Re:ゼロから苦しむ異世界生活 作:リゼロ良し
ロズワール邸 2日目の朝。
3度目の2日目の朝。
「グッドモーニーーングッッ!! 今日も今日とて晴天日和!! さいっこうの洗濯日和! ハーーピネスな1日にしようぜ!! はいっ、ヴィクトリ――っ!!」
陽気な声がロズワール邸の庭園で響く。
主から使用人、例外、全て含めて、この屋敷には現在8人(内2匹)しかおらず、その中で朝からここまで元気なのは1人しかいない。
昨日から、ロズワール邸の使用人へと無事定職につけた男、ナツキ・スバルである。
そんな、朝の目覚まし宜しく大きな宣言を間近で聞いて、そろそろ呆れ気味なのはエミリア。
彼女がこの場所に居るのは日々の日課。木々で囲まれた庭園の木陰で微精霊たちと語り合う朝の日課に、精霊たちも驚いてしまう程の元気で陽気な声が響けば、当然聞こえる。
面白い事に、精霊たちも同じ様に元気になったのか、やや活発になってたりもするので、それはエミリアにとっては新たな発見だ。
でも―――色々と発見出来たとしても、スバルのそれはやっぱり度を越していると思う、と言うのも事実である。
「……今日も朝からホント元気よね……。それで昨日はお仕事ちゃんとできた?」
「ああ! 8割ダメだったな!」
「8割もっ!? あれっ?? えっと、昨日ツカサに頑張れ~って言われてた時、何か思いっきり断言宣言してなかったっけ?? 《任せとけーー! 大丈夫だーー!》みたいな」
「おお!! おぉ! ぉぉ。……………ぉぉ」
エミリアの疑問をスバルに伝えると、これまた解りやすく意気消沈したスバル。
確かに、スバルは言っていた。ツカサと別れる時も言っていた。《任せとけ》と胸を大きく叩きながら。
それをエミリアの口から言われたものだから、スバルにはダイレクトに心に刺さったのだろう。
解りやすく沈んでるスバルに、慌ててフォローを入れる。
「あ、でも ほら! 初めてで2割上手くいったんでしょ? それなら大丈夫! ほらほら、自信もって! 昨日の事思い出して!」
スバル は エミリア の はげまし を うけた。
スバル は たいりょく きりょく ぜんかいふく した。
「くぅぅぅっっ!! だよねだよねっっ! こっからがオレの追い風ロードが始まるよっっ! 有言実行する男とは、ナツキスバル! 有言実行と書いて
「でも、ちゃんと反省はしてね?」
また、目に見えて簡単に復活するスバルの単純さには、本当に舌を巻く思いである。
ただ、沈んだ様に見えたのは、実は演技だった、と言われても驚かない。それ程までに早い変わり身だったから。
「まっ、エミリアたんだって、兄弟だって頑張ってんだ! 期待されたオレは更にその上を行く男だぜ! 何せ、働く仕事の規模が違うっ! 見よっ! この荘厳たるロズワール邸をっ! これを超える職場はオレは未だ嘗て見た事ない! そう断言できるね!! ってな訳で、オレは今日も使用人ライフに勤しむワケよ! んでも、疲れたらエミリアたんの膝に飛び込みに行くからね!」
「うん。……取り合えず スバルの言う事は話半分に聞いてるぐらいでちょうどいい感じがするかも」
「エミリアたんまで辛辣な意見っっ!! ラムちーといい、兄弟といい、どーしてこうも現実はオレに厳しい事だらけなんだー!! って まてまてぃ!」
変わらぬテンション、落とさないテンションのままに、スバルは指をさす。その先に居るのはパックだ。
「つまり、半分ってことは片膝ならオーケー! って事だな? 取るなよパック!」
エミリアの事に対して宣戦布告? されたパック。
勿論、黙っていてる訳がない。
「ふふんっ。リアはすでに契約でボクに身も心も捧げた状態! 今更この関係ににゃんにゃん、にゃんぴとたりとも付け入る隙は~~」
「もうっ! 私の知らない間に勝手に契約の内容変えないのっ! 変な事すると怒るんだからね!」
エミリアとパックがじゃれ合ってる所に。
「きゅきゅ~~♪」
何処からともなく、鳴き声と共に主から離れちゃった家出精霊? クルルが飛び出してきて、エミリアの頭にぴょんっと とび乗った。
「わっ、もう、クルル? 突然降りてこないでよー。びっくらこいちゃったでしょ?」
「びっくらこいちゃった、って今日日聞かねぇな~~って、ちょっと まてまてまてぃ! クルル、ずりーぞ! エミリアたんの頭の上は予約出来てなかったっっ!」
乱入者であるクルルを見て、スバルは指を突きつけながら、《異議あり!》と言わんばかりだが、クルルには暖簾に腕押しである。
「きゅっ?」
と可愛らしく愛らしく首を傾げるだけに留まっており、エミリアとの相乗効果で更に倍増しな威力だから。あのクルルのモフモフを思い出して更に威力倍増。
自他ともに認めるモフリストであるスバルは、だらしなく頬を緩めていた。
それに事情? を知らなかったら、何故ツカサが嫌悪するのか、理解不能だと思う事だろう。
その後も、クルルは毛繕いしながら、顔を手で洗って……、こうしてみると何だかネコに見えなくもない。仕草1つ1つが反則だ。パックとは、姿形は全然違うのだけど、何処となくこれこそ兄弟を想わせてくれる。どっちが兄でどっちが弟か解らないが。
クルルとパックは、今日も今日とて、《きゅっ!》《にゃっ!》と互いに決まったであろう挨拶を交わしていた。
当のエミリアは、まんざらでもない様子なのが、スバルにとって更に羨ましがる要員の1つになってきたが、いつまでも遊んでいられる程暇ではない。
「んじゃま、活力補給も出来た事だし、さぁ、こっからがお仕事モードに突入だ」
「え? 活力補給って?」
「そりゃもち、エミリアたんといちゃいちゃする事だよぉーっ! 最後はクルルに良いトコ持ってかれたケド、一歩前進だろっ??」
「ホント調子良いんだから」
呆れながらも、スバルの背中を眺めながらエミリアは笑う。
自分を護る為に、本当に死ぬ一歩手前……、本当に死んでたかもしれない大怪我をしてしまった。その恩を返す事が出来てない現状がエミリアにとっては複雑極まりない事ではある、が。ああして元気いっぱいな所を見れるだけでも良かった、と言う事にしたい。
「ほんと、欲のないお願いだったのにね……?」
「きゅーきゅっ? きゅきゅー!」
「ふんふん、にゃるほどにゃるほど」
「きゅきゅっ!」
いつの間にか、パックとクルルがエミリアの頭上で精霊会議をしていた様なので、不意にエミリアは視線を上に向けて聴いた。
「どうしたの? 何話してたの?」
「スバルの事だよリア。クルルに聞いたら 何でも やる事成す事、目標がはっきり定まって、ゴールまで見えてるからより気合入ってるんだって。多少はミスしてるかもしれないけど、あれだけ心と身体が合致していたら、飛躍的に伸びるんじゃないかな? それに リアの膝枕が目当て、って言うのもぜーんぶほんとみたいで、下心も満載みたいだけどね~」
クルルと話をしていた内容をパックはエミリアに告げた。
クルルに聞かずとも、スバルの様子は大体は解る。
スバルの中にある気持ち、確かに騒がしいし五月蠅いし喧しいし……だけど、エミリアに対する気持ちに嘘偽りは一切ない。本当に好きでいてくれているというのがパックにも伝わっているから、エミリアの事が何よりも大切なパックにとって、そう言う人間が1人でも増えてくれる事は心から好ましく思っている。
故に、パックの表情も楽しそうなのだ。
「ま、無理し過ぎるのは身体に毒なのは変わりないし、今のペースで頑張っちゃったら、疲労困憊で倒れちゃうかも? っともクルルは言ってるし、頑張り具合で、報いてあげても良いと思うよ、リア」
その精霊の様子は、少なからず
「ふふっ。……ま、まぁ、考えてあげなくも無いんだからねっ?」
と、エミリアも膝枕に関して満更でもない様子。スバルが聞いていたら、《エミリアたんツンデレ!!》と発狂しかねない程狂喜する事だろう。
結果仕事にならなかったかもしれない。……なので、聞いてなくて正解なのである。
エミリアは、暫く自分の発言と考えからくる恥ずかしさを誤魔化す様に、笑っていたのだった。
その後スバルは頑張った。
物凄い勢いで頑張った。
自分の仕事は勿論だが、レムの仕事範囲、その時間帯も反則ではあるが事前にラムに聞いている。信頼を得る為に、多少のズルは必要だ、と持論を展開しつつ、そして打算的なのはそこまで。後は自分の体力が持つ限り全身全霊で使用人仕事をやり続けていた。
「おぉっっっと、レムりんっ! 次はお庭の木の選定かな!? 今、オレがやっちゃったばっかりだから、ジャッジ宜しくッ!」
「ラムちー! ほれ見てみ見てみ! この包丁さばきやべーぞ! 才能開花待ったなしだ!」
「ほらほら、レムりん見て見て! この繊細な細工! テーブルクロスにパックのイラスト刺繍だ! そんでもって、こっちはクルルの刺繍! これなら拍がつくってもんでしょ! 大精霊様のイラスト入りとか! 何なら高額な値がつくかもっ!? ヤベー、裁縫スキル向上! 極まってる!!」
「ふははははは!! 今度は掃除スキルも極まってきたぜーー! さぁ、さぁ、競争だ!! 今日は屋敷3周くらいは決めてやるぜっ!!」
初日とは打って変わって、2日目は凄いの一言。毒舌家ラムでさえ、辛辣コメントは差し控えており、パックはニコニコ、エミリアもニコニコ、レムだけがやや訝しむ……と言った様子で 完全に出足は好調だと言えるだろう。
確かに、心と身体は定まった。
やらなければならない事がはっきりと見えた。
でも、スバルは普通の人間だ。
健康的な20歳未満の男子。
スバルに限らず人間誰しも限界と言うモノはある。
広大なロズワール邸の中外を余す事なく、フルスロットルで働き続けたらどうなるか……。
「んが――――っっ!!?」
身体が先に根を上げてしまった。
因みに両足ツってしまう、と言う大惨事。それも あろう事か大浴場で犯してしまったのだった。
一方アーラム村のツカサはと言うと。
「……何だか、今スバルの悲鳴が聞こえてきたような……?? 気のせいかな、うん」
村の周囲を探索していた。
勿論、結界に沿って綻びが無いかどうかの再確認だ。
前回と違う事を起こせば、当然辿り着く未来も変化していくモノ……だが、今回は出来る限り、前回通り、レムが死んでしまうと言う最悪の未来だった世界の通りに沿って、過ごす予定だった。
無論、4日目までは……だが。
またレムを失う様な場面は当然見ないし、ラムも絶対にさせないだろう。
分岐点は間違いなく4日目。
スバルが村に来なかった代わりに、レムが来た事でレムの運命が決まってしまった。
ツカサもその日にレムと話をした。村には香辛料等の買い出しに来ている様だったが、細かな内容までは把握出来てはいない。
少なくとも、レムと話をして、そしてロズワール邸までは一緒に居たので、その時は不自然な所は無かった……筈。
纏めると 初日はスバルが村に来て、そのまま5日の朝を迎える事なく衰弱死。
次も5日の夜――行動はほぼ変えず、そのままにしてたら衰弱死しかけた。つまり結局は呪われた。
そして3度目は、スバルの変わりにレムが呪われて衰弱死してしまうと言う結果。
スバルかレムか、若しくはただ関係なく屋敷に居る者無差別なのか、解らない事は多いが、そんな中でも解る事はある。
「――十中八九、呪術師は、
3度繰り返し、体感で言えば当然3倍は付き合っている。
いつも優しく温かな村で、子供達がいつも元気いっぱいだ。
そんな村に、人を殺す呪術を扱う者が居る―――なんて、考えたく無い。
でも……。
「(レムの時と同じ)」
もう覚悟は 出来ている。
レムとラムのあの姿はもう見たく無い。
そして、間違いないのは相手はスバルだろうとレムだろうと、殺す気で来ているという事。
「(甘い事を考えてたら、こっちが危ない)」
思い返すのは、……いや、思い返して
状況は違えど、あの時と同じだ。
例え誰が相手であろうとも、容赦は一切なし。スバルを2度、レムを1度、こちら側ではもう3度殺されているのだから。
それに、戻る力も万能でもなければ
「(絶好調を100とすると……、今は多分50以下……)」
比べる相手があの白鯨だから、中々測りきれないあやふやなモノではあるが、確実に
そして、たった5日間のループでは、調子を元に戻せない。
「おーーい、おおーーい! つーかーさーーっっ!」
「約束っ! お空、お空のさんぽ!!」
「はやくはやく!」
「あそぼーーーー!」
深刻に考え込んでいたら、気が付けば、子供らの声が聞こえてきた。
どうやら、一通り見回りを終えて、村へと帰ってきた様だ。
―――もう恒例になる光景を前に……ツカサは心底願う。
子供達には笑顔で答えながら……1人1人の顔を見て願う。
ペトラ、リュカ、ミルド、メイーナ、カイン、ダイン。
もう自己紹介をするまでも無い。皆の顔と名前ははっきりと覚えている。
子供達の笑顔には救われてる部分もある。先ほどまで重かった身体が、何となく軽くなった気がするから。
だからこそ―――より強く願った。
―――どうか、子供たちは、一切関係ありませんように……と。
「はっ。ペース配分と言うモノを知らず、バカ一直線。結果、浴場で溺れていた惨めなバルスを釣り上げてやったわ。余計な仕事増やしてくれたものね」
「うぐぐぐ……、い、言い訳のひとつすらできねーのが悲しい! あああ、クソっっ! まだまだやる事成す事大量にあるってのにっっ!! こうしちゃいられ……あんぎゃっっ!」
「良いザマだわ。ほんと。でも、掃除の邪魔でもあるわね。掃いてしまいましょうか」
「ね、ねーさま、ちょい待ち、ちょい待ち! 今 足ダメっ! 足触るのカンベンしてくれ~~~!」
浴場で両足をつってしまい、そのまま 湯舟にダイブ……。比喩ではなく本当に溺れかけていた所、ラムに救出されたのである。
全力全開で飛ばし過ぎた為、完全にオーバーワーク。
初日でこの体たらく、情けないと思われるかもしれないが、よくよく思い返してみればスバルは重傷者。
確かに治療は施されて、大丈夫とはいえ血が完全に足りてなく、万全とは決して言えない身体。そこに、この大きな大きな屋敷のハードワークを無理矢理にでも行えばどうなってしまうのか……、考えてみれば解る事である。
「もう、スバルってば、また無理ばっかりして。パックとクルルが言った通りになっちゃった……」
「ああっ、エミリアたんっ!?」
そして、あまり見られたくない……いや、絶対見られたくない場面を、見られたくない人に見られてしまったスバルはまた無理矢理起き上がろうとするが、あの激痛に抗える筈もなく、また盛大に床に転がった。
「元気いっぱいなのは すごーく良い事だと思うけど、身体にもっと耳を貸してあげないとダメじゃない」
「うぐぐ……、まだ2日目だってのに、これで疲労困憊とか、虚弱体質が過ぎる………」
「もう、またそうやって無理に動こうとする」
見てられなくなったエミリアは、スバルが動かない様に、動けない様にした。
実力行使で。
その内容は―――――。
「……へ? これって………」
「特別―――だからね?」
「膝、まくら?」
「恥ずかしいから、はっきり言わないのっ! こうでもしないと、スバル跳び起きてすーぐ、どこかに行っちゃうもん。だから、ちょっとは落ち着きなさい、スバルのオタンコナス!」
「お、オタンコナスも今日日聞かないよ……? エミリアたん」
なんと、実力行使の内容は膝まくら。
まさかの展開に、スバルは暫く言葉にならず、身動きの1つも取れない。
「スバルはスバル。……そんなに焦らなくても大丈夫。……無理せずゆっくりで良いんだから」
「ぅ………、ものすっごく天国な感触なのに、情けなさ感が半端でないのが悲しい……」
「もうっ、だから余計な事考えないの! ……ほんの少し、休憩を挟む。それだけを考えてて」
スバルとエミリアのやり取りをじっと見ていたラムは、不意に後ろを振り返った。
そこには、いつの間にか来ていたレムが控えている。
「バルスは、能力的には下の下。体調管理も出来てないし、駄目な所が多い」
「はい。姉様の言う通りだと思います」
レムにとって、ラムは絶対。
ラムならば、……
だから、スバルに対する評価も間違いないだろう。……それに加えて、スバルから立ち込める魔女の残り香の件もある。
今のレムにも、それは十分に感じられる。
不要と判断されるのなら、……いや、判断を自身に任せて貰えれば、とまで思い、それを進言しようとしたその時だ。
「……でも、仕事には真摯に向き合ってるのはラムも認めてるわ。無鉄砲で馬鹿で、前ばっかり見てる。……もっと別の周りを見る事が出来たら良いのにね」
「っ………」
スバルを排除する――――と言う意思が前に出始めてきた矢先のラムの好評価に、レムはたじろいでしまった。
そして、一体どれくらいになっただろうか。
エミリアの説得――――と言うより、膝枕効果が絶大だった様で、羞恥心も相余ってスバルは復活。
「ぬおああああ!! こ、これはヤバイ! 永遠に離れられないヤツだ! これは麻薬だ!! エミリアたんっっ! ず~~っと味わいたい、さいっこうの枕だけど、オレにはやらなきゃならない事があるんだ!!」
膝から頭が離れてないので、物凄く説得力はないのだが、兎に角 これ以上仕事放棄してられない、と言わんばかりに吠えるスバルに、呆れた様に高い位置から見下ろすのはラムだ。
「はっ。そんな情けないバルスに与える仕事なんて、もう無いと知りなさい。今日はバルスは役立たず。これ以上の烙印を押されたくなければ、明日までには 万全の状態にしておくことね」
「ええっっ!?」
そうとだけ告げると、ラムは背を向けた。
「今日はお休み上げるから、しっかり体調元に戻しなさい、だって」
「そんな優しさ欠片も無かったよ、エミリアたん! ラムちーは、何時だって今だってオレに超スパルタだよっ!? で、でも たった2日で休むワケには……」
「万全じゃない状態で一緒に仕事をされても、迷惑になりますよ、スバル君。姉様の言う通り、身体をしっかり休めて治してください」
「!!! れ、レムりん? ……いつの間に………?」
「膝まくら」
「ぐはっっ!!」
もれなく全員に見られてしまったこの場面。
至福の一時である事は間違いないのだけれど……、出来れば2人切りの時にして欲しいと思わずにはいられない。
いたたまれなくなったスバルは、顔を両手で覆う様に抑えながら、休む事をしっかりと約束した後、逃げる様に去っていった。
「…………………」
レムは、暫く―――と言っても数秒間、立ち去った方向に視線を向けていた。
その姿を見て何かを感じたのか、或いは普段から感じていたのかは解らないが、エミリアがそっとレムに告げる。
「レム。―――スバルは良い子よ? だから、大丈夫」
「……………」
告げられた言葉に、レムは深々とした礼で応じた。
―――最愛の姉であるラムも、そしてエミリアも、スバルと言う男の事を信じている。
その事実が、レムの無表情の横顔にささやかな震えを走らせる要因になった事を本人さえ気づいていない。
ただ――感じるのはただ1つ。
立ち去った後でも、かすかに香る邪悪な臭い。
皆が信じても、その臭いだけが、レムの心にしこりを残していたのだった。
スバル君だけだったら、基本原作通りに進行中だーぁねw