Re:ゼロから苦しむ異世界生活 作:リゼロ良し
「とりあえず……、
光の世界……と言えば良いのだろうか?
周囲は全て光で出来ている。お互いの身体だけが輪郭をしっかりと帯びており。本来なら光で白く塗りつぶされていても不思議じゃないのだが、はっきりと見える。
「あ…………、うごく。……息も、できる……! 苦しくねぇ……!」
スバルは自身の手を、身体を、確認。
つい先ほどまで、死にたいとすら思える程の瀕死だった筈なのにも関わらずだ。
苦しみから解放されたのを喜びつつ、新たな苦しみ、精神への苦しみと対峙する。
その間、暫くスバルはやや大袈裟気味に声を大きく、そして大きく身体を動かして、誤魔化す様に振舞っていた。
自身が死んだ原因である襲撃者の
そして、当然の様に一緒に来た
弁明を聞かず、実力行使で命を奪おうとしてきたメイド姉妹。
疑わしきは罰せよ―――メイドとしての嗜みであると言う。
「ほんっと、たまったもんじゃねーよな?? その……えと、魔女教? とか。聞いたことない! 初めて聞いた単語! んなの冤罪も良いとこじゃん! 裁判だ裁判っ!! つーわけで、弁護士は兄弟に任せるぜ!」
ぐっ、とサムズアップするスバル。
一連のオーバーアクションを一通り聞いていたツカサは、そろそろ良いか、と苦笑いと共に スバルに言った。
「どうにか、落ち着けたみたいだね? 色んな感情がごっちゃになってたのに、ほんと大したもんだと思うよ。……さすが、コロコロ何度も死んでもへこたれない訳だ」
「それ! 全然褒めてねぇよねっ!? コロコロって表現に異議ありだ! オレ虫じゃねーんだから!」
拳を振り上げて、また大袈裟に怒って見せるスバル。
それを見て笑うツカサ。
スバルもゆっくりと振り上げた拳を下ろして、ツカサの方を改めて見た。
「……でも、わりぃ。結構情けねぇトコ見せちまった」
「いいや。全然?
「………へっ、へへっ。流石兄弟だ! つーか、兄貴って呼んで良いか?」
「それはヤダ」
「即答かよ!?」
更にもう一歩踏み込もうとしたスバルを一蹴するツカサ。どっちが歳上か判らないと言う面、ちょっぴり真面目に考えた部分もあったりするのは別の話。
兎に角 笑い合いコトが出来ている自分にスバルは、心底安堵していた。
もし――――1人だったなら?
あの鉄球で頭を砕かれ死んでいただろう。
この時は襲撃者の正体すら解らなかっただろう。
次に襲撃者の正体……レムの事を知ったとすれば どうなっていたか?
彼女たちにとっては、たった数日かもしれないが、スバル自身はその数日を重ねている。何度も彼女たちと接して、何度も信頼を得ようとし、そして 眼に見えない敵から何度も助けたい、と思っていた事だろう。
結果―――レムに襲われ、死んだとするなら…… 目を覚ましたあの瞬間。死から戻った後、再び始まる瞬間、2人の顔を見た瞬間、発狂したかもしれない。
皆が置いて行ってしまう状況に、心が砕かれたかもしれない。
知ってくれる人が1人いるだけで、こうも心が救われるのか……。
スバルは一筋の涙を流して笑うのだった。
「多分、兄弟も同じ考えだと思うけど……、レム以外にオレを殺そうとしたヤツが居る」
「ん。……その辺は間違いないと思う。スバルの衰弱し具合が半端じゃなかった。レムが攻撃するまでもなく、スバルは死んでただろうからね。呪った上に撲殺したい、っていうんなら同一かもしれないけど」
「どこまでもバイオレンスか!? 身に覚えが一切ない冤罪かけられたオレ、超可哀想だよ! きつめの香水ぶっかけられた上に匂い落とせないとか最悪だよ!」
気を取り直して対策をする。
直接的に殺してくるのはレムであるが、あの4日目の夜、スバルの身体を襲うのは鉄球ではなく、呪いの様な力だった。
可能性の話をすれば、ひょっとしたらレムが呪った上に、念入りにスバルを潰そうとした可能性だって勿論ある。
「それは兎も角。……オレを襲ったあの呪いみたいなのをどうにかしないとだよな……。次の周回は一回引きこもってみる、とかどう? ぁ…… いや、ツカサの力有りき前提の作戦になっちゃうのが、あれだけど……」
「その辺はとりあえず、オレに対しては余計な事気にしないでよ。……っていうか、気にするな! って感じ? 何でも手伝うって言った手前だし、何より スバルの為というよりは 自分の為感がデカいし。と言うわけで、余計なことは考えるな、生き残れ」
「解ってる事だけど、言い方なんかどんどんきつくなってねぇ!?」
スバルの気遣いを余計、と一蹴された。
所々会話の節々が強い、ということもあって、スバルは盛大に苦言を呈するが、やっぱり楽しそうだ。
絶望だと言って良い状況かもしれないのに、乗り越えていけそうな気がするから。光明が見える、見えてる気がするから。
「っとと、そうだ。オレと一緒に戻る分は問題ないのか? 情報収集って意味なら、一緒に戻らないと、多分無理だろ?」
情報収集。
例えば、次の周回を突破することに集中する、というよりは、突破ではなく、情報を集めることを第一に考える。
言い方と感じは悪いかもしれないが、端から消え去る世界と考えることにする事。つまり 世界をなかったことにする
ただし、そう言うことをするのもリスクは伴うもの。
スバル自身が選ぶとすれば、死の恐怖。死の苦しみ。繰り返す度に味わなければならない。
ツカサの場合、スバルの死に戻りで戻る際、とんでもない苦痛を伴うリスクが存在するが、このように 自分で戻る分には問題ない、とするなら………、四六時中ともにいるわけにはいかないかもしれないが、示し合わせたとするなら、ツカサの能力を利用して戻る方がどう考えても最善だ。
ただし――その力にリスクがなければ、の話ではあるが。
「1人で戻る分は、問題ないけど、
「持っていかれる、それってあれか? MP的な? オレの死に戻りでは、HPがやばくなって、自分が戻る分はMPがやばくなる、って感じか……」
「《えむぴー》も《えいちぴー》もよくわかんないけど、大体意味合いは解ったよ。多分、その感じで間違いない」
十全に記憶が戻ったとするなら、ひょっとしたら通じるかもしれないが、とりあえず わからない部分は多くある、ということで深く考えないようにした。
どうしても、聞かなきゃならない時は、スバルに聞く方向で。
ツカサはその後、少し考えて―――――。
「スバルに解りやすく言うなら、ベアトリスさんに受けたあの一撃? みたいな感じかな」
「へ? ベアトリスに受けた感じ? ……って、あれか!? マナちゅーちゅードレインか!? まじかよ! あんな感じになんの!? やばいじゃん!!」
最初こそは、笑っていたスバルだったが、ツカサに解りやすい説明を受けて……、本当に解りやすくて驚くと同時に顔を真っ青にさせた。
ベアトリスに受けた一撃……、忘れるはずがない。
――熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い……etc
忘れるはずがない。
「……戻ったツカサに、オレが事情を聴いて情報共有、しかないか……」
「いや? 全然大丈夫。使えるよ。説明するよりは、一緒に戻った方がいいし」
「って、マジで!? やっぱ バケモノかよ!!」
あの苦しみを体験したからこそのスバルの言葉。
腹を割られたり、刺されたり、色々苦しみを味わったが、死んではいないが、二度と味わいたくないランキングに上位に確実に位置するから。間違いなく。
「あーいや、全然っては言わない方がイイかも。……
「うぐ……、スンマセン」
ツカサは訂正した。
苦しいのは苦しいけれど、……
それを聞いて、猶更いたたまれなくなるスバルだった。―――
暫く、今後の策を互いに意見交換し、考えていた時だ。
ある程度考えもお互いにまとまって、結論が出てきたところで、スバルは今更な疑問が頭に浮かんだ。
「そういえば、この空間? っていつまでいて大丈夫なんだ? メニュー画面みたいなもんで、セーブデータ選択するまでは、ティンクタイムみたいなもん? 全然大丈夫だったりすんの?」
「ん……、今のは流石にちょっと解らないけど、いいタイミングなのは間違いない」
「??」
ツカサが指をさした先をスバルは見た。
光の世界で、自分たち以外が見えなかったはずなのに、黒点のようなものが浮かび上がっていた。
そして、それが徐々に大きくなりながら近づいてくる。
「戻る意思を示したら、直ぐ戻れるよ。ただ 2人だったら、2人ともが戻る意思示さないといけないと思う。……後は ある程度、したら 勝手に戻される。複数
「ほぇぇ、なるほど………。改めて、咄嗟にセーブしてくれたクルル、マジ感謝だな。神対応じゃん! 性格悪そうって感じはしてるけど!」
「………
「動機はさておき、マシどころの話じゃねーじゃん。それ。ほんと敵側じゃなくてよかったってヤツだよ」
この空間にはなぜか来てないクルルの存在。
クルル、あのもう1匹のクルル? にはスバルは感謝をしていた。
スバルが死に戻りをした瞬間、ツカサが苦しんでそれどころじゃなかった瞬間、ツカサに
ほぼ時間軸がズレてなければ、破損することはない、とのこと。
つまり レムやラムに殺されて、仮にスバルが死に戻ったとしても、その
スバルの場合の
「うっし、じゃあ次のミッションは オレを呪い殺そうとしてくるヤツを探す、ってのを第一に考える! ツカサも今回みてーに、4日の夜に戻ってくる感じか?」
「ん。一応は。ベアトリスさんには、バレたみたいだったから、次はより自然に、を心がけようかな」
「マジかよ。あのドリルロリ、なんつー 抜け目ない………」
「どりるろり、って言うのは解らないけど、また マナドレインされても知らないからな。ベアトリスさんは、優しいから殺したりまではしないと思うけど」
「………ほんっと物騒だよ」
もう身体を飲み込む勢いまで大きくなった黒点に、2人は足を踏み入れる。
やがて光の世界が消失し――――真っ暗な世界になった。
不思議と、不快感も恐怖感もそこにはなかった。
なんとなく―――世界に生まれるような、そんな感覚がしたから。
そして、やっぱり問題点はある。
「……げほっっ」
スバルが死に戻りする直前の
そのダメージまでなかった事にはできないから、ツカサは再びあの苦しみに加えて、スバルにも伝えていた通り、マナドレインの苦しみも+αで襲われていた。
だが、それでも―――――。
「死に戻り連発に比べたら、大分マシ………。クルル」
「きゅっ!」
血反吐を吐きながらも、ツカサは前回以上の速さで、身体の調子を整えつつ、立ち上がるのだった。