Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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ラインハルトとお食事会

 

「我と言の葉を交わしたい………か」

 

 

少女たちの願いは単純明快。

未知との交流を持ちたいとのこと。

 

少女達にとっては確かに未知そのもの。完全なる外の世界の存在、それも少々異なる次元に存在するものだからか、かつてない程の刺激があるそうだ。それは、話をせずにただそこに存在するだけで、満たしてくれるとのことだ。

 

どの様な些細な事でも構わないとのことだった。代償が必要なのであれば、如何なるモノでも捧げる、どれだけ時間がかかろうとも構わないと。

 

言葉を交わす……それに関しては幾度も体験してきたこと。その点に関しては何ら新しいことではない。住む世界が違うことを除けば同じ事。もう時期に戻ってくる相棒と交わしてきたから。

 

 

 

 

「ふむ………彼奴と交わした、か……。交わしてきた事柄……。フムフム。面白い、面白い。1つ決めたぞ少女よ」

 

 

 

 

幾度も世界を巡り、観察して積み重ねてきた知識。

これまでは見ているだけに過ぎなかったが、今は違う。

 

 

自らが本当の意味で体験を、知見を、見聞を、智見を。

 

 

心沸き立つと言うモノだ。

器の芯まで熱くなる感覚。

これまで世界を重ねるにつれて、徐々に芯に温もりを持つようになった。

長らく共に在った相棒には《人間臭くなった》と誉められた(本当に誉めたかどうかは不明)。

 

 

そう、77回目の最高潮。

 

 

常に更新し続ける。過去最高の伸び代。

それは枯渇することはない。永遠に尽きる事はない。

 

眼前の強欲を主張する少女ではないが、より満たされると確信できる。

 

 

「1つ………―――てあわせ(・・・・)、といこうではないか少女達よ。より、我が熱く滾る事が出来よう」

 

 

両手を広げ、これまでにない表情を見せられる。

それ(・・)を見た瞬間に激震が走った。

 

 

()せられる。

畏怖()せられる。

恐怖()せられる。

絶望()せられる。

快感()せられる。

極楽()せられる。

爽快()せられる。

 

 

人では届かない。

否 魔獣であっても魔女であっても、竜であっても、魔人であっても。

 

これまでの叡智の結晶。

この世界の全てを総動員させ、総力させたとしても、1にも満たない程に届かない領域を感じた。

 

その果てしなく隔たる差は一体なんなのだろう?

 

 

強さだろうか?

体内に有するオド、そして マナに関することだろうか?

世界から祝福されたと言う証である加護だろうか?

魔女達に深く関わる世界への理不尽の象徴、権能に似た力に差があるからだろうか?

 

 

 

―――恐ろしい。

 

 

 

全く理解できない事が恐ろしい。

そして それ以上に好奇心を刺激させられる。

本来ならば 知り得る事のない未知への豊潤な甘美。それが手が届かなくとも、確実のそこに居るのだから

 

 

 

ただ、それは 強欲の少女の感想・感性であり、どうやら他の少女たちは また違った(・・・・・)

 

 

 

眼前の存在より、手合わせ(・・・・)の言葉を聞き、全身が凍り付く様な感覚を覚え、そして何より眼前の存在が、見た事のない化け物(・・・)に似た雰囲気へと変わると同時に飛びかかる者もいたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルグニカ王国 城下町、とある料理店。

 

 

まだ日も浅く 殆どの店が営業開始したばかりだからか、通りも疎らだが、この料理店だけは別。

普段ならば賑やかになるのはもう少し後の話だと言うのに、忙しなく店が動いているからだ。

 

 

 

そして それらは、1つの個室に向けて集中させられていた。

 

 

 

 

その場所はまるで別空間。

次々と運び込まれ、並べられる料理が部屋を彩っていく。

 

 

2~3点程運ばれてきた所で、ウェイターの人に《一体どれくらいあるの?》と質問したところ、これらは、序の口。まだまだ前菜との事。

 

 

だから、これからもまだまだ続くらしい。コース料理?

 

 

これまで、野営で干し肉や野菜などの相伴に預かることが出来た。

この世界で初めての食べ物だったが、間違いなく美味しかった。

楽しく食することが出来たから、雰囲気の要素が強いかもしれないが、それを差し引いても美味しかったと言える。。

 

ただ、世界は当然の如く広い。まだまだ、自身の経験は浅い。それこそ赤ん坊、と称されても、それは決して比喩ではなく的を射ている。

 

 

ただ、経験の浅さは認めるけれど、この目の前に広がる光景が、この世界の代表的な朝食?通常(デフォルト)だとは到底思えない。

 

 

 

「ねぇオットー……。直視しづらいんだけど……。その、料理って この()か……この国の料理って、こんな輝いて見えるものなのかな? と言うか、使われてる材料が光源だったりする?? 料理しても暫く光を失わない……とか?」

「どんな料理ですか、それ。……そんなわけ無いですよ! それよりも、どうしてボクもここにいるのかが、理解が追い付いてないです。それも………」

 

 

オットーはツカサの問いと言う名のボケにツッコミをいれた後、光る料理? の先にいる人物に釘付けになった。

 

何でも、この物凄い料理を作ったのは

 

 

 

ディアス・レプンツォ・エレマンソ・オプレーン・ファッツバルム六世。

 

 

 

なんでも究極の料理人と名高い人物らしく、そんな人の料理に肖れるだけで、現実感が薄れるが、それ以上オットーにとってインパクトがあったのは、そのディアス(略)と話をしている青年。

 

輝きを放つ料理、その輝きに負けないほどの輝きを、オーラを纏っている男の事だ。

知っている人物だから。……知っているどころではない。

 

 

 

 

 

当代の剣聖、ラインハルト・ヴァン・アストレア、その人なのだから。

 

 

 

 

「え? どうしてここにって。彼が俺達と少し話したいから、良いかって聞かれたときに、オットーが盛大に腹の虫を鳴らせたからでしょ? だから、えと……それを聞いてラインハルトさんが、ご馳走してくれるって気を利かせてくれたんじゃん。……あぁぁ、なんかオレも恥ずかしかったよ」

「…………そうでした」

 

 

現実感の無いオットーと違ってツカサはある程度 通常運転。確かに料理には目を奪われてはいるが、オットー程ではない。

 

だから、ツカサのツッコミにオットーは顔を赤くさせた。

 

 

オットーは思う。

確かにツカサは間違えてない。けど、断言できる。ある程度は解っていたつもりだったが、より確信出来る。

 

 

 

ツカサは、いろんな意味でズレてる(・・・・)と。

 

 

 

それにいろんな意味で間違えてるし、常識と言うモノを少々欠如してるとさえ思う。

 

でも、間違えてないのは正しいので、オットーは 両頬を叩きながら、羞恥心に苛まれつつも、なんとか立て直した。深呼吸を数度繰り返しながら。

 

 

そして、オットーやツカサを呼び止めた男、ラインハルトはディアス(略)との話が終わり、オットーやツカサの様子に気付いたのか、笑顔になりながら。

 

 

「そう固くならないで。君たちを呼び止めたのは僕だ。貴重な時間を費やして、君たちは僕に付き合ってくれた。感謝を、畏まるのは寧ろこちら方だろう」

「いえ、オットーはともかく、自分は特に時間に追われたりはしてないから大丈夫ですよ」

「って、ともかくって何ですか!? なんかツカサさん、ボクの扱いが段々ひどくなってないですか!?」

「いや、別にそんなつもりは無いですよ。ほらほら、オットーは商人としての仕事の時間……みたいなのがあるじゃないですか その点オレはコレ(・・)をどうにか出来た後、ルグニカ王国(ココ)でどうにか生活を考えて~ っていうのが今後の予定だし。殆ど時間には縛られてないから」

「あ、そうでした……。もう少しでお別れでしたね……。思い返したら 少し寂しくも有ります……」

 

いろんな意味で圧倒、眩しかったが、これまたラインハルトの笑顔までもが眩しい。オットーと騒がしくしてても笑顔で見守ってくれてる。

年齢は変わらないくらいだと思うのだが、その落ち着きぶりは、まるで保護者が子供を見守るようだ。

 

 

 

ただ―――時折 見せる違う種の視線が気になる所。

 

 

警戒はある程度しているのだろう、当たり前の事だ、とツカサは納得させていた。

 

 

 

 

 

「改めて、ありがとう2人とも。付き合ってもらって。そのお礼と言ってはなんだけど、ここは僕がご馳走するよ。存分に楽しんでくれ」

 

 

ラインハルトに促され、始まるお食事会。

その食事の合間合間に、要件を聞こうと思っていたのだが、それは叶わなかった。

 

何故なら……。

 

 

 

 

 

「うっっっっっっま!!??」

「んまいーーーー!???」

 

 

 

 

 

 

口の中に料理をいれた瞬間、五感の1つである味覚が総動員させられた。最大級に働いてくれた。最大級の成果を発揮してくれた。

 

迅速に脳内に電気信号を送り、最早料理の事、その味の事しか考えられなくなってしまったから。

 

特に腹の虫が鳴る程腹ペコだったオットーは、涙目になりながら、掻き込む。頬張り続ける。噛み締め続ける。ツカサも中々手が止まらない状態が続いた。大食漢ではないつもりだけれど、延々と料理を口に運び続けた。

 

2人とも 相応のテーブルマナーは心得ているつもりだった様だけど、全くと言って良いほど機能してなかった。

 

 

 

 

食で心も身体も満たされて、多幸感を味わうのは初めて。(……とは、いってもツカサは来たばかりだから全てが初めてである)

 

振る舞ってくれたディアス(略)料理人に多大なる感謝を、そして振る舞ってくれたラインハルトを、この様な素晴らしい料理をご馳走してくれたラインハルトにも最大級の謝礼を、とテーブルに両手を付いて頭を下げたのだった。

 

 

 

 

 

「さてと、そろそろ話をしても良いかな?」

「「はーい!」」

「ふふ。そこまで喜んでくれたら、僕も方も嬉しくなってくるよ。……じゃあ、ここからが本題だ」

 

 

 

 

 

食の楽園を見たのだ、満たされたのだ。

オットーとツカサの2人は頬が緩みっぱなしで、2人して子供の様に手を上げて返事を返し、ラインハルトも同じく、喜ぶ2人を見て笑っていた。

 

 

暫く笑っていたが、ラインハルトの《本題》と言う言葉を聞いて、少しだけ場に緊張が走る。

少なくとも緩み切った頬は治った。……オットー以外。

 

 

 

 

 

 

「先ほど、門の所で2人が話していた内容。……少々聞き逃すワケにはいかない内容だったのでね。君たちに話を聞いてみたいと思ったんだ。後、ちょっとした仕事って所かな。事情聴取を受けて貰いたい」

 

 

両手を組み、その空色の瞳を真っ直ぐにツカサに向けた。

動向を確認する……と言うよりは、嘘偽りないかどうかを確認する、と言った所だろうか。

 

 

 

「オットーの方は 商人。王都でも登録されていて身分は直ぐに解る。……けど、ツカサ。君は珍しい髪に服装、それに名前だ。一体どこから王都ルグニカに来たんだい?」

「あ、えっと、ツカサさんは!」

「良いです良いです。オレが説明しますから。……信じて貰えるかは別にして、嘘偽りなく話す事を約束しますよ。それにラインハルトさんは衛兵。気になって当然です」

「ラインハルトで良いよ。僕もツカサと君を呼ぼう」

「解りました。じゃあ、ラインハルトで。………と言うか、よくこんなご馳走を振舞ってくれたよね? 君の言い方じゃ、余り見ない不審者が王国内に商人に紛れて入国した、って事にならない?」

「いやいや。不審者とまでは思ってないよ。そう感じてしまったのであれば申し訳ない。衛兵として、顔に出てしまっていたんだろう。これでも人を見る目はある方だと思ってるんだ」

 

 

事情聴取をする前に、特上のご馳走をしてくれたのが、正直驚く。

話を逸らせるつもりもないし、しっかり話すつもりでもいたが、思わずそう言ってしまい、ラインハルトも苦笑いをしながら対応をした。

誤魔化そうとするつもりは毛頭ない、と言うツカサの心情を読んでくれていたんだろう。特に言葉を強くする事なく、終始穏やかだ。

 

 

 

「一言でいったら……、飛ばされて(・・・・・)来た、って言えば良いのかな……。オットー。あの場所の名前はなんていうんだっけ……? ほら、オレ達が初めて会った場所。覚えてる?」

「一生忘れられない自信がありますね! 自分の名前の次くらいは! リーファウス平原、フリューゲルの大樹」

 

 

 

2人の話を聴いて、ラインハルトは目を細めた。

門の所での2人の会話に加えて、今 巷で流行している噂話。一致(・・)したから。

 

 

「飛ばされた……。陰の魔法を受けてしまった、と言う事かな?」

「あ、いや……。ゴメン、ラインハルト。飛んでくる前の記憶が……ちょっとオレには無いんだ。オットーと出会ったばかりの頃は、少しはあったんだけど、今は殆ど霞んでて思い出せない。記憶にございません、って何だか偉い人の不祥事が発覚した時、真っ先にしそうな言い訳の1つ、っぽいけど、本当の事、なんだ」

 

 

陰の魔法、と言われても この世界の魔法(・・・・・・・)は知らない。

魔法(ちから)発動する事が出来た(・・・・・・・・・)時点で、魔法、魔術、呪術、神聖術等の力が存在する事は解ったが、生憎とこの世界の魔法の種類までは解らない。

 

 

「……ふふ。信じるよ。ツカサ、君は嘘を言ってないって。それに不祥事だなんて、君は何もしてないじゃないか。不法入国とも表現していたけれど、入国手続き等の不備は無いと聞いているか。ただ、衛兵としての性分が前に出てしまっていてね。そこは申し訳なくは思う」

「ありがとう、ラインハルト。そう言ってくれると嬉しい。信じてくれたことはもっと嬉しい。あ、でも 衛兵としての性分を否定なんてする気は一切無いよ。そう言う姿勢こそが、この王都の治安維持に、暮らしてる市民が護られる事に繋がるって思ってるから。不真面目だったら、困るしね?」

「ふふふ。そうかな」

「(何? この爽やかなやり取り……)」

 

 

いまいちツカサのキャラを掴み切れてないのか、オットーはラインハルトとツカサの談笑を聞いて、完全に置いてけぼりを喰らってしまっていた。疎外感がある気もするが……、その分は料理を振舞って貰ったので、十分お釣りがくる、と再び残った料理を手を付けだす。

 

 

 

「ツカサの記憶に関しては、僕の方にも頼ってくれて構わない。力になれるかどうかは解らないが、最大限に手は貸すと約束するよ。……次は先ほど話していた事。門の所での事を聞いても良いかな?」

「はい、もちろ……ッ」

「?? どうかしたかい?」

 

 

淀みなかったツカサの言葉だったが、この時初めて詰まった。

そこにラインハルトは注目するが、そのツカサの表情を瞳の奥を見て、不思議と警戒する気にはなれなかった。

 

感じるのは、ラインハルト(こちら側)に気を使う、そんな感覚だったから。

 

 

「いや、その……。ラインハルトは剣聖って呼ばれてるのを思い出して……」

「それは、家柄が少々特殊なだけだよ。かけられた期待の重さに潰されそうな日々を過ごしているだけの、ね。まだ剣聖の名は僕には重すぎる」

「そんな謙遜を……」

 

 

立ち振る舞いから、ラインハルトと言う男の底知れなさは既に感じている、いや、一目見た瞬間から、頂である事は確信に似た何かを感じ取れた。……が、話の肝はそこではない。

 

 

さっき(・・・)のオットーとの話は、その……剣聖(・・)に対して、良い話とは思えないから、ちょっと詰まってしまって……」

「!」

 

 

オットーとの話は、当然 白鯨の事。

そして、白鯨の強さについては、ツカサ自身も聞いている。

 

かの魔獣は400年世界を苦しめ、そして―――今から10数年前に、剣聖を打ち滅ぼしているから。

 

 

そんなツカサの心境を察した様で、ラインハルトは 軽く息を吐いた。

ツカサに聞こうとしている内容と剣聖の名、照らし合わせてみれば解る事だ。

 

 

 

「ありがとう、ツカサ。そこまで気を使わせてしまうなんて、ね。剣聖の名に相応しい男になろう、と改めて決意が出来た。……それに、僕は大丈夫だよ、と言うより……」

 

 

ラインハルトはそこまで言った所で、肩を竦めながら 苦笑い。そして 確認するまでも無いと言わんばかりにツカサに聞いた。

 

 

「巷では噂になっている白鯨をたった1人で撃退した英雄、とは君の事だと、言って良いかな?」

「っっ、え、英雄って!? そんな大層なモノじゃないよ! それに速攻で倒れて、オットーに世話になりっぱなしだったんで……」

「謙遜する事は無いじゃないか。……オットーもそう思うだろう?」

「んぐっっ!?」

 

 

ハグハグ、と心行くまで、話の内容気にせずに 頬張っていたオットーだったが、ラインハルトに突然話を振られて驚き、咽てしまう。

 

水を勢いよく流し込み、どうにか息を整えると、仲間外れ感が否めないとは言え、醜態を晒してしまった自身に少々恥を覚えながら、肯定する。

 

 

「はい。その通りです。彼が居なければ ボクは白鯨に呑みこまれていたでしょう。速攻で倒れた、と言いましたが、彼の一撃は 白鯨の巨体を見えなくなる距離まで高くに弾き飛ばしてしまいました。あの光景はもう生涯忘れる事は出来ません」

「……だそうだ。少なくともオットーを救った。彼にとって、ツカサ、君はまさしく英雄だ。謙遜する必要はないよ」

「ぅぅ……」

 

 

ラインハルトの様な男に、笑顔で正面から称賛されるとは気恥ずかしさを覚えてしまうが、感謝は受け取っているので、とりあえず また以前の様に延々と聞き続ける様な グダグダにするつもりは無い。

 

 

「それで、衛兵の詰所に向かうと言っていた理由は、それにあるのかな?」

 

 

ラインハルトは、大きな布でくるんだ物を指さした。

 

正直、飲食店に持ち込むようなモノじゃない、と思っていたのだが、ラインハルトの計らいで、離れにある個室をまるまる借りているので その辺りは大丈夫だった。

 

 

「はい。一応、白鯨の一部、複数ある翼の内の1つです。信じて貰えるなら、これを何かの役に立ててもらおうかな、と思って」

 

 

腐食を防止する為に、しっかりと冷凍保存はしている。凍らせてしまえば異臭防止にもなるし、何より 色々と確認する上(・・・・・・・・)では、ちょっとした力を使うのはツカサにとっては好都合だった、と言うのはまた別の話。

 

 

「ラインハルトが信じてくれるなら、説得力が増すかな?」

「ああ。白鯨は 400年、世界を脅かしてきた魔獣だけど、これまでに手傷を負わせた事は記録で残っている。だから別に僕が断言しなくても、調べれば間違いなく解ってくれるさ」

「う~~ん、オットーも皆からメチャ笑われましたし、そんなの信じない方が普通だって事はここ数日でオレも解ったから………、正直調べる調べない以前に門前払いをカクゴしてたよ。だからこそ、ある意味では ラインハルトに助けられた。こちらこそありがとう、だね」

 

 

ラインハルトはオットーの様子も見る。

何処か儚く、遠くを見ている様な視線。それらを総合すると……どういう結果になってきたかは容易に想像がつきそうだ。

 

 

確かに、幼稚な夢物語、子供の夢想ととられても不思議じゃない話だったから。

 

 

だが、何故か無視できない話だった。

ラインハルトもそう。

それに ここ王都で重要人物と呼ばれる者たちの間では、何処となく意識している者が多かった。

全てを知るワケではないが、ラインハルトが見て接した相手は間違いなく意識していた。一笑に付す事が無かった。

 

 

 

それに何よりも――――――。

 

 

 

「さて、オットーも食べ終わった様だし。後はコレを持っていくだけだね。美味しいのは(十分すぎる程)解るケド、随分と食べちゃって。見た目に反して大食漢なんだ」

「むぐむぐ……。何だか仲間外れ感がスゴクて、不貞腐れで食べてたんですよ」

「あはは。それは失礼」

 

 

 

 

―――ラインハルトが何よりも驚き、ツカサの人柄を知るまで、相応の警戒をしていた理由。

 

 

「…………」

 

 

 

 

腰に携える剣聖の剣———龍剣レイドが反応を示した事。

 

 

 


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