Re:ゼロから苦しむ異世界生活 作:リゼロ良し
「ラムを強引に連れてきて、一体何がしたいと言うの」
「ほほ~う、流石。この状況で全く動じてない。ある意味予想通りかな? それにしてもなかなかどうして……どの世界においてもそヒトという者達の潜在する力は素晴らしいな!」
「………言っている意味が解らないわ。と言うか、いい加減光の中から出てきたらどうなの? ゼロ。眩しくない光って言うのも初めてで相当変だけど、あなたらしいとも言えるわね。……色々と定まってないけれど、また随分と
それはラムが飛ばされた後の事。
聖域内、深緑の森での出来事。
この場所では有りえない程の光源が現れた。
こんな事が起これば、ここまで目立つ事が起きれば間違いなくこの森の番犬ならぬ番猫ガーフィールが黙っている筈がないのだが、一向に現れる気配は無い。
待てど暮らせど、だ。ガーフィールにそこまでの期待は基本ラムはしていないのだが、この手の案件に関しては信頼している。聖域を護る盾を自称しているのだから、ある意味当然と言えば当然。怠慢しているのであれば鉄拳制裁モノだろう。
閑話休題。
気付いてないのはガーフィールに限らず、自分達が乗ってきたオットーの竜車にも言える事だ。
あの竜車を引くパトラッシュとランバートは異常なまでに利口だ、と言う点もある。
視覚的に光源に気付かない訳がないし、匂いでラムの後を辿る事も造作もない事だろう。
特に今はいなくなっても主人の言いつけを忠実に守る真なる忠臣と言えるランバートがラムの事を気に欠けない訳がないから。
それなのにも関わらず、光の他に周囲は一切音が無い静寂。
何処か別の場所に転移させられた可能性も疑ったが、景色は間違いなく見覚えがある聖域の森。聖域内に入っている筈なのだ。
こんな異常で不可思議な事を起こせる様な者など早々いる筈もない。
ラムは、100%の確信がある訳ではない、でも十中八九間違いないと思いながらカマかけを目の前の光に対してした。
【ゼロ】であると言い切った。
そして、その光はまるでラムの言葉を肯定する様に瞬きを見せ続けている。
「! そうか、それは喜ばしい限りだ! 嬉しいし、楽しいな!」
「………そう。それは上々ね。それよりもゼロはこう言った筈。ラムの本懐を遂げる時に、ラムの愛する人と再会する事が出来るって。……その言葉が真実である、と言う確証が欲しいのだけど」
ゼロだけじゃない。ラムにとっても喜ばしく、ここで会えたのも僥倖だと捕える。
正直、ラムの中では最後の最後、つまり自身の本懐を遂げるその瞬間まで姿を現さない、と踏んでいた。
でも、一体何の気まぐれか再びゼロが姿を現したのだ。目的は解らないが、可能な限り探りを入れたい。例え戯れであったとしても、神の児戯であったとしてもそれでも構わない。ラムが真に求むるモノは、この目の前の超常的な存在でしか無しえないのだから。
「勿論! それは約束する」
「―――――!」
その言葉に、言質を取れた事に、ラムは自然と口端が緩む。
顔が赤く、熱くなっていくのを感じる。
愛する人の為ならば、彼とまた出会えるのならば、これ以上ない原動力だから。
でも、そんな想いも次の言葉で一気に砕けた。
「……って言うか、実な所 今直ぐにでも合わせてあげても良いって思っちゃってる自分も居るんだけど、アイツ、
「ッッ!!??」
ゼロの口から耳を疑う言葉が出てきたからだ。
バラバラになった、とは誰の事を言うのか。アイツとは誰の事なのか。
決まっている。間違いない。そして嘘を言ってるようにも思えない。愉悦を第一に考えてるとは聴いていたが、
あの時の襲撃犯……強欲担当レグルスの能力を考慮すれば幾らでも想像してしまう。悪夢の光景を連想してしまう。
それが他の誰でもない、ゼロの口から語られたともなれば猶更だ。
だからこそ、思わずラムは駆け出した。眼前に広がる光の世界をかき分けながら。
進んでいるのかも解らない全てを光で塗り潰されている。ラム自身は意識していなかったが、ハッキリと深緑の森と光の世界の境目まで解る。
この世とあの世の境界線、無と言って差し支えない世界へと飛び込んだのだ。
「ツカサッッ! ツカサぁァッッ!!」
駆けて、駆けて、駆けて………どこまでも続く光の中を走り続ける。
何処まで駆けたか、時間の流れさえも解らない。
「あ―――……ちょっぴり意地悪な言い方だったかな? ごめんごめん。でも、
以前までとは明らかに口調が違う。
ヒトに近付いた、とラムは称したが、同じく言った通り色々と定まってなくて、ちぐはぐな印象の方が大きいゼロと言う存在。
でも、今のラムは一切頭の中に入っていなかった。
悪夢の光景は今も鮮明に脳裏に過る。鮮明に浮かぶ。
———強欲担当レグルスの常軌を逸した超人的な能力を。
触れるモノを全て粉微塵、或いは全てを穿ち両断するあの不可侵の力。
それをツカサがまともに喰らったとなれば……粉々になってしまった、と簡単に頭の中で連想させてしまって、離れないのだ。ツカサと言う男の強さを、自分が愛する唯一の男の強さを少しも疑ってない。でも、それでも嫌な光景が頭から離れないのだ。
そんな時だった。
ラムの頭の中に、もう何も聞き入れず、ツカサの事以外何も考えられない筈だったラムの脳裏に、妙な声が。……聞き覚えのある声が響いたのは。
【ありうべからざる今を見ろ】
その声が自分自身のモノである、とラムは最後まで気づけなかった。
ただ、駆けて駆けて、駆けた先で――――……。
「うわっっ!??」
「ッッッ!!??」
ラムは何かにぶつかった。
それは突然現れた様に思えたから止まる事は勿論、ブレーキをかける余裕も無かった為、まともに顔面強打してしまったのである。
「って、あっラム! 一体どーしたのさ? 何か忘れ物でもあったの?」
「ッ!? え、あ、あれ? つか―――さ?」
「うん? そうだよ。でも珍しいね、ラムがそんな慌てて走るなん―――て?」
その背は、その振り向く半分しか見えない横顔は紛れもなく……。
「うわぁぁっっ!!? え、えええッッ!? どしたのほんと! ラムが泣くとかある!?」
気付けば、ラムの瞳からは一筋の涙が流れ出ていた。
赤子の頃でさえ、生まれて間もなかった頃でさえ、泣いた事が無かった。
涙なんてラムの中には存在しえないとさえ思った。滲む事はあっても、流す事は無かったまさに鬼の涙が意図せず勝手にラムの瞳から流れ落ちているのだ。
厳密に言えばレムを失った時に流した事があるので、存在しえない事は無いと解ってはいたが、あれは別次元の話。
違う世界軸のレムの死に流したラムの涙。そんなラムの姿が目に焼き付いて離れず、どうしても救いたい、と言うツカサの自分勝手な自己満足で、ラムを繰り返しの世界に誘ったが……、今はそんな場面ではありえない。日常のありふれた時間。穏やかな時間。なのにも関わらず、そんなラムの姿を驚きながら、ツカサは慌てながら、両手をパタパタさせながら――――あわあわ、と声を上げてる。
何とも情けない姿のツカサ。でも、ラムはそれがどこまでも愛おしく―――。
「おーい、兄弟~~! なーにしてんの?」
「!!」
そんな時、不意に聞こえるのはスバルの声。
ラムのプライド的に、スバルに今の状況を見せてしまえば、速攻でスバルの首が飛ぶか、若しくは今後未来永劫生き地獄と言う名の八つ当たりをやりそうな気がして、ツカサ自身も本当に死んでしまいそうな気配がしたから即座に行動。
一瞬、ラムの力が緩んだのを確認すると、ツカサはラムの身体を抱きしめた。
「って、おいおい……、何乳繰り合ってんのよご両人。幾ら城内っつってもよぉ。公私を弁えた方が良いんじゃね? また第●●回 正妻決定戦の火種にするつもりかよ?」
「あ、や、いや、それは……(ラム? ほんとどーしたの?? 大丈夫??)」
「………………………」
そっとラムに小声で話しかけるツカサだったが、ラムの返答はただただ強くツカサの身体を抱きしめる、抱きしめ続ける事だった。
流石に只事ではない、とツカサは思ってラムの頭を軽く人撫でして……。
「ラムの事は兎も角、スバルの方は大丈夫なの? 黒蛇案件でてんやわんや、って話聞いてたけど?」
「っっ!? それはそーだった!? そうなんだよ、こういう時に限ってラインハルトは王都にいねーし、なのにも関わらず、超難関な案件が舞い込んでくるし! ここで俺の自慢の兄弟の腕の見せ所~……」
「今立て込んでます。俺自慢の兄弟ならそのくらいの案件片手間だよね? んじゃあ、頑張って」
「んがっっ!!」
ひゅるるる、っと風を起こすツカサ。
これはいつも逃げ出す時用に使ってるテンペストを用いた移動魔法。低コストで驚く程の効力があり、色んな事から逃げ果せている。
でも、ここぞと言う場面では漢を見せるツカサなので、乱用はしてない。
すると言ったら、こういう場面で……。
「ああもうっっ!! いちゃいちゃが終わったら助けてくれよ!? マジで!!」
スバルの仕事案件ばかり逃げるツカサ。でも、それも仕方ないとスバルは思っていた。本当に忙殺させる程にツカサを言い様に使い続けた結果なのだ。
沢山の方々に御叱りを受けたし、ツケが回ってきた、と甘んじて受け入れる所存ではあるが、流石に黒蛇案件だ。大袈裟じゃなく国の存亡に関わると言って良い。
……最終的にラインハルトやツカサが出張るので、深刻には考えてはいないが、おんぶに抱っこと言う訳にもいかず、出来る範囲で、やれる範囲全開でスバルは今日も足掻き続けるのである。
「ルドラとレイは………、丁度良かった。今施設で遊んでる時間だった。こんなラム見られたら泣いちゃうよ……」
ツカサはラムを連れて2人が利用している2人だけの、家族だけの
こんなラムは見た事がないし、つい先ほどまで普段通りだった、突然豹変した様なモノだから、当然心配になる。
「………堪能したわ」
「うわっっ!!?」
物凄く心配した。
だからツカサはラムと同じ様に漸く抱きしめ返してやれる~とラムの背に腕を回そうとしたその瞬間、引き寄せられていた腕の力が抜けて、すぽんっ、とラムの頭も抜けて思わずバランスを崩しそうになった。
「びっくりした……」
「驚かせてしまった様ね」
「いや、ほんと! 此処最近じゃ指折りクラスだよ。ほんとビックリした……。ラム、大丈夫?」
色んな案件を抱えていて、ここ数日は本当に大変で大変だった。身体が3つくらいは欲しい所だ、とぼやく事もしばしばで、そんな中で元気なのは嫁陣と男ではラインハルトだけだろうか。
「不思議ね。何の違和感もなく溶け込む事が出来る―――と言うのは。何とも形容しがたいわ」
「え?」
ラムは大きく深呼吸をする。
今の今まで、理性を忘れて駆け続けて、ツカサの姿を見た瞬間タガが外れた様に涙を流し、その温もりを堪能した。堪能し続けた。
そして、もう満足した。
ツカサにはラム以外にも嫁がいる。
まさかの王戦候補者の半数以上をツカサは手中に収めている。1人は離れている様だが、その真意はラムは解っている。知っている。
それぞれがラムの持ちえない武器を用いてツカサに迫り、それらの想いをツカサは全て無下にせず、全て抱きしめて前へと進み続けている。
ラム自身、ツカサの器の大きさは解っていたから、そこまで驚きはしなかった。そして自分が一番である、と言う強い自負と自覚も納得出来た。
ただ、次のがどうしても違和感が拭えない。
愛しいヒトが王を裏で支える影武者となり、その王が有ろうことかあのバルスだと言う異常。ツカサではなくバルスだと言う極めて異常事態、この世のモノとは思えない光景。
だと言うのに、ラムは納得する事が出来ている。それが違和感なのだ。
ある意味、良い気付けになったとも言えるが、それはバルス……スバルのおかげだとは思いたくない、と言う頑なさはある意味ラムらしい。
「ラム?」
ラムはツカサから離れて歩きはじめる。
向かったのは一寸先にある部屋に備え付けられた大鏡の前。そこで自分を見つめ返している鬼の姿を確認すると、大きく息を吸い込み……そして零した。
この世界はとても優しい。平和で、平穏で、何より愛しいヒトがいる。記憶を遡ってみると、レムの笑顔もそこにはある。ラムと同じ様に子供に囲まれて花開く笑顔を見せてくれている。
子は男の子と女の子の2人。本当にわんぱくだ。ただ、バルス要素があるので、あるべき主従関係を子に、その本能に叩きつける事はしておいたラムの姿も思い返せる。
女の子の方は殆どレム要素だけ。黒髪である事以外は何もバルス要素はないので、加減しておいた。ただ存分に可愛がっただけだ。
そしてロズワールの姿もそこにはある。
ツカサが来る前まで、想いを寄せていた相手だ。相手が変わった、情が移ったとはいえ、何より故郷の件で決して容認できない事があるとはいえ、ロズワールの想いが成就し、見た事も無い穏やかな表情を見せるあのヒトの姿を見てラムは悲願を成したのだ、と区切りをつけた。
腰まで長く伸びた白い髪を靡かせる彼女の方へと彼は歩き続ける。それが記憶の中での最後の姿だ。
そして、最愛のヒトと結ばれ、子宝に恵まれ……2人の成長を我が事の様に…………。
「でも、違うわ。この世界は違う。……例え何処を探したとしても、この世界は無い。そうよね? ツカサ」
「………………」
今の今までラムを心配するツカサだった。
国を支える前に、最愛の妻を支える事だけに集中していた旦那だったその表情は陰りを見せる。
恐らくは核心めいたモノがラムの中にハッキリとしていなかったら、今も尚ツカサはラムを心配し続けるだけだった事だろう。
でも、その心配はもう無い。
ツカサは直ぐに穏やかなモノに変わった。
「凄いね。……本当に直ぐに、こんなに直ぐに解っちゃうんだ。ラムは。……俺だって厳密には偽物ってわけじゃないんだけど」
「ラムを見縊らないで。……これももう、何度言ったか解らないわ」
「うん。見縊ってるつもりなんて全然無いよ。だって、
そう言ったと同時に、ラムは拳に風を纏わせて、何やら強大なマナ? を練りに練ってツカサの眼前へと突き出す。
どひゅんっっ! と凄まじい暴風が吹き荒れ、部屋の中が無茶苦茶になってしまった。家裁道具は勿論、子供たちのおもちゃまで及びそうだった……が、そこはラムが見事な力加減をしたのか、大丈夫だった。
「願い? ここはラムが願ったとでも言うつもりなのかしら?」
「………ゴメンなさい。少し訂正します……、色々と手が加わってます………。ありうべからざる今の世界に、少しだけ
拳をラムはゆっくりと退く。
当然だ。自分が願う世界がこんなわけがない。
何故最愛の夫が複数の妻を娶るなんて世界を夢想しなければならないのか。
現実的に考えれば、ツカサは世界の英雄たる器。慕う者も多くなり、軈て様々な思惑や想いが交差し、……どうしようもなくなって他の妻を娶ってしまった、事はあると思うが、それを許容はしても断じて願うなんてあり得ないからだ。
加えてスバルが――――以下略
「解れば良いのよ。ツカサの顔で、ツカサの声で、……本当にツカサのままで、寝ぼけた事言わないで。次はハッ倒すわよ」
「ほんと申し訳ない……。ただ、これだけは言わせて欲しい。確かにラム。……キミの願いとは言えないけれど、ここは試練の世界。人知を超えた業を模倣して作り上げた世界。……だからこの世界で暮らしている人達は皆、ボタンの掛け違え1つで実際に息づいていた筈だと言えるんだ」
「……言われるまでも無いわ」
あり得ない世界じゃない。
様々な選択の果てに起こりえる世界。
その世界線を手繰り寄せる確率は異常なまでに低いと推察されるが……。(特にスバルが―――以下略)
「……ふふ。ほんと流石だよ。このありうべからざる今を見て、この世界に留まりたい、そのまま身を委ねたい……って思っても仕方ない精度の世界なのに、一蹴だもん。……それと、これも言わせて。……心配しないでラム。
「………ツカサはラムとの約束を違えない。それは世界が違っても変わらない。そう言う事よね?」
「勿論」
あのラムの涙とツカサを求める本能。
それらは十分にこの世界が真実として身を委ねていたとしても何ら不思議じゃない。そうとさえ思えてしまうと言うのに、ラムは堪能した、と言うと同時に世界を一蹴したのだ。
そして、改めてラムは言質を取った。違う世界とはいえ、ゼロからではなく、ツカサの口から。それだけでも得られたモノは甚大だろう。
「それと一蹴したのは当然の事よ。如何に精巧に作られ、本物同然とした術式だったとしても。……ラムの世界はあの世界。ツカサが戻ってくる世界だもの」
「……だね。言ってみただけだよ。本当にキミは
「………! 今、
ツカサの輪郭がぼやけるのをラムは見た。
それは本当に一瞬で、瞬きすら許されない程の刹那の時間帯。でも、ラムはハッキリと見据えたのだ。
「彼にそこまで想われて、キミ自身も彼をそこまで想って。……ここまで羨ましいと思ったのは何時ぶりだろうか。……いや、初めてと言っても良いかもしれないな。ボクも彼を見れるし、この瞬間だけは彼を思い出せるみたいだから、存分に堪能していたんだけど………………、やっぱり乙女な部分もボクには有ったみたいでね。他の魔女達に邪魔された時以上に悔しく感じてしまったんだ」
「――――」
輪郭が再びぼやける。
眼前にはツカサの姿は最早何処にもなく、そこにはぼやけたまま殆ど見えない何かが居た。
「ゼロではない、わね」
「ゼロ君だったとしたら、ボクが最高だったよ。キミの言う通り、ボクはゼロじゃない。……この世界を、この術式のオリジナルを描いた者、とだけ言っておこうかな? 聡明なキミの事だから大体察しているとは思うけどね」
「――――」
察するも何も、自分の口で【ほかの魔女たちに邪魔された】と言っている時点で自分自身が暴露しているも同然ではないか? とラムは思ったが余計な事は口を挟まない。
「仮に君が試練を受けれるとしたら、本当に一蹴する事だろう。ただ、生憎キミにはその資格がない。ボクがキミに資格を与える事も無い」
「嫉妬は醜いモノよ」
「ああその通りだ。【嫉妬】は忌むべきモノだ。キミの言う通り。悪意を抱くに十分過ぎる劣情の1つだ」
皮肉を皮肉で返したつもりか、目の前の存在のぼやけていた輪郭は完全に無となった。
「この先、何が待ち、何がどうなるのか……ボクも月並みに楽しませて貰うとするよ。先が読めず、知りえない事を知る良い機会でもある。【嫉妬】とは全く違うボクの高尚な欲がそれを欲している。―――――――楽しみだ」
そして、世界は完全なる白で包まれた。
闇とは正反対なのが光だと言えるが、完全なる白もまた狂気を覚える。
それでもラムはその身を委ねる様に両手を広げた。
【頑張ってね? きっと大丈―――――】
結果を見れば、ただの余興に付き合わされただけなのかもしれない。
ただの愉快犯、あの人外の玩具にされただけなのかもしれない。
でも、言質を取る事だけは出来た。それだけでラムにとってすれば十分なのだ。
ツカサは帰ってくる。直ぐには無理かもしれないが、それでも。
でもーーーーー甘美な夢だった。
取り込まれていても不思議じゃない程に。
甘く儚く眩しく……ゆっくりと精神を犯していく。
ここまでの甘美な毒をラムは知らない。
でも、それでもーーーーーーー……。
「ありうべからざる
「はぁァ??」
よく解らない、と言った具合のガーフィールの頭に一発ラムは入れると、気を新たに持つのだった。