Re:ゼロから苦しむ異世界生活 作:リゼロ良し
後々の弊害にならなければ良いのですが……( 一一)
ロズワール邸より遠ざかる竜車にて。
「―――使者としてのお役目は果たせましたかな?」
「それはもちろん。フェリちゃんがクルシュ様にお願いされた事、失敗するなんてありえないじゃない。ヴィル爺ったら、心配性なんだからー」
フェリちゃん……正式名 フェリックス・アーガイル。
エミリア同様、ルグニカ王国42代目《王候補》の1人クルシュ・カルステン公爵に仕える騎士。
騎士としての剣の技量は他よりも劣るものの、水を操る魔法においては非常に長けており、中でも治癒魔法に関しては大陸有数の術者として知られている程。
ルグニカ王国・近衛騎士団員でもあり、見た目や言動とは裏腹に、かなりの位に居る人物なのだ。
初対面では やはりその第一印象。
人懐っこく振舞い、語尾に《にゃん》を付けて喋るなどしているので、スバルの様に、ある意味騙される事が多いだろうが、侮る事無かれ。
「―――それに、今回は想像以上の収穫あったしね♪」
「……ほう? それは気になる所でありますな」
「まーたまたー、ヴィル爺も何となく解ってるんじゃないの? ……あの黒髪の男の子。……目つきが良い方のね? あの子の事だよ」
竜車を引く、地竜を難なく操っていたヴィルヘルムの表情が少しだけ動く。目元がピクッ、と動く。対面して話をしていたら、それだけの所作で見透かされてしまいかねない程だった。
だが、ヴィルヘルムとて、心を読める訳ではない。
眼力で、潜在能力云々はこれまでに見てきた敵味方問わずの強者、手練れを相手取ってきている経験から推しはかる事は出来る。
その結果―――只ならぬ者である事は十全に理解出来たが、それだけだ。
「メイザース辺境伯も暗に認める様な感じだったしさ? ……商人たちから始まって、今も王都で噂になってる白鯨単独撃退者。……多分、あの子の事だよ」
「…………………」
フェリスはヴィルヘルム程目が養われているワケではないから、力量を見抜く、なんてことは出来ない。手持ちのカードとロズワールの言葉、反応、それだけで導き出した答えだ。
第一印象は、もう1人の男―――スバルに色々と振り回されてる保護者、兄弟以上の感覚はない。
「まっ、なーんか、王国で褒章、叙勲式も一緒に行われるそうだしさ? 無理に探りを入れなくても、直ぐ解る事ではあるんだけどね~~。クルシュ様の良い土産話になったなー……、んでも、ヴィル爺から見たらやっぱあの子も凄そう? フェリちゃんそこまで解んないしさぁ? 白鯨撃退者って言うんなら、もっと凄い豪傑な人想像してたのに」
フェリスは口元に人差し指を当てて、考える。
先ほどの彼――ツカサの顔を思い浮かべながら。
ヤッパリ、第一印象だけでははっきりと解らない。敢えて言うなら、目つきが悪いスバルの隣にいたからか、より優しそうな顔に見える、と言った所だろうか。
「確かに、彼には底知れぬ何かを感じられました。目、佇まい、そして身に纏う雰囲気の全て。……正直、あの歳であそこまでの域に到達できる等、我が目で見ても信じられない、と言うのが率直な感想でしょうな」
「ふ~~ん。……って、ヴィル爺の事威嚇したりしてたって事?」
「それはとんでもない誤解ですよ。この老骨の相手をして頂いた事から解る通り、誠実な人柄でしょう。
ヴィルヘルムが次に頭に浮かべるのは、あの高級茶を撒餌に、様々な事柄まで踏み込んで推し量り、聞き出そうとした男スバル。
恐らく同じエミリア陣営―――仲間だからある意味は信頼しているのは当然だとは思えるのだが……、ただその二文字だけで表すには足りない感じがするのだ。
「ふーーん、ヴィル爺ひょっとして、あの子の事も気に入った?? そう言えば、誰かとお話するなんて、大嫌いだったもんね?」
「それもとんでもない誤解ですな」
「あははは。ごめんごめん。―――話すより斬る方が好きだもんね? 白鯨の撃退者、って解ってたら、斬りかかってた?」
「……それは、とても酷い誤解ですな」
辻斬りの様に言われるのは心外……と、揶揄うフェリスに対して、それ以上の事は言わなかった。
フェリスは、挑発をしてみたつもりだったのだが、思った以上に食いついて来ないので、不満げに口をとがらせる。
「つーまんないの。気に入ったあの子達と話す方がフェリちゃんと話すより楽しんだねー、ヴィル爺。……でも、ヴィル爺が気に入った、って言うなら、あの子の方も色々と楽しみかもしれないな。実は、相応の使い手! 才能の塊!! その片鱗がはっきりと!! みたいな感じだった?」
「……いいえ。申し訳ありませんが、彼……ツカサ殿の方はまだしも、スバル殿の評価に関しては目を見張るものはありませんな。……彼は素人―――毛も生えていない素人です。………故に目を引くような才覚もありはしない。とてつもない大きな光が傍に居るからか、より一層影の中にありましょう。敢えて評価をするとすれば凡庸な存在。と称します」
結構な辛口評価に、フェリスも逆に聞いてしまった事に対して申し訳なくも思う。
ここには居ないスバルと言う青年に対して。
「へぇ~~、一緒に居るから、スゴイ!! って訳でもないんだ。兄弟~~って言ってたのになぁ。………ん? でもヴィル爺は塵芥なんて一番嫌う性質じゃない? フェリちゃんの目から見て、スゴク楽しそうに話してたのに。……何かあるんじゃないの?」
「………そうですな。敢えて、敢えて上げるとするなら……
「目?」
才能でも無ければ、佇まいやその身に纏う雰囲気でもない。
ヴィルヘルムがスバルを言い表すのに、使った言葉、意外な事に目だった。
ヴィルヘルムは、もう一度、スバルとツカサを見比べるように、2人並べて思い返す。
片方は紛れもない光だ。全てを照らす光。……強過ぎる光は、時に狂気を生む。温かいだけでなく、光は全てを白に染め上げる。そこには何も見えない、何も残らない。全てはまっさらにされてしまうだろう。
そんな中であっても―――あの目だけは、違う、とヴィルヘルムは感じていたのだ。
「……あの少年の目が、少しばかり気になったのです。……あれは、何度か死域に踏み込んだものの目です。……寸前で立ち戻り、戻ったものは幾らか居ます。……ですが、かような目は恐らく稀も稀。……一度ならず数度、死域から舞い戻る存在を私は知りません。……そして、その様な彼を傍に置く、ツカサ殿もまた、底が更に見えなくなる。あの若人2人は、私程度では測りきれない何かを内包しておるのでしょうな」
「ふ~~ん。……フェリちゃんには感じられない事だから、話半分、ってトコなんだけど……」
感嘆交じりのヴィルヘルムの言葉を、フェリスは堂々と話半分と言って切って捨てたが、それでも思う所が無い訳ではない。
何故なら、フェリスは知っているから。
あの2人の少年の事は詳しくは知らないが、今御者として竜車の手綱を握り締めている老紳士の正体を。
「……《剣鬼》ヴィルヘルム・ヴァン・アストレアにそこまで言わせるコたちだもん。きっと、平坦な道は歩けないよね~~。……それこそ、魔女に魅入られた様に」
ヴィルヘルムは、フェリスの言葉に対して、何も返さなかった。
間違いではないから。
あの2人は恐らく平坦で、平凡で………そして平和な日常を歩けたりはしないだろう。混沌の渦中に身を置く。
長年の経験がそう告げていた。
だが、それでも――――。
「――――立ち止まる事は、恐らく無いでしょうな」
ヴィルヘルムはそう称する。
会って間もない2人を、……厳密には1人を、もうある意味
そして翌日。
今日は王都へと向かう大事な大事な日。
だが、夜の眷属であると自称している男、スバルは中々自発的に起きる所を見せない。
だらしなく涎を垂らし、グースカ寝ていて、すっぽかしそうな勢いだったが、そこはしっかり者のメイド・レムが居るから安心だ。
「起きて下さい、スバル君! 入りますよ?」
ノックと一声を掛けて、返事を聴く前に入室。
割と強引気味に入れたのは、スバルだからと言う理由と、スバル自身に強く頼まれたから、と言う理由がある。
「そろそろ起きて貰わないと王都に出発する集合時間に間に合いません」
レムの言葉で、完璧に目を覚ましたスバル。
必至に説得? お願い? 駄々っ子? で何とか取り付けたというのに、寝過ごした~なんて、全くを持って笑えない。
「オレとした事が!! もうそんな時間? 昨日の夜全然寝付けなくてさ!!」
「(寝起きのスバル君、かわいい……)もう門前まで竜車が着てますよ! 急ぎましょう」
「解った!! んでも、レム! 流石に着替え見られるのは恥ずかしいから、向こう向いててくれ!」
「姉様はツカサ君の着替えを手伝ったそうなので、是非レムにもスバル君の着替えを手伝わせていただきたいですが。そちらの方が早いですよ」
「兄弟の場合は、ラムねーさまに絶対押し切られたんだろ、こういう時だけは、朝早いんだよな~~~って、まてまてレムレム。恥ずかしいって!!」
本当に時間がないので、レムはスバルの上着をぱぱっ、と剥ぐ様に脱がせると、瞬く間に着替えさせてみせた。
宛ら変身シーンの様―――と思ったのはスバル。
流石に下半身、下着は遠慮したが。
そして、てんやわんやで準備を終わらせた後、早速外へ。
自分達が乗る竜車は、人数の兼ね合いもあるのか、昨日のヴィルヘルム、フェリス達が乗ってきたそれよりも大きく、圧倒される。更に言うなら、地竜も目の前ではっきりと見れた。ヴィルヘルムとの会話に夢中だったから、しっかり確認してなかったのだが……、改めてその姿を目の当たりにすると、これまで燻り続けていた? 男の子心が爆発。
「スッゲぇぇぇぇ!! やっぱ、これぞファンタジー!! 王国行くとか、まさにファンタジー!!」
「(……はしゃぐスバル君かわいい)」
いつも何処でもいつまでも燥ぐスバルはまさに子供のソレだが、魔獣騒動で打ち解け敢えて、更に言うなら好感度がもうトップクラスなレムは、ほぼ全てを許容している。許容出来ないのは、禁止事項に触れる事くらいだろうか。
「朝から騒がしいな、でもまぁ、アレだけ粘った結果、王都行きが決まって、その当日だから、解らなくもないけどね」
先に起きていたツカサだったが、外に出てくるのはスバルよりも遅かった様だ。
「おーう、兄弟!! ラムちー先輩に着替えさせて貰って、王侯貴族感満喫したかな?」
「………丁重に断ったんだけどね。スバルのとばっちりで、こうなったんだよ?
「う゛……」
スバルが揶揄ったつもりだが、見事なカウンターを返したのはツカサである。
勿論、あの茶葉……とは、当然ながらヴィルヘルムに撒餌として使わせてもらった、ロズワール邸備蓄の中でも最高級の茶葉。
何でも、あの茶葉は………。
「ツカサが何でも言う事を聴くと言ったんだから、ラムは実行したまでよ」
「いや、まぁ、そうなんだけど……。完全にとばっちりだったからさ?」
傍で控えているラムの存在。
何だか、肌艶が良くなってる様な気がするのは気のせいじゃないだろう。
スバルが使用した茶葉は、茶を飲み干したその残り香だけでも、ラムには気付かれた。
いつぞやの、魔女の残り香に過剰反応したレムの事を思えば、流石姉妹だと言える。
「バルスは、今後のラムの仕事。10倍の量で手を打ったわ。屋敷に戻ってきた時、仕事が溜まってるだろうから、全てバルスがやる。……それと、ツカサは 連帯責任と知りなさい」
「………
「ラムの秘蔵のものを使ったのよ。これでもまだ安い方だわ。……少しでも幾らバルスでも考えすぎ、って思ったラムが馬鹿だった。ええ、馬鹿だった。バルスは大馬鹿だわ」
「だぁぁぁ、何度も何度もバカバカ言うなよ、ラムちー!!」
そう、当然ながら被害と言うならスバルの方が極めて大きい。
何度も死に掛けた……1度は屋敷で死んだスバルが、過去最高級にヤバイ、と称する程殺人的な仕事が帰りに待っている……と考えたら背筋が凍る思いである。
そんな時だ。
心外だ、と言わんばかりに一歩前に出るのは、金髪の髪を長く伸ばし、ピッチリと背筋をただした女性。
身長はスバルよりも大きく、ツカサよりは小さい。(とは言っても1~2センチ差なので、ほぼ同じ)女性としては極めてガタイが良いと言えるだろう。
にこやかな笑みを出してはいるが、手で口元をやや隠しながらの挨拶をそこそこに、スバルに問題ない、と告げる。
「―――大丈夫ですわ。皆さんが戻られるまで、屋敷はこの私がお守りしますもの」
佇まいの所作、全てが洗練されていて、レムとはまた違った感じの完璧メイドさんがそこに居た。
彼女の名は、フレデリカ・バウマン。
ロズワールに暇を貰って休暇の最中から、舞い戻ってきたロズワール邸メイドの1人である。
この度、ラムもレムも王都へと一緒に行くので、屋敷を支える人が居なくなってしまうので、急遽招集し、そして応じてくれたのだ。
それに、ベアトリス1人だと、あまりにも可哀想だ。
「間違っても、ラムが言う様な普段の10倍もの仕事が残るとは思えない、とだけ反論を」
「おおぅ……、最高だぜ、フレデリカねーさまぁ……、ぁぁ、オレの前に天使が居る……。エミリアたんを差し置いて、罰当たりな気もしますが、ほんっと、頼りになります、フレデリカ先輩……。はじめて会った、時のことは……、ほんっとごめんなさい………」
「す、スバル様。そんな目で見つめられては困ってしまいます……。それに、あの事は私は気にしておりませんし、レムが拗ねてしまいますよ?」
帰ってきたらさぁ、地獄……ではない事がどれ程嬉しい事か……と、スバルはやや暴走気味だったが、取り合えず収まりつつある。
因みに、フレデリカと初めて会った時――――とある事情で、彼女に多大なる失礼を働いた、と言う理由があるが、またそれは後日。
「べ、別に拗ねてませんよ。スバル君がする事を、レムは止めたりはしません」
「ふふ。そうですわね」
レムの事は当然フレデリカは良く知っている。もう何年も職場を共にした仲間なのだから当然だ。
だからこそ、そんなレムの変化をフレデリカは気付いている。
いつも一生懸命で一生懸命で……、どうしてそこまでするのか? と思う程、満たされる事のない乾きの様に、延々と身体を酷使し続けるレムの姿を何度も見てきたから。
ロズワールは勿論、フレデリカ、果てはラムまで、それとなく和らげようとしたが、それでも変わる事が無かったレムが、本当に良い笑顔になっていた。
少々妬けてしまうが、言わば新たな使用人仲間でもあるスバルには感謝しかない。
そして、当然ながらもう1つ。
「ラムたちが離れている間に、お茶の腕をもっと上げる事ね」
「と言いながら、ラムはちゃんと飲んでくれたじゃありませんか」
「まだ足りない、と言っているのよ」
「全く、可愛げのない子ですわね」
「可愛げなんていらないわ。ラムは十分以上に可愛いもの。これ以上は世界が危険よ」
レムだけでなく、ラムの変化にも気づいている。
レム程解りやすい訳ではなく、口も変わらないのは相変わらずだが。
「だ、そうですが。ツカサ様もそう思われですか?」
「……そこで、オレに振りますか。フレデリカさん」
ジロリ、とラムからの視線が飛んでくる。
それをしっかりと受け止める。当然だ。スバルの茶葉事件のせいで、とばっちりを受けてしまったが、ツカサ自身が突っぱねる事だって出来た筈なのに、律儀にも受けた以上、一度でも頷いた以上すべきだろう。
「ラムは十分可愛いですよ。目に入れても痛くない、はこの事かな? と」
「………!」
「熱ッッッッ!!? な、ななな、なんで!?」
いつの間にか、本当にいつ入れたのか解らないが、用意していたティーカップに、それも十分温められて、全く冷めてないカップをツカサは頬に押し付けられてしまった。
「? バルスが言っていたのよ。こうやって、頬に押し付けるのが良い、と」
「そりゃ、冷たい缶とかだ、って言った筈だけど……、それもロズっちの便利グッズか。いつも高温維持。まさに魔法の瓶だな、マジモンの」
ラム同様、頬が赤くなったツカサは、ちゃんと約束を果たしてるだけだと言うのに、理不尽な一撃を喰らってしまった。
確かにスバルは、スポコン系ラブコメとかを見ていた時期があり、疲れて休憩中にヒロインマネージャーが、後ろからキンキンに冷えたスポドリをその頬に充てて、《ひゃっ!》と言うのが定番で~~、と熱弁したような気がする。
そして、クルルに頼んでしっかりと快復。
「……ほんと、素直じゃありませんわね、ラムも。ツカサ様には驚かされます。まさか、ラムがロズワール様以外の殿方に、心をこうも開くとは思いもしませんもの」
「それは……、まぁ色々とあったんですよ。そう、単純な事でも簡単な事でもない」
「あら、謙遜なされますのね。女性を口説き落とす事が出来た、と誇っても良いと思いますよ?」
「真っ向勝負した上でなら、そう思っても良いかもしれませんが……、少々特殊だ、って思ってるので」
純粋にラムの好意には当然ツカサも解っている。……あまりに熱烈過ぎるのは解りたくないが。(実際に熱かった)
レムを助けた事だろう。
恩義を感じている、と言うウエイトが大きいと思っているし、何より、ツカサ自身が、ロズワールと同等以上の信頼と信用をラムに求めた結果である、とも思っているから。そう簡単に認識を改めたりは出来ないし、まだまだ幼いツカサには早いとも思っている。
殆ど生まれたばかりな様なものだから。
「もう、皆して遊びに行くワケじゃないんだからね! 特にスバル!」
「ええ、特になのっ!?? エミリアたんから特別扱いは嬉しいんだけど、なんだか複雑だよ!?」
そして、次にエミリアが外へ。
賑やかなのは悪い気はしないが、スバルが同行する、ともなれば、話しは別なのである。
「わかってる、わかってるってば。大事な呼び出しがあった、って事くらい、オレも把握してるよ! 王選の大事な呼び出しだろ?」
「そう、王選のすごーーく大事な話し合いなんだから! ————でも、スバルは、その話し合いには参加しちゃダメだからね? あくまで王都に行く、治療する。それに専念」
「えええ!! ちょ、ちょいまちまち、エミリアたん! オレ
「……変な教徒には入ってません! 人聞き悪い事言わないで。すごーく心外。……それも言ったでしょう? ツカサは、受勲式には出なきゃいけないの。最初はそこまで望んでない、って言ってたんだけど……、流石にラインハルトからの推薦もあって、すっぽかしちゃったら、相手に悪い、って言ってくれたし」
「あはは……。言いましたね。まぁ、
苦笑いしながら、スバルの方を見たツカサ。
スバルも参加するくらい良いのでは? と前にエミリアに言って見たんだけれど、頑なだった。
「ちゃんと聞き分けなさい。スバルは王都に居る間は知り合いの安否の確認、自分の身体の治療。二つに専念してもらいます! レムも一緒に着けてるから。ちゃんとする事!」
「えぇぇぇ……、この際、ツカサの受勲の件は、もう嫉妬も何にも湧かないよ。最初からそんなのぜーんぜん無いよ。だって、オレの兄弟やべーもん、すげーもん、どっちかってーと鼻高だもん。んでも、同時進行で行われる王選の話し合いに出席できないのは辛いよー。エミリアたんが王様になるかどうかの瀬戸際に関われないとか、泣いちゃうよ! オレ!!」
「無理言わないの! スバルったら、無理するに決まってるもの!」
ムリ、と言う意味では、よくよく考えたら一番無理していたのはツカサになるのだが、ツカサに関しては問題ない位の技量が備わっている+大精霊クルルの存在も有るから、と言う理由が、一番だろう。
パックやベアトリス、エミリアも治療できない身体ではあるが、その身体が快復、時間が経てば経つ程快復していってるのは、同じくパック、ベアトリスも認めている。
「それに、ツカサも無理しないでね?」
「勿論。……スバルが変な事しなかったら、ってなっちゃうケド」
「……やっぱり、スバルが一番心配じゃない」
「ぐはっっ、エミリアたんの一番とか最高なのに、今はキツイ!!」
複雑な事情はエミリアは知り様がないが、スバルがある意味生命線なツカサにとっては、やはりどうしてもスバルの事が心配になってくる。
後にも先にも、王都でコロコロ、ぽんぽん死ぬ様な輩は、スバルくらいだろうから。
「………全然、返せてないもの」
エミリアは恩が強いと言う意味ではスバルもツカサも同じだ。
スバルにしても、ツカサにしても……、今のエミリアにとっては甘えと似た様なもの。これ以上甘える訳にはいかない、王様になるかならないか、の瀬戸際と言うのなら尚更だ。
誰かに甘えっぱなしで良い訳がないのだから。
「……オレが無理してーって、解ってくれないのかなぁ……」
「んじゃ、オレの口からエミリアさんに、スバルの告白代行って事で伝えようか? 恩義とか関係ない、って言う所熱弁して」
「それはヤダ!! オレの口から言う!!」
「……ちょこっと位のフォローとか?」
「うぅぅ……、兄弟ぃぃ。…………嬉しいんだけど、絶対茶葉の事根に持ってないよね? フォローとか言って、エミリアたんに変な事吹き込んだりしないよね??」
「さぁ?」
「こっち向いて言って!!」
そうこうしている内に、最後であるロズワールがやってきて、これで準備は万端。
スバルはまだまだ不満顔だったが、王都に行ってから、行く間も考える時間、話す時間は幾らでもある。だが、出発時間は押しているのは事実なので、ここでの駄々は止めにしたのだった。
「さぁーぁて、屋敷に戻れるのは少々後になるかもしれないからねーぇ? 忘れ物のないようにするんだーぁよ? ……じゃあ、フレデリカ。留守を頼むねーぇ」
「は。ご命令とあれば、全身全霊を掛けて、御守り致しますわ」
「きゅきゅーー! きゅーーー!」
「ん? あ。……スバル。ほら、あそこ。あそこ見て」
「なんだよ? って、ああ、なるほどなるほど。へへっ! ちゃんといるんじゃねーか、ロリッ子ベア子! いってくるぜーーー!」
「あんな燥いで。………恥ずかしいヤツかしら」
フレデリカと屋敷の中で手を小さく振るベアトリスに見送られて―――いざ王都へ。