Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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しーくれっと、めいくす、あ、うーまん、うーまん、とか言いたかった( ´艸`)
いやいや、言わせたかった( ´艸`)ラムちーにw


月下それぞれの密談。……二股?

 

 

「知ってる天井…………(まさかの夢落ち……って訳ねーよな? そーだよな……??)」

 

 

スバルは目を覚ました。

その天井は見覚えがある。

 

何度も繰り返して、戻ってきては、この天井を見る所からスタートだったから。

ツカサは庭園で、スバルはこの部屋がゼロ地点だから。

 

 

……だからこそ、不安な事が頭を過る。

 

 

もしや、ここは5日前なのでは?

また、戻ってしまったのでは?

 

 

とだ。

ツカサが戻してくれたのか、或いは力尽きて死に戻りをしてしまったのか。

その場合は、後者が最悪中の最悪。ラムに殺されかねない。……ツカサの身を案じている事くらい解るので、逆にツカサの首を絞めかねない行為はしないと思うが……。

 

 

「………拷問、とかはしてきそう……」

 

 

死なない程度に殺されるかもしれない……、と思ったスバルは思わず乾いた笑みを浮かべた。

物騒極まりない事だが、ラムならやりそうだから。

 

 

そして―――。

 

 

「起きて、くれましたか?」

「!」

 

 

ここで漸くレムの存在にスバルは気付けた。

そして、これが夢落ちじゃないと言う事も同時に。

 

 

「レム……か。……ひょっとして夢? オレ呪われて死んじゃった、なんてことないよな?」

 

 

一応、レムにも確認を取ろうとしたスバルだったが……、レムを前に、その確認は悪手である。

 

 

「すみません……、すみません……。スバル君が死んでしまったら、レムは……レムは……!」

「ぅおおお! スマンっっ! 琴線触れちゃった!! 大丈夫大丈夫! ちょっとしたお茶目なジョーク、小粋なジョークってヤツですよ、レム! ……笑えないジョークは ほんとスマン! 空気読めて無さ過ぎた!」

 

 

気にし過ぎな面があるレム。自己評価が極端に低く、暴走しがちなレムにブラックジョークはアウトだ、とスバルは戒めにしつつ……握られてる手に漸く気付けた。

 

指と指を絡ませて、しっかりと握られている。

何処か擽ったくも感じる握り方。

 

 

「……これは、オレが握っちゃった? レムの手を掴んで離さない! みたいな?」

「い、いえ。あの、これはその……、レムの方です。眠ってるスバル君が、苦しんでる様に見えたから、手を……。こういう時、何をしてあげたら良いのかわかりません。だから、レムがされて一番嬉しかった事をしたいな、って……」

 

 

その答えを聞いて、スバルは自然と笑みを浮かべた。

心から信じてくれてる。何なら自惚れでなければ、好意だって持ってくれている。

 

エミリア一筋! なのは決して嘘ではないが、アレだけ強くても、心が弱くて、幼気な少女の好意を無下にする事なんて出来はしない。……流石に安易に好いた、惚れた、なんて言葉は口にはしないが。………中途半端な気持ちで言えば……先ほど以上の琴線に触れる地雷な気もするから。

 

何なら、その地雷、地獄は双子の片割れ、お姉様が運んできそうだ、と苦笑い。

 

 

 

「レム。一応、確認だけど……オレの呪いは解呪されたんだよな?」

「はい。最後はツカサ君が。ロズワール様も奥に控えていたウルガルムを掃討してくださったとの事なので、スバル君の呪いは解呪されました。心配はありません。……心労が……、無理が祟ってしまったんでしょう」

「はぁ、そりゃそっか。……なんつったって、ハッピーエンド。文句なしなハッピーエンド。……最後にゃ、オレだって剣振るえたし、エサ役以外も果たせた。……言う事無しだ」

 

 

スバルはそう言うと、僅かに入っていた身体の力を再度抜く。

あの時、あの光景、全て夢だった夢落ち――ではないと言う事がはっきりと証明された。

軽く頬を抓ってみても、しっかり痛い。

 

レムが、【ど、どうしました?】とちょっとの事でも心配してきたのが、やや今後の課題な気もするが、今は良しとしよう、とするのがスバル。

 

 

何せ、あの地獄を切り抜けたのだから。

ツカサが大部分を頑張ってくれて、囮役にしか役に立てなかった自分ではある……が、異世界にほぼ無能力できて、ここまでの出来であれば上々。

 

 

憧れは兎も角、嫉妬の念を、ツカサに向けなかったか? と問われれば、格好悪いが嘘でも首を縦には振れない。でも、命を懸けてくれてる姿を見たし、何より―――。

 

 

 

 

【解ってくれてるとは思うけど。オレが苦しいのが嫌だから、スバルに死ぬな‼ って言ってるだけじゃないから】

 

 

面と向かってはっきりとそう口にされた日には、どんな鈍感なヤツでも気付くと言うモノだ。

本当の意味で心配をしてくれているし、何の含みも裏も無く、打算もなく助けてくれている。

 

ただ、甘んじて受け続けるだけにはいかない。

折角拾った命なのだから、しっかり出来る限りのレベル上げは勤しむべきだと、スバルは思えたのだ。

 

幸いにも……、魔法の才能は無いとは言え、色々と歪とはいえ、陰魔法シャマクを発動させる事は出来た。……平坦な道のりではないと思うが、今後ご期待ください、だ。

 

 

 

「そういや、兄弟は大丈夫なのか? ラムも言ってたケド……、結構やせ我慢させちゃってたから……」

「ツカサ君なら大丈夫ですよ。姉様の計らいで、このお屋敷で療養なさってます。本来なら、村の借りている部屋で~~だったのですが」

 

 

レムの話を聴くと、どうやら ツカサはこの屋敷に居る様だ。

確かに、ここにはロズワール、ベアトリスやパック、エミリアと言った魔法に精通している者が揃っているから、村よりは対処しやすいだろう。

 

ツカサの快復に関しては、魔法では無理、と言われていても、出来る事は多い筈だ。

 

 

――――と言うのは建前であり、本当は別の所にある、と睨んでいる。

 

 

「ははっ。そこはラムのゴリ押しか。ロズっちも兄弟に関しちゃ、一目以上に置いている様だから、訪問に関しちゃウェルカム、だよな~」

「はいっ。……姉様と仲良くしているツカサ君を見ると、何だかとても温かな気持ちに慣れるんです。……最初は良くない感情が渦巻いてましたが、今はとても可愛らしい姉様を視れて、レムは幸せです」

 

 

ラムがツカサの事を好意的な目で見ているのはスバルにも解る。

それもある意味当然。決して口には出さないが、男の自分でも、アレをされると惚れてしまう。

 

深く傷つきながらも、大切な人を助けてもらったあの姿を見たら。

 

微笑ましくもあるし、何ならエミリアじゃなくて心底良かった! なスバルだが……レムは納得するだろうか? と言う新たな問題点? もあった。

姉は絶対! 言い聞かせる、的な所が ラムにはあるとはいえ、妹のレムが悲しい想いをするのは決して良しとはしないだろうから。

 

だが、いざ聞いてみれば、レムも実に好意的。許容的。超ド級な姉至上主義なレムが、だ。

 

 

 

「さいきょー、超人ツカサ君、ってヤツだよな~~。いや、背中が遠くて遠くて、追いかけがいがありますことやら~」

「大丈夫ですよ。……スバルくんもとても、とても素敵ですから」

「ッ―――……そうはっきり言ってもらえるのって、結構むず痒いもんだーぁね」

 

 

つい、ロズワール風な口調になってしまうスバル。

色々と誤魔化してる事くらい、レムでもわかる。

 

 

 

「………おお、それよりも、だ」

 

 

スバルは、ゆっくりと身体を起こすと、レムの顔を見た。

レムは、目が合った途端に顔を紅潮させるが、決して逸らさない。

 

 

「はっきり言えてなかったな。―――兄弟やラムもそうだが、お前がいたからおかげでオレが助かったんだ。……今も、こうして生きてます。ありがとう。レムが居てくれて良かったよ」

「ッ…………」

 

 

その言葉を聞いて、レムは目を見開き……涙が目じりに溜まった。

 

 

「そんなっ……、レムは、レムのせいでスバル君は怪我を……」

「レムのせいなんかじゃねぇ。敢えて誰かのせいだ、って言うなら、間違いなくあの魔獣使いのガキとガブガブ噛んできやがる犬どもだ。……まぁ、魔獣使いと一緒に此処から離れてなかった事だけは、褒めてやるけどな」

 

 

メィリィと共に、呪った魔獣たちが姿を消していれば、スバルの解呪は叶わなかった事だろう。

連れて行くのにも限度があるのかもしれないが、それでもその可能性を考えていたこちらにとっては、賭けに勝った気分でもあるのだ。

 

 

「……それにレムは、鬼族の落ちこぼれで、姉様の代替品だって、ずっと……」

「バーカ。そんな寂しい自己定義止めとけよ。それと、人の気持ち聞く前に、自分でぜーんぶ勝手に決めて、抱え込んで、ケリつけようとするところもな? オレが起きてくる前、1人で行こうとしてたんだろ? 全部聞いてっからな」

「ッ……」

 

 

言葉が詰まる。

まだまだ、姉の事を言おうとしたのだが、不思議な事にそれ以上の言葉が出てこない。

 

 

「それに、ラムの事を死ぬほど持ち上げてっけどさ? 実際レムより体力ねぇし、料理は下手だし、仕事はサボるし、メイドの癖に口は悪いし、優しさ、っつったら、兄弟ばっかで、オレはいっつも寂しい想いしてたりするんだぜ?」

 

 

ここで漸くレムは言葉を出す事が出来た。

 

 

「い、いえ。スバル君は本当の姉様を知らないんです。角があれば、そんな評価には……」

 

ラムの角の話は、少しではあるが聞いている。

戦えるかどうかを確認する時に、ほんの少し―――。

 

「角に関しちゃ、詳細は聞いてねぇし、聞かないからわかんねぇよ。わかんねぇからわかった様な口を利かせてもらうとな? 角が無いラムの角の代わりをレムがやれば良い。2人で仲良く《鬼》ってやつをやったらいいじゃん。麗しの姉妹愛で最強だぜ?」

 

 

レムとラム。

どちらかに依存して、自己否定を繰り返すくらいなら、2人で1つ、そんな風に頑張れば良い。

スバルはレムに言い聞かせる。

 

 

「それに、代替品ってレムは言ってっけど、それこそラムにはレムの代わりなんていないぜ? ……レムは知らねぇだろ。……レムが居なくなってしまった時のラムの顔は、本当に見てられないんだ。レムは それを想像した事あるか? ラムは勢い余ってオレの事殺そうとするくらいは取り乱しちゃうんだぜ! ……まぁ、普段からオレに対する風当たりはつええけどな」

 

 

誰の変わりも出来ない。

レムも、ラムも。

 

2人は一緒に居なくてはならない。

どちらか欠けるなんて、在ってはならない。

 

 

だから―――この未来へ進もうと身体を酷使し続けた男が居るんだ。スバル自身も、自己満足かもしれないが、頑張ったつもりだ。

 

 

「つまり、だ。何が言いてぇかと言うと、お前らは2人とも笑ってる顔の方が似合う、ってこった! オレの故郷じゃ、《来年の話をすると鬼が笑う》っつーのがあるんだよ。……だから、そんなしけた面してないで、笑え」

「…………っ」

「笑いながら、未来の話をするんだ。後ろ向いてた勿体ない分を今度は前向いて話せば良い。皆連れて遊びにいく約束とか、ベアトリスまで巻き込んで遊ぶ約束とか、パックの身体をモフモフする約束とか、毎日が楽しくなって、笑いが絶える日なんて無い。そんな未来の話」

「………スバル君が大変な事になっちゃう気がしますよ」

「そ、それは否定しねぇけどな……。特にベア子とか、遠慮なくぶっ飛ばしてくるし……。でも、それでも良いんだ。前さえ向いてりゃ、どうにかなる」

 

 

レムのスバルを握る手の力が強くなっていく。

 

 

「レムは―――とても弱いです。ですからきっと寄りかかってしまいますよ」

「いいじゃん? オレも弱い。兄弟と並んで戦ってた時見てたか? 口に出すのも億劫だけど、オレ全然役にたってねーわ、最後はスッ転ぶわで大変だ。弱いって言う意味じゃ、オレが一番悪目立ちしてるし。……おまけに目つきも悪くて空気も読めないと来た。……空気読めないから、あの兄弟のかっけー魔法、《テンペスト》も扱えなかったんだろーなー……。自分で言ってて凹む……。だから、オレの方が圧倒的に弱い。オレが寄りかかる方が多いかもしれねぇけど、敢えて言わせてもらうよ。お互いに寄りかかって、ってな」

 

 

照れくさそうに頬を搔くスバル。

だが、それも直ぐに笑顔へと変わった。

 

笑いながら話す、そうレムに言ったばかりだから。

 

 

 

「笑いながら皆で肩組んで、常にハッピーエンド一択で、その先の後日談……未来の話をしよう。だってよ、レム。オレは――――」

 

 

 

今日一番の笑みを、レムに向けて紡いだ。

 

 

 

「オレは、鬼と笑いながら未来の話をすんの、夢だったんだよ」

 

 

 

無垢な子供時代の夢をレムに。

異世界に来なければ、決して叶わないであろう夢。

 

 

それが今、容易に叶う。

 

 

 

「……鬼がかってますね」

 

 

 

大粒の涙とセットではあるが、とびっきりの可愛い笑い顔を向けて貰えたから。

 

 

 

「だろ?」

 

 

 

最後にスバルはそう締めて、涙を流し続けるレムの頭を暫く撫で続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、某場所にて。

 

スバル同様、ベッドで寝かされている男、ツカサはまだ目覚めていなかった。

あの後……スバルが倒れた後、担いで村まで戻ったり、事後処理やら説明やらを率先して行ったり、最後はパックとベアトリスを驚かせる、と言う目的で2人に会いに行ったり、と疲れている身体の癖に、色々と動き続けていた。

 

 

強引にでも休ませないといけないと判断したのがラムである。

 

 

眠っているツカサの寝顔を見ながら、その手を握り締めた。

丁度、レムがスバルに行っている様に。……全く同じ様に。それでこそ双子、だと言えるだろう。

 

 

 

「……寝顔、ここまでゆっくり見たの初めて」

 

 

 

すぅ、すぅ、と寝息を立てながら、深く眠りにつく。

スバルと違って寝相の方が気味が悪い位良い姿勢だ。

 

 

「……ラムは、どさくさに紛れて、寝相のせいにして、抱き着いてきても文句は言わないわ。美少女であるラムの抱擁は、ツカサも嬉しいでしょ?」

 

 

そう言って、ツカサの頬を空いた手でつついた。

柔らかく、心地良い感触だ。柔らかな笑顔を浮かべるツカサには似合うとも言って良いかもしれない。

 

 

「………信頼と信用をくれ、……か」

 

 

あの日……ここではない、この次元ではない別の世界の話を思い返す。

次元を飛び、世界を巻き戻して見せた超人の顔を見て……ラムは仄かに笑みを浮かべた。

 

 

 

「あのまま、戻れるのなら、ラムを連れて行く必要は無かった筈。……連れて行った結果……ツカサは……」

 

 

ラムは2度の記憶がその魂に刻まれている。

あのレムが犠牲になった最悪の世界の時間軸と、この皆が救われた幸せな世界での時間軸。

 

 

最初の世界では、ツカサが庭園で血を吐いて倒れているのを確かに見た……が、自力で起きて、対処しようとしていたのをはっきりと覚えている。

 

 

だが、ラムを過去へと連れて行った時のツカサの姿は……全然違った。

血溜まりの中に倒れているツカサの姿が、ラムの目には焼き付いている。

 

 

「―――ああまでして、ラムを救ってくれたのは……?」

 

 

ツカサは言っていた《あんなラムの顔は見たく無い》と言っていた。

魂に刻まれた、とも。

つまり、ツカサはラムに見惚れた、と言う事なのだ。

 

 

「当然ね。……ラムは世界一の姉様で、十分すぎる程可愛いもの。これ以上可愛くなろうものなら、世界の危機。……ツカサがラムに、美少女であるラムに見惚れるのは当然。自然の摂理だわ」

 

 

自分で言っていて、どんどん顔が赤くなる。

ツカサが惚れている、自分を好いてくれている、そう決めつけているかもしれないし、自信満々なのは変わりないが、それでも、その言葉を口にすると、どうしても顔が紅潮してしまう。

 

 

自分の桃色の髪にも負けないくらいに。

 

 

 

ラムはそっとツカサの額に手を振れた。

前髪が、目元に掛かっているから、それをゆっくりと鋤いて上げる。

 

 

 

「――――――ん……」

 

 

 

ツカサの少し目元が動いた。

少し擽ったかったのか、ほんの少しだけ表情が笑った様に見えた。

 

戦ってる姿からはかけ離れている。

 

寝顔は可愛い――――とはこの事を言うのだろう。

 

 

「バルスとは大違い。……いや、比べたラムが間違ってた。……ツカサは、誰かと比べたりしない。……出来ない。………まさか、こんな日が来るなんて、思ってなかったわ」

 

 

失ったものが大きすぎる炎の夜の記憶が蘇る。

明かされた事実(・・・・・・・)もあった。

 

心を砕き、それでも妹の為に、妹が生きる世界の為に、耐え忍ぶ道を選び―――当初からは考えられなかった感情も芽生え……目まぐるしくラムの世界が動きまわった。

 

 

そんな中で、更に激しく、大きく、熱く、赤く世界が動き、彩られる。

 

 

この目の前で、安らかに眠る青年が、ラムにそれを齎したのだ。

 

 

「ん――――……んん。だいじょ……ぶ」

「ん?」

 

 

 

――――寝言? 

 

 

ラムは、これまでには寝息以上の音は聞こえなかったが、初めてツカサの声を聴いて、好奇心から耳を近づける。

聴力は十分備わっているが、どうしても近くで聞いてみたくなった。

寝息が耳に当たり、こそばゆいが、心地良い。

誰も知らないラムだけの世界を堪能する為に。

 

 

 

「だいじょ……ぶ、だった………。らむ……、だい……」

「…………っ」

 

 

その寝言に、その夢の中に自分がいる事が解り、更に顔を赤くさせる。

 

 

「………いて当然よ。ラムは可愛い。眠ったくらいで、頭の中から忘れれる訳なんて、ない。……………ツカサ」

 

 

一瞬の寝言はもう終わりを告げる。

後、どれだけ耳を澄ませても、名は出てこない。

 

 

いや、寝言を聞く事に集中するのを止めたから、ラムには聞き取れなかったのかもしれない。

 

 

 

 

「―――レムを、ラムを……助けてくれてありがとう」

 

 

 

 

それは、もう既に贈った言葉ではある、がもう一度言いたかった。

 

 

そして、そっとその額に口を寄せる。

起こさない様に、柔らかく優しく、額と唇がほんの一瞬だけ当たり―――そして、離れた。

 

 

 

「ラムとした事が……。………ロズワール様に、報告があったのを思い出したわ」

 

 

顔を今日一番赤くさせたラム。

ぱち、ぱち、と頬を叩き……そして名残惜しいが、ツカサから手を離した。

 

 

 

「助けてくれたお礼……いえ、ご褒美よ? 残念だったわね。……寝てなかったら、もっとラムを堪能出来たかもしれないのに」

 

 

 

もう一度ラムはハニカムと、足音を極力殺し―――部屋を後にした。

 

 

自分の部屋へと急ぎ足で戻り、何度も何度も顔を洗っては鏡で顔色を確認して……、レムが居ないので、中々時間がかかったが、どうにかいつも通り、いつも通りな様子でロズワールの元へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっん~? ラム。―――もう、良いのかい? わたぁしの報告は明日でも良い、と言った筈だぁーけどねーぇ」

「はい。ツカサは眠りにつく事が出来ましたので、ラムの役目は果たし終えました。後はロズワール様にご報告を」

「……よし。聴こう。魔獣を操っていた《親》の目星を」

 

 

 

ラムは少しだけ顔を俯かせた。

調べるには調べたが、あまりにも素性が知れない相手だったが故に、完璧とは程遠いから。

 

 

 

「……名はメィリィ、と名乗っていたそうです。……現在の足取りは既に痕跡を残さず。村民に聞き取り調査を行っても、誰も知らないとの事で」

「……なーぁるほど。つまり、王選絡み、と言う訳かぁーな。あの腸狩りと言い、魔獣使いといい、またおかしな面子に絡まれたものだよ」

 

 

椅子に腰深く駆けていたロズワールは、再び座りなおす。

ラムをしっかりと見据えて―――、ラムの状態を把握して。

 

 

「おんやぁ? 今回は()からマナを受け取ってなかったのかぁーな? 随分消耗している様だ……。わたぁし、以外にも供給できる者が居るとはいえ、十分注意したまえよ? ……ラム。君にとっても、ツカサ君にとっても」

「……申し訳ありません。ツカサは今回の戦闘で消耗している様に見えました。ですから、ラムの方から受け取りを拒否したのです。まずは自身を回復させる様に、と」

「なぁるほど。………それで良い。ラム。君は彼の唯一無二になって貰いたい。………少なくとも、明らかになる時(・・・・・・・)までには」

「仰せのままに……」

 

 

ロズワールは、ラムを手招きして、自身の膝に座らせた。

久方ぶりとも思えるロズワールの腕の中、妙に緊張するのはどうしてだろうか。

 

 

 

「ずぅいぶん久しぶりな気がするよ。……じゃあ、始めようか」

「……お願いします」

 

 

顔を赤らめるラム。

ロズワールはそっと、ラムの角―――折れた角の傷口に手を触れた。

白みが掛かったラムの角……傷跡。それは神童と言わしめた時代の名残。

 

 

「―――星々の加護あれ」

 

 

四色の輝きがロズワールの腕を伝って、そのままラムの傷跡へと流れてゆく。

 

本来、直接他者へとマナを移譲するのは非常に高度な扱いが要求される術だ。

それも各属性のマナの配分が完全に均一でない限り、マナは力へと変換されて、対象の肉体を傷つけてしまうだろう。

風のマナが強過ぎれば《フーラ》。水のマナが強過ぎれば《ヒューマ》と言った様に。

それでは治療とは呼べない。単なるゼロ距離魔法だ。

 

鬼族にとって、角とはマナを取り込む為の器官。

 

それが折れたラムの身体は、本来なら取り込む量・排出する量も肉体を満足させられない。放置すれば、衰えていくだけの肉体なのだ。

 

 

それを、出会って間もないツカサはやって見せた。

 

 

 

「…………本当に、彼は有望だ。―――恐ろしい程までに、ね」

 

 

 

あの日―――暴れ狂った本が示した正体だと言う事はもう解っている。

証拠が無いし、本人の記憶がないと言うのも恐らくは本当だ。

 

だから、彼の記憶が戻りし時―――再び福音を齎すのだろうと言うのがロズワールの中での結論。

ただ―――懸念事項は幾らでもある。

 

あれ以来、目立った様子を見せない書物についてだ。

良い様に解釈をしたが、万が一と言う事もある

 

 

 

「―――決別か、福音か。暫くあの2人(・・・・)は一緒に居て貰うのが良いと思うねーぇ。……ラム。これからまた忙しくなるけど、よろしく頼むよーぉ?」

「仰せの、ままに………。そう、だ。ロズワール様にもう1つご報告が……」

「なんだい?」

「レムの事です」

「ほう?」

 

 

ラムは、予想出来て無さそうなロズワールの表情を見ながら、少し微笑み……告げた。

 

 

 

「レムが、バルスに夢中になりました」

「んん? ……ほほう、それはまた 興味深い事だねーぇ。姉妹共々、わたぁしから離れて行ってしまうかもしれない。この心苦しさが、まさに親心、とでもいうのかぁーな?」

「………私は」

 

 

 

ロズワール自身が、ラムにツカサについて回る様に言い聞かせたのだから、ある意味自業自得であると思うのだが……、正直、ラム自身がここまでツカサに心を赦してしまうとは思っても無かった気はある。

 

だが、ロズワールとて、ラムの心の内を読み切れる訳ではない。

その真意が解る筈もない。

 

ツカサに関してもそう。

今夜の夜の逢引に関してもそう。

 

寝静まったツカサとラムの密会の件も、ラム以外には知る由もない事だから。

 

 

 

未来の話をするとすれば、ラムと何かあったか? とツカサにロズワールが問いただしたとして、彼はあっけらかんと答えるだろう。寝る前に少し話した、怒られた、程度に。

だから、ロズワールは知らない。

 

 

ラムただ1人の秘密、秘部なのだ。

現在のラムは秘密を幾つも着飾っているのである。

 

 

 

 

ロズワールも、ラムに対し 少なからず思う所が無い訳ではないが、真なる目的の事を思えば、さして気にする程の事でもない、と言うのが実状。

 

極めて冷静に見極め、且つ目的の未来に辿り着く為に全霊を注ぐ。

 

 

 

 

「―――ただ、私の望みは1つ。此度の王選を必ず勝ち抜き、————……龍を殺す」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――その進むべき道に、願わくば彼らが共に来てくれる事を。

 

 

ロズワールは、腕の中のラムに言い聞かせる様に……、マナを移譲し続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

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