Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

33 / 150
まさかの――――………(後書きへw)


新たな魔獣

「どわあああああ! こ、こんじょおーーーーーーっっ! ……へぶんっっ!?」

 

 

 

 

 

それは、目測を見誤ったのか、元々ギリギリを攻めていたのかは解らないが、事実として起こった事を説明すると……。

 

村へと到着したスバルの足元が突如せりあがった。根性を見せて回避しようとしたスバルだったのだが、宙に放り出されてしまっては、空を飛べるワケでも無いので、どうしようもない。

 

結果、根性は実りを見せず 地面へ顔面ダイブをしてしまったのである。

 

ギリギリ届くか否かの距離だった為、そこまで高くは飛ばされていない。

精々1m程だろう。

だが、顔面からなので痛い物は痛い。

 

 

「なんだなんだなんだ!? いきなりスゲー歓迎受けちまったよ! つーか、全然犬っぽくない攻撃!? 一体何なんだよ、これ!! って……あれ?」

 

 

ガバッ! と起き上がり、拳を振り上げてブーイングするスバルだったが、直ぐに異常に気付く。

 

 

 

「道が、無くなってる……、それに、なに? この壁」

 

 

 

大地がせり上がり、ロズワール邸へと通じる通路が完全に塞がってしまったのだ。……いや、道路封鎖、って感じじゃない。長くそれなりに高い大地の壁に途切れてる所は見た範囲ではあるが無い。

 

 

「……これって、村を囲ってたりしてんの? マジかよ、大魔法じゃねーかよ! 大地を操るとかロマンじゃねーかよ! うはーー、やっべっ! 天は二物って言葉、ありゃ嘘なんだな。一体何個持ってんだよ、兄弟!」

 

 

絶え間なく襲い来る魔獣も、この壁を乗り越えたりはしないだろう。下手に勢い付けてきてたら、そのまま衝突して死骸に変わっていた、なんてこともあり得そうだ。

 

スバルは驚きつつも内心では嬉しくて仕方が無い。

この途切れていないせり上がった大地が、村を囲んでいるとなると、魔獣の脅威から村を守る事が出来るだろう。

 

 

 

―――そう、子供達もきっと大丈夫だ、と。

 

 

 

 

「これ、は……、これがツカサ君の力……ですか?」

「ん? ああ、多分な。ほれ、あそこで光ってるの、多分クルルだぜ」

「……あっ!」

 

 

スバルが指さす方向を見上げるレム。

その指先を視線で追った先にはっきりと見えた。

村の上空で光る鮮やかな緑の輝き。瞬きを繰り返しながら、大地へとマナを放出しているのがはっきりと解る。

 

 

「あそこに、あの下にツカサ君が?」

「十中八九間違いねぇよ。こーんな真似できんの、兄弟以外ではロズっちくらいだろ? ホイホイいてたまるか、ってのも有るな」

 

 

もしも、この力が敵側の魔法であれば、村人を誰一人残さずに逃がさずに、殲滅し喰らいつくす狩場、いや食事場の可能性だって、当然0だったワケじゃない。だが、視線の中にあのクルルの姿が映ったので、懸念は杞憂に変わったのである。

 

 

「落ち着いてはいられませんよ、スバル君。まだ、村の中に獣臭があります。………決して少なくありません」

「マジか。やっぱ、村ん中に入って来てんのかよ!」

「はい。なので、ツカサ君と合流するまでは、周囲を警戒して……」

 

 

レムがそう言ったその時だ。

 

突如、村の家々の影から、迸る黒い塊があった。

それが、ウルガルムである、とは直ぐに認識出来たが、ここでおかしな事が起きる。

 

 

明らかにレムの方がスバルより近い。

先頭に居るし、資材等を左右に積み上げてるので、レム自身を意図的に超えなければスバルの方までは行かないだろう。

 

 

だが、知能があるとは言えない魔獣は、目の色を変えてレムではなくスバルにとびかかったのだ。

 

 

「んなっっ、デケェ!?」

 

 

そして、スバルにとっても、離れていた事がある意味功を成す事になる。

レムを超えて、左右の資材を飛び超えて、時には家の屋根から飛び降りて、迫ってくるのだから、はっきりと視認出来た。

 

気付いたら、ばくりっ! と言う笑えない展開にならなかった事が唯一の幸運。

 

そして、スバルにとってのもう1つの幸運。

それは、心強いレムの存在。……前回は死を運ぶ青い鬼だったレムが、今は勝利の女神にしか見えない。

 

 

「シッッ!!」

 

 

 

目にも止まらぬ速さで、レムの体躯よりも遥かに長く、頭部よりも大きな鉄球を振るい、ウルガルムを一気に2頭仕留めてしまった。

 

 

「ッ!」

 

 

先ほどまでは、武器を振るっていた筈なのに、今度はいつの間にか跳躍。

宙で身体を捻り、回転しながら最後の1頭、ウルガルムの頭を拳で粉砕。

 

 

ドゴンッ!! 

 

 

と言う、ウルガルムの頭を潰した音は、殴る音には聞こえてこない。

大型プレス機か何かで思いっきり押しつぶした様な、そんな感じだ。

それも最も固いと言われてる頭蓋を、まるで果物みたいに爆ぜて、血飛沫が周囲に飛び散った。……掃除が大変かもしれないが、今は緊急時だ。大目に見て貰う他無い。

 

 

「つ……」

 

 

これが、あの夜迫ってきていた恐怖だと思えば、笑えないかもしれないが、今のスバルにとっては、もう些細な話。過去の話―――所じゃない。次元が違う世界の話だ。

興奮も相余って、スバルは大きくだらしなく口を開けて思った一言をレムに送った。

 

 

 

「強ぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

「女の子にその言葉はどうかと思いますよ、スバル君」

「ボキャ貧のオレにはこんなんしか今の状況を表現する言葉が思い浮かばねぇんでな! いや、マジ パネェな!? お前!! ありがと、助かった!!」

「――――安心するのはまだ早いですよ」

 

 

 

興奮しっぱなしだったスバルだったが、レムの言葉に直ぐ冷静さを取り戻して、声を静めた。

獣の唸り声がそこら中から聞こえるのだ。

 

それに、数が増えている様に聞こえてくる。

 

 

 

「ッ……、マジかよ。(これ)って、実は敵側の《超絶逃がさんぜ魔法》で、オレ達・兄弟含めた村人全員、猛獣の檻の中に閉じ込められた、って状況の方が正しいのか?」

 

 

スバルは、下男として支給された執事服を脱ぎ、多少でも身軽にしつつ、腕に思いっきり巻き付けた。

ウルガルムの攻撃手段は、先ほどから見た程度ではあるが、基本噛みつきだ。

 

……腕1本くれてやる代わりに、命を貰う! なんて、格好良い事を考えつつも、レム頼りと言う他力本願スタイルなのが悲しい。

 

 

 

「……いえ。ウルガルムがこんな魔法を使うなんて訊いた事がありません。……なので、どんどん侵入してくるウルガルムを止める為、恐らくウルガルムの数を、最小に抑えたんだと思います」

「それ頂き! だよな!? んな、超絶パワーが犬畜生にあんなら、もっと村とか屋敷とか、厳重要塞に仕上げねぇとだ。……つまり、ツカサは この壁で増援絶って、各個撃破してる、ってトコか。後は村人の皆は どーしてっか、だけど………」

 

 

スバルは周囲を見渡す。

レムが作った血だまり以外は、血痕らしいものは今の所見えないし。獣の唸り声は、姿が見えないがそこら中から聞こえてくるが、人間の悲鳴や怒号等は、この辺りからは聞こえてこない。

 

 

「はっ。余計で無用な心配すんな! ツカサ、って男の事を知ってるだろ!? ナツキ・スバル!」

 

 

ドンッ、と胸を強く叩く。

嫌な予感がしなかったか? と問われれば嘘になる。

 

楽しくラジオ体操をした。

呪術師対策で、村人全員と接触した時 例外なく笑顔だった。

 

 

あの笑顔が1つでも欠けてる……と考えてしまったが、それを直ぐに胸への衝撃と共に、どこかに吹き飛ばした。

 

相応の理由があるにしろ、ツカサと言う男は見ず知らずのナツキスバルを守ってくれた。命懸けで守ってくれた。守られるだけにはいかないから、今後の自分を見てくれとスバルは思っているが、自分の覚醒、それはまだまだ先の様だ。

 

戻れる力を有していても、最後の最後まで諦めず、驕らない。

そんな男が戻ってない所を見ると、まだまだ諦めてない証拠になるし、最悪の状況ではないと言う事も解る。

 

 

「レム、この辺の魔獣1人で全滅狙えたりする?」

「数が把握しきれませんし、まだ増えるかもしれません。死角も多く、多勢に無勢。数で圧されたらジリ貧です」

「ですよねー! 森ン中ならまだしも、こうも死角が多い村ん中で多勢に押し寄せてくるとか、どんだけ無理ゲーだよ。整理整頓清掃3Sを心掛けといてもらいたいね、今後の為に!」

 

 

スバルは息を呑みながら、最善策を模索。

 

 

「戦力分散させる、ってのは、正直良いとは思えねぇ。メッチャ広いってワケじゃねーし。どっかで村人守りながら戦ってるんだとしたら、尚更だ。……とりあえず、見える範囲をぶちのめして、ツカサと合流する、って言うのは?」

「村の状況を知る為にも、それしかないかと」

「よっしゃ! んじゃあ……」

 

 

スバルは、資材置き場に置いてある手ごろな角材を手に持った。

 

 

「ひっさしぶりに、剣道二段の実力、魅せてやるぜ!」

 

 

 

と、息巻いていた自分がいました。

 

 

 

 

 

 

 

「呆れますよ、スバル君。無理せずに一直線に走ってください」

「ヒデぇ!! これでも頑張ったんだよ、オレ! 剣道は人間相手にしか通用しない、ってのがよーーく解りました!! いや、寧ろ異世界じゃ人間にも通じねぇよな!! エルザみてーなヤツもいるし!!」

 

 

一匹二匹と飛び掛かってくるタイミングに合わせてカウンター気味に面を喰らわせたまでは良かったが、やはり多勢に無勢。波状攻撃を全て処理できるような、飛天●剣流は習得していないのだ。

 

 

「それにしても、何故スバルくんばかりに目を光らせているのでしょう? やはり、弱者から襲う本能のようなモノでしょうか?」

「わっかんねーよ! すっげえ、失敬だと思ったけど、その弱者ってのは全く否定できないから、辛ぇーよ!」 

 

 

解らない、とスバルは口に出して言った……が、大体予想は出来た。

自分にあってレムに無いもの。

 

―――何より、殺意剥き出しで迫られる原因は、自分にあるとしたら、1つしかない。

 

 

「んでも―――自爆技、ってヤツだな。殆ど。だけど、それしちゃ、オレだけじゃなくて、ツカサもヤベェ。道連れ式自爆技。性質わりぃよ、ほんと。……んでも、正真正銘のラストスキルだ、こりゃ」

 

 

万が一でも、ツカサが死ねば?

戻るかもしれない、とは本人は言っていたが、ならばセーブしていない状態だったとしたら?

 

スバルは、自分の死に戻りのリスクの事があるから、基本的にはセーブは残さない様にしていると聞いている。

だが、その結果 セーブをしていない状態で(ゲームオーバー)となれば……?

ニューゲームからスタートなのか? 

 

確かめるには、怖すぎて出来ない上に、未知数過ぎて怖い。

 

 

「ぐおっっ!?」

「スバル君ッ!?」

 

 

考え事をしていた矢先、背後の影より飛び出してきたウルガルムにスバルは足を噛まれた。

 

 

「痛ぇだろうが、このうすら馬鹿がぁ――――!!」

 

 

反射的に、角材の尖った先端を思い切りウルガルムの胴体目掛けて突き刺した。

頭蓋と違い、固さは然程ないが、肉を貫く感触と言うモノは、想像以上にキモチワルイ。手に残る感触、感覚に唾棄を覚えるが、今はそんな事は考えていられない。

 

 

「スバル君! 大丈夫ですか!? 今、治します」

「ててて、マジナイス反応だオレ。速攻で反撃出来たぜ……。それに、レムが仕立ててくれたこの服のお陰で、食い破られずに済んだな」

 

 

素早く水のマナを使用し、怪我を治療した。

ジャージ姿だったら、もっと素地が柔いだろうから、足の肉事食われていたかもしれないが、何とか動ける。

 

 

その時だ。

 

 

「スバル! レム!!」

 

 

ツカサの声が聞こえてきたのは。

心強い援軍の声に、一瞬気が緩みそうになったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ギャオオオオ!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの唸り声が再び響いてきて、それどころではない。

 

 

「この……失せろ!」

 

 

四方八方から迫るウルガルム。

レムはスバルの治療で一瞬動きが遅れている為、ツカサがウルガルムの群れの一点突破。

 

2人を自身の背後にやると、あの黒い竜巻を発動させた。

 

 

「テンペスト」

 

 

規模を少しだけ強めて、尚且つ周囲の家の被害は最小限。

当然ウルガルムには遠慮はいらない。

レムとスバルに近付く個体は残らず飛ばした。竜巻に狙われたその身体を高速回転させながら、上空高くに弾き飛ばした。

 

 

「走れるか!? こっちだ」

「レムは大丈夫です。スバル君が……」

「大丈夫大丈夫! ここで男魅せなきゃ、ほんっと何しに来たんだ、って話になっちゃうから、これくらいはさせてくれ!」

 

 

ズキンッ、と足にまだ痛みはある様だが、《はいだらー!》と気合を入れてスバルは駆け出した。レムも安心し、共に村の中央部へ。

 

 

 

 

 

 

「ツカサ様! スバル様も!?」

「っ皆! 無事だったか!?」

「はい、何とか。住民の殆どは(・・・)、ここに集中してます」

 

 

 

 

 

周囲を見渡してみると、ウルガルムの死骸がそこら中に散らばって、まさに血の海血塗れ大惨事だ。

だが、武装した青年団たちを始め、誰も怪我した様子が無いのは、幸い―――だが。

 

 

「ちょっと待ってくれ。殆ど(・・)って今言ったか?」

「ッ……」

 

 

スバルの言葉に、言葉を失う。

その姿を見て、嫌な予感が走った。

 

 

「まさか……、子供、子供達が、いねぇ……、なんて事は無ぇよな?」

 

 

考えたく無かった。

どうしても、考えたく無かった。

無邪気に絡んでくるあの子供達が、何処かに取り残されてる等、考えたくも無かった。

 

 

歯を喰いしばり、悲痛な顔持ちで続けて伝えた。

 

 

 

「最初は……、村の子供達が何人か見当たらなくて。それで大人連中で探していた所に、この騒動が………」

「!!」

 

 

 

考えたく無かった事が、現実に起きてしまった。

 

周囲をツカサが警戒し、また1匹、また1匹とウルガルムの死骸の山を築き上げてくれているが、全く安堵感が生まれない。

 

血がまるで凍っていくかの様に感じる。

 

 

だが、諦めるワケにはいかない。諦めたくない。

 

 

 

「――――子供達は、村ん中には居ねぇ。いるなら森だ!」

「ッッ!! スバル!? 一体どういう理屈で森に!?」

 

 

 

総攻撃を受けているのは村だ。

子供達を連れ去る為に、村を総攻撃したとでもいうのだろうか? ならばその理由は?

 

 

視界に映るウルガルムを一掃した所で、ツカサが戻ってきた。

 

 

「オレを呪ってたヤツは、昼間に居た子犬だ! 子供らと遊んでいた! 噛みつきながら片っ端から呪ってやがったんだ」

「子犬……? 村に子犬が?」

「ツカサが知らない、ってんなら ひょっとしたら獣の癖に知能があるのかもしれねぇ……。オレと違って兄弟は危険度鬼懸かってっから、警戒して出てこなかったのかもしれねぇからな。……いや、確定だ。アイツは犬畜生の癖に、子犬に擬態したり、指揮したりとスゲー頭が良いトップなのか、若しくは、アイツを含めた全部。何かが(・・・)操ってるのか、そのどっちかが」

 

 

 

結界を超えた事もそうだ。

つい先日、結界を結びなおした、と言う話はスバルも聞いている。こう易々と超えられる様な甘い結界じゃないと言う事は、王国一の魔術師が居るのだから、太鼓判だろう。

だが、悪意を持って結界を無効化したとなれば、話は変わってくる。

 

 

完全に討伐対象、人類の敵である魔獣を招き入れる様な狂人が居る。

若しくは、あの子犬に扮したナニカがとんでもないバケモノだったか、の1つに2つ。

 

 

 

「オレが子供たちを連れ戻してくる!!」

「ッ、スバル君! ちょっと待って……」

 

 

また独断専行で、スバルは四の五の言わずに走り出してしまった。

それを止めようとレムが手を伸ばしたその時だ。

 

 

 

 

 

《――――――ほんっと、なんなのよぉ……、何匹も潰してくれちゃって! あのバケモノ!》

 

 

 

 

 

何処かで、声が聞こえてきたような気がする。

気のせいかもしれない程微かに。そして、自分以外は聞こえていないのは、周りの反応を見たら一目瞭然だ。

 

 

そして次の瞬間、一掃したウルガルムが再び出てきた。明らかにスバルを狙っている。そして、スバルの傍に居るレムにも。

 

 

 

「レム!! スバル!!」

 

 

右手に焔を 左手に風を。

風を利用して高速移動し、焔で焼き殺す。

 

 

ツカサが動いた事で、ウルガルム達は、今度は標的を村人達に、避難場所に向かおうと方向転換。

 

 

「座ッッッてろ!!」

 

 

右足で大地を踏みしめると、簡易ではあるがあの壁がせり上がり、ウルガルムを正面衝突させた。

頭から衝突したウルガルムは、そのまま気絶し動かなくなる。まさにお座り状態。

 

 

「ツカサ君!!」

 

 

ツカサが打ち漏らしたウルガルムを、その鉄球で薙ぎ倒し、また、視界に映る範囲内のウルガルムは一掃出来た。

 

 

「ここは、オレに任せてスバルを頼む!」

「っ……で、でも ここは……」

 

 

スバルに良い感情を持っていないのであれば、あの時の様に嫌悪と唾棄を覚えている、それが燻り続けているのであれば、レムはここで見捨てる選択をする可能性もあるだろう。

その選択を考えてない訳では無かったが、一刻を争う状況での時間の損失は致命傷に繋がってしまう。

 

 

その時だ。まるで狙ったかの様に空から(一応)相棒の精霊が戻ってきた。

 

 

「きゅきゅーー!」

「やっと戻ってきた! 結界は!?」

「きゅんっ♪」

 

 

クルルは、大きく頷いて小さなその手を上げる。

再び結界が元通りに機能を取り戻す事が出来た様だ。

 

 

「後は、村の中のウルガルムだけ……。レム、ここはオレとクルルだけで大丈夫だ」

 

 

指示するまでも無く、クルルは 村民たちが集まっている避難所に向かって飛んだ。

クルルが放つあの緑の光は、皆を慈しむかの様に優しく包み込んでいる。胸を張ってるクルル。

 

 

《絶対通さないもんねっ!》

 

 

と言ってる様に見えた。

 

 

 

「レム。スバルは良いヤツなんだ。レムが考えてる様な(・・・・・・・・・)人間じゃない」

「!?」

 

 

ツカサは、その手に再び嵐を呼んだ。

 

 

「村の中じゃ、あんまり使いたくない魔法だけど。この際仕方ない。……後で、皆で片付けだ。子供達を含めて」

 

 

黒い竜巻を、雷鳴をその身に窶した。

 

 

 

目に映るスバル(・・・・・・・)を見て、判断して欲しい。子供を助けようと走るアイツが、悪い魔女の味方(・・・・・・・)なんて考えられない! ……頼む、レム」

「ッ……」

 

 

ドンッ! と轟音が起こったかと思えば、スバルまで続いているだろう道が出来た。

普段のスバルなら、せり上がった大地に驚いて転びそうな気がするが、無我夢中で走っているのだろう、気にせず前へと進み続けている。

 

 

「わかりました。―――レムに命じられている仕事は、スバル君の監視です。……ここで、それを放棄する訳にはいきません。メイドとしてあるまじき行為です」

 

 

レムは、レムから迷いが消えた。そんな感じがした。

 

 

「ツカサ君とは後で話をさせて下さい。沢山知っている(・・・・・・・)様ですから」

「ははっ。レムの期待に応えれる様な解答かは解らないけど、これが終わったら幾らでも。……振り返らなくていい。ただ、全力で前に」

「はいっ!!」

 

 

レムが、ツカサが作った道を駆け出したと同時に、村が揺れた様な感覚が走った。

 

今日一番の群れが来ているのが解る。

或いは、これが最後の総攻撃なのだろうか。

 

それを肯定するかの様に、群れの中には、特に大きな個体に混じっていた……。

 

 

 

「ぎ、ギルティラウ!?」

「なんで、こんなヤツまで此処に!?」

 

 

 

その姿を目視し、確認した青年団たちがどよめき出した。

ウルガルムだけだった筈なのに、新たな魔獣が、別の種類の魔獣が襲ってきたのだ。

 

 

黒い体毛までは、ウルガルムと同じだが、それ以外は違う。

何処か獅子の様な頭部に馬の胴体、臀部。蛇の様な長い尾。

これ以上ない程に、危険を発信している風貌。

 

だが、ツカサは動じない。

 

子供達が心配だった。

村が心配だった。

守れるかどうか不安だった。

 

 

―――失うのが怖かった。

 

 

何故なら、自分は空っぽ(・・・)だから。

 

過去の記憶がなく、恐らくそれが戻る事も無いだろう事は、あの日―――クルルと出会った日から本能的に解っている。単なる記憶障害ではないと言う事も。

 

でも、それで良いと思った。

 

その代わり、思い出の1つ1つを積み重ねて、ツカサと言う人物を作っていこう、と考える様になったからだ。

 

 

1人、また1人と、心が埋まっていくのを感じる。温かくなるのを感じる。

 

それを犯そうとする者が居るなら、容赦はしない。

 

 

 

 

「残念だったな。……守りながら攻めながらに加えて周囲の探索、簡易防御壁の維持。クルルも居なかったし、正直骨が折れた。……頭の中が滅茶苦茶だった。……でも、ここからは」

 

 

 

新たに現れた魔獣:ギルティラウ。

 

 

 

 

「―――攻めるだけだ」

 

 

 

 

同情しよう。

正直、一番不味いタイミングでの参戦だから。

 

 




今一歩のギルティラウさん参戦www

しかし、即退場な模様w
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。