Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

32 / 150
彩雲一型さんがイラストを描いてくれました♪
ツカサ君ですなw

こんな姿だったんだー、と他人事の様に喜ぶ私は極めて単純w

感謝感謝!多謝!

https://www.pixiv.net/users/68756765


犬? だらけな村

事態が動いたのは、スバルたちが村を去った後の事。

今の時間帯は、前回では夕食を終えて丁度ベアトリスの禁書庫でお世話になっている時間だ。

 

見えない敵に対して、出来る限りの備えを前回でもした様に、今回も同じだ。何かあれば、伝える様にと村の人達には伝えてある。

 

 

だが―――まさか、伝わるまでも無く、騒動が起こるとは思いもしなかった。

 

 

 

 

 

《ギャオオオオオオオオオ!!!》

 

 

 

 

 

ツカサが借りている宿。木造二階建ての一番豪華な部屋。寝室、居間、応接間と1人が泊るには聊か豪勢が過ぎると恐縮しっぱなしだった。そこらの家より頑丈に出来てるとの事で、子供達が外で騒いでも中々聞こえず、中にまで突入してきた事も屡々あった。

 

 

そんな部屋にも十二分に聞こえてくるのは、獣の唸り声。

 

 

「ッッ!!?」

 

 

それも1つではない。

数えきれない程、複数入り混じった唸り声だった。

 

ツカサは飛び起き、部屋の窓を勢いよく開く。

 

ここ数日泊って解ったのだが、夜の村は、王都の様な明るさ程は勿論無い。

 

朝日が昇ると共に起きて、夜は明日に備えて眠る村。必要最低限の見張りと灯りのみが点けられている程度だった筈なのだが、現在は村全体を見渡しても見える程の灯りに包まれている。

 

そして忙しなく、慌ただしく村の青年団が行き来をしているのが見えた。

その中の1人に狙いを定めるとツカサは直ぐに行動。

 

 

「ッ、と! 一体何があった? これは??」

 

 

ツカサは、部屋を降りて外に出る時間さえ惜しく感じ、窓から飛び降りて青年団のゲルトを捕まえて事情を聴いた。

 

 

「ツカサ様!?」

 

 

突然、空から降ってきたツカサに驚くゲルトだったが、その驚く時間さえ惜しい、と言わんばかりに、ツカサは一歩前に詰め寄った。

面食らっていたゲルトも、村の異常事態の事も有り、更に以前ツカサには魔獣を撃退してもらった経緯もあるので、直ぐに説明を。

 

 

「っ、わ、解りません、突如ウルガルムの唸り声が響いてきたので、警戒をしている所で……」

 

 

ウルガルム。

以前の結界の解れ、綻びを縫って侵入してきた魔獣。

全身を黒い体毛に覆われていて、いつも空腹なのか鋭い牙から涎が滴るのが特徴。

 

前回の襲撃の際に、ツカサはそれらの習性についてはしっかりと把握出来たつもりだ。

 

人為的か、否かを除外したとしても、結界は万能とは言えない。

稀にその綻び・群れから離れたはぐれ(・・・)が、結界の内側に入ってくる事はある。

 

だが、結界に守られた村では それは極めて稀な現象だ。

 

ウルガルムの知能は、見た通り獣のソレ。

獲物を追い詰める事には長けているかもしれないが、結界を超えて、連携し、侵入をしてくるまで考えれる脳は持っていない筈。

 

 

「クルル!」

「きゅっ!」

 

 

ツカサは、口にこそ出していないが、クルルに村を上空から観察する様に指示。クルルも意思疎通は出来ている様で、すぐさま宙を垂直に勢いよく飛んだ。

額の紅玉が光り、青い目も光り、より鮮明に村の観察が出来る。

熱源も探知できる。

 

光点の数を瞬時に把握。

 

そこで判明したのは………。

 

 

 

「結界の内側に―――凡そ30……、いや まだ増えてる……!?」

「なっ……!?」

 

 

 

まだ、襲い掛かってきてはいない。タイミングでも見計らっているとでもいうのだろうか? ウルガルムの目立った動きこそないものの、確実にあの結界の内側に来ている。

 

そのツカサの言葉に、ゲルトは一気に青ざめた。

 

先日のあの騒動でさえ、極稀も稀だったのだが、今回の様な一斉に襲ってくる事なんて未だ嘗て無い前代未聞の大事件だ。

 

1匹でも大人数人で取り囲み、撃退するのに時間を有すると言うのに、それが30……? 気の遠くなりそうな数に正気で居られなくなる。

 

 

「ゲルト! ゲルト!!」

 

 

だが、その気付けとなったのが、ツカサの声と身体を大きく揺さぶられる衝撃だ。

焦点が定まらなかったが、我に返り、しっかりとツカサの姿を、目を見れる様になった。

 

 

「直ぐに、村の皆を一か所に集める事が出来るか!??」

「え、そ、それは」

「出来るか、出来ないか、どっちかで良い!! 分散してたら、守り切れない!」

 

 

ツカサの剣幕に圧されて、漸く頭が働く様になる。

慌てる時間などない。直ぐに行動しなければ、村に被害が出る。……甚大な被害が出る。

 

 

「できます。村長の家が一番大きいし、場所は中央位置。その周囲にも幾つか家があるので、多少分散しますが、限りなく一ヶ所に近い形で集められるかと」

「良かった! なら、青年団の皆手分けして、村の皆を一ヶ所に! その間、オレがあの獣の相手してくるから! 大丈夫、手はある。だから、気にせず村の皆の避難に集中して」

 

 

有無を言わさない、と言った迫力だった。

 

ツカサの実力については、当然しっかりと把握している。

領主であるロズワールからも伝わっているし、何よりも先日のウルガルムを数体撃退してくれている事から、最早疑う余地はない、疑う事すらない。

 

一番思うのは、村の為に、ツカサ自身が危険を侵すのを良しと思わないと言う事。そう思っている青年団員は1人としていない。

 

 

その議論、その感情すら許さない、と言わんばかりの表情だった。

1分1秒が惜しい危機だから。

 

そして、もう1つ。重大な事実を、ゲルトはツカサに伝えた。

 

 

 

 

 

「ッ……つ、ツカサ様、こども、こどもたちが……」

 

 

 

 

 

 

最悪な事態は、より深刻さを増していく。

それは、まるで重ね続けてきた自分達のツケが積もりに積もって回ってきたかの様に。

 

 

 

村は現在、魔獣の脅威に晒され―――そして 村の子供達が数名、行方不明。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロズワール邸。

それは、村の異変に気付く前。……遡る事十数分前の事。

 

アーラム村の状況が、今ロズワール邸に伝わる訳はないが、ここでも異常事態が発生していた。

 

 

禁書庫でベアトリスに呪いの有無について、スバルが診て貰った結果が原因。

 

 

部屋を飛び出し、廊下を駆け抜け、階段を勢いよく飛び降りる。

その勢いのままに、四足歩行になりかけたが、構う事なくスバルは屋敷のメインホールに立つと。

 

 

「―――ラム!! レム!! 直ぐ来てくれ!! 話がある!!」

 

 

腹の底から声を出し、屋敷中に聞こえる様に叫んだ。

エミリアには知らせたくない事ではあるが、それを気にして、ラムやレムに伝わらなかったら目も当てられない。

ラムも、十分注意をしてくれているが、基本的な作戦ではレムの様子をしっかり見て置く事で合意している。

 

 

スバルは最悪の事態だ、と歯を喰いしばりながら、メインホールを駆け抜け、玄関ホールへ。

 

 

自身が一足先に到着した、かと思いきや、最初に居たのはラムだった。

そのまま勢いよく屋敷を飛び出そうとしているスバルを止める。

 

 

「バルス。説明が先よ」

 

 

レムの姿が見えない。

一瞬焦るスバルだったが、目配せで《レムは大丈夫》と言っている……様に見えた。

そもそも、レムに一大事が起こればラムを見れば直ぐ解るので、悠長に話をしている時点でレムは大丈夫だろう。

 

 

「判明した! 呪術師……なんてもんはいなかったんだ!」

「? 解りやすく説明して。レムがもう直ぐ来る。事情を知らないあの子に不信を与えない様に」

「っっ、っとわりぃ、スゲー急いでたからつい。……ああ、頼もしいよ、姉様! 時間がね―けど、慌ててミスって、ドカンってなったらそれこそシャレになんねーしな」

 

 

事情を知らないのはレムだけだ。

ラムとスバルのやり取りを不信に思い、抑えれていたレムがまた表面化したら目も当てられない。

スバルを見ていたら、一大事であると言う事はラムも解っているから。

 

 

「姉様―――? これは……?」

 

 

そこにレムが到着。

どうやら、先ほどのやり取りは聞いてなかった様で、一先ず安心した。

だが、ここから迅速かつスピーディーに行動する為には、スバルの話術に掛かっている。

 

それを重々自覚しつつ、スバルは言葉を選んだ。

 

 

「村に《悪い魔法使い》がいる。それを退治するから村に行きたい!!」

 

 

スバルの言葉に目を丸くするレム。ラム自身も、《さっきは呪術師なんていなかった》と言っていた矢先、舌の根も乾かぬ内に否定したスバルに呆れそうになるが、これも策の一部だろう、と納得させる。

 

 

「姉様姉様。スバルくんてば、随分つまらない冗談を言いますね」

「レムレム。バルスってば、ピエロとしての才能は一流な事を言うわ」

「ラムレム。オレはいつもふざけちゃいるが本気で話す時だってあるんだ」

 

 

阿吽の呼吸を体感出来たスバルは、急いではいても、自分に花丸を上げたい気分になる。

ラム第一なレムは、ちょっとした空気でも 自分とラムの間に何かあるのでは? と勘づくかもしれないから、敢えて細かい説明を省いた大雑把な説明をした。

 

結果、いつもの毒舌付きなユニゾンする2人の会話が生まれ、スバルも反抗する。

 

そのおかげもあって、ラムが訝しむのも真剣味を持つのも極めて自然に務める事が出来たのだ。

 

 

後は、ここからレムがどう信じてくれるかにかかっている。

 

 

「怪しむのなら、ついてきてくれ。そんでもってオレを見極めろ。オレは村へ行く。兄弟……ツカサと合流して、元凶を叩く。……でも、この屋敷を茂抜けの空にするワケにはいかねぇ。エミリアを1人にしちまうからな。だから、ついてくるとしたら、レムかラム、どっちかだ」

「……バルス。今夜はラムたちは屋敷を任されている。もっと説得らしい説得は出来ないの? その説明じゃ子供の作り話で一蹴されて終わりよ」

「……それに勝手な仕切りに付き合う理由は無い筈です」

 

 

ロズワール邸の守りは現状思わしくない。

何せ、この屋敷の主であり、王国筆頭魔導士であり間違いなく最高戦力でもある男、ロズワールが不在なのだ。

 

 

ロズワール不在は、繰り返してきた世界の中で、初めてのもの。

 

 

今日、アーラム村から屋敷へ帰還した時、代わりにロズワールが外出したのだ。

更にロズワールの口から《きな臭いモノを感じる》と言う言質も貰っている。

 

スバル談。うさん臭さでは右に出る者は居なそうな、変態貴族・ロズワールを持って《きな臭い》なのだ。あまりにも説得力があると言うモノ。

 

そして、エミリアを頼む、と言う事も託された。

 

他の誰でもない、自分の行動原理のトップに君臨するのはやはりエミリアだから。

 

 

スバルは、ぐっ、と力を入れる。

身体から溢れる様に。朝は、パック先生の元で魔法教室を開いた結果、思いっきり身体から放出してしまったマナ。

 

今回はイメージでは完全に内に留めて、身体をレベルアップさせるイメージを象った。

 

全くパックが言っていたゲートやマナについての説明をフル無視しているが、気にしない。

 

 

「ああ。ラムの言う通りだし、レムの言う通りでもある。オレに説得力なんて思ってねぇ。今の説明だけじゃ、逆に説得力あるって言う方が異常だ。――――だがな、こっちも色々と用意しているんだぜ? 例えば、夕方のロズワールの命令だ」

 

 

スバルは、レムの方を見た。

明らかに不振がっている。……それなりに信頼を勝ち取れる一歩手前まで言った様な気がする(スバル自己評価)が、今回の件で霧散してしまうかもしれない、が 当然ながら構ってる場合ではない。

 

 

「……出てる命令に、このオレの事は入ってねぇか? オレの事を見張れ、とかよ。オレが超怪しいのは出会った時から既にロズワール自身に話してる事でもあるしなぁ」

「―――!」

 

 

ロズワールからの命令。

それについては、レムに釘を刺す必要さえない。……ツカサを通じて、ラムから聞いているからだ。

 

ロズワールと同等の信頼と信用を約束したツカサ。ロズワールに仇なすような事を起こせば、また別かもしれないが、ツカサに限ってそれは今の所無い。……故に、隠された指令については、契約を破らない範囲では、ラムは答える事が出来るのだ。

 

 

「後、説得力、ってんなら、オレ以上の適任者がいる。―――ベアトリスだ。ベアトリスなら、何でオレがこんなにテンパって、バカみてーに騒いでるか答えてくれる筈だ。今は時間が惜しい。後でベアトリスに聞いてくれ。間違ってたら、オレを八つ裂きにしてくれたって構わない」

「…………」

 

 

ラムは数秒、考えた後にため息を1つはくと続けた。

 

 

 

「解ったわ。バルス。あなたの独断行動を認める」

「姉様!?」

 

 

 

ラムの判断に、レムは驚きを見せた。

予定調和だとは言え、ラムの言う事は絶対、と思っているレム相手とはいえ、少々肝を冷やすスバルだったが、ラムの堂々とした佇まいとその言葉を聞けば、安心しかない。

 

 

「ただし、レムを同行させるわ。おかしな事をしたら、ただじゃすまないのは解ってるわね? バルス」

「勿論だ! とっととツカサと合流して、レムとツカサの2人で、一発やって来るぜ!」

「――――その他力本願全開な情けない決意、どうかと思うわ」

「そりゃ、ラムちー姉様には言われたくないけどな!」

 

 

一頻りやり取りをした後、ラムはレムに耳打ち。

 

 

「レム。そう言う事だからお願い。ベアトリス様への確認とエミリア様の方はラムが守るわ。……ツカサに対しても、ロズワール様の言いつけ通りにして。言われるまでも無いと思うけれど、宜しくお願い。ちゃんと視てるから」

「ッ―――姉様、あまりその目は……」

「大丈夫よ。ラムは心配してない。バルスだけなら、ただの虫けらだけど、レムとツカサが合流するんでしょう? ……なら、ラムは何も心配してないわ。でも、必要なら使う。それだけは頭に入れておいて」

 

 

スバルは兎も角、全幅の信頼を寄せているツカサに対しては、ある程度レムに合わせるとはいえ、はっきりと正直に答えている。

 

ここで、レム自身のツカサに対する考えが少しでもマイナスに傾いていれば、また拗れていたかもしれないが、レムにとっても、ツカサは信用に足る相手であると認識しているので、問題なかった。

ロズワールの命令以上に、ツカサ自身と接し レム自身もそう判断できるまでに至ったから。

 

 

「すーーげーー、納得しかねる話内容だが、構わねぇ! 直ぐに村に行けるのならな!」

「スバル? どこか行くの??」

「っっと、やっぱ聞こえてたか」

 

 

ラムとレムの会話に、モノ申したい気分だったが、今は時間優先。早く屋敷を出ようと息巻いていた矢先に、エミリアが登場。

邪険に扱う訳もなく、時間が無いとは言え、ちゃんと説明をする。

 

 

「何かあるかも、なんだよ。まぁ心配しないでくれ。あの王都でのバトルメンバーに加えて、レムも一緒だぜ? ……あ、でもちょっとは心配してくれると嬉しい。オレってば、戦闘能力1だから」

「……もう。またわけわかんない事言って。……でも解る。危ない事しそうな顔してるもん。……止めても無駄なんでしょ?」

 

 

ばとる、も めんばー、もいまいち理解が追いつかなかったエミリア。これから戦いに行く、とストレートに告げていたら、もっと長引いていた所だが、何とかそこは良し。

 

エミリアが引き留めてくれるのは何だか嬉しいが……、それを今甘んじるワケにはいかない。

 

 

「まぁ、そうなるかな」

「無茶も無理もしないで、って言ってもきっとダメなのよね?」

「ま、まぁでもオレもしたくないんだよ? 好んで飛び込んでいってる訳じゃないからね? エミリアたん」

 

 

何とか平和に、且つエミリアには危険が及ばない様に、どうにか取り繕う。

この時ツカサの名や力について言わなかったのは、ちょっとした意地があったのかもしれない。

 

好きな女の前で、格好つける事。それは当たり前の感情だから。

 

 

エミリアは全てを理解し受け入れた。納得はやっぱり出来てないが、それでもスバルを引き留めたりはしない。

そっと、スバルの胸に手をあてて―――。

 

 

「――――あなたに、精霊の祝福がありますように」

 

 

目を閉じて、告げた。

心の底から、身体中が熱くなるような感覚。

自分のなんちゃってマナチャージ? など、羽毛程軽く感じる程に。

 

 

「これはお見送りの言葉よ。無事に返ってきてね、ってそんな意味」

「解ったよ、エミリアたん! 無事に帰ってきたあかつきには、君のその胸に、オレと言う小鳥を優しく抱きとめてね!」

「はいはい………」

 

 

スバルの言う事は話半分。

そう思っていたけれど、やっぱり心配なのは変わらない。

 

 

「……いってらっしゃい」

 

 

不安が頭を過りながらも、背を向ける男にエミリアは心から無事を願うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

道中、簡単な説明をレムにする。

何故、自分が呪術師に気付けたかも含めて。

 

 

「呪術師が動物……子供達と一緒にいた、犬だった、と?」

「ああ。そうだ。ベアトリスから聞いた。……ベアトリスが解呪してくれた時、オレの噛まれたこの手のひらから、黒い靄が抜けていったのをはっきり見たんだ。……パックのお陰だぜ。何でも言う事聞く券の効力、マジ鬼懸かってる」

 

 

ベアトリスに聞け、と言った意味が解った。

ベアトリスが何故スバルを助けたのか、その理由も気になったが同時に理解。エミリアを助けたスバル。そのスバルの恩に報いる為にパックが指示を出したとするなら、ベアトリスも間違いなく動くだろう。

 

それは解ったのだが、解らない部分がある。

 

 

「おに、がかる?」

 

そう、スバルが言っていた鬼と言う単語と、その続きの言葉だ。

スバルは、待ってました、と言わんばかりに説明。

 

 

「そこ、やっぱ気になる?? だろうなだろうな! 神懸かるの鬼バージョン! 大体皆、神懸かる! ばーーっかだし? ……オレは、神より断然鬼の方が好きだからよ! 基本何もしてくれねー神様より、一緒に笑い合って、未来の話が出来る鬼の方が良い」

 

 

確かにレムには殺されかけた。ラムにも殺されかけた。

 

現在、鬼とお話しして、高確率で命狙われているから、神様より性質が悪いと認識を改めてしまいそうだが、それでも 一緒に前に進む、心強い鬼たちの方がスバルは好きなのだ。

 

 

「…………」

 

 

レムも何処か思う所があるのか、暫く口を噤み、走る事だけに集中。

 

 

「村には、ツカサも居る。村壊滅とかは、あの最強兄弟が居るんだから大丈夫だが、噛んで呪っちまう犬をピンポイントで見つけて退治する、なんて鬼技は難易度がやべぇ。……何せ数日間は一緒に遊んでいた筈なんだからな!」

 

 

スバルは当然ながら知らない。

子犬と遊んだ―――と言うのはスバルだけだと言う事。

 

その子犬をこの村に連れてきた存在は、—————明らかにツカサの事を警戒していたという事を。

 

 

「だから、何事も無く、村につけば《解決OK》ってな具合で、サムズアップを期待したい所なんだが――――」

 

 

と、村に後少しでつく……と思ったその時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ギャオオオオオオオオオ!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

あのウルガルムの唸り声が森中に響いてきたのは。

 

 

「なっっ!?」

「っっっ!!」

 

 

先ほどまで感じなかった獣臭。

鼻の良いレムにとって、表情を歪ませる程のモノだった。

 

 

 

「ば、かな。結界ってのがあるんだろ? 兄弟が壊れてんの見つけて、そんでもって結びなおした、って聞いてるぞ!? まさか犬だらけな村になってねーよな!?」

「それは間違いありません。ツカサ君も、村を見回ってくれたと言ってました。……終わりと同時に、結界を無効化させた? そんな事を、魔獣が……??」

 

 

信じがたい現象に驚くが、それでも現実が変わる事は無い。

アーラム村からロズワール邸へと続く道に備わっている結界は機能している様で、この左右からの襲撃は無い様だが、それでも臭いで解る。

とんでもない数が周囲に居ると言う事実が。

 

 

レムは咄嗟に、何処から取り出したのか、スバルにとっては悪夢でしかない護身用武器を取り出した。

 

ジャララ……と、聞き覚えのある鎖が擦れる音に、スバルは身の毛がよだつ。

 

 

「えと、レムさん、それは……」

「持ってきて正解でした。護身用ですので」

「だよなー! すっげー複雑な気がすっけど、すっげーー頼りになるよ、まったく!」

 

 

命を狙ってきた鎖の音が、頭を砕こうと迫ってきた棘付き鉄球が、こうも心強く感じる日が来てくれるとは……とある意味スバルは感激だ。

 

だが、悠長に構えてられない。

 

自身が死ねば、ツカサに大ダメージ必至、なので いのちをだいじに が第一である事は解っているが、今はそれ以上に村の事だ。

 

 

「やべーんじゃねーか!? 何処の結界が破られてるか解んねーけど、オレでも気配ってのを感じるよ! 嬉しくねーけど達人になった気分みてぇに!」

「この道は結界が機能しているので大丈夫です。……ですが、ウルガルム達は、村を目指している様なので安心はできません。(…………何匹かは、近くに居る?)」

 

 

レムは常人を遥かに凌駕した嗅覚と視覚で周囲の状況を確認。

ほぼ村に向かっている、と言って間違いない様だが、何故か一部はこの近辺を離れる様子はない。

 

―――まるで、何かを狙っているかの様な、そんな感覚だった。

 

 

だが、今はそれを考察している時間はない。

この場所は安全だが、間違いなくアーラム村は危機に扮しているのだから。

 

 

「…………また、村の結界に穴が? 急ぎますよ、スバル君」

「おおよ!! 子犬1匹締めあげて仕舞い、っつー当初の想像とはまったく全然、ありえねーほど、違ってベリーハードな状況になってる様だが、ここまで来て逃げっかよ!! 兄弟と合流して、犬畜生どもの退治だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レムが移動速度を上げ、スバルもどうにかレムに付いて行く。

本気を出したレムに付いて行く事はスバルの身体能力では無理なので、ついていけるギリギリ、それでいて可能な範囲の速度で村へと向かう。

 

 

 

 

 

 

その様子を、クルルを通じてツカサは見ていた。

村の中に入った魔獣(ウルガルム)を1匹、また1匹と撃破しながら、クルルと言う第3の目を通して、レムとスバルの事を視ていた。それは ラムとレムの共感覚に通じる魔術。

 

 

「はやく、はやく……」

 

 

 

視ながら念じる、念じ続ける。

魔獣(ウルガルム)の群れは、数えればもうキリが無い程増えている。

 

今の所、村人には被害は及んでいないが、子供達の件もあり、一刻を争う事態には変わりない。

 

 

後ほんの数m。境界線まで後少し。

 

 

 

「(5・4・3・2・1……)」

 

 

レムの足の速さ―――と言うより、スバルの足の速さを目測で測り、カウントを頭の中で刻む。

 

ウルガルムを再び1匹、頭と胴を切り離したその時、体感時間で異様に長く感じたカウントは、とうとう0になった。

 

 

 

 

 

「ゼロッッ!! 今っ!!」

 

 

 

 

カウント0。

即ち境界線を越えて、レムが先に村へと入り、遅れてスバルが入ったのを確認すると同時に、上空に居るクルルは光を放った。

 

その光は、地で戦っているツカサの手の中に納まり、そして 光が納まった手のひらをそのままの勢いで大地へと押し当てた。

 

 

 

クルル―ツカサを介した迸るマナが、更に大地を通じて村の周囲へと駆け巡る。

 

 

 

 

それは 見回りの際に、仕込んだ種。

念には念を入れて張り巡らせた簡易防御壁(・・・・・)が今、発芽する。

 

 

 

 

 

 

 

――――ジ・アース

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。