死ぬなよ、絶対に死ぬなよ! ※コレは、フリではありません。   作:リゼロ良し

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アーラム村のなんでも屋

 

「わーーー、ツカサっ! 今の、今のオレにもしてくれ!!」

「あ、リュカ、ズルイ!! 次、オレオレ!!」

 

 

ツカサはアーラム村へと来ていた。

来たばかりの時は、正直よそ者だと言う事や、身分を証明するモノが全くない正体不明人物として、警戒される……と、少なからず思っていたのだが、開けてみれば拍子抜け。

 

 

村の皆からは、思いのほか歓迎ムードだった。

 

 

ロズワールの計らいだろうか、極めて優秀な他国の魔法使いである、と言う紹介をされていた。

 

 

現在、ここルグニカ王国は 穏当とは決して言えない状況であり、ほぼ鎖国状態が続いているのにも関わらず、他の国からとは少々問題があるのでは? と思っていたツカサだが、本当に拍子抜けするほど あっさりと認めて貰えた。

 

 

 

 

 

 

 

ただの居候ではなく、村の宿を借り、肉体労働でも何でも請け負う、働く、事を伝えている。なんでもやる、なんでも屋ツカサを始めるつもりだった。

 

 

特に気を使われる事なく、接してくれてるのは大変ありがたい事だ。ただ、《ツカサ様》と様付けされて、敬語である事だけはちょっぴり不満だが。

 

 

 

ただ、今ツカサと一緒に居る相手、子供達は一切遠慮してないのが解る。

 

 

 

現在、絶賛子供達との交流中―――と言う名の、遊び相手を務めているから。

 

 

「すご~~い、リュカが飛んでる!!」

「あんまり、高くは上げないぞー? この辺りで我慢しておいてくれよー!」

 

 

木と同じくらいの高さ、精々家より高いくらいの高さ。

あまり高く上げ過ぎて、万が一の事があったら大変だ。………子供達には、より高度を要求されているが、断固として拒否の構え、である。

 

「わーーーはっはっはっは!! オレ、鳥になってる~~!! ツカサっ、もっともっと!!」

「………聞いちゃいないよ、まったく」

 

 

手を翳し、しっかりとコントロールをしつつ、苦笑いをするツカサ。

因みに、ツカサの相棒? であるクルルは現在こちらの村には来ていなかったりする。

 

理由はスバルが大層気に入った事、ベアトリスも気に入っていて、スバルとの間で火花(笑)が飛び散っていた事も有り、本人(クルル)了承の元、ロズワール邸に置いてきたのである。

 

 

―――勿論、クルルの意思で戻ってくる事も可。

 

 

なので、ツカサの元に帰ってきたい時に帰ってくる手筈になっていた。

それを聞いて、エミリアとパックが驚いたのは無理もない事だった。

 

精霊術士と精霊が、精霊は表に出るだけでマナを消費する。消費が一定を超えてしまうと、依り代としている結晶石へと戻るのが通常……なのだが、クルルは一体いつマナ切れを起こしているのか? 何より、結晶石はどれ?? と、色んな意味で驚き、且つツカサの方を見てみたが、生憎 笑って誤魔化すだけに留めた。読心をパックは使えるが、基本 エミリアに害意、悪意の類が無い事は クルルを通してはっきりしているので、そこまで追求する事は無かったのである。

 

 

「クルルが居たら、大人気だっただろうなぁ……」

「え? クルル、ってなーに??」

 

 

アーラム村(ココ)に居ないクルルの事を考えていたら、村の子供の1人である、ペトラに話しかけられた。 直感でも働いたのか、飛ぶ事に注目していた筈なのに、クルルの事が気になってる様子。

 

 

「ん~~、(ペット? いや、そんな可愛げのあるヤツじゃない様な……)えーっと アレだよ、俺に引っ付いてきてた精霊。今は ロズワールさんの屋敷に転がり込んでるよ」

「凄いっ! せいれいとお話してみたい!」

「おおっと、解った解った。ペトラ落ち着いて。戻ってきたら皆に合わせてあげるから」

 

 

クルルの話に物凄く食いついた。

これで間違いない。……クルルと会えば尚更喜ぶであろう事が。

 

 

「(クルルのおかげでアイツ(・・・)に対する精神的ダメージ軽減に繋がりそうだな)」

 

 

クルルが戻ってきた所で、子供達の玩具になって貰えれば万事問題なし。

何なら、各ご家庭に交代交代で居候させて貰えれば良い。………食費に関しては お給金から差し引いて貰えれば問題ないだろう。

 

 

「ツカサーーー! リュカばっかりズルイっ!」

「そろそろ、わたしもっ!!」

「あ、ペトラと一緒に飛びたい!」

「ずるい! オレもオレも!!」

 

 

色々と考え込んでいた所を、村の子供、ミルドやペトラ、カイン、ダイン。

娯楽提供のツカサは本日も大忙しだ。

 

そして、背後から子供のものではない、大人の声が聞こえてくる。

もう直ぐ、昼食の時間だと言う声が。

 

リュカを下ろし、そして最後に飛ぶ事が出来なかったメンバー一様に、寂しそうな辛そうな顔をしていたので。

 

 

「よっしゃ。んじゃ 最後は皆で飛んでみるか!」

「「「「「わーい!!」」」」」

 

 

大人たちの了承を得て、最後の最後、と言う事で場の全員で皆で手を繋ぎ、輪の形で空を浮遊。

村人達皆、その光景を笑顔で見守り続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日目。

 

アーラム村にラムがやって来た。

香辛料を買いに来たとの事だ。

 

 

「……似合わないわね。店番」

「そう? と言うより、店番に似合うも似合わないも無いと思うけど。これでも一通りは仕込まれたつもりだよ? こう言う接客業は笑顔が第一」

 

 

ニッ、と笑うツカサを見て、ラムはため息。

 

 

「呆れ果てる程、気が抜けた顔してるわ」

「そりゃそうだね。間違ってないよ。………ここに来るまでにほんと、色々大変だったから」

 

 

ラムの言葉を聞いて、否定する気はさらさらなく、そのまま肯定した。

皮肉のつもりだったのかもしれないが、それでも 今の状況には満足している。

 

ここまでくるのに大変だったのは間違いない。

 

 

「……目が覚めたら でっかい鯨に遭遇。その後 オットーと友達になれたのは良かったけど、行く先々で何度も野盗みたいなのに出くわすは、気持ち悪そうな連中を見かけるわ、王都に着いたらそれなりに大丈夫かと思ったのに、精神異常者と戦うわ。………漸く、安寧の時を得た、って感じだよ。ほんと、この村は良い所だ」

 

 

裏表のない表情、とはこの事なのだろう。

ラムは、ツカサの表情を見てそう感じた。

 

話を聞いて、まだまだ謎多き存在である事は重々承知している。

何処から来たのか、自分達とはまた違った魔法を使ってる事、大精霊のマナをも快復させる精霊を従えている事。

 

 

何より―――あの日……、ロズワールが持つ本の内容と、目の前の男の関係性。

 

 

確信はない。

ロズワールの持つ、本も あの日から沈黙したままだ。ロズワール自身も変わった所はない、とまで言っている。もし、新たな更新事項があるならば、それなりの指示を受ける筈だが、現時点では、ツカサと言う男を時折見に来る事くらいしか受けていない。

 

監視対象とまで言ってしまい、不快に思われて、もしも彼が何処か別の場所へ……となってしまったら、運命に導かれるがごとく、このアラーム村、ロズワール邸へとやって来た男を失ってしまう。

 

それだけはロズワールは回避しなければならないのだ。

 

 

 

 

「ハァ……。さっさと仕事してくれる? 買い出しメモよ」

「ラムから話しをしてきたのに、って野暮は言わないよ。大体解ってきたし」

「ハッ! こんな短期間でラムの事を知った様に言うなんて、身の程知らずにも程があるわ」

「口は、凄く悪いけど。……ラムは優しい人だ、って事くらいオレには解るよ」

「……………」

 

 

ツカサは買い出しメモを受け取ると、せっせとそのメモの通りに準備をする。

 

 

「こーんなに、傲慢な物言いされても、何だか不快には思えないし」

「………やっぱり罵声を浴びて興奮するど変態?」

「そこだけは否定しておくよ。オレは痛いのも苦しいのも嫌な思いをするのも好きじゃない。……はい」

 

 

一通り問題なく準備された事をラムは確認して、再度ため息。

 

 

「また来るわ。精々村の為、引いてはロズワール様、引いては、このラムの役に立てるように頑張りなさい」

「取り合えず まず第一に村の為に頑張る所から、始めるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3日目。

 

薬草・香草を採取する為に森の中へ。

アーラム村の青年団の1人、ゲルトと共に。

 

そこで問題が発生した。

 

 

「………危なくない? こんな狂暴な犬がうろついてたら」

「いえ、本来なら、結界が張られているから、魔獣がここまで来れる筈が……」

「! 成程」

 

 

森の中で、犬……ではなく、魔獣数体に襲われたのである。

幸いにもゲルトは武装していた事と、何よりツカサと一緒だったから、怪我は無かった。……でも、問題なのは 本来なら入ってこられる筈の無い所にまで、魔獣が侵入してきた、と言う事だろうか。

 

 

「ゲルト。屋敷に連絡できるかな? 多分、結界が切れてるんだ。だから、ここまで入ってきた。………見た感じ、あの石とか機能してない様に見える」

 

 

ツカサは指をさして、ゲルトに聞く。

この村、ここの領主はロズワール。王国筆頭の魔法使いだ。結界が切れたのを修正する事位出来る筈だし、何よりしなければならない筈だ。

 

領土を守るのも、領主の仕事の筈だから。

 

 

「大丈夫です! 屋敷はそこまで遠くないし、ひとっ走り知らせにいけば直ぐにでも」

「了解。じゃあ、オレは魔獣(あいつら)が結界の内側に入ってこない様に、見張ってるから、宜しく!」

 

 

例え1匹でも通したら、被害が出るかもしれない。

死角に死角忍び寄り、あの俊敏さと鋭利な牙で襲ってきたら………、特に村の子供達を襲ったら? と思えば、ここから離れるワケにはいかない。

 

だが、ゲルトは 顔を顰めた。

 

 

「し、しかし、ツカサ様をおひとり残していくのは……っ」

 

 

そう、ツカサ1人残していくことに、だ。でも、ツカサは軽く首を振って笑顔で答える。

 

 

「大丈夫大丈夫! さっきの見てたでしょ? アレくらいの獣になら負けないよ」

「ッ……、す、すみません! すぐ、すぐに戻ってきます!」

 

 

笑顔で言った事で、少し背中を押す事が出来たのか、最善を尽くすには、ここで押し問答するよりも、1秒でも早く結界を修復する事だと言う事。それが解ったのか、ゲルトは駆け出した。

 

 

「了解! お礼は、様付けの呼び方を外してもらえたら嬉しいかな?」

「っっ、か、考えておきます!」

「了解しました、じゃないんだ……」

 

 

ゲルトが動いた事で、それに反応したのか、或いは 元々迫ってきていたのかは解らないが、獣臭がきつくなり、唸りと共に再び数体の魔獣が森の奥から 飛びだしてきた。

 

 

「きゅきゅ?」

「大丈夫だ。1人で余裕」

 

 

だが、何ら動じる事なく、ツカサは右手に暴風竜巻を、左手に炎を纏わせた。

クルルには何もさせず、ただ自身の魔法だけで対処。

 

 

「テンペストとエクスプロージョン。森林火災にならない程度に……っ!」

 

 

合わさった二つは、炎を纏う竜巻となり、魔獣たちを一気に巻き上げた上で消失させた。

魔獣には怖れ、と言うモノは存在しないのだろうか、炎を見ても一切怯む事が無い。仲間たちが焦げていくと言うのに、それでも怯まない。

 

 

 

 

結果 仕留めた魔獣は7体。

 

 

 

 

慌てた様子でやって来たエミリアが結界を結びなおすまで続いた。

少々焼けた所があったが、それはエミリアの氷の魔法で何とか消火。

 

 

「やー、解りやすくって、直ぐに見つけれたよ」

「ほんっと、すごーーくありがとう!」

 

 

ツカサの方が恐縮してしまう程、エミリアは頭を下げた。

 

 

「大丈夫ですよ、エミリアさん。オレとゲルトが早くに気付けて本当に良かった……」

「きゅきゅきゅっ!」

「クルルもありがとー。……ほんと、ツカサには リアの側近として仕えて貰いたい気持ちが沸々と湧いてきてるよー」

「あははは……。それは光栄。エミリアさんとは友達だから、困った事が有れば、何でも力を貸しますよ。約束します」

「あ………」

 

 

パックとクルルが、恒例になりつつあるハイタッチを交わしつつ……パックはツカサを見てそう言った。

エミリアには1人でも多くの仲間が居る。……ただ、人選をすれば良いという分けではない。ある程度任せて大丈夫かどうかを見極めなければならない。

 

パックにとって、誰よりも大切な存在であるのがエミリアだからだ。……彼女無しでは、もう何も考えられない。―――彼女が居ない世界など、在ってはならないから。

 

 

 

ツカサも知り合って日も浅い。読心を使い、ツカサがエミリアに対して害意や悪意が一切ない事は解ってはいても、まだ早計な段階だった。……だが、それを補ったのはクルルと言う精霊の存在だった。

 

 

 

 

そして、エミリアもツカサの事は注目している。

同じ精霊を扱う者同士である事と、スバル同様 ハーフエルフを邪険にしたりしない事、そして何より―――友達である、と言った事。

 

 

「あ、でも スバル辺りがまた喧しくなっちゃいそうですから。そこは エミリアさんが何とかしてください。下男になった様ですし? ロズワールさんより上のエミリアさんの言葉なら、絶対の筈でしょ?」

「ふ、ふふふ。そうね。スバルは時々……いや、違うかな? すごーく変だから、しっかり叱ってあげなくちゃ」

 

 

エミリアが笑えば、パックも同じく笑う。

仄々とした空間が流れたのだった。

 

 

 

――――その日の夜、今回の件を パックがスバルに話した所、盛大に対抗心を燃やしたのは また別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして4日目。

 

スバルが村へとやって来た。

 

 

 

 

「エミリアたんは、わたせーーーんっっ!! いっくら、兄弟が相手でも、まけられーーーんっっ!!」

 

「おおーー、やしきの人だーー!」

「あたらしいヤツだーーー!!」

「ツカサが言ってたあそんでも良いやつだーー!」

「目つきわるーーい!」

 

「ぐえええええっっ!!」

 

 

スバルは、ツカサを見るなり突進してきたが、見事に子供たちに返り討ちにされたのである。

 

 

「あははは。何やってんの」

 

 

転んで泥だらけになって……、ラムには白い目で見られて散々な結果となったスバル。

そのまま、ツカサとの事、エミリアとの良い雰囲気(パック談)の追及は一切できず、そのまま子供らと遊びまくるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このまま―――特に何も問題ない。

 

緩やかに穏やかに時間が流れていく……と思っていたその日に、悲劇は起きた。

 

 

 

 

翌日を迎える事が出来(・・・・・・・・・・)なかったのである(・・・・・・・・)

 

 

 

 


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