Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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うーむ、長い上に進まないデス……
なんちゃって叙勲も終わったし、オリ不足ですな~

カペ!(゜o゜(☆○=(-_- )゙オラァ!!


エミリアたん頑張って!!


王選・それぞれの所信表明

受勲式も終えて、漸く本題? である王選の話へ。

 

受勲式が終えた直後は

 

 

 

《ルグニカもええけど、うちらホーシン商会も是非贔屓にしたってや?》

《ほう、王座に就いた暁には、ツカサも妾の物になる、と言う事か。まさに都合が良いとはこの事よのう》

《卿は、その力もそうだが、やはりすべてにおいて興味が尽きない。………面白い男だ》

《………ツカサも(・・・・)。でも、やっぱり私とは……》

《兄ちゃんかっけーぞ‼》

 

 

などなど、主に候補者らを中心にざわついており、中々本題へと入れなかったが、ツカサが最初の定位置……ではなく、ラインハルトと共に、騎士達がいる場所へと位置を変えて、いなくなったのを見計らい、徐々に静かになっていった。

 

 

「ご静粛にお願い致します」

 

 

マーコスの一声で、完全に元の静寂に包まれて―――始まる。

 

 

 

 

 

 

 

「―――では、事の起こりについてを。それは半年前の事です」

 

 

 

 

 

 

 

マーコスの説明。

それは、王族の血筋が絶えてしまった痛ましい事件。

血族に、特定の血族に発症する伝染病により、王を含めて、子孫末代まで根絶やしとなった。

即ち、親竜王国ルグニカにとって、王不在の事態。穏当とは決して呼べない窮地の事態。

 

 

「……その昔、当時の国王であるファルセイル・ルグニカ様と神龍ボルカニカの間で交わされた盟約以来、幾度もの困難をドラゴンに救われ、その繁栄を助けられてきたのですから」

 

 

故に、国の名には親竜王国の名が刻まれている。

繁栄を未来永劫まで齎してくれるドラゴンの存在をなくして、この国の繁栄はあり得なかったのだから。

 

 

「盟約が交わされし時より、王国の運命を左右する事態に際して、文字を刻む竜歴石――その石板に新たに刻まれた予言にはこうあります。《ルグニカの盟約途切れし時、新たな竜の担い手が国を導く》と!」

 

 

その新たな竜の担い手として、選ばれた候補者が彼女たち5人なのだ。

 

 

王族が死に絶え、ルグニカを背負う新たなる王の選出―――これぞ、まさに歴史が動く時だ。

 

 

 

「―――それでは候補者の皆さま。竜珠のご提示を!」

 

 

 

それぞれの手に齎された、徽章を前に出す。

そして、それぞれの手の中で鮮やかに光を放ち、場を染め上げた。

 

 

 

「スゲェな……」

「ん。確かに。……でも、これだけ光るなら、あの盗掘蔵でオレも気付きそうなんだけど、全然わからなかった。……んん? 5つ集まった時の光とはまた違うのかな?」

「何? その7つ集まったら願いを叶えるボールみたいな設定。……でもありそうだな、それ。5つの光が集った集合体! みたいな感じはするし」

 

 

固唾をのんで見守るスバル、そしてツカサ。

 

 

 

 

 

スバルに関しては、普通にいつも通りツカサと話せている事、雰囲気も特に悪くなかった事に、少々毒気抜かれた様子だった。

 

「なぁ、きょうだ……、……ツカサ」

「ん?」

 

王選が終わるまでは、触らない様にしていたスバルだったのだが、あまりにも気になってしまうので、先延ばしにしていただけの問題を今ここで言う事にした。

幸いな事に、エミリア絡みの話はまだ無いようだし、そもそもあるかどうかも解らないから。

 

 

 

「………その、わる、わるか、わるか……」

「わる? 悪? 割る? 割るか? ……まさかだけど、こんな場面でも何かやらかそう、って話? なら、答えはただ1つなんだけど。……自重しろって」

 

 

 

一体何を割るつもりだ? と思ったツカサは、げしっ! と手を刀の形にして、スバルの頭に一撃入れた。

 

 

「プハハハハッ、そりゃ、怒られても当然だぜ、兄弟。見てる分にゃ、おもしれーかもしれねーが、オレにとってもやめといて貰いたいもんだな。面倒事に巻き込まれんのは御免だからよ。兄弟がやらかしたら、そっちの兄ちゃんも絡む。そしてたら もーなんせ、うちの姫さん。兄ちゃんにゾッコンみてーだから、つまり自動的にオレも巻き込まれる、って算段だ。……勘弁願いたいねぇ」

「っちげーーし! 悪かった、って言いたかったんだよ! 解れよ! 複雑な男心ってヤツだよっ!!」

 

 

絶妙な声加減で叫ぶスバル。

周囲は兎も角、王選の進行には影響のない範囲内なので、スバルが何かをやらかそう……としてないのは解って安心。

 

 

「ん? どゆこと?」

「……まぁ、野郎の複雑な男心なんざ、解ろうとも解りたいとも思わねぇよな」

 

 

ツカサは言っている意味をいまいち理解しておらず、アルに関しては、そもそも考えたく無い、と切って捨てた。

 

アルは兎も角、ツカサも本気で解ってないようなので、スバルは軽く頭を掻いて続けた。

 

 

「だってよぉ、オレ……お前にも止められたってのに、喚いた挙句、こんなとこまで乗り込んできちまって。……自分(てめぇ)で考えて出した答えだ、ってのは解ってっけど……、やっぱお前には、一言は謝っとかねーと、って……。それに、あんとき、色々言ったし……」

 

 

正直、スバルのウジウジ顔は見ていていい気分じゃない。

 

 

「……なーんだ、そんな事考えたのか。エミリアさんの事ならともかく、オレの事まで気にかけてた、ってこと? ちょっと気持ち悪いよ、それ」

「キモチワルとかヒデェ!! オレだって結構気にくらいするわ!! ……悪かった、って自覚くらいはあるんだからよ。ここに勝手にきちまった事だって……」

 

 

いつもの底なしな自信家、自分勝手、本能の赴くまま、自重しない、等々。

それに見合う力らしい力があるのであれば、ある程度受け入れられる世界もあるだろう。

その代表的な例、解りやすい例でいえば、あのプリシラがそうだ。

だけど、スバルがお世辞にもこの世界で通用するか? と問われれば……無理だ。

 

それを補うのが《死に戻り》だろう。

発動条件は最悪だが、究極的には自分の思い通りに世界をやり直せる可能性のある規格外の力。

 

 

―――だが、それをさせたくないのは当然ながらツカサである。

 

 

頗る記録(セーブ)読込(ロード)とは相性が悪い。最悪だ。スバルを任意の地点に戻す際、時空間に干渉している能力を飲み込み壊してしまう。そして術者にまで影響を及ぼしてしまう。……すべてを狙って行っているとは思えないが、結果的に言えば致死的なダメージを受けてしまうので、全力で阻止したい。

 

 

裏を返せば、本気の本気で阻止したいのはその位だ。

 

 

「別にオレがどうこう言う問題じゃない、っていうか、スバルは約束は守ったって解釈してもいるから」

「は?」

「ほら、《ちょっと頭冷やして、落ち着いて考えた結果―――ここに来た》って事でしょ?」

「へ? …………いや、それは」

 

 

屁理屈では? と思うスバルを他所に、ツカサの意見は変わらない。

 

何せ、ここに来る前……じっとしている様にと明確な約束を交わしたのはエミリアただ1人なのは間違いないから。

何度思い出してもそう。

 

 

《スバルはお留守番‼》

《目的は身体を治す事と知り合いの安否確認‼》

《無理するから来ちゃダメ‼》

 

 

この場所へ来るな、と約束を取り付けようとしたのは全部エミリアであり、ツカサは一言たりとも移動制限する事は言ってないから。

 

 

「まぁ、スバルの事これからも信用できる? って聞かれたら、今日ので信用度は結構下落したけど」

「うぐっ」

「……でも、オレは信じてるから」

「!! ……ツカサ兄ぃぃぃ」

 

 

ツカサの信じている、と言う言葉を聞いて、目頭が熱くなる想いである。

男相手に言われて嬉しい事など結構この世界では少ないものだ。

 

だが、背を預け合い、秘密を共有でき、何より命の恩人ともなれば話は変わってくるだろう。

更に更に言えば、年のいったおっさんや、爺ではなく、ほとんどタメに近しい年齢(予想)。

 

言わば、親友ポジション。スバルの心の1番目はエミリアが不動であり、その後に心から好意を寄せてくれているレムが入りそうなのが実情だが、親友ポジションともなれば、例外ランキングが発生するだろう。

男性の部門、王者(親友) はツカサだ。

 

 

「ツカサ兄は、そんなにおれのこt「ラムの事を」……って、は? ラム?」

 

 

残念ながら、信じている、と言うのが指す人物はスバルではない様子。

信用度が下落したといったのだから、ある意味当然かもしれないが。

 

 

 

 

「ラムとレムの2人がスバルの事を任されてた。……それをエミリアさんが任せてた。レムはスバルの事だったら、甘やかしてしまいそうだけど、ラムは違うって思うから」

 

 

 

 

ここに来る前、スバルが来た時点でツカサは思っていた事でもある。

ツカサが言う通り、レムはスバルに対して甘々だ。なんでも肯定してしまいそうで、最初はエミリアの事が正しい、と言っていたが、スバルが頼み込めば、聞いてくれると断言出来てしまう。

 

 

だが、ラムは別だろう。

 

 

スバルに対して甘く無い。レムに対しては甘いかもしれないが、内容がスバル関係だと辛辣に切って捨てるだろう。寧ろレムを説得する側に回る筈だ。だが、実際はそうではなかった。

 

 

 

 

「ラムがスバルをここに送り出した。……だから、信じられるよ」

「へーへー! そーですか! そーですよね~、お熱い事ですよねーぇ? ご両人ッ!! 羨ましい事だーぁよ! 仲人はロズっちにでも頼もうかねーぇ」

 

 

 

 

ラムの飾らない想いを聞き、ツカサの心から信じている想いを聞いたスバルは、心底羨ましい、と野次を飛ばすのだった。

 

 

 

だが、そこで穏やかでは居られない男がいる。

 

 

 

「……ラム? レム? ちょい待て、兄弟。……それっつっと、昨日のメイド嬢ちゃんの事だよな?」

「かーー、裏山鹿(うらやましか)(フンッ)! って、あ? 昨日、おっさんと会ったのはレムだ。ラムってのは、その姉様だよ。桃色の髪で傲岸不遜な毒舌担当だ」

「は? つまりなんだ? こんな事を聞くのはどうかと思うが、そのラムって姉の方は生きてるって事か?」

 

 

アルの態度が徐々に変貌していくのが肌で分かった。

何に対していら立っているのかは解らない……が、何に対して強く反応したのかは解る。

 

 

「当たり前だろ? その2人のご厚意で、オレは抜け出せて、おっさんと会えて、ここまで来れたんだぜ?」

 

 

そして、スバルの最後のその言葉から、より一層強く反応した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう事だ、オイ。嘘じゃねぇんだな……? ―――冗談じゃねぇぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その兜の奥から放たれる圧縮されて、凝縮された殺意の様なモノに。

 

これでも場を弁えている、とでも言うのだろうか、明確な殺意があるにしても、無用にまき散らしたりせず……、いや どうにか抑えている様だった。

 

余計な事に巻き込まれたくない、と当の本人は言っているのに、自分の行動が結果、それに繋がるのは―――笑えない。

 

 

 

 

だが、それを不快に思わない者がいない訳がない。

圧縮され、周囲には悟らせない様にしているようだが……直ぐ傍にいるスバルは勿論、その隣にいるツカサにも伝わっているから。

 

 

驚くこともせず、取り乱したり慌てたりすることもなく、ただ平然と……自然に真っ向から返した。

 

 

その身の内も先程までとは明らかな別人に成りて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――何を言ってるのか解ってないけど、殺気(それ)は誰に対してのもの? ……返答次第じゃ、オレも(・・・)自重しない男になるかもしれないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰に対してのものか? とツカサは問うているが……この話の流れで解らない程鈍感ではない。

 

紛れもなく、アルの殺気が向いているのはラムに対してだった。

 

確かにラムは ある意味敵を作りやすい性格なのかもしれないが、明確な殺意を見て我慢できるような人間ではない。

 

 

ツカサもアルと同じだ。

抑えている。……アルに対して以外にはなるべく悟られない様に。

 

 

 

 

「……あぁ、わりぃな。ちと機嫌が悪くなったみてーだ。まー、アレだ。気にすんな」

 

 

 

 

アルは、ぱっと片腕を上げる。

降参だ、と言いつつも誤解だというつもりは無いようだ。

 

 

「お前さんは、姫さんには気に入られてるみてーだが、こっちには来ねぇ。……だろ? そりゃ、互いにとって良かった、っつー事で手打ちといこうや。むざむざ喧嘩売りにそっちにいったりしねぇからよ」

「……殺気(今の)がオレが考えてる通りの人に向けられてる、っていうのなら、確かに。互いに利がありそうだ。……さっき、友好的でありたい、とオレは言ったけど。万人にとは言ったつもりは無い。……あまり、逆鱗には触れてほしくないから。長年の付き合いがある相手同士、って訳でもないからね。……貴方とは(・・・・)

「――――兄弟の真似じゃねぇけど、お熱い事で。……こりゃ、姫さんの一方通行ってのは変わらなさそうだねぇ」

 

 

互いの圧は抑える。

板挟みになったスバルは、言葉をどう発して良いかさえ解らず気圧されていたが。

 

 

「……そこの2人。解ってると思うけど、争い事は御法度だよ」

 

 

この場にはラインハルトもいる。

アルは、剣聖には勝てない、とやる前から匙を投げているのをスバルは聞いているから、一先ず安心は出来た。

 

 

「わーってますよ。……それに、そろそろお嬢さん方の演説が始まりそうだ。そっちに集中してるぜ、オレ。姫さんの順番が回ってきたら、必然的にオレも出ねぇといけねぇからよ」

 

 

アルが完全に殺気を消したのを見計らい、ツカサもそれ以上は何もしないし、言わない、とラインハルトに向かって首を振った。

 

 

「色々言ったけど、ここで何かしようとは思わないよ。こんな勲章まで貰っといて、問題行動起こすとか、最悪通り越しそうだし」

「解ってたつもりだけどね、念のために、ね?」

「……剣聖とも仲良しこよし、って訳かよ、あの兄ちゃんは。………(それにしても、ラム、レム。………昨日のがそうかよ。反吐が出るぜ……)」

 

 

 

殺気こそは止めた。

だが、その思考まではアルは止めるつもりは無いのだった。

 

 

 

 

 

 

 

各代表による演説―――所信表明。

 

 

 

 

 

まず最初にクルシュからそれは始まった。騎士フェリスと共に前に立ち、己の想いを口にする。

 

 

 

竜との盟約を破棄し、自分たちの足で前に進む。と。

 

 

 

竜歴石の記述に無い事に対し、このルグニカは抗えれるとは言い難い。

過去を否定するつもりは無い。……だが、これから先、未来は別だろう。

盟約に甘え、それは停滞を、そして堕落を招き―――最後には終焉を齎すだろう、と。

 

 

 

 

「竜がいなければ滅ぶのであれば、我々が竜になるべきだ‼ 私が王になった暁には、竜にはこれまでの盟約の事を忘れてもらう‼ ルグニカは竜のものではない‼ 我々のものなのだ‼」

 

 

 

 

だが、それは決して楽な道のりではない。敢えて苦境に立たされ、困難な道へと進む事であろう事もクルシュには解っている。

 

だが、それでも主張と信念を曲げたりしない。

 

 

「苦難が待っていよう。だが、私は自分の人生を自らの足で歩みたい‼ そして願わくば、この国もそうあってほしいと思っている‼ ―――以上だ‼」

 

 

 

クルシュの演説。

それは身体の芯にまで響いてくるものだった。

 

つい先ほどまでの、一触即発な空気までまるで無かった事かの様だ。

 

 

 

 

 

 

「大本命、って言われるだけの事はあるぜ………」

「理想論だとは思うけどね。……それでも否定できない重みがあるよ。さっき、賢人会の1人が異議を申し立ててたけど、後には誰も続いていない。……反論を許さない圧があの人にはある。……凄い」

 

 

まさに王者の風格と言って良い。

 

―――クルシュ・カルステン。

 

 

その名と姿をこの目に、記憶に焼き付けた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「ふむ……。クルシュ様のご意見は解りました。では、騎士フェリックス・アーガイル。御身からは何かありますかな?」

 

 

クルシュの傍で控えている騎士フェリスは、その問に首を横に振って見せた。

 

 

「お言葉ですが、私が補足するような事は何もございません。クルシュ様の正しさは、後の歴史と従う私共が証明していきます。………やっぱり、クルシュ様は素敵です」

「うむ……」

 

 

それは、互いに信頼しあっているのがよく解る一幕でもあった。

フェリスが心からクルシュを敬愛し信頼し……、そしてクルシュも同等なのである、と言う事を。

 

 

「―――どうやら、この賢人会は嘗てない程の衝撃や波乱に満ちたモノの様ですな」

 

 

白鯨を単独で撃退した者に対しての叙勲、大きな衝撃から始まり、この王選の所信表明。その一番手からこれまでの王政を真っ向から否定する。

 

まさに衝撃から始まり、波乱の幕開けと言って良い。

 

 

「では、次の方をお願いしましょうか」

「はっ‼」

 

 

続くのは並び順から考えて、アナスタシアとなる。

 

 

「それでは、お並びの順にと言う事で、アナスタシア様。よろしいでしょうか?」

「えぇよ!」

 

 

クルシュと比較してみれば、随分軽い口調ではあるが、ゆるぎない意思を持っているのは間違いないだろう。あの演説の後だが、臆する事なく前へと出ようとする……が。

 

 

「待て」

 

 

それを阻む者がいる。

 

まさに傍若無人。

 

 

「妾が先にやる‼」

 

 

あのクルシュの演説に充てられたのだろう。アナスタシアを押しのけて、プリシラが前に出た。

 

 

 

「来い‼ アルッ‼ はいぱー妾たいむじゃ‼」

 

 

 

まだ、良いとも何も言っていないのに、まるで決定したかの様なモノ言い……。

 

 

「申し訳ございません。アナスタシア様……」

「別にウチはいつでもえぇよ?」

 

 

あまりに傍若無人極まりないが、話を聞くタイプではないのは解っているので、少々苛立ちながらも、アナスタシアが一歩退いた。

 

 

 

「はいぱー? 妾たいむ??」

「あー、んーー、アレ知ってるって事はおっさんの入れ知恵だろ、絶対」

「おうよ。オレが教えた。良い感じに使いこなしてるだろ?」

 

 

言っている意味が本当の意味で解るのはスバルとアルの2人だけである。

あのアルとツカサの空気間を霧散させてくれた事には一定の感謝の念を送りたいと思う所存だ。

 

 

アルも、取り合えず呼ばれたので先へ。

 

 

 

 

「大丈夫かい? 姫さん」

「何を言うか。老骨どもに妾の威光を知らせ〆、その上で妾に従うことを選ばせてやれば良いのじゃろう? 実に簡単な事ではないか。これもまた、妾にとって都合が良い結果に繋がる。………くくっ」

 

 

プリシラは振り返り、騎士達の中に紛れている1人の男を即座に見つけて笑って見せた。

 

 

 

「姫さん……、とてつもない一方通行だぜ? 恋は盲目っつーけど、正直、王選より勝ち目薄い戦いだと思うぜ」

「ふん。それもまた一興よ。……妾色に染め上げてくれようぞ」

「ま、止めやしないですがね。(………多分、無理だろうからな。……ありゃ、無理だ(・・・)。接してみてよーくわかった(・・・・)誰のせいにも(・・・・・・)何のせいにもできねぇよ(・・・・・・・・・・・))」

 

アルは軽く首を振った。

恋路の行方、それを邪魔するつもりは毛頭ない、そもそもプリシラの決定に対して、口をはさみ、それが効果がある訳がない。

 

プリシラのご都合主義、都合が良く運んだ事態にゆだねるだけだ。

 

交わらない事を強く願うが……そこは、アルは心配はしていないようだった。

 

 

 

「それでは……、プリシラ・バーリエル様、よろしくお願いします‼」

 

「うむ。ここからの眺めと言うものは、なかなかのものじゃな……」

 

 

王の玉座から見る景色にいたく気に入るプリシラ。

意中の男の姿もそこにはあるのだから、尚更だ。

 

 

本来ならここから所信表明が始まる……のだが、少々違った。

 

 

「プリシラ様。失礼ですが、プリシラ様の騎士殿は近衛騎士団には見ない風貌……、ご紹介願いたいのですが」

 

 

アルの見た目、明らかな違いについて気になったマイクロトフが紹介を求めたからだ。

 

だが、それを主プリシラに任せるよりも早く、アルが自ら説明に入る。

 

 

「ああ、オレは近衛騎士団なんて、大層なもんには入ってねぇよ。前はヴォラキアにいたけど今は流れ者の風来坊―――アルって呼んでくれ。……そんでもって、この兜に関しては勘弁してくれや」

 

 

アルはそういうと、兜を少し脱いで口元を見せた。

そこにははっきりと見える。たった一部……顔の半分にも満たない口元しか見えないというのに、痛々しい生生しい傷が見えた。

 

 

 

 

「こんな感じで見苦しい顔してるもんでな」

 

 

 

それだけで十分だった。

素顔を見せろ、と言う者などいる筈もない。

名誉の負傷の類であろう、と。

 

 

「なるほど、承知いたしました」

 

 

マイクロトフもそう告げると、それ以上は求めない。

すると、プリシラは一歩前に出てセンスを構えて言った。

 

 

 

 

 

「気は済んだかの、老木‼ ―――では、始めさせてもらうぞ? 聞けっ‼ 妾が王たる道を歩むことは、妾を輝かせんとする天意である‼ なにせ、この世界。その大半が妾に都合が良い事しか起こらぬ! 故に妾こそが王たるに相応しい‼ 否、妾以外には務まらんのだ‼ 故に、貴様らは平伏し、それに従うだけでよい‼」

 

 

 

 

 

プリシラの短い所信表明。

それはクルシュの時とはまた違う意味で、場が静まり返った。

 

 

 

 

「……ほんと何処までも」

「……やべーよな、マジでこんな場所でもあの振舞い。傲慢が服着て歩いてるみてーだ」

 

 

プリシラが見据えるその目には、一片の躊躇も疑念も存在しない。

戯言の様な言葉なのにも関わらず、誰もが口を閉ざしたままだった。また、プリシラにもカリスマ性がある、と言えばそうなのだろう。

 

 

「……プリシラ様。あなたに従うとして、我々には一体どんな見返りが?」

 

 

マイクロトフが極めて冷静に、それでいて重要な部分に対してをプリシラに聞く。

齎す結果だ。――――行き着く先、国の未来だ。

 

 

「それは単純な事よ。妾に従えば、それはそのまま勝者の側。自らの欲するものを得るがよい。妾が許す」

「あーー、言い方はアレだが、うちの姫さんのいう事は正しいぜ。……そっちでもつかんでるんだろ? 爺様……じゃなく、ライプ氏の領地の快復ぶりは」

「ライプ殿……、プリシラ様の伴侶ですな」

 

 

正直言葉足らずな所があるプリシラに代わって、騎士であるアルが補足を告げる。

即ち、論より証拠……、その言葉がただの妄言ではないという事実を。

 

 

「ライプ・バーリエル殿は先日お亡くなりになっておられます! その後、プリシラ様が内政を執り、領地は嘗てない隆盛の極みにあると……」

 

 

マーコスが調べた結果をこの場で報告した。

近衛騎士団団長が告げているのだ。……それが嘘偽りではないという事が何よりの証明になり、何よりの説得力にも繋がる事だろう。

 

 

「そゆこと! んでも、アレで人のために一生懸命……なんて勘違いだけはすんなよ? 姫さんにあるのは、天才肌の山勘。その手腕がとびぬけてやべぇ。理屈に嵌らねぇ天才ってヤツだな。―――しかも、結果としてついて回るんだ。今ンとこ完璧にな」

 

 

アルは一頻り、全体を見渡すと手を差し出すかの様に右手を向けると。

 

 

「まぁ、誰の下につくかは好きにしたら良いさ。……だが、どうせなら早いうちに勝ち馬に乗った方が良いと思うぜ? ―――以上」

 

 

誰一人、反論する者はいない。

言葉を発することを許された場ではないにしろ、それでも団長であるマーコスの言葉、アルの説明、……そしてプリシラの有無を言わさぬ姿勢。

 

衝撃(インパクト)と言う意味では、クルシュとまさに同等だ。

 

 

 

 

 

「……その都合にハマらないのが、君なんだね? ツカサ」

「………さぁ? 何言ってるかわかんないよ」

「謙遜する必要はないさ。……君とプリシラ様との会話を聞けば、誰もが解る事だよ。それに君と言う男を知った今、ここにいる皆も同じなんじゃないかな?」

「そういう解釈をしてくれるのは、きっとラインハルトだけだと思うよ」

「……ものすっげぇ片思い、一方通行、誰よりも男らし過ぎってなだけだろうけど、その点はオレも否定しねぇな」

「否定してよスバル」

 

 

 

 

大言壮語ではない、と断言しきってしまうラインハルト。

他人の評価がこちらも天井知らず。それにスバルも乗っかってしまったから更に性質が悪くなる。

先ほどの意趣返しとでも言うのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

それはさておき、代表候補も丁度折り返し。

 

 

 

 

 

「それでは続きまして―――アナスタシア様‼ お願いします! その騎士ユリウス・ユークリウス‼」

 

先ほど、無理矢理後回しにさせられたアナスタシアの順番だ。

最優の騎士と呼ばれるユリウスも既に傍に仕えていた。

 

 

「……あいつも王候補者の後見人、って訳なのかよ……」

「《最優の騎士》ユリウス。……マーコス団長に次いで、騎士団で序列が高いのが彼だ。申し分ない人選だよ」

「……最優、ね」

「色々あったみたいだけど、演説の邪魔しようとかは流石に考えないでね?」

「バーカ。恋敵だからっつって、んな情けねぇ真似するかよ」

 

 

いつの間にユリウスとスバルの関係が恋敵になったのかは知らないし、追及するつもりもないから、そこには触れない。

 

ただ、何を言うのか、そのユリウスと言う男が仕える相手がどの様な者なのか……、あまりにも先の2人がとんでもなかった分、より気になる。

 

 

 

「ほんならー、ウチ、アナスタシア・ホーシンがお話しさせてもらいます」

「アナスタシア様の一の騎士 ユリウス・ユークリウスです。……お手柔らかに」

 

 

 

 

「すげー関西弁でしゃべっとる……」

「かんさいべん? あの特徴的な話し方の事?」

「ん? あー、オレの故郷で似たような話し方があってよ。……聞いた話じゃ、カララギってとこの訛りらしい」

 

関西弁、についての講義を聞いてみたくもあるが、今はよそう。

 

 

 

「生憎、ウチにはクルシュさんみたいに立派な思想も、プリシラさんみたいに自分が選ばれた人やって言う自信もありません。……ただ、ウチに言える事は1つ。ウチは他の人より、ちょっと欲深なんです」

 

 

欲深。

その言葉の意味が、直ぐにそのままの《欲が深い》―――と理解出来た者は思いのほか少ない。

 

続くアナスタシアの言葉で判明していく。

 

 

「ウチ、昔は小さな商会の小間使いやったんです。それでちょっと店のやり方に口出ししてみたら……、これが大当たり。少しずつ大きな取引も任せて貰えるようになりました。そのうち貧しかったころなんて忘れてしまうくらい暮らしは楽になった。……でも、ウチは楽になった筈やのに、前よりも不自由を感じたんです」

「……それはどうして?」

 

 

マイクロトフの疑問は最もだ。

仕事が回り、貧困から抜け出す事が出来た。商業が盛んなカララギにおいて、これ以上ない程の幸福と自由を手に入れたと言っても良いから。

 

……そう、ここから彼女が言う欲深につながっていく。

 

 

「目と手が届くところが増えた分、掴み取りたいもんが増えたんです。……それが欲の恐ろしいところです。アレも、コレも、ソレも……もっともっと欲しい。……留まる事も知らんかって、気づいたらウチは、カララギ一大勢力のホーシン商会の会長にまでなってしまいました。――――でも」

 

 

商業の盛んな国において、その頂点まで上り詰めたと言って良い成果。

だが、アナスタシアは止まらない。―――己が強欲が故に。

 

 

 

「それでも、ウチは満たされへんかった。充足感を感じる事が出来なかった。……ウチはもっと、もっともっと大きなものが欲しい。……もっともっと、大きなもの………そう、ウチはこの国が欲しい!」

 

 

 

欲が行き詰まった終着点は、隣国のルグニカ。……否、話を聞けば、ここで留まる事は恐らく無いだろう。

彼女はきっと進み続ける筈だ。―――この世に生を受け、死して止まるまでは延々に。

 

 

「物欲の秤に王国を載せて語りますか……。だが、手に入れたものが無価値という事もある」

「言いましたやろ? ウチは欲深なんです。一度手に入れたもんは、ウチのもんです。そして、ウチのものは、全部ウチの情熱の一部や。―――せやから、安心してウチのものになってくれてええよ?」

 

 

彼女の見た目相応から考えれば、恐らくスバルとそう変わらないだろう。

彼女が商才を、その才覚をどこで気付いたのかは解らないが……、その若さでカララギを制し、更にはルグニカまで手中に収めんとしている。

 

 

「―――……十分にバケモンじゃねぇか。経済っつー世界においては」

 

 

スバルは、クルシュ、プリシラ後の発言だ。それも傲慢極まりないプリシラの発言後だから、どれも霞むだろう、とも思っていたのだが、傲慢を食いかねない強欲がそこにはいた。

 

 

「商いの天才肌。色んな問題を抱えているこの国で、ものすごく欲する才能なんじゃないかな?」

「ああ。それは間違いないよ。……今のルグニカを考えたら、ね。それをユリウスも解っている」

 

 

ラインハルトは断言し、そしてユリウスの方を見た。

丁度、マイクロトフから一言を促されている様だ。

 

 

 

「アナスタシア様は、欲と表現しましたが、それは裏を返せば向上心と情熱の深さの表れです。為政者として、その資質は必要不可欠。……加えて、現在の財政難を考えれば、その商才は今の王国が何よりも欲しているモノです! ……王国への忠義に誓って断言します。―――アナスタシア様こそが、王に相応しいと‼ ―――御清聴、感謝いたします」

 

 

近衛騎士団No.2であり、《最優の騎士》と称される男ユリウスが力強く断言した。

 

 

「ご立派でしたアナスタシア様。やはりあなたと言う花は、こういう場でこそ、美しく咲き誇る」

「なーんか、ユリウスに全部持ってかれた気ぃがしてまうな。べた褒めやったから、怒るに怒られないけど。……とりあえず、おおきに!」

 

 

軽いやり取りの様に見えるが、そこには他とはまた違う信頼で結ばれているというのが解る。

 

主従関係、王候補者との固い信頼と信用、そしてすべてに通じる強さ。

 

 

国が喉から手が出る程欲するのが、財政難からくる、彼女の商才と言うのなら――――信頼と信用、それを通すだけの力。今のスバルに一番欲しいものだ。

 

 

そして、その力を必要としているのは、間違いなくこの次の候補者。

他と比べたら、圧倒的に味方が少ない、と言って良い彼女。

 

 

 

 

 

 

「それでは! 次の候補者―――エミリア様‼ よろしくお願いします‼」

「はいっ……‼」

 

 

 

 

 

 

 

誰よりも一番に駆けつけて、守りたいと思っている彼女だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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