死ぬなよ、絶対に死ぬなよ! ※コレは、フリではありません。   作:リゼロ良し

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死ぬなよ!絶対に死ぬなよ!

 

 

死に戻りの後の光景……。

 

 

それは大体筋書き通りの筈だった。

4度目でクリアした王都では、何度も何度も店のオヤジに声を掛けられる所から始まる。

様々な人間が居るから、ほんの少しの選択の差で大きく変わる事だってあるかもしれない。

 

例えば、自身の経験として 路地裏で毎度チンピラ3人に絡まれる時、フェルトやエミリアと出会っていたというのに、4度目にはラインハルトだった、と言った様に。

筋書き通りにいかなければ、前回通りにはいかない。ほんの些細な事であっても、変わる事だってある。

 

――――だが、それでも、ここまで(・・・・)変わるとは誰が予想できようか。

 

 

「エミリア!? ツカサ!!」

 

 

先ほどまでの葛藤や苦悩を忘れて、スバルは駆け出した。

ツカサは、垣根無しに恩人だ。腸狩りから身を守ってくれた。ベアトリスの理不尽なマナ徴収と言う名の拷問からも救ってくれた。

得体のしれない、と言いつつも 友であると言ってくれて、ふざけ半分だった発言である兄弟にも乗ってくれた。

 

 

エミリアがスバルの心の中の大半を占めているのは間違いないが、事男性の部(・・・・)と言うスペースがあるとすれば、紛れも無い。この世界では1,2を争う男だから。

 

 

 

「パック! 起きて」

「うん、大丈夫だよ、リア」

 

 

 

そして、ツカサを発見したのは スバルとほぼ同時だった。

蹲ってる姿を見て、転んだのか? と何処か軽く考えていたのだが、ツカサから吐き出される血を見て サァッ…… と顔が青くなるのと同時に駆けだしたのだ。

 

 

「だいじょうぶ、だいじょうぶ……」

「ちっとも大丈夫に見えないから。ほら 何とかするよ。見せてみて」

 

 

エミリアに呼び出され、パックが顕現した。

助けたお礼、と言う意味では もうロズワールに村に住めるように、と受け取っているとツカサは言わんばかりだったが、それとこれとは別だ。

 

苦しんでる人が、それも助けてくれた恩人であり、友達とまで言ってくれた人が、血を吐いて苦しんでいるのだから。例えエミリアは マナが切れても、オドを振り絞ったとしても、パックに無理いって来てもらっていただろう。

 

 

自分ひとりでは 難しいから、頼りになるパックを。

 

 

 

だが―――パックは眉を顰める。

 

 

 

「……どういう事だい? これは………」

「だから、だいじょうぶ、って言った……でしょ? これは治せない。多分、時間経過か オレ自身の力じゃないと」

 

 

パックは翳していた手を止めた。

それに驚きながら聞くのはエミリアだ。

 

 

「え、どうしたの? パック」

「……これは、ツカサの言う通り。僕たちじゃ どうしようもないよ。身体の中のマナが、グチャグチャだ。いや、グチャグチャ、と言うより 不自然。何だか無理矢理バラバラにして、作り直した様な感じ。バラバラだけならまだやりようはあるかもだけど、無理矢理くっつけてる(・・・・・・・・・・)感じだから、外部の僕たちじゃ 手を加えようがない」

「そんな……!」

 

 

エミリアの顔は悲痛で染まる。

 

ただ、見ているだけしかできない事に対して。

何の力にもなれない事に対して。

 

 

「ツカサっっ!」

 

 

そして、そこにスバルが飛び込んできた。

スライディングでもするかの様に、ツカサの顔を覗き込む。

 

 

「はぁ、はぁ…… だいじょうぶ、大丈夫……、大丈夫。うん、もう少し、もう少しで………」

 

 

ツカサは、ぐっ と身体に力を入れた。

そして、数度胸を叩く。血が血の味がまだ口の中に充満しているが、呑みこみ、これ以上庭園を血で汚す事を拒んだ。

 

 

「………これまた驚いた。バラバラなのに、メチャクチャにくっついてたのに、確かに治っていってるよ」

「ほんと? ほんとにほんとっ!?」

「うん。原因もどうやって治してるのかも、僕には解らないけど。快復に向かってるのは間違いないよ」

 

 

パックの言葉にエミリアは心底安堵した様で、ペタリと倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もーー! スバルは突然ベッドを飛び出したって言うし、ツカサは 倒れちゃうんだもんっ! すごーく、すごーーく心配したんだからね! だから、もう無理しないで、って約束して!」

「あー、いや…… エミリアたんの為なら、たとえ火の中水の中だから、無理も無茶もするつもりだから、約束は、ちょっと………」

「後、オレのは持病みたいなモノだって、思っててくれれば。自分の意思とは関係なく起こっちゃうから、無理も何もしてなくて」

「もうっ!」

 

 

頬をぷくっ、と膨らませて怒るエミリアは 幾分か歳下と思える程幼く、それでいて愛らしい。スバルは勿論の事、ツカサ自身同じ感想。

 

 

「ここは、この愛らしいエミリアたんを、山分けと言う事で 手を打とうじゃないか、兄弟!」

「何をどう手を打つのか解らないけど、まぁ それでも別に良いけど、パックに睨まれそうだ」

 

 

チラリとツカサが視線を向ける先に居るのはパック。

2人のやり取りは当然耳に入っており、勿論加わってきた。一体どこから取り出して取り付けたのか、ネコの癖に付け髭をくっつけて。

 

 

「娘はやらんよっ!」

 

 

と一芝居。

貰うとは誰も言ってない気がするが、その辺りは特に気にせず、爽やかな笑みとヒラヒラと手を振ってこたえるツカサ。

 

 

「それは兎も角……、オレはラムやレムさんに対して、ちょっと迷惑かけたのが申し訳ないよ……。庭園、結構汚しちゃったし……」

 

 

う~ん、と頭を抱えるのはツカサ。

エミリアの切羽詰まった声は、屋敷の方にもそれなりに届いていたらしい。加えて、スバルが部屋から飛び出して出てきてしまったので、それを探す為にレムとラムが捜索していたりしたので、尚更気付かれやすくなった、と言う理由もある。

 

 

結果、エミリアを助けた豪傑が、手傷を追う、それもそれなりに重症に見える傷、血を見た事で結構大事になったのだ。

 

 

「レムの早業であっという間に綺麗になっちゃったけどな? あの域まで言って漸くメイドプロ、と名乗れるのだろう! うむうむ、天晴!」

「いや、まぁ…… 確かに 直ぐに綺麗にしてくれたし、気にしないでくれ、とも言われたけど、そう言う問題じゃないって言うか……。はぁ、スバルはお気楽でほんと羨ましい」

「ポジティブシンキング・スバルと呼んでくれ!」

「知らない言葉(だと思う)だけど、意味は何となく通じるのが不思議だ」

 

 

取り合えず、にこやかに会話を重ねる事で、エミリアは漸くそれなりには安心出来たのか、深くため息を吐くのだった。

 

 

 

 

そして、その後――――予定通りロズワールの元で朝食&スバルの今後についての検討会が開かれる……前に。

 

 

 

「ほんの少しだけ、スバルと話してても良いかな? エミリアさん。遅れない様にするから、ちょっとだけ」

 

 

 

ロズワールが戻ってきた、と言う知らせをラムとレムから聞き、移動を……と言う所で、ツカサがエミリアに頼んだ。

 

 

「うん、良いけど…… また怪我する様な事は……」

「いや、そんな暴力的な展開は起こらないって。この持病も早々出てくるものじゃないから。結構久しぶりだし」

「そうそう! エミリアたん。ここはちょいと、兄弟と男同士の秘密のお話合い、があるんだ。ちょ~~っと エミリアたんに 聞かれちゃうと恥ずかしくなっちゃうから……お願いして良い? 盗み聞きもして欲しく無いな~~って」

「はぁ……。人聞き悪い事言わないで。すごーく心外! 盗み聞きなんてしないわよ。でも、ロズワールも待ってると思うから、早くしてよ?」

「もちっ! こう見えて腹ぺっこぺこだから、直ぐ行くぜぃッ!」

 

 

ぐっ、とサムズアップしたスバルの腹から景気よく、腹の虫が鳴り響いた。

それを聞いたエミリアは、余程ツボに入ったのか。

 

 

「ぷっ、あははははは! し、しんぱいしてたのに、すごーく損した気分、あはははははっ!」

 

 

お腹を抱えて笑い始めた。

ツカサとスバルは顔を見合わせて笑った。

 

……色々と本当に安心出来たからこその笑みなのだろう2人は思えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、エミリアとレム、ラムの2人が居なくなったのを確認して。

 

 

「クルル。認識阻害の壁かけて」

「ほいほーい!」

 

 

 

クルルの魔法を見て……と言うより、ベアトリスの元に居る筈のクルルの姿を見て、スバルは目を丸くした。

ほんのつい先ほど、あの書庫でベアトリスと戯れているモフモフのクルルの姿を見ているし、その毛触りも堪能してきたから間違いない筈だ。

 

 

それ以上に……。

 

 

「えええ!! クルルって喋れたのっ!? いっつも《きゅきゅ!》って可愛らしい鳴き声しかしてなかったのに?」

「ああ、こっちの(・・・・)クルルはね。多分、スバルがこれまでに(・・・・・)会ってきたクルルとはまたちょっと違うんだ。まぁ、色々と面倒だし、厄介だし、面倒くさいから説明は省くけど」

「面倒って 2回言ったな、オイ」

クルル(コイツ)の事になると少々雑になるの」

 

 

ツカサは頭をポリポリと掻いた後……スバルの方をじっと見て意を決した。

 

 

「名前は名乗ってなかった筈なのに、スバルは オレの事ツカサ(・・・)って知ってたよね?」

「っっ! あ、いや それはその……、えっとラムちーに聞いた? レムりんに聞いた? とか??」

「質問に質問で返すのはどうかと思うけど。……まぁ もう解ってるから良いよ。じゃあ、とりあえず腹割って話そうか?」

 

 

正面向いて、スバルの目をはっきり見据えて。……その目の更に奥に居るであろう存在にも届くかの様にツカサは続けた。

 

 

 

「スバル。君は戻ってる。―――死を引き金(トリガー)に、この世界を巻き戻してる」

 

 

 

どくんっ!

 

 

突然、世界が静止した様な感覚にスバルは見舞われる。

突然の異常事態、声も発せられない、身体の何もかもが動かない。視線は固定され、先ほどのツカサの言葉だけが頭の中でグルグルと回っていた。

 

 

腸狩りのエルザとの一戦の時に、ツカサが言っていた事を連想させれば、何故か理由は兎も角、自身の死に戻りについて、理解しているんだろう、と言う事はスバルにも理解出来ていた。その原理や因果は解らない。解らないからこそ、ツカサ自身に聞こうと思っていた事柄でもある。

 

 

だから、その時が来た―――――程度にしか考えてなかった筈なのに。

 

 

 

《なんだ、なんだこれ………!?》

 

 

 

暗黒、漆黒、深淵の闇、……どう表現すれば良いのだろうか解らない。

ただ、解るのは そのナニカが 自身の心臓目掛けてその闇を伸ばしてくる。

 

心臓を抉り取ろうとでも言うのか、握りつぶそうとでも言うのか、解らないが、まるで時が止まった世界なのにも関わらず、その闇だけは自由自在に動き回り、自分自身の心臓を刈り取ろうと動いていた。動いている様に感じた。

 

 

底知れぬ恐怖が身体中を貫いたその時だ。

 

 

 

「はいはいはーい、だから落ち着いてってば。君がそのコに惚れ込んでるのは見て解る。でも、もうちっとだけ僕たちを信用してよ。ヘンな事しない、君達を引き裂くつもりもない。大丈夫だからさ~~」

 

 

 

時が止まっていた筈なのに、響くのは陽気な声。

聞き覚えがある。……と言うより、聞いたばかりだ。

 

その声の主は、クルルのもの。

 

 

そう認識したと同時に、世界が動き出した。

 

 

「っっ~~~~はぁっはぁっはぁっ………」

「……成る程。アレ(・・)が影響を及ぼそうとするのは、他人だけでなく、スバル自身にも、って事なのか……。認識阻害の障壁だしてて正解だった」

 

 

 

息も絶え絶えなスバルを見て、冷静に分析するツカサ。

それを来たスバルは、とめどなく流れる涙を拭いながら、ツカサを睨む。

 

 

「て、てめぇ……。何、なにしやがった……」

 

 

先ほどの所業、それをツカサがやった事なのだろう、とスバルは思えていた……が、ツカサは横に首を振る。

 

 

「今のはオレじゃない。……スバル。君に世界を巻き戻す力を寄越したヤツが引き起こしてる。……性質が何となくだけど解った」

「うんうん、独占欲の強い子みたいだね~? 君と私秘密を知ろうとした人、許さないっ! って感じだったよ。ヤキモチ妬きやさん? ってヤツかな?」

「はぁ、はぁ………、っっ、どういう、事だ……?」

 

 

クルルの方を向くスバル。

ツカサ自身もそれは同じだった。

 

 

「今回はサービスだよ。ちょこっとだけ、話してあげる」

「全部話せっての……」

「それしちゃったら、また怒っちゃうかもしれないでしょ? 僕は良いけど、君達2人が大変だよ?」

「……それは、カンベンだ……!」

 

 

 

クルルは、ひゅんひゅん、と飛び上がるとスバルの頭の上に着地。

 

 

「君の能力は、死を無かった事にする。時間を巻き戻してね? それをする理由は、《君に死んでほしくない》から。それと、自分と君の場所に入ってきて欲しくないから、第3者にもその存在を知って欲しくない、って強く想ってる。だから、さっきみたいに実力行使で止めさせ様としたんだね」

「……大体そんな感じ。想像してた通り、かな」

「実力行使で、心臓潰されちゃたまったもんじゃねぇよ……」

 

 

ツカサは納得。スバルは青ざめていた。

死に戻りは何度か経験して、その辛さ、苦しみは解っていたつもりだったが、あの心臓に迫ってくる恐怖は、それに匹敵すると言っても過言じゃない。

 

アレが迫ってくると解っていたら、例えどんな事情があっても、口に出せない自信が自分にはある、とスバル自身も胸を張れそうだから。

 

 

 

「あ、……でもっ! ツカサと僕は無害って思われたみたいだよ! なんたって、他人の恋路を邪魔しないよ、って僕自身が伝えたからね? 解ってくれたから結構聞き分けの良い子だと思うんだ!」

「聞き分けの良い子が心臓握りつぶそうとすんのかよ! つか、誰だよ!? 誰の事だよ!? オレ、そんな超常的、呪いみたいな魔法駆使できる子と仲良くなった事なんて、これまで生きてきて一回もねぇよ! 他人の恋路て! オレはエミリアたん一筋だ!」

「うんうん。軽口言えるくらいまでは、元気出たみたいだね? 僕からはここまでだよ~~! 後はクルルに任せるから宜しくね♪」

 

 

 

そうとだけ言うと……、姿が掻き消えた。

恐らくベアトリスの方へと戻っているのだろう。

 

そして、クルルにはまだ話したい事、聞きたい事山ほどあったスバルだったが。

 

 

「アレが話さない、って言う以上、自分から話でもしない限り、ほぼ無理。諦めて」

「……ツカサがあんなモフモフ最高毛並みを持つクルルに辛辣になる理由が解ったよ。まるっきり楽しんでんじゃねーか! 別人格なんだよな? クルルってのはもう1匹いて、そっちは愛らしい小動物なんだよな??」

「いや、まぁ、そうだな。でも、クルル自身も力は凄く強い存在だから、その辺は解ってて。人懐っこい所はあるけれど、怒ったら怖い。姿に反して怖い。その辺はパックと同じだと思って良いよ」

「…………な~~る」

 

 

パックの闘う姿、あの破壊力を目の当たりにしてるスバルだからこそ、直ぐに連想出来た。

見た目愛らしくても、2秒で自分を粉微塵に出来る存在だと言う事だ。

 

と言うより、そんな存在を思いっきり雑な扱いしてた(エルザ戦で、直球ストレート投げたり)ツカサはそれ以上? と思って嫌な汗を掻いたりもしていた。

 

 

 

「さて、ここからが本題だよ、スバル君」

「お、おう? 何で突然君呼び?」

 

 

 

ニコッ、と笑うと同時に、ツカサはスバルの両肩をガシッ!! と握ってブンブン揺らした。

 

 

「つ・ま・り!! スバルお前はアレか!?? ぽんぽん ぽこぽこ、ころころ、何回も何回も死んだって事か!!? 短期間で一体何回死んでんだよっっ!! ええ!? 知ってるわ! ここ数日で4回死んだな!??」

「あばばばばばばばばっっ!!」

 

 

「さっき、オレが血ぃ吐いてんの見ただろっっ!! あれが後遺症だ! あれもまだ易しい方だ!! クルルに色々やらせなかったらもっとヤバかった! オレヤベーんだ、すげーーーやべーーーんだ!! 身体がバラバラになって、メッチャ痛苦しい上に死ねないんだぞ!?」

「ぶばばばばばばばばばばっっ!!」

 

 

 

「だから頼むから。本当に頼むから 死ぬなよ!! 絶対死ぬなよ!! こんな短期間じゃ、オレが肉体的に辛い!! 生きてるのが不思議! って思うくらい辛い! 何でも手伝うから、頼むから死なないでくれスバル!! もうちょっと自重と慎重を心掛けてくれ!!」

 

 

 

 

 

ツカサの魂からの叫び。

物理的な超振動を身体に喰らい、それだけでも病み上がりな身体にはきつく、ツカサ自身に殺される! と思ったのはスバル。

 

 

だが、それ以上に 自分自身が戻ってる事を知る人物が居る事に 言葉に出来ない程の安堵感が波の様に押し寄せてきていた。

 

 

そしてその後 ある程度ツカサは満足したのかスバルを解放&介抱。

 

 

 

 

 

その後。

よせば良いのにスバルは

 

 

 

 

《今のは逆に死んで、って事じゃないよね?》

 

 

 

 

と聞き返してしまった。

 

その返答は、笑顔と共に脳天唐竹チョップ。

それを受けて、再び昏倒するのだった。

 

 


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