Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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魔獣使い

 

「レム! もう直ぐだ、もう直ぐ森の入り口だ!」

「スバル君! 待ってください! 当てもなく、この広い森の中に入るのは自殺行為です!」

「悪ぃが待ってられねぇ、ガキ共は森の奥だ! 間違いねぇ」

「……冷静に、冷静に考えてください。今は村でツカサ君と協力して、村から魔獣を一掃した後、村人全員で探し出す方が……」

 

 

レムの言葉に、スバルは一瞬足を止めかけた。

いや、足を止めた。それでも振り返らず、レムに告げる。

 

 

「何もただ周りも見えず、馬鹿みてーに一直線、って訳じゃねーんだぜ、レム。……そりゃ、それが最も安全だって事くらいわかってる。……だがよ。それをツカサが考えなかった、と思うか?」

「……え?」

 

 

スバルの言葉にレムの言葉が詰まる。

確かに、スバルと比べたら聡明、懸命、頭脳明晰。そう、スバルと比べたら。

 

と、色々失礼な事を考えつつ、スバルの言う通りだ、その通りだと、結論する。

スバルは振り返った。

そして、その表情から、それを読み取ったスバルはつづけた。

 

 

「村を壁でかこっちまう様なスゲー魔法だって使えるんだ。……それなら、オレが馬鹿な行動だ、無謀な行動だ、って言うんなら、思ってんなら、見た通り魔法()ずくで止めてた筈だぜ。……それに あいつだって、滅茶苦茶重ぇ、リスクってヤツを背負った上で、オレを行かせたんだ」

 

 

レムがスバルに追いつけるように、ウルガルムやギルティラウといった魔獣どもに邪魔をされない様に、土の壁で簡易的に道を作った。

 

そこまでできるのであれば、走るスバルの先に壁を作り、止める事だってできる筈だが、ツカサはそれをしなかったのだ。

レムはスバルに追いつき、並走で走りながら、スバルの考えを聞く。

 

 

「魔獣が村を襲ってる理由は、正直はっきりとはわかんねぇ。……わかんねぇ以上、常に最悪を想定しなきゃならねぇと思ってる」

 

 

 

本当の最悪は考えたくはないから、最初から排除している。

そう―――既に子供たちが死んでいるという状況。

 

絶対に考えないし、それに安易に戻ってやり直せるって事も考えない。

 

 

―――何より 戻った時のあのツカサを見たくない、と言うのもあった。

 

 

何度も大丈夫だ、と言っていた。

クルルがいるから大丈夫、とも言っていた。

 

だが、やせ我慢してる事くらい如何に鈍感だったとしてもスバルにも解る。

 

元の力量が高いがゆえに、いや 高過ぎるがゆえに解りにくいかもしれないが、絶対に無理している。

スバルの目から見ても、あのラムも、気にかけてる様子が見て解る。

 

更に最悪なのが、エミリアが使用する様な治癒魔法が利用出来ないという所だろう。

 

それは、大抵の事は出来る、と豪語した大精霊であるパックやベアトリスでさえ無理だときている。

 

自然治癒しかできない以上、王都での1日に加えて、ロズワール邸の5日間。

たった1週間にも満たない期間。

 

そんな短い期間で自然治癒も期待できるとは思えないし、思わない方が良い。

 

ツカサ自身が戻るのもキツイ。(1人だけで戻る事を恐らく良しとしていない)

スバルが戻る(死ぬ)のはもっとヤバい。(メチャクチャ強いツカサが、大拒否する程の苦痛)

 

 

何よりも、今回必ず突破すると決めたのだ。

 

 

 

だからこそ、自分にできることをスバルは考えている。

ツカサやレムの様な戦える力がないなら、頭を働かせる。ただの引きこもりじゃない。多少なりとも鍛えてきた体力で、出来る事を考え、頭を働かせる。

 

 

「……村の総攻撃でも止められない相手が次に取る行動はなんだ? 結界を破壊して犬畜生どもを引き連れて、獣の癖に知能犯で、おまけにヤバそうなギルティラウ(他の魔獣)まで引っ提げて―――それでも兄弟には勝てなかったら次は? 結界も修復されちまったよ。その次は? ―――ガキ共を使うかもしれねぇだろ。最悪、道連れってばかりにあいつらを殺すかもしれねぇ……」

 

 

なら、そんな中で自分が出来る最善は?

元凶にとっての最悪である筈の、ツカサを引っ提げて森に突入するより――――。

 

 

「待てば待つ程、ガキ共がやべえ。だから、村に攻撃が集中している今、ツカサに集中している今! 相手の懐に潜り込んで、ガキ共を助け出す! それが最善だ!」

 

 

決意を漲らせた筈……だった。

 

「ッ………」

 

スバルは、徐々に迫る森の入り口を見て……、あの魔獣が大きな口を開けて待ち構えているかの様な森の入り口を見て、身震いをしてしまう。そのまま足を止めず、突っ切ろうとしていた筈なのに、突然重くなった。

 

幾ら、いろんな矜持があったとしても―――怖いものは怖い。

勢い程度の勇気では、この恐怖に容易に嚙み砕かれてしまう。

 

 

―――思いとは裏腹に、……スバルは こんなにも怖い事だなんて、知らなかった。勇気を出す、という事が。

 

 

 

「……聞かせてください。スバル君はどうしてそこまでこの村のために? たった数日の関係の筈。ツカサ君もそうです。傷ついて、苦しんで、……それ程までして、どうしてですか? どういう関係がこの村にあるんですか?」

「…………」

 

 

 

安易な自尊心程度で片付けれる事じゃない。

 

ツカサ(あいつ)がやってるんだから、自分(スバル)も、みたいなものじゃない。

 

 

 

「―――オレは、聞いたんだ」

「聞い、た?」

「ああ」

 

 

 

それは、ツカサの事だけじゃない。

 

 

「―――ぺトラは、大きくなったら都で服を作る仕事がしたいんだ。リュカは、村一番の木こりの親父の跡を継ぎたい、って言ってるし、ミルドは花で冠作って、母ちゃんにプレゼントしたいんだと」

 

 

指折り、瞼の裏に思い浮かぶ顔を一つ一つ数えながら、続けた。

 

 

「メイーナは、もう直ぐ弟か妹か生まれるって喜んでたし、ダインとカインの兄弟は、どっちがペトラをお嫁さんにするかで張り合ってやがる」

 

 

小さな笑みが零れ出る。

未来を語る子供たちの話を、改めて口にするだけで、萎縮した身体が戻る。覚悟が、勇気が戻ってくる。

 

 

「それに今度な? 皆で空中散歩、楽しもうぜ、って約束もしてんだ。―――他力本願極まれり、だが。オレも招待されてる。ツカサpresents、スバルvsツカサの空中大相撲。……魅せるって約束してんだ。ラジオ体操でしっかり身体動かした後、やろうぜ、って約束もしてる」

 

 

子供好きという訳ではない。

どちらかと言えば、スバル自身は子供が嫌いだ。なぜなら、自分自身がまさにガキそのものだから。歳をある程度重ねただけのガキ。自重を知らず、礼儀も皆無、無作法無躾無鉄砲、上げだすときりがない。

 

この世界に来るまで、命のやり取りなんてほど遠い世界で、生煮えに浸ってた自分は関係ない事にはとことん無関心。不幸な事故や事件が起きたとしても、一時は同情したとしても、直ぐに忘れる。

 

 

そんな中、この世界にきて、本気で助けたい、と思った女性がいた。

他人事だと切って捨てない。捨てても問題ない筈なのに、それでも見捨てない、見捨てられない、忘れられない男と出会った。

 

 

 

「―――オレは最高に格好いい背中見ちまってる。馬鹿か、ってラムちー姉様には言われちまうかもしれねぇし、生意気だって思われるかもしれねぇが追いかけてみてぇ、って思っちまってる。情けねぇ姿、見せたくねぇとも。……はっ! 馬鹿でアホで、生意気で、……ちっちぇえ自尊心(プライド)だが、それでも」

 

 

 

拳を握りしめた。

 

 

「―――約束は約束だ。オレは全部ひっくるめて守りたい。……約束を、守らせるし、守りたい。……だから、オレは先に進む。だから……レム、頼む! オレに力を貸してくれ!」

 

 

スバルの決意。

それをレムは間近で見た。……感じ取れた。

 

 

まだ、仄かに香る忌み嫌うモノは、確実にスバルから感じる。

魔女の残り香――――過去の記憶を、あの炎の記憶(・・・・)を呼び起こされる。

 

だが、目に見える(・・・・・)スバルはどうだろうか?

 

有能な人間ではない。

でも、懸命になろうとしている。

 

臭いは、視覚でなく嗅覚。確かに目に見えるモノではない。

 

目に見える……スバルは、無力さを知った目で、足りない自分を理解した顔で、それでも抗う事をやめようとはしない。

 

 

これまで重く、鉛の様に感じていた身体が軽くなるのをレムは感じた。

 

 

「―――レムが、職務を放棄する訳にはいきません。使用人として、あるまじき行為です」

「レム……!」

「それに、スバル君が怪しい事をしないかどうかも、姉様には言い聞かされています」

「うぐっ、そりゃ複雑だが、仕方ねぇよな! オレが怪しい真似しないかしっかり見張っててくれ!」

「ええ、勿論です。―――だから、行きましょう」

 

 

(トラウマ)の音を引っ提げて、レムは隣に立ってくれた。

 

 

「今回ばっかは、安心だよ、まったく。……それに例え森ん中で逸れたとしても、レムなら、絶対オレを見失ったりしない(・・・・・・・・)しな。携帯がない異世界で、これ以上ない連絡手段ってヤツだ」

「ッ!! 何を……?」

「解ってるんだ。他の誰も気づかなくたって、レムだけは気づく。……オレの臭いにな。何が起きるかわからねぇ森ん中で、もし逸れたら……、オレはただ全力でガキ共を連れ戻す事だけ考えて行動するからよ。レムもオレを見つけてくれ」

 

 

不意な言葉に、レムは顔を強張らせた。

姉の言いつけ以上に気にかけていた事を、スバル自身の口から発せられたのだから。

 

そして、驚くと同時にツカサに言われた事も思い返す。

 

2人は解っている。

 

自分がスバルの何を見ているのか、何を感じているのかを。

 

 

だが、なぜ知っているのかはわからない。

 

 

 

「……スバル君も、ツカサ君も、どこまで知ってるんですか?」

 

 

 

スバルもツカサも、まるで、レムが考えていた事を最初から知っていたかの様に話している。全てを知った上で、信頼してもらえる様に 今 最善を尽くそうとしているのだ。

 

 

「さてな? オレも兄弟も、知らねぇ事の方が圧倒的に多いと思うぜ? オレはレムにもラムにも信頼してもらい、信用してもらいたい。だから足掻いて足搔いて、色々頑張ってきたつもりだけど、空回りばっかりだ。……だから、今度こそ沢山話そう。無事ガキ共つれて帰れたら、全部ひっくるめてまとめて話そう。それに、オレたちが仲良く話してる姿を見りゃ、きっと、ラムちーも喜ぶ」

「姉様が……?」

「ああ、勿論。……約束だ。必ず、無事に帰って来よう」

 

 

レムは姉のラムが喜ぶ理由がいまいち分からなかったが、少なくともツカサの事は高評価をしているという事は解っているし、好意的だという事も解る。

姉に相応しいか否かは、後々十分考慮する事項だとは思っているが、生憎まだまだ時間が足りてないのが実情である。

 

 

「ほいっ、ゆーび切った!」

「!」

 

 

スバルは、考え込んでいるレムの小指に自身の小指を潜り込ませて、絡ませた。

鎖が少々重く感じた気がしたが、それ以上に重く感じる。約束という言葉の重みを改めて。

 

 

 

 

「?? 今のは?」

「これは指切り、ってヤツだ。オレの故郷の約束の儀式! なんつっても、この制約はやべーぞ? 破ったら針千本呑まされる地獄の儀式だからな。ま、エミリアの祝福だって今はあるんだ。心配されなくたって、へっちゃらのぷーだ、ってとこも見せてぇしな!」

「―――……ぷーって……」

 

 

指切りの儀式を終える。

時折スバルのいつもの軽口。いつもは何も思わないか、寧ろ仄かに漂う魔女の残り香に嫌悪を覚えるのだが、今回ばかりは違った。

 

こんな場面だというのに、つい笑ってしまった。小さく、それでも久しぶりのレムの笑顔。

信頼の一歩だと判断しよう。

 

 

互いの信頼感、絆・信頼ゲージがMAXだったなら、きっと奇跡的なパワーだって、出せるとスバルは信じているから。

 

 

 

「約束、しましたからね? スバル君とツカサ君。レムは2人から言質を受け取ってます。……本当に、無事に帰って色々と聞かせてもらいますよ」

「おうよ! 初恋の子の名前でもなんでも話すよ。現在進行形で好きなこの名前以外はな

!」

「それは知ってます」

「本人には、華麗にスルーされちゃったけどね!! 兄弟が恋敵にならないかどうかが、目下、日常パートん中じゃ一番心配で不安だ!」

 

 

 

軽口を一頻り言い終わった後、レムとスバルは互いに頷きあって、更に先へと進む。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、良いニュースと悪いニュースが発生した。

 

 

 

 

 

 

 

良いニュースは勿論、子供たちは容易に見つける事が出来たという事。

 

 

そして悪い方のニュースは………。

 

 

 

 

 

「なんっっ、だ こりゃぁぁ……!?」

 

 

 

その場所は、木々がなく小高い緑の丘……と言えば良いのだろうか?

子供たちは、そこに倒れている。目視で確認できる。人数も合っている。

 

ただ、そこには黒いナニカがいる。丘の上の空を覆いつくさん勢いで。いや、渦巻いている様に見えるから、ツカサが多用する竜巻の魔法に見た目類似するかもしれない。

 

 

「黒翼鼠の群れです。……ここまで、大量発生してるなんて、聞いたことがありません」

「あの黒いの1つ1つ全部魔獣なのかよ……!? それに、一際でけぇヤツが陣取ってんのも気になるんだけど」

岩豚(ワッグ・ピッグ)……。岩のような分厚い皮膚が特徴の大型魔獣です。……その獰猛さ、膂力、全て村に現れたウルガルムやギルティラウを上回ります」

 

 

レムも恐る恐るといった様子で、戦々恐々。

魔獣群生地とはいっても、ここまでの数が揃っているのは聞いたことがない。

 

 

 

 

 

 

 

「まったく……、あんなの(・・・・)がいるなら、もっともっと強く言っといてよね!! そりゃ、村にいた時は警戒してたけどさ! こんなのだなんて、ここまでだなんて思わないじゃない! それに、楽しいだの感じただの、そんなのばっかな説明じゃ解る訳ないじゃん!! エルザ(・・・)のばか!!」

 

 

 

 

 

 

 

そして、一番驚いたのは…… 魔獣の群れより驚いたのは……、血が凍る様な感覚が走ったのは………、その一際デカい魔獣 岩豚の上に乗っている存在だった。

 

 

それには、スバルは見覚えがあった。

 

 

当然だ。

ラジオ体操だって一緒にした。子供たちに囲まれて遊んでいる時も見かけた。

三つ編みをおさげにしていて、薄いワンピースを羽織った少女。

 

 

「メィ、リィ……?」

「! 村にいた子供の1人の……? どうして彼女が……? いや、もう確定でしょう。彼女が魔獣たちを操っている様です、スバル君」

「っ、っっ。ちょっと待ってくれ。魔獣ってのは、人類の外敵なんだよな? 人類に仇為す為に、魔女が生み出したっつう、……なんで、なんでそんなもんを、あの子が……?」

「それは解りません。……ですが、事実です。 目の前の光景がすべてです。恐らく加護持ちでしょう」

「なんっ、だよ……、そのチートみてーな、異世界能力は……っっ」

 

 

動揺が隠せれないのは当然だ。

子供たちとラジオ体操またやろう、という約束の中にはあのメィリィもいた。空中浮遊に関しても、同じくだ。……ただ、いつも恥ずかしくて まだツカサと話せてない、会ってない、とも聞いていた。

 

……よくよく思い返してみれば、あの子犬と引き合わせたのもメィリィだ。

 

メィリィに促されるがまま、森の入り口付近まで言って、そこで子犬と触れ合った。……噛まれた。あの呪いを受けた時は全て犬に嚙まれ、そして傍らにはメィリィがいた。

 

目の前の光景もあるが、状況証拠的にもある。これまでの全て仕組まれていたのだとすれば、彼女が犯人であると示している。

 

 

無邪気な、虫も殺せない様な笑顔で……人を殺しにきたのかと思えば思う程、吐き気を催すが、それでもやらなければならない。

メィリィの事よりも、あの魔獣だらけの場所に子供たちが居るという事実を。

 

メィリィの気が変わらない内に、何とか救出する手を考えなければならない。

 

 

「……レム。あの数の魔獣は、多勢に無勢、だよな?」

「……はい。あれ以上増えるとなると、地と空の波状攻撃。子供たちの事を考えても、こちらの分が圧倒的に悪過ぎます」

「だよな。下手したら、村ん時の方が空から来ねぇ分マシだったかもしれねぇ。……ツカサには悪ぃけど、こっちの難易度の方が鬼高ぇぞ。人質+オレが無力な分……!」

 

 

戦闘能力がない事が、無力な事が、この時程恨めしいと思った事はないが、それでもやらなければならないだろう。

 

あれだけの魔獣を引き連れて尚、村へと侵攻しないところを見ると、少なくともメィリィは あれでも分が悪いと思っているからだろう。結界が修復された今、広範囲での攻撃は無理だ。メィリィが結界石を外して回ったとしても、恐らく1~2個。あまり広範囲に外して回れば、見つかる可能性が高くなってしまう為、そこまでのリスクは背負わないと推察できる。

 

 

だが、それはあくまで推察に過ぎない。

 

 

子供の姿をした暗殺者。

 

どういう思考をしているか、判断ができないのだ。

 

 

「……それに、メィリィ(アイツ)、エルザって名を呼んでたしな………。クソイカレキチガイ殺人女と同類と考えたら……考えるだけでもやべぇよ」

 

 

王都で何度も殺された腸大好きサディスティック女。

クソイカレキチガイ殺人女とは、ツカサに助けを求めた時のフェルトのエルザに対する渾名で、そう呼んだだけだが、妙にしっくりくるのでスバルは多用していたりするのは、別の話。

 

 

「スバル君、どうしますか……?」

 

 

レムはいつでも戦えるだけの準備と覚悟を持っているようだ。

あの時の鬼の角を開放させて、戦うつもりでもいるのだろう。モーニングスターの取っ手を握る手に力がこもっているのがよくわかる。

 

 

「考えろ、考えろ……、命張るだけじゃねぇ、無い頭を振り絞れ……っ」

 

 

スバルは、この絶望ともいえる難易度の中で、無事子供を助け、尚且つ結界まで逃げ切る、そんなプランをどうにか頭の中で捻出する。

 

 

 

作戦①

 

スバルが囮となり、レムが子供たちを救出する。

 

 

 

「……ダメだ。秒でオレが死ぬ。死ぬのが怖ぇ、って言うよりまるっきり無駄死にな上に、兄弟にペナルティが行く」

 

 

却下。

恐らくツカサもエミリアも、レムも拒否する案件だろう。

 

 

 

作戦②

 

現代知識を駆使。スニーキングミッションを完遂して、何処かの蛇の様に、敵に見つからず潜入、見事救出する。

 

 

 

「あんだけの群れ、あんな見晴らし良いトコでどーやって見つかるな、ってんだよ!」

 

 

 

却下。

透明にでもならない限り、それこそステルス迷彩でもない限り不可能だ。

 

魔獣なのだから、臭いで追いかけてくる可能性だってある。……それに加えて、スバルは自分が魔獣に狙われやすい性質である事も重々理解しているから、尚更無理だ。

 

 

 

 

 

作戦③

 

 

――――――。

 

 

 

「………レム、ちょっと聞いてくれ」

「はい、スバル君」

 

 

短い時間の中考えた作戦の中で、一番まともで、可能性が高い作戦を思いついたスバルは、意を決してレムの方を向いて聞いた。

 

 

 

 

「魔法って使えるか?」

 

 

 

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