Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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青い鬼

最大の問題点。

それは、誰が敵なのかが解らない(・・・・・・・・・・・)事に尽きるだろう。

 

ツカサの中では、ある程度の振り分けはされているが、柔軟に動く為にも 先入観は持たない様にしている。

 

 

《まさか、お前が(・・・)――――!?》

 

 

とは、なるべく思わない様にする為に。

勿論、なるべく(・・・・)……だが。

 

 

この屋敷で関わった者たち。まだ日は浅く、信頼と信用を勝ち得たか? と問われればやはりまだ日が浅い。

 

そして 信頼してもらえる功績としては、エミリアを腸狩りの魔の手から救った、と言う点のみ。

特に 力が無いと言って良いスバルは、身を挺して命懸けでエミリアを守ったのだから。……その上 自分も死に掛けた。

 

自分の命を賭けてエミリアの命を守った。

 

それらの事実を考慮し 相応の評価と信頼を貰いたい、と思う所ではある……が、あまりにも謎な人物なのも間違いない。

 

救ってもらった当人であるエミリア、そして 読心が出来て 尚且つエミリアの事を第一に考えてるパックの2人を除いた他の者たちからすれば、エミリアに ひいてはメイザース家に取り入る為に、潜り込む為にやって来たと思われ 正直相殺されてしまう可能性だって決して低くはない。

 

 

そして、それはツカサ本人にも勿論ながら言える事。

 

記憶障害である、と言う事を明言しているし、パックの読心で嘘ではない事は解ってもらえたとも思う。……だが、精霊を使役していたり、この世の常識外の事をやってのけたり(主にラインハルト関係)、と一言でいえば規格外。

 

なまじスバルよりも強大な力を有しているからこそ、下手な手を打って出れないと思える所もある。

 

そうならば、その間、その時間を使って敵対心は無い、善意の第3者だと思って貰えてなら、信頼をして貰えれば良い、とも考えていた。

 

そして やはり心苦しくもなる。

 

 

 

「………屋敷の誰かが、スバルを殺した、って可能性の方がやっぱり高い……かな」

 

 

 

可能性を考えたら、どうしても候補に挙がってしまうから。

 

ツカサは、クルルを使って屋敷の四方八方を調べさせた。

決して念入りな調査が出来たか? と問われれば たった4日間だけでは限度があるし、幾ら時間があっても足りないし、敵が見えない以上 大っぴらに調査する事も控えた方が良いし、で準備万端とは言えない……が、可能性面を考えたら やはり容疑者は屋敷の中となる。

 

柔軟に動けるように……と思ってはいても、共に食卓を囲い、時には笑顔を見せて談笑した相手が、殺しにきている……となるなら、心が締め付けられる思いだ。

 

色々な事を想定し、その度に心苦しくなる。

ただ、割り切るしかない。―――ツカサ自身を含め、スバルも怪しいと言うのは拭え切れない事実だから。

でも、だからと言って、あの苦しみを続けるつもりも毛頭ない。

 

 

「きゅっ!」

「!!」

 

 

そんな時だった。

ツカサの頭の上に居たクルルが、突如その身体を浮遊させて、扉の方を向いたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を少し――遡る。

 

並々ならぬ決意と覚悟を持ってこの夜を迎え、そして超える事に躍起になっているスバル。

何度も何度もこの4日間を思い返しては、復習をし続けていた。

 

 

「………全ては明日だ。……もっともっとやりたい事がある。……できる。あの日常を取り戻すんだ。………他力本願ってトコが入ってんのが情けない事ではあるがな」

 

 

正直、口には決して出さないが スバルはツカサと同室して貰おうか、とギリギリまで悩んでいた。

 

足手まとい化してる感否めず、連帯責任の呪いでも掛けられてしまってるツカサが不憫だから、一緒に居れば少なくとも死のリスクは回避できる可能性が高いから、等々 情けないが安全面第一で考えると、最善はソレなのだが……、絵面的にも 不自然さ的にも難しいと言うのが現状。

 

1つ目に、男と願って同室で一緒に寝る、と言う点も あり得ない! と言うスバル。エミリア一筋のスバルだから。

 

2つ目に、あまりにも不自然だと言う点もある。

部屋数がとんでもない事になってるここロズワール邸の屋敷。これ程までに数ある部屋の中で、何処を使っても良いと言ってるのに2人同室に、と言う提案。スバル自身もツカサとの面識は ほとんどない、と明言しているし、それに1週目ではあり得なかったし、より警戒される可能性が極めて高いから。

 

 

「オレを囮に、兄弟が バシッ! とやっつける、ってのが 今んトコ最善策。他力本願極まれり、だが 命が掛かってる以上、泣き言えねぇ………よな。……オレも、ちっとは……ぱっくや、ろずっちに、たのん……で、……きたえ…………………」

 

 

頭の中で様々な事を考えていた筈だった。

おまけに色々と強がってはいるものの、前回命を落とした場面。……苦しみ無く命を落としたとはいえ、今回は待ち構えてる状態。当然恐怖心だって相応に内に潜んでいる。

 

そんな状況だと言うのに、スバルは今猛烈な眠気に襲われた。

瞼がゆっくりと閉じ――――そして、かくんっ、と頭の重みで 身体が沈みかかったその反動で再び目を覚ました。

 

 

 

「っと、いけね、いけね。ここで寝落ちとかシャレにならん……、何か合ったら大騒ぎして知らせる手筈だってのに、また眠ってる間に死んで、兄弟に大ダメージ+超怒られるとか………。んでも、やっぱ 気が緩んだかねぇ? 前回と違って、優秀な………っっ、きょう………ぁっ……!?」

 

 

ここで、漸く自分の身体の異変にスバルは気付いた。

震えが止まらない。

身体が異様な寒気に襲われている事に。

室内温度は問題なかった筈だ。服もしっかりジャージの上下、ロズワール邸で洗濯し、湿り気も一切ない。濡れ着で身体が冷えてる……とか、そんなレベルではない。

 

 

「さむ―――けが……、やばい、やばい……、まさ、か……、これ、って………」

 

 

目に見えない相手———否、目に見えない攻撃をしてくる相手の襲撃。

自分の身に何が起きてるのかは一切解らないが……解る事はある。

 

 

「命が………、あぶ、ねぇ………、つか……さ………」

 

 

地を這って、部屋の扉に手を伸ばす。

どうにか、まだ身体は動く。大きな声は出す事は出来ないが、何とか身体は動く。

 

身体が最大級の悲鳴を上げている事も理解出来る。流れ出る涙や涎、吐瀉物が排出されても一切考慮出来ない。

 

そんな中で、極限の中で思うのはもう1つ。

 

 

―――他のメンバーは? エミリアは?

 

 

「いか……、ない……と…………」

 

 

胃の中が全て空になる。

胃酸を只管吐き出した後は、気管や食道を傷つけたのか、吐血が続き、頑張って綺麗にしてきた屋敷の廊下を汚してしまう。

 

 

 

「えみりあ……、のへや、は………、つかさが、いる……とこ、の………さき……に、にか、い」

 

 

 

もしかしたら、ツカサもこの攻撃を受けているのかもしれない。

その心配も脳裏に過ったが、申し訳ないが、直ぐにエミリアの事でいっぱいになった。

 

エミリアの所に行く。それしか考えられない。幸か不幸か、丁度エミリアの所へと行く途中にツカサの部屋がある。合流し直ぐにでもエミリアがいる2階に。

 

血を吐きながら、懸命に身体を前ヘ前へと動かす。

足がもう動かないが、それも関係ない。血を吐き、地を這ってでもエミリアの元へ。愛しい人の所へ。

 

 

その時だ。

 

ジャララララ…………。

 

 

 

何処か遠い所で鳴った様に聞こえてくるのは鎖が擦れる音。

 

 

そして、ガキィィッ! とけたましく響く金属音。

 

 

もう耳がおかしくなったのか? 

何が起きてるのか解らない。ただただエミリアの事以外考えられなかった。

 

 

「クルル!!」

 

 

近くで叫ぶ声。

この状況を変えてくれるかもしれない声が聞こえた気がしたが、それに希望を持つ余裕さえも無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地を這い進み続けるスバルの姿を目撃したのは、クルルが察知した後直ぐだった。

何者かが侵入してくる気配も無いし、屋敷に人一人死ぬ程の()が無かった事は間違いなかった。

 

だが、目に見えない敵の正体。スバルの命を奪おうとするモノの正体は、外的干渉では無かった。

 

 

「クルル!!」

「きゅっっ!」

 

 

そして、無論 外的干渉……外からの攻撃も丁度見えた。

闇の中から高速で飛来するナニカ、それをはっきり見た。

 

スバルを発見するまで、全くと言って良い程無かった筈の攻撃()

 

闇から高速で迫るのは鉄球、そしてそれには鎖が繋がっており、その先に武器を操ってる襲撃者が居る。

武器は所謂 星球式槌矛(モーニングスター)だ。

 

 

一撃受けるだけでも致命傷となりかねない武器。その一撃が、凄まじい速度でスバルに迫っていたのがはっきりと解った。

 

あの一撃を受ければ、間違いなくスバルは死ぬだろう。……前回の死因が、あの武器(モーニングスター)だったとするなら、色々と不可解な点が発生するが、今は目の前の脅威を取り除く事が先決。

 

 

クルルを身に纏い、モーニングスターを受け止めると同時に。

 

 

「クルル! スバルを頼む!」

「きゅんっ!!」

 

 

緑色の相棒にスバルの守護を任せた。

自分自身の快復は出来ても、他人を快復させられるかどうかは不明だが、無いよりは断然マシだろう。

 

命を少しでも留めてくれているというのなら――――、取れる手(・・・・)があるから。

 

 

 

「(一撃の重さは、あの腸狩り以上)……そろそろ、姿を見せたらどうだ? 武器を失ったら、逃げるしかない、と言う訳では無いんだろ?」

 

 

モーニングスターの先端を、思い切り廊下の壁に叩きつけて固定した。

ロズワール邸が一部破損してしまったが……大目に見て貰うしかないだろう、とツカサは一瞬苦笑いしたが、直ぐに目の前の脅威に集中。

まだまだ夜目が利かないので、相手の輪郭でさえ解らない。……戻る(・・)にしても、ある程度 全容を掴まないといけない。意味がなくなる。

 

 

ピン―――と張りつめた空気、そして 張った鎖が緩んだと同時に。

 

 

 

「――――仕方ありませんね」

 

 

闇の先から声が聞こえてきた。

 

 

―――やっぱりか……。

 

 

と何処かで思ったのはツカサだ。

外部からの襲撃者の可能性と内部犯の可能性。どちらも同等に考えていたからこそ。……最後の最後まで否定したくても考えていたからこその感性。

 

 

闇の中から、黒を基調としたエプロンドレスと頭を飾る純白のホワイトプリム。……闇の中に白は目立つ。お誂え向きな演出だ。差し込む月明りがその姿を鮮明に照らし映した。

 

 

仮に、襲撃者が居たのであれば、村での時同様、例え手を貸す事が無い位の使い手だったとしても、全力で手を貸す様に決めていた相手。

 

 

「―――気付かれる前に、終わらせるつもりだったのですが。……誤解を解くのが少々大変となりました」

 

 

青い紙を揺らして、無表情で小首を傾げる少女の姿。

 

 

「……君が暗殺者だったのか。……レムさん」

 

 

身体から力が一瞬抜けたその隙に、青髪のメイド レムはモーニングスターの先端を手繰り寄せた。

 

 

 

「誤解を生じさせ申し訳ありません。目的はもう1人のお客様のみです。もう――命が無い状態のご様子。直ぐにでも楽にしてあげる事が最善かと」

「なるほど。……襲撃したワケではなく、死にかけてるスバルを楽にする為に、慈悲の心でトドメの一撃を。その為に攻撃した、と。―――それで、レムさんは、オレがそれを信じる程間の抜けた相手だと、そう思うのかな?」

「……レムは、そう答えるしか無いので。もうお客様は虫の息。このまま放置している方がより残酷である、とレムは進言します」

 

 

これ以上の攻撃する気はない、と言わんばかりにレムは手に持っているモーニングスターの柄部分を下へと下げた。

 

 

「クルル」

「きゅきゅっ!」

 

 

ツカサがクルルを呼ぶと、クルルは ぴょんっ、と手を上げて答えた。

取り合えず……、飛ぶ分(・・・)には問題ない、との事だ。それまでの命は繋げる事が出来る、と。

 

 

「スバルはどうやら救えるみたいだよ。良かった。………それで レムさんは、どうやって スバルを救える見込みのない状態だと判断したのかな? 見たところ スバル自身に触れてさえいない様だけど」

「…………」

 

 

レムは答えない。

そんなレムに畳みかける様に、ツカサは言った。―――――レムの核心を突く所を。

 

 

「どうして? スバルが助かる(・・・)と判断した途端に、また殺気を出したのはどうして?」

「……………………」

 

「じゃあ、逆にこっちから言おうか。………スバルを苦しみから救おうとしたんじゃない。ただ、スバルの事を殺したかったから殺そうとした(・・・・・・・・・・・・・・)。……違うかな?」

「いいえ」

 

 

ここで初めてレムは首を左右に振った。

 

レムとスバルの関係性はこの屋敷に来てからの筈だ。色々と話しをしてみたが、気付いたらエミリアがこの屋敷へと運んできた、と言うのがスバルの認識だったから。

それに、ここが初めてである事は何度か本人から聞いているし、ラムやレムも見知った相手……と言う様子は見えなかった。

 

 

「…………」

 

 

レムは 少しだけ、月明りが表情に影を作り、表情が落ちている様な様子も見受けられたが、その顔は最早無い。後悔や懺悔と言った様子は一切含まれない。端からそう言う感情など微塵も無かった、と言わんばかりに。

 

そして、無の表情と殺気をそのままに。

 

 

「そう難しい事ではありません。そのまま死んでくれればそれで良かった。そして、助かる見込みがあると言うのなら………」

「…………」

 

 

モーニングスターを手に手繰り寄せるレム。

ズシッ、と重みのある先端がいとも容易くレムの手の中に戻る。そして そのまま構えた。

 

 

 

「何が何でも殺す。…………か?」

「はい。疑わしは罰せよ。―――メイドとしての心得です」

「料理を振舞ってくれてる時……その時に見せてくれてた慈愛の表情。他にも楽しそうにしてくれた時もそう。……全部嘘だった、と」

「………いいえ。お客様に対しては、嘘とは言いません。………そちらのお客様………、その男……魔女教の関係者(・・・・・・・)だけです」

 

 

魔女教と言う言葉を発した瞬間、より一層、レムの表情が殺意と共に闇色に染まった。

 

 

「? 魔女教? スバルがその関係者だと?」

「はい。間違いありません。その咎人の残り香。魔女の残り香。……一段と濃くなった瞬間、その中心に、お客様と、あの男が居ました。あの悪臭。……忘れる事など出来ません。嫌悪と唾棄を抱く思いです」

「…………なら、オレも容疑者の1人と言う訳だが」

「いいえ。……レムだけはその臭いに気付く事が出来ます。この瞬間も漂う悪臭。嗅ぎ間違える筈がありません」

 

 

 

 

レムはどうにか声を押し殺している。

 

何とか周囲に気付かれぬように、ここで終わらせるように、どうにか抑えきれない憎悪を、懸命に押し殺しているのがよく解る。

 

ならば、ここでツカサが大声を上げて、屋敷の皆をどうにか起こす事が出来たなら、決着がつくのではないか? とも思えたが まだ誰が何処まで関わっているのかがはっきりしない以上、悪手となる可能性が極めて高い。

 

何より、万全じゃない状況だ。

 

スバルの状況次第では、また戻る(死ぬ)かもしれない。それを思うと、そう易々と記録(セーブ)読込(ロード)を使えないのが実の所だ。

 

設置してしまえば、削除するなんて事は出来ない。……元々 ポイントを削除するを想定などしていなかった力だろうから。

 

最善策を能力で模索するのは難しい。

その場その場の判断と直感に委ねるしかない。

 

後は、スバルの様子だ。

 

何故、その様な姿になっているのかは不明だが、命を繋ぐ事は出来ている。

身体を修復、快復なら 知る限りでは エミリアやパック、ベアトリスが居ないと厳しい。護りの頂点。召喚獣クルルの力はそこまで万能ではない様だから。……少なくとも、精霊となった今、この世界(・・・・)の人間にとっては 限りがある様だ。

 

 

「そこをどいてください。今、この瞬間もレムは不安と怒りでどうにかなってしまいそうです。………姉様とあの男が会話している時の、無限に湧くこの怒りが、漸く報われようとしていた時に、お客様に邪魔をされてしまいました。………元凶の関係者が、のうのうとこのレムと姉様の大事な居場所に………、もう耐えられそうにありません」

 

 

 

ぎり、ぎり、と歯を喰いしばる。

力を入れ過ぎて、血が滲み出ていた。

 

 

その殺意が、まるで具現化でもするかの様に 少女の額へと集まっていく。

 

 

 

 

「…………退くワケにはいかないよ、レムさん。スバルを死なせる訳にはいかないから」

「……………お客様の言葉は何でも聞く様に、とロズワール様から承っております。ですので、やめてください。とめないで下さい。魔女教は、魔女は、魔女は……!! レムから大切な居場所を、大切な姉様を、全てを奪った存在です!!」

 

 

 

 

鬼が出るか、蛇が出るか。

 

 

ここへ来る前にツカサが考えていた事。

あくまで例えの話だ。本当に蛇や鬼が出てくるとは思っても無かった事だったが………。

 

 

 

今、1人の青い鬼が飛び掛かってきた。

 

 

 

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