Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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エミリアの決意

 

 

「ほっほっほ。ガー坊も随分とまぁ、楽しそうにするもんじゃな。……ワシとしてもそっちの方が好ましい」

「うッせッてんだよババァ。ボコボコ殴られて、楽しッわけあッか」

「まぁ、ガー坊やロズ坊の上を行くスー坊が現れたともなれば、ガー坊にとっては良い刺激にもなると言うものじゃな」

 

 

 

ラムに散々殴られた直ぐ後に、ガチャリとロズワールの部屋から出てきた者がいた。

十代前半の外見、愛くるしい整った容貌、そして白いローブを羽織ってる幼い少女……なのだが、ガーフィールがババア、と称する様に外見と年齢は一致しない。

 

 

「さっきはほんと悪かったよリューズさん。いや、マジでマジで。いずれこっちでも出てくるだろうと思っていたジャンルが出てきたら、やっぱり感動すると言うか、納得すると言うか、色々と頭ン中が小賢しい事になっちゃってたんだ。と言うか考えるより先に口に出てた。……ここに、失礼を謝罪します。ごめんなさい」

 

 

リューズと名乗る少女(老婆?)に初めて出会った時、確かにスバルは結構失礼な事を言った。

細かく言えば『ロリババア』と出合い頭に言った。気づけば口に出していた。

初対面でババア呼ばわりされて、気にならない者は早々いないだろう。如何に温和っぽいリューズであっても。

 

そもそも、スバルはツカサがいないせいで、自重と言うモノを忘れそうになってたので改めてラムから鉄槌、加えてレムにもスバルのより厳しい監視を勅命。

その勅命、レムが大層喜んだのは言うまでも無い。

 

 

「ふむふむ。少々認識を改めないといけないようじゃな。素直に謝罪が出来る、と言う意味ではガー坊より遥かに上じゃな。―――無論、良い意味での」

「お褒めに預かり恐悦至極———っと」

 

 

ぺこり、と頭を下げるスバルを見て朗らかに笑うリューズ。

難しい恐悦至極(四字熟語)? をガーフィールが大層気に入ってるようで、興味津々に、まるで子供の様に目を輝かせてる気がしなくもないが……、それはそれ。

 

 

「これ。気が利かんガー坊じゃな。さっきも言ったろう? 年寄りが来たら、大人しく席を譲らんか」

「おい、三下ァ! さっきの意味、どういうこった? きょうえつ……なんだァって??」

「これ! 話を聞かんか」

 

 

ガーフィールは、日本式四字熟語が大層気になる様で口は悪いがその実、目を輝かせているのがスバルの目でも解る。

見た目以上に子供っぽい。

 

でも、この世界では見た目で判断するととんでもなく痛い目を見ると言うのは解っているので、安易に口には出さないが。

話を聞く限り、ガーフィールがこの聖域最強の男だと言っているし。……実際、腕っぷしにも自信がありそうで、ラムやレムが辛辣なコメントを残している様だが、バリバリな武闘派メイドと肩を並べてる時点で、(ここ最近ではラムも十分武闘派)スバルでは逆立ちしても敵わないのは明白。余計な重傷は避けるべきだ、と空気を呼んだのである。

 

 

「まぁまぁ、折角リューズさんがまた来てくれたってのに悪いんだが、ちっとばかり村の皆の顔を見ておきたくてよ? これから大聖堂に行くんだ」

「ほ? それはそれは残念じゃな。スー坊には色々と聞いてみたい事があったんじゃが……、また別の機会を待つ事にしよう」

 

 

この場所で起こっている事情、決して無視出来ない現状を解決すべく、尚且つ村の皆を安心させてあげる為にも、自分は勿論、エミリアは足を運ばなければならない。

当然だ。

 

 

「大丈夫エミリアたん。……俺が、俺たちがついてる。キミは1人じゃないから」

「―――っ。う、うん」

 

 

聖域に来て、ロズワールに追及する時以外めっきり口数が減ってしまっているエミリア。

それも仕方がない事なのだが、スバルとしてはちょっぴり寂しい。でも、直ぐ傍にレムも居るから………少々複雑な面持ちでも有ったりする。何せ、堂々と二股宣言かましているのだから、男としてそれはどうなのか! ……って思ったりしている。

当の本人たちが、問題なし! と言ってるので甘んじている部分はあるが………やはり生粋の日本人。一夫多妻制な世界じゃないから、戸惑いは隠せれないし、男としての甲斐性もいまいちだ。

その辺、ツカサは上手くやれるのだろうか……? と不意に思い浮かべて。

 

 

「ハッ」

 

 

突然、ラムが鼻で笑った。

やはり、読心の類が使える様なのがしっかりと解った瞬間だ。……主にツカサ関連で。

 

 

「取り合えず、ラムはロズワールの傍に居るとして」

「私達は、さっきスバルが言ってた様に大聖堂へ、ね」

「レム。バルスが粗相をしない様に見張りを宜しくね」

「はい姉様。スバル君の粗相なら、このレムにお任せ下さい!」

「俺が粗相する前提で話勧進めないでくれるかなぁ!?」

 

 

何とも幸先が悪い事この上ないが……兎に角先へと進まなければならないので、その第一歩としてスバルたちは大聖堂へと向かうのだった。

 

 

ロズワールが養生している家屋から、出て聖域の奥———中心に位置する所に大聖堂と呼ばれる場所がある。

そこまで時間は掛からず、簡単に到着出来た―――が、足を踏み入れた途端に、空気が変わったのを感じた。

此処へきて件の試練か!! ———と言う訳ではなく、これは悪い変化ではない。人の気配、そして何よりも喜びの声と共に奥から奥から押し寄せてきたのだ。

 

入って直ぐに1人がスバルたちに気付いて、あれよあれよと言う内にあっという間に、全員に伝わった。そして我さきにと姿を見せてくれたのだ。

 

 

「スバル様!」

「おお、よくぞご無事で!」

「他のみんなは元気ですか!?」

 

 

口々にそう言う彼らは、聖域へと避難していたアーラム村の住人達。

軟禁状態、と聞いて心穏やかではいられなかった。でも、声色を聞く限りじゃ間違いなく村で分かれた時と比較的代わってない。ここで―――聖域で悪い扱いはされていないと、ホッとする。

領主であるロズワールの言い分を疑っていた訳ではないのだが、……正直ロズワールには思う所があり過ぎて、以前よりも遥かに胡散臭く感じてしまっている今日この頃だから仕方ない。

 

 

「ここに避難する様に言ったのは俺だからな。皆が無事で何よりだ」

 

 

スバルの姿を皆が見て、皆が等しく笑顔になる。

そして、スバルの傍に居るエミリアを、レムを確認し――――軈て、もう1人誰かを探すかの様に村人たちは視線を泳がせた。

 

その視線が探しているのは誰なのか……当然スバルには、エミリアには、レムには解っている。

 

 

「スバル様こそご無事でよかった。……ツカサ様はご一緒じゃないのですか?」

「村の皆、向こうの皆は??」

 

 

当然だ。

誰もが思う疑問だろう。

 

ただ、村や残っている半分の住人よりも先にツカサの名が出た事にスバルは誇らしくも思えた。

そして、事前にラムと話していた通りの説明をする。

 

 

「兄弟も村も皆無事だ! 危ない連中は追っ払った! 村の皆も無事だし、王都避難組はもう戻ってきてる。誰も怪我してないし、ぴんしゃんしてるぜ」

【おおおお!!!】

 

 

胸を叩いて太鼓判を押すスバル。

住人たちからは歓声が上がる。……そして、何よりも重要なのはここだ。

 

 

「次いでに聞いて驚け~~!!」

 

 

ばばんっっ、といつも通りのテンションでスバルは指を天におっ立てて高らかに宣言した。

 

 

「もう、皆に隠したりしねぇ。此度の村を襲撃してきたのはクソッたれな魔女教連中だ!! そんでもって、ウチの兄弟は、そんな魔女教連中を蹴散らした! 400年間も世界に迷惑かけてる連中を、兄弟は撃退したんだ!! 今はちょいとばかり仕事し過ぎたから、王都で身体を休めてる。――――言伝は、【絶対に約束は守る。絶対に違えないから】だ!」

 

 

ツカサは村に来て、村で世話になった恩を忘れないと何度も言っていた。

魔獣騒ぎの時も率先して村を護ろうとしたし、子供たちも護った。

 

もう、この村が故郷も同然だから。絶対に何があっても守ってみせると、皆と約束したのだ。

 

それが例え、エミリア関連であったとしても。悪い噂が現実になったとしても。絶対に守る。

だから、エミリアを認めて欲しいと。

 

 

 

スバルよりも先に、怠惰と雌雄を決するよりも前に、村の人たちにツカサは伝えていた。

全てはこの時の為に―――だったんだとスバルは思いたい。

 

 

「で、では! お戻り次第、村を上げて感謝の念をお伝えしなければ、ですな!」

「世界にとっても福音! 吉報ですね!! そうだ! 腕を振るって御馳走を作りましょう!!」

 

「そのためにも、村に帰らないと……ですね。畑や家畜たちの事もありますし」

「でも、領主様のお怪我も心配です。我々の為にヒドイ怪我をなされたのですから」

 

 

これで一歩前進だ。

ツカサの現状を悪戯に皆に言って不安を煽る事はしない。

ツカサは必ず帰ってくる。ツカサのせいで、村の皆が悲しむなんて事はあってはならない、とラムに厳命されているのだ。

 

そして、皆の笑顔の中に確かにある純粋な明日の心配が次の課題だ。

離れ離れの家族、傷を負った領主。如何に魔女教と言う世界の厄災を退けた英雄が村に居て、アーラム村を故郷とし、加護を授けてくれているとはいえ、問題がなくなった訳じゃないのだ。

 

 

「えー皆もっかい注目してくれ!」

 

 

スバルはごほんっ! と大きく咳ばらいし、自分を見る様に促すと、皆は話を止めてスバルに注目した。

 

 

「もう、世界を脅かす厄災に怯える必要はないのだっっ!! ってカッコよく言えりゃ良いんだけど、まだ残ってる連中はいるっぽいからなぁ~~、綺麗事は無しだ! んでも、間違いなく、確実に村は大丈夫。今はみんなの帰りを待っている! ……目下、面倒事はラスト1つになった。ここから出るのが難しいって事だろ? 皆たぶん聞いてるよな?」

 

 

村に迫る厄災は退けた。

世界が怯える存在を、国を挙げても抗えない存在を撃退したと言う事実だけで、お祭り騒ぎになっても不思議じゃないけど、現在の問題から目を背ける訳にはいかない。

 

そう、スバルが言う様に皆が聞いている。

 

そして、王国最高とも名高い魔術師であるロズワールでさえも失敗し、大怪我を負っている事実も重くのしかかる。

 

それら全てを払拭する様にスバルは再び大きく胸を叩くと高らかに宣言した。

 

 

「大丈夫だ!! 何故なら、みんなを解放する為に、【試練】に挑んでくれる子がいるからだ!!」

「!! それは、もしやスバル様が!??」

「っととと、いや、俺じゃないんだ。俺で良いならいくらでもやったんだけど。その~~ほらほら、兄弟ばっかり見せ場取られてさ?? オレも兄弟(・・)って言う以上はもっともっと格好つけてぇ! って気分なんだけど……こればっかりは……ねぇ?」

 

 

意気込みに感化された村人の反応に、スバルは頭を掻いて苦笑する。

スバルとツカサの関係性は、最早村人全員が知る所だ。ラムの辛辣なコメントも同等以上に聞いてるので、特にどちらが上か? 等とは思った事は無い。

違いが互いを補い合い、信頼し合ってる事が十分解るので、それだけで十分なのだ。

 

それに何処となく背伸びをしようとしている様子那スバルを見て、微笑ましく感じたりもする。

 

 

「皆も知ってる筈だ。――――王選候補者のエミリア。彼女がこの《試練》に挑む。……必ず突破してくれる!」

「――――――!」

 

 

スバルの宣言に、村人たちは息を呑んだ。

そんな反応に頷き返したスバルは、大聖堂の入り口で待機していた少女、エミリアを手招きする。

 

一瞬だけ躊躇う姿を見せたが、それでもしっかりとした足取りで、ゆっくりと姿を見せた。

知らない訳がない。皆が良く知る銀髪の長い髪。風に揺らすその銀髪は何処となく神秘的で―――――それでいて、怨嗟も見える様な気がしてならない。

 

でも、そんな負の感情を押し退ける様に、スバルが……ツカサらの姿が重なる。

村を救い、世界をも救って見せようと厄災の前に立つ男たちの姿が。

 

だからか、エミリアの姿を見ても決して目を逸らせる者はいなかったのは。

 

 

エミリア自身もかなりの勇気をもって臨んでいる。

普段羽織っている【認識阻害】ローブ無しで向き合っている。

確かに怖い。逃げ出したい。隠れたい。……でも、それを決して許さないのは自分自身だ。

ここまでこれたのは、皆のおかげ。それなのに逃げるなんてあり得ない。

そんな事をしてしまったら――――自分自身を一生許せない。

 

 

「ま、待たせてしまってごめんなさい。領主、ロズワール・L・メイザースに代わって、この『聖域』の『試練』に私が挑みます。……私じゃ、頼りないかもしれないけど、きっと乗り越えて、皆を結界から解放して見せるから」

 

 

 

自信が無さげだったのは最初だけだった。

この場に立って口を開いたその一瞬だけ。

 

漲る自信———とは到底言えないが、それでも強い決意をその目に確かに見た気がした。

 

エミリアと村人との関係は当然複雑なものだった。

それが変わり始めたのはスバルやツカサが来てからの事、つまり極々最近の事。

村の子供でも知っていると言うハーフエルフが現れると魔女教が暴れ出すと言うまことしやかに囁かれる噂。

世界に甚大なる被害を齎している『怠惰』そして、そのインパクトの強さは右に出る者はいないとされる『強欲』。

それらが、こんな辺境の村に襲いに来るかもしれない存在。それがエミリア、ハーフエルフと言う認識。

 

でも、ツカサが来て……スバルが来て。村が元気になった。村が守られた。……魔女教と言う厄災まで退けた。

此処へきて、今更彼女の言う事など聞けない! と言う者はいないのも事実。

 

 

双方共に、顔を見合わせた瞬間以外は、誰もがエミリアの目を真っ直ぐ見て、時間だけが無情に過ぎてゆく。

軈てエミリアは服の裾をぎゅっ、と握りしめ……後ほんの数秒遅ければ心が揺さぶられて俯いてしまいそうだったのだが、それよりも早くアーラム村の村長である老婆が前に出た。

 

 

「私達は貴女様の人柄を良く耳にし聞いてきた筈でした。スバル様からは勿論、……ツカサ様からも。魔獣の手から村を救ってくれて、子供たちを護ってくれたそのお礼は貴女様に―――、とおっしゃってました。……ほんの少しでも気を許してくれればうれしい、と言うツカサ様の笑顔は今も目に浮かぶ様です。ですが、我々はそんな我欲がない無垢な願いを、我々は踏み躙ってしまった」

「―――――」

 

 

それは、避難する際の事だ。

最後はスバルの説得により、村から脱出する事を了承したメンバーだったが、当初よりエミリアが屋敷へ逃げてくれと提案した時は、その手を拒んだ。

 

感謝をしている。何か出来る事は、と言ってくれるなら……その気持ちを普段から頑張ってくれてる、凄くお世話にもなっている彼女に上げてください。

 

以前ツカサが言っていたことだ。

エミリアと付きっ切りで、傍に居るのはスバルの役目。ならば、ツカサ自身が出来る事は……? エミリアの味方であると言い切った自分が出来る事……それは決して強制ではない。

ただただ只管誠意を持ってエミリアは皆が思う様な存在ではない、と否定する事だけだった。

 

 

そんな願いも、自分達は拒んでしまったのだ。

口では了承していた筈なのに。村の子供たちは当然だと言っていたのに。分別の付く筈の大人が拒んでしまったのだ。

 

 

「どう言い繕うとも…、過去は消せません。私どもは貴女のその手を拒んでしまいました。それなのにも関わらず、またこうして手を差し伸べてくださる。……何故です? 王選のために?」

 

 

エミリアが控えている先の5人の候補者による王選。

その候補者である以上は、当然の事。

 

 

「私ども領民の支持を得たいから、頭を下げて御救い下さる、とおっしゃる。それは自然な事です。それならそれで構いません。ただ………恐ろしいのは理由が解らないからなのです」

「理由が、わからないこと……?」

「はい」

 

 

拒んだ。それも最悪な形で。

スバルにはその気持ちを伝え、汲んでくれた。今この場にツカサが居たとすれば、再び首を垂れる所存だ。

でも、エミリアに対してはどうしても恐怖の部分が勝ってしまう。

 

 

「ハーフエルフであるから、私どもは貴女を拒みました。……それなのにも関わらず、まだこうする。……その理由がわからない。ですから、それを知りたいのです。外ならぬ貴女様の口から」

 

 

如何にスバルやツカサが口で伝えたとしても………エミリアから直接聞かねば効力も弱まると言うものだ。恩義にかこつけて、従えと言うのならそれの方がまだ簡単なのかもしれない。

 

でも、それを決してしない。そう言う以上は……この恐怖を乗り越える為には……エミリアからの真摯な説明が必要だと思ったのだ。

 

 

それを聞いたエミリアは全てを悟り、老婆の目を真っ直ぐと見据え―――そして答えた。

これまでの自分の境遇。苛まれ続けてきた差別意識。

パックとたった2人で、味方は1人の精霊だけで過ごしてきた時間。

そんな時間を思い返しながら……答える。

 

本心からの言葉。借り物ではなく、他ならぬ自分の言葉で。

 

 

「私には……、今立派な事を堪えられる自信はありません。どう頑張っても、借り物の上辺な言葉だって、自分でも思っちゃうから。……それに、すごーく説得力があって、皆の事を納得させられる様な言葉も、上げられる自信がありません」

 

 

拙く、それでも自分の足で立ち、自分の言葉で紡ぐ。

何故、そうしたいのか。純然たる思いを言の葉に乗せて。

 

 

「ただ、私は何日か……短い時間だけど、ここにはいない皆の家族と過ごしました。……大好きな人と離れ離れになってしまったラム()も、いました。過ごしてきたからこそ、強く改めて思ったんです。大好きな人とは、家族とは、一緒にいなくちゃ駄目なんだって」

 

 

自分の胸元を探る様に触れるのは光の乏しい結晶石。

ある日を境に、そこからパックは顔を出さなくなった。

何故かは解らないが……まだたった数日程度だけど、心の底から心細い。

それに、ラムの事も。ラムの憔悴しきった姿も見ている。

 

自分の目で、耳で、心で感じてきたからこそ、強く訴える。

 

 

「私は、あなた達を家族のところに帰してあげたい。そう約束を――――……私に出来る事ならなんだってするって誓ったの。それを果たしたい。ただ、それだけです」

「……………」

「皆から支持してもらいたい、だとかは、正直あんまり考えてませんでした。でも、みんなとは、……みんなとは、えっと……仲良く、したい……とは、思ってます」

 

 

強い決意を持ってはいたが……どうしても、最後の最後は急速に語調が弱くなってしまう。

 

それでも、その想いは確かに伝わった。

裏表なく、心からの言葉だと。

 

 

「エミリア様」

「は、はい」

「都合のいいとは思われるのは承知しております。――――ですが、どうか……よろしくお願いします」

 

 

老婆を始め、前に出ていた村の皆はそれぞれ頭を下げた。

心からの想いを、彼女のこれまでの人生の壮絶さを、……ほんの一瞬かもしれないが、確かにハッキリと感じられたから。

 

 

『この人なら……信じられる』

 

 

誰かに頼まれたから、誰かに願われたから。

そんなのじゃない。

エミリア自身を見て、聞いて、感じて……そう結論した。

村長である老婆の言葉に異議を唱える者は誰も居なかった。

 

 

それを見たエミリアは、緊張の糸が切れてしまったのか……、どういう状況なのか一瞬解らず混乱して、軈てどうにかこうにか頑張って言葉にする。

 

 

「あ、う、こ、こちらこそ! 不束者ですが、よろしくお願いしますっっ!!」

「不束者って、きょうび聞かねぇなぁ」

 

 

咄嗟に出てしまうスバルの中では死語。こちらの世界では解らないが、少なくとも日常会話? をしている中では、聞かない言葉だから、もう死語で良いと思うとやや乱暴気味にき目つつ、苦笑いをした。

 

エミリアにとっての大きな一歩。

厳密にはまだ試練が待ち構えているのだから進んでないかもしれないが、それでも間違いなく大きな一歩となるだろう。

 

 

「エミリア様は、随分と変わられたわ」

「ああ。そうだな」

「それもツカサのおかげね。バルスの役立たずとは違って」

「なんでだよ! ………いや、違うぞラム。あの子が自分で考えた。考えに考えた結果が今に現れた。決して人任せじゃなかった筈だ」

「―――――……まさか、バルスに言い負かされる日が来るとは思ってもなかったわ。今のはラムの失言ね。訂正する」

 

 

いつの間にか、スバルの傍に居たレムの直ぐ隣にラムが来ていた。

ロズワールの傍に居る筈だったが、いつの間にここに来ていたのだろう?

 

 

「……ラム自身も、エミリア様の姿はこの目で見ておかないといけないと思ったからよ。……ツカサの変わりに」

「あ~~、成程。納得だ。お前がロズワールよりも優先させる事っていやぁ、レム若しくは兄弟関係以外ないもんな」

「バルス程度に納得できる程、易くはないわ。身の程を知りなさい」

 

 

解り切ってる、と言わんばかりのスバルにラムは鼻で笑う。いつもの『ハッ』こそは言っていない様だが。

 

 

「姉様。ロズワール様の方は……? レムが言ってきましょうか?」

「大丈夫よ。ガーフに任せているもの。ぞんざいな扱いをすればどうなるか、身を持って知らせるって意味じゃ躾も出来てるわ」

「……惚れた女の弱みってヤツなのかねぇ。報われねぇのが何ともまぁ……ってのは置いといてもだ。ラムもエミリアの心配サンキューな。……今は兄弟の事でいっぱいって時に。ほんと嬉しいぜ」

 

 

スバルのモノ言いに、ラムは今度はハッキリと鼻で笑う。

 

 

「ハッ。何を言ってるか解らないわ。バルスに感謝される様な事をした覚えもする必要も皆無よ。……と言いたい所だけど、ラムは慈悲と慈愛の塊だもの。バルスが感涙してしまうのも無理の無い話」

「いや、感涙って。別に泣いてねぇって」

「ロズワール様が身を削った結果を見届けると言う理由もある。勝手に完結して、感慨耽るのは止めておく事ね。恥ずかしい」

「誰が慈悲だ! 誰が慈愛だ! 兄弟やレム、ロズワールに向けるほんの1割でも俺にくれても良いんだぜ!? ———っつぅいつも通りなツッコミはさておきだ。ロズワールもマジで身体張ったな。とんでもねぇよ。アレ」

「……………」

 

 

ロズワールの傷については、ラム自身も本人に直接大事無いか聞いている。

当然、心配もしている。

 

 

 

 

 

 

でも、それを押し退けてでも―――――あの場で、ロズワールに聞かなければならない事がラムにはあったんだ。

 

 

 

 

 

『……ロズワール様。新たな記載(・・・・・)がありましたか?』

 

 

 

 

 

全ては想い人に通ずる道の為に……。

 

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