Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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反則はダメだよね……。( ´~`)
でもねぇ~。。。。

ユリウス兄~m(。_。)m



最優VS反則

 

 

先ほどの空気から一変。

 

緊迫した空気が場を完全に支配した。

 

それはまるで、息をする事さえも、憚れるかのよう。否、息をする事さえ忘れさせてしまう程である。

 

 

 

 

「りべんじ・まっち、じゃな」

「ま、間違っちゃねーな。口ではなんつっても、あの兄弟をボコボコにした後の戦いだ」

 

 

 

 

プリシラは煌々とした顔を扇子で覆い、アルも肯定した。

 

 

その前座の模擬戦。

スバルとユリウスの模擬戦……制裁は、最初の数合の打ち合いこそは、歓声があがり、或いは嘲笑を浮かべて スバルの無様さを見下し、同輩であるユリウスに惜しみない賞讃を上げていた。

 

だが、凄惨な光景が続くにつれて、呆れる吐息が重なるようになる。

 

何せ、最後のスバルのそれは、ただの意地であり、騎士としての在り方を、その力を、存在の優位性を誰しもが再確認する事が出来た今、完全に無意味なものに過ぎなかったから。

 

ユリウス自身も解っているだろう、と周囲で見ていた騎士たちは思っていたのだが、容赦の一切ない、只管木剣にて、リンチを続けていた。

 

最後の最後、血反吐を吐き尽くしたと言わんばかりの現状に、これ以上見てられない程な凄惨な光景を目の当たりにした現状に、騎士の数名がやめる様に声を出したり、団長を呼びに行くにあたったりとしていた程である。

 

 

 

ユリウスとスバルの模擬戦は、内容はさておき、多種多様な空気を演出したと言って良いだろう。

 

 

 

 

 

だが、このツカサと相対した時の空気はまたどれとも違った。

突如生まれたかのような場の空気は、意思があるかのように張り詰め、緊迫していく。

 

 

 

 

プリシラが煽りを入れた内容を鑑みると、あの騎士を侮辱し、王選の存在さえも侮辱したスバルに対する弔い合戦を仕掛けようとするツカサの構図だ。

 

あの無礼で、無様で、礼儀のれの字すら知らない醜い男の味方。少なからず野次、罵声が飛んでもおかしくないというのに、誰もが息をのむ。

一瞬たりとも見逃す事が出来ない、武術の大会。その頂点を決める戦い。誇りと誇りのぶつかり合いを、目の当たりにしているかの様。

 

 

更に付け加え、言い表すとするなら――――まさに嵐の前の静けさか。

 

 

 

「………残念に思うよ。こう言う形で、ツカサ。君と向き合う事になろうとは、ね」

 

 

 

木剣を腰に携えるユリウス。

まだ、ツカサは何も言っていない。ただ、プリシラが号令を出しただけであり、別にそれに応えようとしている訳ではない。

 

ただ、振り返っただけなのだ。

 

だが、それがユリウスにとっては、承諾したと捉えていたのである。

自然と木剣を握る手の力が増していく。

騎士としての誇りのすべてをかける――――と言わんばかりだった。

 

 

 

 

 

―――――だが、その悲しいとさえ思う決意に満ちた思考は、次のツカサの言葉で霧散する事になる。

 

 

 

 

 

 

「……プリシラさんに色々と煽られたけど、オレはそう言うつもり(・・・・・・・)で、ユリウスと相対する気は一切ないよ」

 

 

 

 

その顔は笑みを浮かべていたのだ。

プリシラに煽られるまでもない。

スバルを友だと言っていたツカサ。確かにエミリアの事を考えれば、この場で行動を起こすのは宜しく無い。騎士と名乗ってはいないものの、エミリアの用心棒の様なもの、即ちエミリアを主として、仕えているも同然の身であり、その主の意に反する行動、行為をしないのは、従者として当然の事だ。

 

だが、今はエミリアはスバルの治療のため、席を外している。プリシラが言う様に事を起こすのなら今しかないだろう。

 

 

 

「――――でも、これだけ周りに色々な視線(・・・・・)を向けられたら……、やらなきゃいけないとも思う」

 

 

 

 

周囲の騎士たちを一瞥するツカサ。

プリシラも最初から解っていたかの様に。……ツカサと言う男を考えたら例え煽りを入れようが、エミリアを遠ざけてお膳立てをしようが、その意に沿わない行動をする事も考えられる。……ただし、今回に限っては、全く疑っていなかった。

 

 

 

間違いなく、ぶつかり合うだろう、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ツカサは、スバルが先ほどまで使っていたであろう木剣を手に取った。

 

 

「それに ユリウスと向き合うなら、スバルも絶対望んでない仇討ち(そんな)気概で向き合いたくは無い。……ユリウスも残念だ、って言ってる通り」

 

 

手に取った木剣を逆手に持ち替えて、ズボンとベルトの隙間に差し込んだ。

 

スバルの血が汗が染みこんだ木剣。

結果は惨敗で、見るも無残だったとしても、事切れるまで挑み続けたのが解る。

 

そんな一振の木剣も悪くないと思った。

 

 

 

 

「なら、どういう気概でツカサは私と?」

 

 

先ほどまでの、やや強張った顔だったユリウス。

今は完全に力を抜き、自然体になっている。

互いに肩の力を抜き、自然体のままで―――それぞれの思いを告げる。

 

 

「そうだね。……どうせなら、色々と怪しい(・・・・・・)オレを証明する為に、かな?……だから、ユリウスの胸を借りたい」

「!」

 

 

もう、それ以上は言葉にするまでもない。

ユリウスは、悟った。

 

 

―――ツカサは、聞いていた(・・・・・)のだという事を。

 

 

 

スバルに対する騎士を侮辱した発言、軽んじた発言と行動がほぼ10割をしめていた今回の王選。

ただ、スバルのそれに比べたらほんの僅か……、幻聴かと思える程微かにだが、はっきりと合った。

それは叙勲式のすぐ後に、そして この場でも。

 

 

 

 

―――ツカサ(あの男)見合う(・・・)のだろうか?

 

 

 

 

 

「―――自分から好んで、率先して、証明するというのは正直性分じゃない。……目立つ事は、得意とは言えないからね」

 

 

大きく深呼吸。

そして首を軽く左右に振って解す。

 

 

 

「でも、恐れ多くもこの国最高峰の勲章を頂いたんだ。前例のない事態。噂話と剣聖ラインハルトの推薦。たったそれだけの事で」

「……たった(・・・)と君は称しているが、それがどのくらいの事か、理解はしているかい?」

「……ははは。申し訳ない。オレの記憶は浅いものだから、どうしてもたった(・・・)と言ってしまうよ。――――だから」

 

 

ツカサは木剣を抜いた。

手首を撓らせ、軽く円を描くと、その切っ先をユリウスにへと向ける。

 

 

「ユリウスが採点してほしい。……見合う男なのかどうかを、今ここで証明してほしい」

 

 

気迫の籠った顔を、木剣から伝わってくる剣気を、………紛れもなく強者であろう者が発する独特の威圧感(オーラ)をユリウスはその身に受けた。

 

それに応える様に……ユリウスは剣を向けた。

 

 

「―――ならば、私は全霊でそれに応じよう」

 

 

互いの切っ先が、カチンッ、と当たる。

 

 

「―――それに 一度くらいは、プリシラさんの願いを聞いておかないと、今後が大変になりそうだからね」

「ははは。……なるほど。そういう理由もあったか。随分不純な動機だと思うが」

「仕方ないよ。光栄にも、彼女はオレの事を(強引に)気にかけてくれてるんだから」

 

 

背後にいるプリシラ。

その顔は当然見えないけど、どんな顔をしているかは察しが付く。

 

お膳立てし、道を示したが……結果としては、狙い通りに事を運ぶ事になったが、プリシラ自身が示した道筋ではない事にやや不満を覚えつつも、その顔はきっと笑ってる事だろう。

 

 

 

「……この妾が見に来たのだ。相応に応えるのが筋じゃ」

 

 

 

それも満足そうな笑み。

側近であり、色々と振り回され続けている彼女の騎士であるアル自身も、中々お目にかかれない類の代物。

 

最近で、一番近しいものを上げるとするなら……、齢にして10程の泣きじゃくる少年使用人を、その豊満な胸で抱き留めた時の表情が一番近いだろうか。

 

 

「あれはあれで羨ましいポジションってヤツか? 離れてるくせに、姫さんをこんな顔にしちまうなんてな」

 

 

アルはそうぼやく。

羨ましいのは違いないが、はっきり言って近づけるような代物ではない。

先ほどの例に挙げた少年もそうだ。……絶対に近づく事は出来ない。齢は重ねる事は出来ても、若返る事は無理だ。……世の何処かにある聖なる秘宝でもあるなら、可能かもしれないが、世迷言に頼らなければならない程、その隔たる壁は高く、そして険しく――――何者も寄せ付けない。

 

 

「あの兄ちゃん。よく、アレ(・・)を前に立てるよね」

 

 

アルは、その木剣を自分に向けられている訳でもないのに、自分が稽古? の相手をする訳でもないのに。……それでも自分は決して前には立たないし、立ちたくない、と言うのを改めて胸に秘めるのだった。

 

 

「……これなら、賭けとして成立するんちゃうかな? ウチのユリウスと、あの子。……どっちが勝つか」

 

 

アナスタシアは、まるで少女の様に目を輝かせながら、一連の光景を魅入っていた。

心臓が高鳴り、ドキドキが止まらない。

まるで、欲しくて、欲しくて、喉から手が出るくらい欲しているモノが、あとほんの少しで手が届くか届かないか、その寸前まで来たかの様な感覚。

 

正直な所、一番自分の中で盛り上がるタイミングの感覚が、アナスタシアを支配していた。

 

 

この一戦を賭け事などと世俗的に口にした事に対し、正直感心しない……とも一瞬思えた隣にいるクルシュだったが、同じく一瞬だけ考えて、言葉を発した。

 

 

「前評判通りだとするならば、王国一の騎士、剣聖に勝利し、かの厄災を退ける力があの男にあるのなら、如何に近衛騎士団、最優だとしても、その刃は勝利には届くまい。……と言うのが大方の予想。……だが、あくまで噂の範疇で私がその実力をこの目で確かめた訳ではない」

 

 

ユリウスの実力は十二分に知っている。

最優と言う称号は、生半可な力で到達できる様な安い代物ではないという事も良く知っている。

 

それが、突如現れた風来坊に後れを取るとは思えない、と言うのが普通だが……先ほど言った通り前評判通りなのであれば、常軌を逸した力の持ち主だという事は解る。

 

 

そして、実のところ クルシュも知りたい、見極めたい、と常々思っていた噂話だ。

 

 

「―――ヴィルヘルムにも見せてやれなんだのが残念だ。……だが、アナスタシア・ホーシン。勝敗はどのようにつけるというのだ? 力を証明する事が目的の仕合だと言うのなら、勝敗はつかぬのが妥当ではないか」

「そうやねんなぁ……。まぁ、あの子は最初に自分とこの子に心配かけとーない、って言っとるし、無茶も無理もせんと思うわぁ。……難しい所やけど、一応見たこと無い相手、って事を考慮して――――」

 

 

うーん、とアナスタシアは人差し指を顎に当てて、考えに考え………。

 

 

「ユリウスに託すのが一番良いと思うなぁ。……もし、ほんまもんな力なんやったら、ユリウス自身が認めると思うし」

「………妥当な所か」

「実に、つまらぬぞ。その程度では」

「……なに?」

 

 

賭け事の話の際に割って入ってきたのはプリシラだ。

 

 

「何が不満なん? あの子の性格とかも考えた上での考慮やで?」

「ふん。妾が認め、妾の枠に収まりきらん男がツカサじゃぞ? あの男に測れる類のモノではないわ。……じゃが、強いて言えば、その賭けに時間(・・)、若しくは一撃(・・)を設けるのが丁度良い」

「??」

 

 

ユリウスを軽く貶されたも同然なので、不快感をむき出しにしたアナスタシアだったが、プリシラの言う事も気になったので、特に文句までは言わず、顔だけで抗議。

プリシラは愉快そうに歯を見せながら笑うと、断言した。

 

 

「もって数分の仕合、若しくは一撃も貰わずにツカサの勝利。―――それに妾は領地にある蓄え全てを賭けよう。おーるいん、じゃ」

「ちょ、マジかよ、姫さん」

「何を情けない声を出しておる。あのツカサの甘さ故、勝敗時間だけでは万が一がある。だからこそ妾は一撃も貰わん項目を加えた。これを英断と言わずなんという」

 

 

思わず止めそうになるアルだったが、当のプリシラはただただ、アナスタシアに負けない程の笑顔で、その行く末をみいっていた。

 

 

それに続く形で、反論もなにもせず、もうすぐ始まるであろう戦いを、クルシュもアナスタシアも見守ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クルシュ、アナスタシア、プリシラの候補者たちの密談? が耳に届いたモノは、幸か不幸かほとんど皆無だった。

ある意味、(相手は別として)スバルよりも不愉快極まりない内容だったからだ。

 

ツカサはツカサで、いつの間にかダシにされているが、それに気づく事は無い。

 

そして、プリシラの都合が良い様に物事が動く事になるのは間違いない。

 

ここで示さなければならないのは、自身の力量。――――純粋な剣技(・・・・・)ではないのだから。

 

 

 

オットーやラインハルトも経験した、ツカサが言うズル(・・)………殆ど不正。

 

 

揶揄者(ザ・フール)

 

 

それを発動させる。

 

 

 

「一応、本職は魔法の方だ、って事は伝えておくね」

「!」

 

 

 

ユリウスは、ツカサの構えた剣先に魔法が発生したのを見て、目を見開いた。

小さな黒い靄……ではなく、逆巻いている。小さな旋風。そして火の玉、氷、土。4属性の魔法を同時に発現させていたのだから。

 

多種の魔法を扱う事が出来るユリウスだが、それでも驚く程の練度であり、速度だった。

 

 

「あのデカい鯨を飛ばしたのは、風の魔法。――――それをここで見せる訳には………いかないし」

「ああ。今は剣を魅せてもらいたい。……魔法(そっち)は、別の機会を期待するよ」

 

 

 

スバルの死に戻りによるダメージ。

それは、この1ヶ月で大分緩和された。

何処まで戻ったかは、あの世界に降り立った初日の相手……白鯨を相手にして比較を取らなければ、体感では解りにくいのが実情だが………、少なくとも万全だと言える。

 

 

「(……スバルがもし、また戻ったりしたら、ヤバいかもだけど、揶揄者(コレ)は 大丈夫だったし………、大丈夫、だよね?)」

《さぁ?? それは、死に戻ってみてからのお楽しみで良いんじゃない?》

「(絶対嫌だっての!! でも、周りを納得させるには、これしか無いのも事実だ)」

 

 

純粋な剣での勝負を、その腕を見たいと求めているユリウスには、申し訳ない……とも思ってしまう。

 

オットー相手なら、何ら躊躇う事なく、何連敗でもさせてあげる所存なのだが………。

 

※この時、某場所にて、某商人が盛大にくしゃみをしていた。

 

 

「さぁ、やろう」

「うん」

 

 

 

それぞれが構え……そして、先手をツカサはユリウスに譲った。

それが都合が良い(・・・・・)から。

 

 

 

 

 

「(正直狡い。反則。真向勝負をしてくる相手にとって最悪の相性。……でも、仕方ない。スバルを痛めつけてくれたお礼、って事にしてよね、ユリウス)」

 

 

 

 

 

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