Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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再会・6人の魔女

 

 

 

『―――まずは己の過去と向き合え』

 

 

 

意識が覚醒していく。

今の今まで、己が何なのか、何をしているのか、全てが解らなかった筈だった。ただ、本能のままに……本能が赴くままに身体が勝手に動いていただけだった。

 

でも、急に意識が覚醒し、目の前の光景が脳に叩き込まれるのを感じた。

 

 

鮮明に映る。世界が彩っていく。

その目の前には……彼女(・・)が居た。

 

 

命を賭しても護りたい。彼女を助ける為ならばこの命は惜しくない。

繰り返す時、刻まれる悲劇、それらを全てを抱いてやり直し続けた……。必ず戻ってくる、皆で無事に。死力を尽くして最後の最後まで戦い続けると心に誓った矢先の彼女の死(・・・・)

 

それだけは駄目だった。どうしても乗り越える事が出来なかった。

その光景が脳裏に焼き付いて、離れなかった。冷たくなって逝く身体、生気が無くなっていく瞳。

 

 

『あなたにあえて、ラムはしあわせだった』

 

 

聞きたくない今際の言葉。

最後は幸せそうな顔だった筈……なのに、その顔は歪んで見えてしまう。

 

 

繰り返す時の中で全てを抱きしめて、魂に刻んで、同じ事を繰り返さない様に。

1人、また1人とあの男に蹂躙され、戻る度にそれらを防ぎ、いなし、躱して……悲劇の未来の数だけ、それを少しでも減らす様に、としていた彼の精神に、魂に、致命的な一撃を与えてしまったのだ。

 

 

彼女こそが、この世界で自分が生きた証だから。

彼女が居なくなる世界に、1人だけで留まる事なんて出来ないから。

 

 

 

「―――つか……ッッ」

 

 

 

そんな彼女が今目の前で苦しんでいる。傷ついている。何故かは解らないが、まるで肉体の中で何かが暴れているかの様な、拒絶反応を示している様な、彼女の身体が血塗れになって行く。

助けた筈だった。

大切な約束を破ってしまう事実は覆せないが、それでも彼女を助ける事が出来た筈だった。

なのに―――――

 

 

『―――まずは己の過去と向き合え』

「五月蠅い!!」

 

 

再び、耳元で囁かれる声。開かれる闇。それが良い気付けになった。

それらを一蹴する様に振り払い、彼女の元へと手を伸ばした。

 

 

「ラムッッ!!」

 

 

愛する人の名を叫び、その身体を抱きしめる。

いつだったか、こうやって彼女が……ラムがしてくれた様に。

強く強く抱きしめ続ける。

 

 

「ぁ―――――」

 

 

そして、一体何が作用したのか、或いは想いの強さが奇跡を起こしたとでも言えば良いのか。

彼が知る由もないこの場所……墓所の中。

そこでは資格を持たない者は拒絶され、肉体に致命的なダメージを負う仕様になっている。

ラムも持たざる者。だから、この場で苦しみ続けるしかない筈……だったが、強く抱きしめた結果、その肉体の崩壊を止める事が出来た。

 

 

『―――まずは己の過去と向き合え』

「しつこい!! オレに過去なんかある訳が――――」

 

 

再三に渡る囁きを聞いた途端に力が抜けていく。

抗う余地がないとでもいうのか、1度目、2度目の時は完全に拒絶出来ていた筈なのに、3度目には何も出来ず力が抜けてしまった。

 

でも、それでもラムを離す訳にはいかない。この腕の力だけは抜く訳にはいかない。

 

力なく目を瞑っている彼女を見ると、どうやら自身と同じ様にあの囁きが原因で何かが起こるのだと言う事は想像できる。

 

 

 

 

 

『やっぱり凄い。人と言うモノは……。もう何度も見たんだけど、その度に思うし、言える。全く見ていて飽きないよ』

 

 

また、声が聞こえてきた気がした。

そして、その声に混ざる形で――――。

 

 

『あっ、ここに居たーーー! アレだな! えっと、えっと……。ぶーーー! なんでか出てこない! でも解るぞ! パパ、って感じなヤツな』

 

 

騒がしい声も聞こえてきた……気がする。

随分と幼い感じの声。でも、喜んでいるのが解る。姿が見えないがそれは解る。

 

 

『ふぅ。全く、いきなり駆け出すもんじゃないさね。はぁ。まぁ、私もテュフォンの事を言えた立場じゃないが……。はぁ。立つのも歩くのも怠い』

 

 

続けて気怠く、陰鬱とした声も聞こえてきた。

でも不思議とその気怠さの中に力強い生気も感じられるから不思議だ。怠い、と口にしている様だが、投げ出したりする気は無さそうなのがその声から感じられる。

 

 

『まぁぁぁてぇぇぇぇ!! 私を除け者にするつもり!? そんなのダメっ! 許せない! 怒髪天突破なんだからぁぁぁ!! ようやく、ようやく全て受け止めてくれる相手が出来たのに! ダメダメっ! ずるいずるい! 公平に! 争う事なく、人類皆平等の理想論で! これが一番平和じゃん! ちょっとこっち見なさいよ!! 無視しないでよ!! 無視すんなっっ!!』

 

 

更に続けて、口調こそは怒っている様なんだけど、悲痛な面持ちが容易に想像できる様な泣き声。泣き大声で割って入ってくる声があった。

何にそんなにイラつく、怒っているのか、ハッキリとした事は解らないが、聞く限り除け者にされる事を嫌がってる様に感じる。

 

 

『み、皆……。あ、愛に目覚めたん、だね。うん、愛、は良い事……なんだよ。だから、私はとても嬉しい。とても、嬉しい。まっすぐ、みてくれる。なくした、ずっと、ずっと前に、なくしちゃった事を、おもい、ださせてくれる……。私に向けられない愛。だから、……振り向かせたい。私も負けたくない』

 

 

また次に出てきた声は温厚、それでいて気弱。

弱弱しくも最後はハッキリと意見を言い切る。宣戦布告の気概を感じさせる。

弱腰な声から一転する様は、何処か狂気に近しいモノも感じられる。それはこの声が何度も使っている《愛》とは真逆な感性だと思えるのだが、それでも留まる様子は見られない。

 

 

『あはぁぁ、ダフネもぉ~皆の気持ちぃ、わかっちゃうのがほんと不思議なんですよぉ~~。何せぇ、生きる上で一番大事なダフネの欲求をぉ~、ぜぇ~んぶ後回しにしちゃう事が出来る。出来てるんですからぁ~。だってぇ、そもそもぉ、その愛ぃ、ってのが無くてもぉ――――【人は死んだりしない】 食べられなかったら人は死んじゃうのに……死さえも後回しにしてでも欲するモノ(・・)。……なるほどぉ、これ以上ないくらいお腹に疼いちゃいますよねぇ~』

 

 

続けて気の抜ける様な間延びした喋り方でおっとりマイペース―――かと思えば、後半は鬼気迫ると言っても過言ではない底冷えする様な声。

己の欲に何よりも忠実で、我慢したりしない様で……その根底にある欲をも抑えてトップに躍り出たナニカに夢中な様だ。

いや、それはどの声にも言える事。

 

 

聞こえてきたのは女性であろう無数の声。

 

 

だが、彼女らが見ているのは聞いているこちら側ではない。

それがナニカ、何なのか解らない……が。

 

 

「………なに、か?」

 

 

ここで点と点が繋がる感覚がした。

全てを忘れてしまっていたから、思い出す事が遅れてしまったのだ。

この世界においても異質を極まる様な声をも魅了し、釘付けにしてしまう様な存在なぞ、自分が知る限りでは1つしかない。

 

ある意味魂の救済。

またある意味全ての元凶。

またまたある意味自身の半身。

またまたまたある意味自分の相棒。

またまたまたまたある意味世界の厄災。

またまたまたまたまたある意味全ての災厄。……etc。

 

 

ゼロから苦しみ続ける(・・・・・・・・・・)時、必ず傍に居る存在。

 

 

 

 

 

『キミは本気で隠れようとしていなかった、って事だよね? そう判断して良いって事だろう? いや、間違いない。ボクはそう断言できる。そう思っている。何故ならば、キミとこんなにも早く会える事が出来たんだから、それこそが証明じゃないか。キミと言う超常を超える存在が本気で隠れるとなると、違う次元……いやいや、この世界とは違う別の世界へと旅立つ事だって出来る筈だろう? なのに、こうも早くに再会する事が出来た。ボクがキミを想う様に、キミもボクを想ってくれている、とも言い換えて良いかな? ああ、それよりもまずはここは再会を祝して乾杯といきたい所だね。―――まぁ、他の魔女達も一緒だって所は、ボクに残ってる乙女な部分がどうしようもなく複雑だと嘆いているけれど、それも最早どうでも良いんだ。だってキミとまた会えた。別れた当初、ボクたちの記憶からキミの存在そのものが消えてからと言うモノ、その片鱗をどうにかかき集めて、魔女達で知恵と力を振り絞って……どうにか形に出来たのは良いんだけれど、次に思ったのは会えるのは何百年? 何千年? って言う絶望に似たそれさ。……いや、ある意味覚悟していたとも言うべきモノだね。なのにこうも早くに再会できた! うんうん、やっぱりキミにとってもボクは好ましい存在なのだと、その域にまで到達できたのだと、言えるのかな? 少しくらい己惚れても良いのよね? 夢を見たって良いって思うんだ。だってボクは乙女だから。今日と言う日ほど、ボクは女の身体で生まれてきて良かった、と思った事は無いさ。そう、やっぱり繋がっているんだ。ボクたちはきっと繋がっている。数多の世界を巡り、数多の世界を流浪してきたキミは、今は間違いなくボクと、この世界と繋がっている。繋がりは断ち切りたくない筈、だったよね? ボクもそうなんだ。一度でも結ばれたモノは二度とは離したくないモノなのさ。でもやっぱり複雑なのは他の魔女達が居る事だけど、そこはボクも頑張るから。ボクの昔の知見。男は最初の男になりたがり、女は最後の女になりたがる、と言うモノだっていう。当初はボクには理解しかねる感情だと思っていたけれど、今ならハッキリと理解できるよ。例え後回しになったとしても、例え、蜜月に割り込みが来て、更に後に回されたとしても、最後の女になる事が出来るのなら、全て目を瞑れる。だからこそボクはこの機を逃すまい、と頑張れると思うよ。もう実体のない魂だけの存在みたいなモノだけど、だからこそより強く、魂と魂で結ばれる事が出来る筈なんだ。だってキミを想うだけで頬が熱く、赤く、強く求める気持ちが止まないんだ。以前のキミは……ボクでさえ思い出す事が出来ない部分が多いかもしれないけど、拒んだりはしなかったよ。ボクの全てを受け止めてくれる。例えそれが過剰な愛、一方的な愛だったとしても、此処にいる全ての魔女の愛―――様々な形の想いを受け止めるだけの器量を持つキミはいつも笑顔で受け止めてくれてた筈さ。アソビをしたい、とも確か言っていたと思う。うん。間違いない。頑張って頑張って記憶の奥底を、深層域を見たからボクは解る。ボクはキミとアソビたい。ずっとずっとアソビたい。1人にさせはしない。ボクの知らない数多の世界を知るキミだけど、きっとキミは、まだまだこの世界の事を知らない筈なんだ。ボクの飽くなき強欲は、この世界の知識・知恵と言う意味では最高峰だと自負している。それに、その……ボクはボクの知識を総動員すれば、きっと良い伴侶……え、えへへへ。……うん、きっとキミの傍に立つ女として相応しくなってみせられる。これから、この世界を共に歩んでいける。だから、ボクの手を取って欲しいんだ!』

 

 

………これはまだ一部だ。ほんの一部に過ぎない。

本音の中の本音、心で思った事がそのまま口に出ているかの様に止まる事なく息継ぎする事もなく、淀みなく……こちらも狂気の一言が似合う性質を持っている事だろう。存在感が半端なく、最後に聞こえてきた声なのに、全てを押し退けていく強さが感じられる。

 

でも、勿論周囲の声も負けてはいない。

 

 

『あーー、ドナ! バルの方みてる筈なのに、すっぽかすのわるいんだぞ!』

 

幼い声が抗議する。

でも、その抗議に対してしっかり反論もしている。

 

『何を言うテュフォン。そもそも、ボクがかの存在を感知出来たからこそ、この墓所へ案内する事が出来たんだ! ならば、優先されるに然りべきだ、と判断するのはごく自然な事だと思うんだが』

 

続々と声が集まってくる。

 

 

『はぁ。試練を与えている最中に、ふぅ。ほっぽり出して別の男に、本命に(・・・)靡く。ふぅ。如何に魔女とはいえ随分とはしたない気がするのは私だけじゃないさね。はぁ』

『そうよそうよ! あの子(・・・)が可哀想じゃん! そっちの試練に関与できるのはアンタだけなんだから、最後までやったげなよ! きっと、泣いてるよ!!? アタシが殴って癒して上げれないのがもどかしい! だからさっさと戻れエキドナっ!!』

『愛、は、譲れない……よ? 皆で共有するの、悪く無い……って、思うけど。エキドナちゃんは、独占しちゃう、感じがするから。―――なら、私だって負けたくない』

『あはぁ~~、ドナドナってば、浮気性なんですねぇ~。ドナドナの分まで、彼をペロペロするので、こっちはだいじょーぶですよぉ~~』

 

 

集中砲火を受けている様だ。

 

 

 

これは、いつまでも終わらない。永遠に続くだろう……と思える。

 

でも、漸く……漸く……。先に進む。

 

 

 

 

『……まずは己の過去と向き合え』

 

 

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