなら名を呼んでくれた方が嬉しいかな」

「オレに呼んで貰えてうれしいの?」

 

 

スバルはきょとん、とした。

何せ、情報や未知とはまた一切関係の無い呼称。

意中の相手でないのに名を呼ばれて嬉しい、とは思えなかったからだ。

 

 

「そりゃそうさ。ボクだってこう見えて乙女だ、って言っただろう? 『お前』とか『おい』とか『そこの』とかよりは名で呼んでもらいたいじゃないか」

「……何だろ、時代錯誤甚だしい、熟練老夫婦みたいな感が………」

「いやぁ悪いね。流石にキミと番関係になるとまでは言えないんだ」

「誰もンな事言ってねぇよ! オレの両手は塞がってるって言っただろっ!? それにそっちも似たようなの言ってたじゃんっ!」

 

 

また話が逸れ始めたので、ブルンブルンッ! とスバルは首を振って更に頬を挟み込む様に叩いて気を入れた。

 

 

「エキドナ。お前は兄弟———ツカサの事やゼロの事、直接的に何か手がかりを持ってる、とかは無いって事で良いのか?」

「ああ。遺憾な事にね。……かのおヒトの力はボク程度なんかまさに有象無象。遠く及ばない、果てが見えない。いや無いとも言える。それほどまでに強大で、この世のものでもあの世のものでも無い。恐らくはその気になればこの世界の誰もが接触する事など出来はしないだろうね」

「………、だろうよ」

 

 

時間を自由自在に移動しているところを見てもそうだ。

そんな超強力な能力者、色んな世界(物語)で見てきたが、その殆どが最強格の存在。

時間を移動していると言えば、自分の身に住まう魔女も死に戻りと言う形で時を遡っているが、あくまで任意でいつでも、と言う訳ではなく、かなりの制約……死と言う圧倒的恐怖を体感しなければならない程に縛られている制約がある。

 

それに何より―――この世界の畏怖の象徴でもあるあの嫉妬の魔女をアッサリと説得? 篭絡? して見せたところを見てもそう。

 

 

「……更にいや、ここに降りてきたのもほんの一欠片の力……って言ってたもんなぁ」

「!!! それは本当なのかいっ!?」

「お、おう。本当だ。つか、そんな身を乗り出してこなくても良いだろ。もったいぶらずに知ってる事は全部話す。だから、お前も俺に協力してくれよ」

 

 

エキドナは、スバルの申し出を聞いて、ポンッ! と手を叩くと大きく頷いた。

 

 

「よし、良いだろうっ!! キミは本当に幸運だ。こうもアッサリ、この強欲の魔女と協力関係を結べるなんて、歴史上でも片手で数える程の実績だ」

「ほんとだ。嫌にアッサリだな。……後々が心配になってくるってもんだ」

「ヒドイものだね。ボクはただ想い人に会いたいし、知識欲の権化だから全て知りたい、ただそれだけなのに」

「わりぃ、可愛い風装っても、お化けにしか見えんわ」

「これはこれは、言い得て妙、だね。何せボクは死んでる。魂だけの存在だから、化けて出ていると言われても間違いじゃないさ」

 

 

エキドナはそういうと――――突然雰囲気を変えた。

 

 

 

「―――ボクは強欲。キミも知りたい欲、と言えば間違いなく強欲とも呼べる。だからこそ、肯定しよう」

 

 

 

その雰囲気は周囲にも影響を及ぼす。

今の今まで手をついていた筈の真っ白なテーブルは消え失せ、今座ってる椅子だけしか形を成さない。落ち着いた草原の様な場所だったのに、そこも削がれた。ありとあらゆる無駄の、この世界からそぎ落とし、殆どが失われた後はただの闇……、黒く澱んだ闇だけが広がっている。

 

 

 

 

「さぁ、キミは何が聞きたい? あのヒトに通じる道は無いかもしれないが、それ以外なら知る全てを答えてあげれる。飢餓から世界を救う為に、天命と異なる獣を生み出した《暴食の魔女》ダフネのことかい? 世界を愛で満たそうと、人非ざるものたちに感情を与えた《色欲の魔女》カーミラのことかい? 争いに満ちた世界を嘆きながら、あらゆる人々を殴り癒した《憤怒の魔女》ミネルヴァのことかい? 安らぎを齎すそのためだけに、大瀑布の彼方に龍を追いやった《怠惰の魔女》セクメトのことかい? 幼さ故の無邪気と無慈悲で咎人を裁き続けた《傲慢の魔女》テュフォンのことかい?」

 

 

 

魔女の事を知るのは目の前のエキドナを除けば、《嫉妬の魔女》サテラただ一人。

聞き覚えの無い、今の世界には記録の無い、その失われた筈の歴史の残骸が周囲に彩られていく。

 

 

「ああ、勿論このボクもそうさ。ありとあらゆる叡智を求めて、死後の世界にすら未練を残した知識欲の権化、《強欲の魔女》エキドナ。……今はただ、強欲を満たしてくれる存在の影を追い求める、夢見る儚げな魔女のことかい?」

 

 

自分を強調する事も忘れず、そして強い想いを向ける事も忘れず。

 

 

「…………」

 

 

よくよく考えてみれば、エキドナはラムの存在を忘れている、或いは知らないのだろうか? 向ける視線の先、輪郭が違ってピントが合わないのかもしれないが、それでも同化? してるも同然のあの2つの存在だから、綺麗な三角関係になりかねない。

そして、強欲の魔女の存在も確かに圧倒的な死を予見させる程の威圧感、存在感を放っているのは間違いないのだが………あのラムもスバルにとっては似たようなモノだ。

生暖かく見守りつつ、自分はエミリアやレムとイチャイチャ(死語?)シテレバイイ……とか一瞬考えそうになったのだが何故だか、死よりきつい生き地獄? な未来が見えた気がしたので、それ以上は何も踏み込まない様にした。

 

 

そんなスバルの心境を他所に、エキドナは続ける。

 

 

 

「――――それとも、全ての魔女を滅ぼし、自らの糧として世界を敵に回した《嫉妬の魔女》。あの忌むべき彼女のことかい?」

 

 

 

最後の彼女(・・)を告げた時が、一番強烈な《死》をスバルは感じられた。

だが、だからと言ってなんだと言うのだろう。

 

 

「いまの、おれが、しりたいのは、きょうだいのことーーー一一択だ!!」

 

 

スバルは自分自身を奮い立たせる様に闇色に染まった地を力強く踏みつける。

 

《死の気配》

 

それは最早スバルにとっては児戯に等しい。

死以上の苦しみを、何度も体験したのだから。

そして、スバルにとっては不本意極まりない事かもしれないが、エキドナが差し出したお茶も良い具合に働き始める。

 

 

「……やはり、キミは面白い。意図せずとはいえ、驚かせてしまったと言う自覚はあると言うのに、その気迫は、気概は驚嘆に値するよ。この魔女の性をその身に浴びても尚、立ち続けるキミに敬意を表そう。……が、キミが今考えていた内容については頂けないな」

「…………は?」

 

 

ツカサの事を知りたいのはエキドナも同じ筈なのに、とスバルは首を傾ける。

 

よく解らないが突然、エキドナは頬を膨らませた。

今の今まで、何処となくラスボスの風格さえ纏っていた彼女が、突然コメディチックな顔になったのだから仕方がない。

 

そして、その理由も直ぐに判明。

どうやらスバルは心を読まれてしまったようだ。

 

 

 

「その桃色髪の少女が彼の事を愛しているとしても、ボクも同じだったとしても、三角関係などと言う対立は成立しないよ。何せボクは生きてないんだからね?」

「………どうしても説得力無ェよ。【絶対負けねー!】 みたいな顔つきでそんな事言われても」

「おっと」

 

 

エキドナは咳払いを1つ行う。

 

 

「そういうのは言わぬが華、と言わないのかい? ナツキ・スバル。……それと、もう大分馴染んだのではないかい? まぁ、しっかりとボクの顔を直視しながらご指摘を頂いた時点で、もう解っていた事だけどね」

「??? ぁ……」

 

 

先ほどまで広がっていた闇色の世界。

殆どが黒で塗りつぶされ、眼前のエキドナを象徴する白色のみ、だった筈なのだが、それは唐突に終わりを告げる事になった。

 

 

「おお、一体何がどうなったってんだ? いつの間に……、気づいたら戻ってた、ってレベルじゃ無ぇなこれ」

「適合者は馴染むのが早い。加えて、キミが彼と過ごしてきた濃密な時は、相応の力を授与(ギフト)した、とも言えるかな」

「そんな主人公みたいな力持ててねぇし、貰っても無ぇよ。兄弟に迷惑バッカかけちまってたから、いい加減俺も頑張れる分には頑張る、って決めただけだ。……そうでもしなけりゃ、お前の言う桃色の鬼が死よりヤバい仕置きにくるんでね」

 

 

スバルはそういうと、どさっ、と椅子に深く座り込んだ。

確かに何とか精神が持っていた様だが、それでも滲み出る脂汗だけはどうしようも無かったようで、拭いつつ胸を強く叩いた。

 

 

「ってか、適合ってなんの事だ?」

「おや? 解ってなかったのに受け答えした、と言うのかな? 随分と剛毅な事だね。ほら、さっきお茶を飲んだだろう? あれで魔女因子に働きかけて、キミの抵抗力を強くしただけさ。キミは自力で抗い、立っていた様だけど、随分違う筈だよ」

「さっきの茶にそんな効力が……って、また思い出しちまった!! 体液飲んじまったって事実をっっ!!」

「また拒絶するなんて、キミは魔女泣かせな罪な男だね」

「どっちかってーとオレは被害者だ!!」

 

 

大罪を犯した者なら1人屠った。だからこそスバルは自信を持って言える。被害者だと。

 

と言うより、自分から飲んだとはいえ、体液飲まされた時点で十分被害者だ。

 

 

「それで、もう1個聞き覚えある単語で、聞き捨てならない単語があったな。魔女、因子とかなんとか。一体何の事だよ?」

「ここ数日の間に、キミは魔女因子の持ち主を殺しただろう? その死に際し、魔女因子は新たな依り代にキミを選んだ、と言う事だ。この墓所に入って無事なのも恐らく大部分はその魔女因子のおかげだと思うのだけど、ボクが知覚出来ないだけで、キミ自身に働きかける彼の力も作用している……のかもしれないね」

 

 

エキドナは、ほうっ……と白の肌に赤みを帯びさせた。

悲しい悲しい別れの後すぐに、またゼロに繋がる可能性の高いスバルが現れたと言う幸運を、再び噛み締める。

 

 

最初は不機嫌だった筈なのに、もうそんな感情は露と消えてしまっている。

不機嫌も、ここ暫く感じてなかった感情の1つで、それを知れたのもある意味では喜ばしいのかもしれないが……、やはり、覚えていない心にぽっかり空いた大きな穴を、埋めるかもしれないこの甘美さには及ばない。

 

 

「……俺が殺った《怠惰》か。……ベア子が言ってたのはこういう事だった、ってのかよ」

 

 

ベアトリスの言葉を思い返しつつ、スバルは大きく首を振った。

 

 

「確かに、魔女だ魔女だ、って聞いてりゃ、その魔女因子とやらがここに来れた原因だ、って思うが、確かにお前の……エキドナの言う通り。おれは兄弟を見つけるまで、兄弟を助けるまで、前のめりで行くって決めてた。そんな兄弟が今も力を貸してくれてるって方が良い。そっちの方が断然オレ好みだ。それでエキドナ。お前の見立てを聞いてみたい。……オレが兄弟に会えるとしたら、何をすれば良いと思う?」

 

 

厳密に言えば、ラムからある程度は聞けているが、それも正直ふわふわした話だ。ラム自身の目的? 本懐? が何なのか解らないスバルにとってしてみれば何も解らないも同義だから。

それでもラムにも、ツカサとはまた違った譲れない一線がある様で、下手に聞けないと言うのが現状。最愛の妹レムでさえも、その心の内までは解らないのだから猶更。

 

だからこそ、この強欲の魔女、エキドナの存在がデカい。

不本意で、不可抗力で、突然襲われた感もあるが、それでもスバルにとっても目標であるツカサとあた出会う事。そのゴールに向かう可能性があるのは間違いなくこの目の前の存在なのだから。

 

そんなエキドナだが、スバルのいう様にゼロとも再会できる事を意識した故にか、妄想モードに再び入りかけていたエキドナは直ぐに戻ってくる事が出来ていた。

 

 

「……そうだね。どうにかこうにか、頑張って自分自身の記憶の残滓を拾い集めようと努力をしているんだけど、中々に上手くいかない。色々と沢山話せていた筈、なんだけどね。……ただ、彼も本分はボクと似たものだとは思うんだ。……この強欲の様に、新しいもの常に、底なしに欲する。そして心行くまで楽しみたいと。……だからこそナツキスバル。キミ自身が今後も必ず当たるであろう困難を乗り越えに乗り越え、その限界直前まで突き進めば……或いは、と見ている」

「拷問かよ。ドSか。村人Aな戦闘力レベルのオレに、ガチ戦闘、ガチ試練、ガチボス討伐とかやれってか? 確かに愉快犯っちゃ愉快犯なナニカ、……ゼロの事を考えて見りゃ、十分あり得るな……。でもまぁ、強欲の魔女様の言葉だ。不本意だが、一番信じられるかもしれねぇ」

「様付けしといて不本意とはヒドイな。ボクだって彼にあって、彼の胸に飛び込みたい気分なんだケド? キミだってそう言うヒトが居るんだろう? ……そして、キミは直ぐにでもソレが出来る。十分過ぎる程恵まれてて、憎むべき彼女の感情がボクに生まれてしまいそうで怖いよ」

 

 

ここでよく理解できたのは、エキドナはやはりと言うか【嫉妬】に対しては良い思い出が無いらしい。当然と言えば当然。6人の魔女を全て呑みこんだのが嫉妬の魔女と言われているのだ。自分を殺した相手に対して好印象を持ってる訳がないのだ。

 

 

「んじゃあ、次だ。オレは、オレ達は聖域って場所を目指して走ってたわけだが、よく解らんうちに貰った石が光だして、気づいたら遺跡、墓所? 城? よく解らんが、お前の傍に来てた。この怪奇現象をどう説明する?」

「まぁ、確かに怪奇ではあるね。陰の魔法を受けた可能性を見出す事以外に、ボクには知りようがない事さ。外の事は解らないから。ただ、キミのいう聖域にはもう入っているよ?」

「!! マジで!? その情報けっこうデカいぞ!!」

 

 

スバルはがばっ! と告げられた事実に胸躍らせ、勢いのままにエキドナの量の肩を掴んだ。さっきまで、白鯨や怠惰以上の脅威を感じていた目の前の魔女に対し、随分と思い切った行動をとったモノだ、と自分でも思うが……触れてみた感想は、エキドナの肩は細い、と言う事だろうか。見た感じ、太ってはいないと思っていたが。

 

 

「太ってるなんて、女の子に言って良いものじゃないと思うのだが?」

 

スバルの心をんだエキドナは再び頬を膨らませつつ、真っ直ぐ見据える。

 

 

「それにしても随分と大胆な行動をとるじゃないか。ナツキスバル。目的地に到達していた事実がそんなに驚きなのかい? 遺跡、墓所、強欲の魔女であるボクとの邂逅。……十分連想できそうな情報が揃っていると思ったんだが」

聖域(・・)って言われてるくれーだから、聖属性一択だって思ってたんだよ! まさかガチガチな闇属性、魔女が居るなんて思っても無かったから仕方ないだろ!?」

「ふむ。陰ではなく闇。確かにどちらかと言えば闇の属性……とは正しい判断だ。また1つ、違う感性に触れて、知れてボクは嬉しいよ」

「そんなんで嬉しいのかよ。ってか、それよりマジでここはもう聖域なのか?」

「ああ。その通りだ。キミの言う通り、遺跡の外は聖域だね。正確にはこの墓所を護る為の場所が【聖域】と呼ばれている」

 

 

聖属性ではなく闇属性かもしれないが、この際それはどうでも良し。

 

 

「つまり、夢の城を出て、遺跡を飛び出したらエミリア達と合流出来るって言う訳だな? よっしゃ、俄然外に出たい欲が出てきた!! んで、この城から出るにはどうしたら良い?」

「え? ああ、それは簡単で単純だ。起きようと強く念じるか、外から起こされるか。もっともここは特殊な夢の中だから、ボクが起こそうと思わなければ起きられないかもしれないね」

 

 

意味深に笑うエキドナ。冗談にしては性質が悪いので苦々しい顔をするスバル。

 

 

「意中の人物に会えないからって、妥協してオレにしたけど、やっぱイライラしてるから道連れでいつまでも起こしてやんない! とか言い出すんじゃないだろうな……?」

「いやいや、別に帰りたいと言うのなら構わないよ。そもそも、ボクがお茶会に招待したんじゃなく、キミが勝手に入ってきたわけだしね? 丁度機嫌が思わしくない時に入ってきたのもキミだ。ボクに責任ある、みたいな言い方は心外だよ」

「成る程……。命賭けるのもOKで、死ぬ苦しみ以上を知ってる俺が、一瞬でもガチビビりしたよ。この緊張感。どうしてくれんのよ? シリアスさん、今きっと息してないよ?」

「まぁ、シリアスさんは息出来ないだろうね。ボクの前に立てるのはキミくらいな筈だし。シリアスさんが、ゼロくんの庇護下にあると言うのなら、解らないが」

 

 

取り合えず、エキドナは外に出してくれるつもりなのはよく解った。

 

 

「ふむ。でも、もうキミが外に行っちゃうのは寂しさを覚えるね。確かにキミの言う通り意中の相手じゃなかったとしても」

「キープ君だから逃したくないの、みたいに言いやがって。悪女かよ」

「悪女、そりゃ、ボクは魔女だからね。悪い悪い魔女さ」

「男ったらし、ってヤツだよ。悪党な方じゃなく」

「……ボクの魅力で彼を惹きつける事が出来たなら、ここでキミはもう彼と再会できてた筈だよ………………」

「……なんか、スマン。変なトコ触れちまったな……」

 

 

ごほんっ、とスバルは咳払い。

少々デリカシーが無かったと反省もする。

 

 

「んじゃあ、協力関係といきますか。今度またお茶会招待してくれ。そん時までにそれなりの情報得てたら、エキドナもオレを外に出すメリットってヤツが増えるだろ?」

「そりゃまぁ…………、ふむ、それもそうだね。死者相手に、それも魔女にそんな簡単なことの様に約束を取り付けるのも驚嘆だが、キミの言う通りメリットは大きい。その案に乗るとするよ」

 

 

ぱちんっ、と指を鳴らすと――――世界が歪んだ。

そして、一枚の扉が出現する。

 

 

「そこから出ればお望みの外の世界……気づけば墓所の中だ。長く魔女をしていて、こんなにも目まぐるしく展開なのは初めてだな。ワクワクするかもしれないよ」

「そりゃ良かった。下見るより上向いて涙零れない様にして歩いて感動の再会、といきたいもんだ」

 

 

スバルは軽く笑うと席を立つ。

そんな時———。

 

 

「ああ、ちょっとまった」

 

 

エキドナから引き留められた。

 

 

「魔女のお茶会から帰るんだ。最後に対価を頂こうか」

「へ? ………言っとくが、オレは万夫不当の一文無しだぞ? 今後のツカサ情報を担保、とか駄目?」

「それは魅力だが後払いは駄目だよ。それに魔女の対価は金銭じゃなく制約。この茶会に関する出来事の口外禁止。でも、ここに彼の情報を得た状態であれば、記憶の扉が開く様に調整しておくよ」

「随分しっかりしてんなぁ!」

 

 

外に口外禁止~と言う事は、恐らく口外すればペナルティが待ってるだろう。

もしかしたら――――。

 

 

「つまり、外に出たらエキドナとの事を綺麗さっぱり忘れてて、兄弟関連の情報を得たら、あら不思議。頭の中にエキドナが復活! みたいな感じか?」

「ああ、そんな感じだね」

「ほんっと、イイ感じの使いっパシリ扱いだよこれ。全然得たモノねーじゃん!」

「まぁまぁ、それともう1つ面白いのを上げるよ。―――――君に、この【聖域】の試練に挑む資格を与えよう」

 

 

急に違う話題が入り、スバルは混乱する。

 

 

「は? 今度は資格? ……ってか試練ってなんだよ。さっきも言った通り、オレの戦闘力レベルは一般ピープー程度だぞ。寧ろ以下と言ってくれても良い。人外(お前ら)から見ればそんなもんだ」

「随分と自虐的に言うが、全くをもって大丈夫さ。物理的な戦う力を必須としていないからね。……今はまだわからなくても、この場所のことを知ればその価値に気付ける。そうなったときがどうなるか、ボクは楽しみで仕方ない。……キミがぶつかった壁に対して、彼がどう反応するのか。……また再会できるのも遠い未来の話じゃないのかもしれないね」

 

 

試練に挑めばその結果次第ではひょっとしたら―――――

エキドナが考えている事はスバルにも解る。やっぱり性格悪い魔女だ! と思いたい気分だが、此処へきて、次なるステージの匂いがする事間違いない試練と言うワードにはスバル自身も少々期待してしまう。

 

 

ただ、あの愉快犯であるゼロは、自分が擦り切れて摺り潰されて、限界のギリギリの更にギリギリまで到達して漸く庇ってくれた様な存在だ。安易で甘い期待はしない方が良い……とも心の何処かに留めておく事にした。

 

 

それにしても――――。

 

 

「魔女より愉快犯の方が性質悪い気がしてきたぜ」

「そうかい? ボクは実に好ましい限りさ。この身の全てを捧げたって構わないよ」

「マジで随分と好かれちまったんだな。やっぱし、兄弟と同じ天然ジゴロってヤツ? 異世界でハーレムでも築こう、ってか? ……羨ましくなんか、ないんだからねっ!!」

「……はあれむ、とやらは聞いたことが無いし、新しい言語に知識欲も疼くと言うモノだが、その本質は理解したよ。――――ボクは断然否定派だ!!」

「いやいや、メチャクチャムキになっちゃったよ。……なんかあったか?」

 

 

魔女とゼロの戯れの会。

スバルは知りようのない事だが、思い出して不機嫌気味になり、つーん、とだまってしまったエキドナ。

もう話つもりも無いので、スバルには永劫明かされる事は無いだろう。

 

 

 

「取り合えず、次回期待しとくぜ。今はエミリア達のが心配だ」

「ああ、ボクもここで待たせてもらうよ。……キミが齎す行く末についても、同じくね」

 

 

 

そんな言葉を交わし合った後、エキドナは不意にスバルに近付き、その額を軽く押した。

背後に倒れる様にスバルは後ろへと下がり――――次の瞬間には開いた扉に飲み込まれる。

 

 

 

 

「――――――――」

 

 

 

 

落ちてゆく、闇の中に。

消えてゆく、光の中に。

 

ただ、恐怖心は全く無い。

その点においては一般人のそれとは比べ物にならない程鍛えられているな、と何処かどうでも良さそうにスバルは思い―――――夢の世界を後にした。

 

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