死ぬなよ、絶対に死ぬなよ! ※コレは、フリではありません。   作:リゼロ良し

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白の世界で出会う魔女

 

 

 

 

 

 

―――ああ、そうだった。ゼロになった後に。ゼロから始まる時に。此処(・・)に来るんだ。

 

 

 

真っ白な世界。

 

地も空も無い。

上も下も右も左も無い。

文字通り真っ白。自分の存在は理解出来ても、その自分の姿さえ白くて見えない。ただただ真っ白。その世界がいつまでも続いている。

 

 

白い世界に来たら、全てを思い出す。忘れていた全てを。

 

 

 

「真っ白な世界で、またアイツ(・・・)と……って、アレ?」

 

 

いつもの真っ白な世界の筈だった。

白い世界で、いつも通り あの存在と再会し、()に向かわされる。

自身を真っ白な状態に戻して。……ゼロに戻して、再び世界が始まる。

 

 

それだけの儀式……だった筈なのだが、白い世界に一滴の雫が落ちたかと思えば、瞬く間に波紋となって世界に広がり……、そしてこの白い世界を彩った。

 

 

何処までの続く見渡す限りの緑―――草原の中の小高い丘。

あたたかな風が時折吹き込み、日の光が辺りを優しく照らす。

 

心安らぐ空間……とでも表現すれば良いだろうか。

 

 

数多の世界を、数多の未来を、数多の運命を。

時には心折られて挫折し、時には善戦空しく虫けらの様に踏み潰され、時には息つく暇のなく粉微塵に砕かれ。

 

時にはボロボロながらも辿り着き、時には手を取り合って共に辿り着き、時には全てを救って皆で大団円。

 

両の手だけでは数えきれない数の世界を巡ってきた身だ。相応の数の景色を見てきた。その中でも、ここから見える景色は 確実に上位にランクするだろうと思えた。

 

ただ悲しいかな。隣に愛しい人達が居ない事が減点ポイント。

 

 

 

「………そっか。そうだそうだ。そりゃそうだ。いつも殺風景な真っ白な世界だったんだし」

 

 

 

どうして、こうも心打たれるのか、少し疑問に思ったが、その疑問は全て解消する。

ゼロから始める時は、いつも白い世界に降り立つ。本当に何もない空間。ただ1つを除いて何もない空間から次へと向かう。

 

始まりの場所がこんなにも彩っている、原初の世界がこんなにも鮮やかな色を持ったのだ。当然と言えば当然。

 

 

そう納得していたその時だ。

 

 

「オイ、さっさとこっち来い」

 

 

 

折角景色を楽しんでいたというのに、背後から声が聞こえてくる。

もう何度も何度も聞いた事がある声だ。此処に来る前までは すっかり忘れる事が出来ていたというのに、この世界に戻ると強制的に思い出される。

何故忘れていたのか解らない程に、極々当たり前、傍に居て当たり前、一般常識。と言った具合に不自然極まりなく不快極まりない事だが、当たり前の事として認識させられるのだ。

 

 

「はいはい、わかりました――――よ?」

 

 

何度目か解らないが、くるり、と振り返ると……。

また驚いた。心底驚いた。これ以上ない程に驚いた。

 

 

「何だ? 間抜け面して。どうかしたのか?」

 

 

中心に、いつもの()がいる。恒例の()が。

そいつ(・・・)に驚く事は今更ない。何度も忘れては思い出し、を繰り返してきたから。この白い世界(現在は彩られてるが)に戻ると思い出してしまうから。

だから、早く先に行く……と思い振り返ってみたら驚いた。

 

 

いつもであれば、この世界には 自分とそいつの2人だけ。

 

 

何も無い真っ白な世界で、そいつだけが見えて、そいつだけしか居なくて、本当に何も無かった筈なのに、……直ぐ横に立っているヒトが居たんだ。

真っ白な世界であれば、或いは目立ったかもしれない ほぼ白と黒のヒト。

 

 

「あぁぁ……、良いよ。本当に良い……。キミタチは最高だ。ここまで、ボクを満たしてくれるものがこの世に存在しているなんて。でも、ボクは一応死者。便宜上はこの世ではなくあの世、と言った方が正しいかもしれないが。あぁぁ、この強欲の身が、まるで満たされていくような、そんな感覚だ。まだ何も知り得ないと言うのに。無の状態なのに。まだ何も解ってないのに、どうしてこの欲が満たされていくんだろう? こんな感覚は初めてだ。知りたいと言う果てしない欲求、飽くなき探求心、決してこれまででは満たされる事は無かった。本当だ。でも、でもでも、キミタチを見て、接して、言葉を交わして間違いなく変わったよ。そう間違いない。変わったんだ。だから、キミタチをよりよく知る事が出来るなら、ボクは、ボクのこの強欲は間違いなく満たされる、と確信している。まだ知ってもない入り口にすら立ってないと言うのに、満たされていく快感に身体が悶えそうなんだよ。多幸感と言うのはこういう時に使うんだろうね。本当の意味で、知れた気がする。これも君のおかげだ。ああ……、このボクの知らない知識が今後あったとしても、出来たとしても、恐らくボクは知りたいとは思う。知ろうとするだろう、でもキミタチの様な甘美は……この世のものとは思えない甘美たるもの、その境地には到底たどり着けない。いや、そもそもそれ以上は 存在しえないと断言しよう。いや、キミタチと呼ぶのは聊か失礼に値するかな? 申し訳ない。こう見えて知らない誰かと接するのは本当に久しぶりなんだ。話を少し変えるが、ボクは《世界の記憶》と言うモノを持っている。持っている筈なんだ。でも、あなた達の存在を認識してしまった今、本当に世界の記憶(ソレ)を持っているのか、自分で自分を疑いたくなる心境なのさ。信じられないよ。ここまで確信出来るなんて。うん、間違いない、ボクは今恋をした。きっと恋しているのだと思う。だって、他にもう目を向ける事が出来ないから。目を離す事が出来ないから。見れば見る程身体があり得ない程火照っていくんだから。今までだって、観察をし続ける対象はいたさ。目を離したくない様な相手もいたさ。でも、今は違うんだ。まるで色褪せて、形さえ残っていないようだ。さぁさぁ、ボクをどうにかしてほしい。何をしてもいい、このボクを破壊(こわ)してくれても愛でてくれても、そう、或いは放置してくれも良い。ああ、でも出来れば接触はして貰いたいよ。殺される願望は持ってないつもりだったんだけど、あなた達の手にかかるならそれも本望さ。本懐さ。なんだってする。どんな繋がり方だって良い。出来れば、出来れば接触したい、それだけは強く希望させてくれ。いや、希望するだけで、何をするか、何をしてくれるか、その権利は勿論あなた達にある。そうさ。だから例えこのまま帰ってくれても…………………………」

 

 

白と黒で構成された姿に、淡い桃が混ざる。

その煌々たる瞳の輝き、吸い込まれそうな瞳。驚きの方が勝っていて、しっかりと確認出来てなかったが、彼女は(・・・)良く観察してみれば、容姿も非常に美しいモノだ。

 

そして唐突に始まった演説。

誰なのか聞く暇さえ与えてくれず、永遠に続くのかと思えた。まさに息つく暇も無いとはこの事だと言って良いだろう。

 

だが、この手の人種? に会った事が無いワケではない。数多の世界を巡った身なのだから、当然だ。

 

 

それは兎も角、突然固まってしまった彼女に近づいてみよう。

 

 

ゆっくりと、確実に。近づいてみて………そして、後ほんの数歩の所で俯いていた顔をバッ! と上げて続けた。

 

 

「嫌だ。やっぱり嫌だ。帰って欲しくない。どうか、ボクと繋がりを持って欲しいんだ。どんな形でも良いと言ったけれど、やっぱり帰って欲しくない」

 

 

涙が目にあふれ、宝石の様に散らばる。

それを見届けた後、彼女に答える前に、まずは隣の輩に一言。

 

 

「これは いったいどういう事? ここに来たら、《ハイ次頑張ってね》って感じで放りだされると思ったんだけど……。と言うより、さっさと放り出されたい、って思ってたんだけど、

「カッカッカ。そんな気にしておるのか? 少々笑ってやっただけではないか」

「喧しい!! ここに来たら思い出したくない事も鮮明に思い出しちゃうんだよ!! 56番目の世界だ! そりゃ、バカみたいな展開で、早々に此処に戻ってきたさ! ああ、笑えよ、笑え! って思ってるさ! でも、なんかお前にメチャクチャに笑われるのは嫌なんだよ!!」

 

 

彼女を差し置いて、2人だけで話を続ける光景を見て、混ざりたい気持ちが全面に出てくる。中々間に入る隙、と言うモノが見えてこないのも初めての経験かもしれない。

 

或いは、一言《入れて、一緒に遊んで》と言えない、素直になれない幼子になったかの様な気分だった。

 

 

そんな彼女に気付いたのか、慌てて言い合っていたのを中断すると。

 

 

「ゴメンね。ちょっとどういう状況か解って無くて……。と言うか、どーせ、そいつが変な権限使ってオレの時みたいに、()から彷徨う魂を拾ってきたんだと思うケド、君もそんな感じかな? オレ、ボク、私…… えっと最近では、私だったか。私は死んでそいつに、連れてこられて振り回されてるだけの身だよ。君の好奇心? 探求心? を満たして上げれるかは解らないんだ」

 

 

じろり、と睨んでみるが、そいつはどこ吹く風だ。

逆に、話を返してもらえたのがとんでもなく嬉しかったのか、おろおろとしていた悲しそうな顔をしていた少女の様な素顔が、一気に花開く。

 

 

「話してくれてありがとう! まずはここから、コミュニケーションは大切だよ。嬉しいよ。さぁ、ここから始めよう! ここから、この場所……は、一応、ボクの城と言う事になってるんだけど、ちょっと違うみたいなんだ。あなた達……、あなた様を察する事が出来て、会ってみたい、と念じてみたら、本来なら墓所……聖域と呼ばれる場所に招かなければ、ボクのこの場所には来られない筈なのに、あなた様は来てくれた。だから」

「はいストップ」

 

 

話が始まらないし、彼女と話をしているのがつまらないワケではないが、そろそろ横で《困ってる顔でも見てやろ》みたいな顔してるそいつの顔が鬱陶しくなったので本筋に戻した。

 

 

「ゴメンね。ちょっとだけ整理させて。えっと……君の名前はなんていうのかな? 私は、ここでは一応……生まれる前? みたいなモノだから、名無しなんだけど」

 

 

突然話を遮るのは可哀想だと思ったが、彼女からすれば、無言で去ってしまう完全に拒絶、居なくなってしまう事以外なら、なんでも大好物との事だ。

コミュニケーションと言いながら、自己紹介出来てなかった事を思い出し、恥ずかしそうに頬を染めて告げた。

 

 

「そうだった。あなた様には伝えて無かったね。ボクの名はエキドナ。通り名としては《強欲の魔女》なんだけど、余り伝えても意味が無い情報かもしれないね。ただのエキドナで」

 

 

 

 

 

それは 強欲の魔女と名乗る女性 エキドナとの本来なら あり得ない邂逅。

ただの気まぐれか? 或いは意味があるのか?

 

それらを慎重に探ってみる必要があるだろう。

 

 

例え、始まって記憶が白になったとしても。

 


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