Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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ループもののイベントは、各イベントを繰り返し書くのって、ものすっごい大変な気が今更ながらシテマス。( ´艸`)

なので、分散デスかね( ´艸`)( ´艸`)( ´艸`)


一歩ずつ先へ……………??

 

 

「んー……、何でオレも立ち合ってるのか、いまいち解らないんだけど」

「バルスが変な気を起こさない様に見張る。それだけの事よ。可愛いレムのお願いなのだから、聞きなさい」

 

 

現在、スバルはカルステン公爵家にて治療を受けている。

その治療の立ち合い者として、何故かツカサも含めたレムとラムも同席。

 

 

そして、現在……凡そ初見では治療? とは思えない光景が広がっていた。

 

 

「ほらほら、スバルきゅんっ! もっち力抜いてリラックスリラックス~~♪」

「うひぃ………」

 

 

ベッドに腰かけているスバルを後ろから抱きしめて、耳元で囁いているのが、王国最高の治療士でもあるフェリスだ。

 

スバルは囁かれる度に、変な声を上げて、囁かれる度に、頬を紅潮させていて、全くと言って良い程治療に専念出来ていない。

エミリアが言ったように治療に専念してもらう為にここに置き去りにした(暴言)と言うのに……、専念出来てない様に思える。

 

 

「今日の仕上げなんだからさ? みーんな見てるからって、そんな力入れない、抜いて抜いてっ♪」

「ヌ、ぬく………」

「あっ、また固くなっちゃった? ほらほら、もっともっと~~♪」

「………………って、できるかーーー!!」

 

 

多人数に見られて、特にレムからは何処か怒っている様な、拗ねている様な顔を見せていて……。

 

 

「レム、落ち着きなさい」

「お、落ち着いています! 大丈夫ですよ、姉様!!」

「どうせ、バルスは解ってないんでしょう(・・・・・・・・・・)? ……解った上で、アレなら、どうしようもないわ」

 

 

 

塵を視るかの様な目で吐き捨てるラムの顔を見て、何故そんな顔で見られているのか解らないスバルは更に声を上げる。

 

 

「んだよっっ!! しょーーがねーーだろっっ! 猫耳美少女に後ろから抱き着かれて、どーしろってんだっ!? おまけになになに?? この羞恥プレイ!? こちとら健全な男子高校生だってのっっ!! 抜くだの固いだの、刺激強過ぎるんだよっっ! そんな中でもエミリアたん一筋なオレを褒めてもらいたいもんだよっ!!」

 

 

ウガーーー!! と両手を上げてスバルは抗議する姿勢だ。

あまりにも役得であり、スバルにとっては異世界ファンタジーの世界に紛れ込む事が出来た上でのイベントの1つ、まさに今、かの有名な伝説的な、国民的なイベント《ぱふぱふ》を味わってる様な気分なのである。

 

生憎、背に伝わる柔らかな感触は、フェリスには無い様だが、それはそれで有り、非常に有り。あまりにも甘酸っぱく、それでいて脳髄にまで響き蕩けさせるフェリスの口撃を受け続けていたのだから。

 

 

それでも、エミリア一筋である、と最後の心までは奪われなかった自分を褒めてもらいたい気分なのだ。

幸いにも貸し出された寝間着姿じゃなくて良かった、と心底スバルは思っている。

あの頼りない布素地では、————隠しきれるとは思えないから。

 

 

 

――――ただ、やや身体が前傾姿勢なのは許して貰いたい所存ではあるが。

 

 

 

 

 

「美少女?? あれれ~~? もしかしてスバルきゅん、ってば? っとと、ならひょっとしてツカサきゅんも知らなかったり?」

「「??」」

 

 

ここで何故フェリスが首を傾げるのだろう?

他人の容姿に関してあれやこれやと評したりする趣味はツカサには持ち合わせていないが、何が面白いのか、ラムがツカサに微笑みを浮かべながら聞いてきた。

 

 

「ツカサは、フェリックス様を見て、どう思う?」

「……何だか物凄く大雑把な質問だと思うけど……、オレに何か期待してる?」

「難しく考える必要は無いわ。フェリックス様の第一印象よ」

「ん……」

 

 

ツカサは暫く考えてみた。

ラムの前で、別な女性の事を口に出そうものなら……と言っても、これまででは限られてきたので、早々起こり得る事とも思っていない。

身近な例で言えば、エミリアに対して、好意的なコメントをツカサは残したが、それに関してラムの異常に低い逆鱗? には触れる事は無かった。

 

だが、何故だか解らないが、プリシラに関しては話は別。

 

彼女の女性を象徴する様な容姿とその二つの大きな膨らみ。

アレを賭けに持ち出され、差し出され、更に負けても同じ様な扱いをされる可能性があり……と、世の男にとっては、喉から手が出る程欲するであろう、条件な場面で……、明確に勝負を放棄したのにも関わらず、ラムは不機嫌極まりなかった。

 

 

 

「スバルが夢中に成る程、容姿が素敵である、って事かな?」

「おぃ!! オレをシレっと出汁に使って被害和らげてんじゃねーーよ!」

 

スバルの名を使う事で、襲撃者(ラム)からの被害を最小で済ませようとしている魂胆見え見えなツカサの様子に、スバルは異議を申し立てているが、いたって気にしていない。

それはツカサだけでなく、ラムもそうだ。

 

 

「残念だったわね。フェリックス様は違うのよ」

「???」

「なんだなんだ? さっきから何言ってんだ??」

 

 

ラムの言っている意味がいまいち理解出来ず、理解が及んでない2人に呆れつつ、目配せをしてレムに促した。

 

 

 

「スバル君、ツカサ君。その……フェリックス様は男性です」

「ニャッ♡」

 

 

 

 

――――そして、時は止まった。

再びあの狭間の世界に強制的に飛ばされたのか? と思える程、静寂な時間の流れ。フェリスの猫ポーズとウインクをそのまま鑑賞し続けて、レムの言っている単語を頭の中でフル回転させて意味を調べ尽くした。

 

男性、つまり男性である。

同性相手である。……ひょんな時に発生するであろうラッキースケベイベントがあるとするなら、フェリスにそれがあったとするなら……、そこには見覚えのある光景が広がっていて……。

 

 

「お、男――――――ッッ!!」

「これは、素直に驚きました。狙ってやってたりしてます?」

「フェリちゃんはフェリちゃんの似合う格好をしているだけだにゃー! って、スバルきゅんとツカサきゅん、実に対照的な反応で、ここまであからさまだったら、スゴクしてやったりな気分だにゃ♪」

 

 

 

男である事にあまりの衝撃にあんぐりと口を開けてしまってるスバルと、純粋に、ただ純粋に男である事実に驚きを隠せないツカサ。

 

どちらが好意的な印象を受けるのか、どちらが、想っている立場の者から見れば、より好意を寄せるのかは、言うまでも無い事かもしれないが、生憎レムの許容範囲内は相応に広い。

ヤキモチは妬くかもしれないが、基本スバルなら何でも問題なし。傍においてくれるなら。

 

そして、ラムは満足のいく回答だったのか、さも当然、と言わんばかりに胸を張っていた。

 

 

 

「るっせーーーよっっ! 普通は驚くし傷つくんだよっ! 貴重な猫耳枠が男だなんて衝撃的過ぎるだろうが……」

「だが、そこがいい! こう考えてみるんだ、猫耳可愛かったら、男でもいいんじゃないか! と」

「オレは至ってノーマルなのっ! そんな性癖は無い! どんだけ可愛かろうが、中身が乙女だろうが、身体が野郎な時点で無理だ!」

 

 

涙ながらに力説するスバル。

そして、何処か安心した面持ちなレム。

 

エミリア第一主義を掲げているから、レムは第2夫人の座でも全く問題ない――――と常々考えているのだが、その枠内に男性が、同性愛が生まれてしまうのは、流石に複雑過ぎるから。

 

 

「少しは安心できた? レム」

「っっ、れ、レムはそんな。……それに、姉様もでしょう?」

「ラムは最初から何も心配なんかしてないわ」

 

 

ラムはラムで、本人にこそまだ打ち明けてはいないが、スバルやレムには堂々と好きである、と言う事を告げている。

 

なので、例え本人を目の前にしようと、誤魔化したり躊躇ったり、否定したりする気持ちはサラサラ無かった。……使う言葉はそれなりに選んでいる様だが。

 

 

「ほらほら、何時までも泣いてないで。完治が遠のくよ?」

「うるせーよぉぉ、……何で、平気なんだよ、兄弟ぃ……」

「何でそこまでショックなのかがオレには解んないよ、逆に。アレだけエミリアエミリア言ってたのに、一筋はやっぱ嘘?」

「そんなんじゃないんですっっ! これは男のコとしてのロマンを、夢を、打ち砕かれた不可視にして、防御不能な一撃なんです……」

 

 

しくしく、といまだ泣き続けるスバルに、事を起こした張本人が手招きをした。

 

 

 

「さ、続きするにゃんっ! 次もドキドキしててくれて良いよ~~?」

 

 

 

あっけらかんとしたフェリスからの言葉には、流石にツカサの時の様にはいかない様だ。

涙を拭い、湿った裾を擦り付け、でん、とした表情で。

 

 

「うるせぇ!! さらっと終わらせるぞ!!」

「にゃはははは! あ、今日一緒にお風呂入る? 念のための確認しとく??」

「みねぇし、しねぇよ!!」

 

 

 

 

 

 

波乱万丈な治療現場だったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……治療受けてた筈なのに、なんか、すげぇつかれた……」

「それは仕方ないです。スバル君。身体の中に溜まったカビやゴミを一気に押し出したわけですから」

「……もちっと良い言い方ねぇかな?」

 

 

フェリスは退席、同じくツカサとラムも退席し、残ったのはレムとスバルの2人。

 

ツカサは恐らく今日も―――カルステン家の中庭にてヴィルヘルムと共に過ごしている事だろう。……先の王選での影響は、当然カルステン家にも相応に轟いているらしく、ある意味引っ張りだこなのだ。

 

 

「……ほんとスゲーよな兄弟は」

「スバル君?」

「いや。……それに引き換え、オレは 兄弟がいなきゃなーんも出来ない所か、辺り構わず突っ込んで、ガキみたいに喚いて、エミリアたんに完璧に愛想つかされて……、そんな未来しか想像出来ねぇよ」

 

 

遠い目をしてそう呟くスバル。

レムも何を言っているのかを直ぐ理解した様で、ニコリと微笑んで答えた。

 

 

「スバル君もレムと同じです。レムにとって姉様は手の届かない存在で、いつもいつももっともっと凄いですから。きっと、スバル君もレムと同じ様にツカサ君に感じているんですね」

「いや、流石にそのラム至上主義の域までは行ってねぇなぁ……、ツカサと違って、ラムちー最強モード見た事ねぇから」

 

 

視線を下にして、そしてレムの顔を視ずにスバルはレムに聞いた。

 

 

「自分の事を下げてる、卑下してる、って事くらい解ってる。……実際さ、レムも思うだろ? 支えて貰わなきゃ、情けねーオレしか残らねぇって」

「……そうですね。確かにその通りだと思いますよ」

「ストレート来たよ、結構クルな!?」

「――――ですが」

 

 

レムは、笑ってスバルに言いかけた。

 

 

「レムも同じです。スバル君とツカサ君が兄弟で無かった場合は知り得ません。今のお2人しか見た事無いのですから。――――それに」

 

 

真っ直ぐ、スバルを見据えて言葉を紡いでいく。

レムの言葉で心が洗われる様な、そんな感覚がスバルにはあった。

 

 

 

「過程を思う、と言うならば、例えスバル君がどんな人だったとしても、例え支えが無かったとしても、レムはスバル君を素敵だと思ってますから。……ここにこうして、スバル君と一緒に居るのもレムがそうしたいから、そう思っているからです」

「……そっか。やっぱレムはほんとすげぇや……。ちっと突き放され気味になっただけで、鬱々してるオレとは違う」

「そんな事ありません。エミリア様もきっと、スバル君が元気になるのを待ってくれてるんだと思います。……元気になって、それからまた一から積み上げていけば良いのだと、レムは思いますよ」

 

 

 

スバルは、この時―――同時にエミリアとの事を思い返した。

 

叱られた、怒られた。ただの意地。子供染みた意地をユリウス相手にしてしまった事もそうだが、やっぱり一番堪えたのはロズワールとエミリアが屋敷に戻り、自分は残されると言う事。

傍に居られない、と言う事。

 

 

エミリアの為に何かしたいから一緒に居たい、と先走った。

 

 

 

そのエミリアの為の行動など、何一つ出来てない分際で。

 

 

 

 

《それは自分の為でしょう? 私はスバルに一度もお願いしてない。何かをして欲しい時は、いつもお願いをしているもの。……今回のは全部、全部、約束を破ったスバルが………》

 

 

 

そう、全て自分が悪い。

それは頭で解っていても、あの時ユリウスに最後の最後まで食って掛かった時の、子供染みた意地が、それを認めようとしてくれない。

 

 

ただ、唯一それに歯止めをかけてくれたのが……ここでも兄弟と呼ぶ彼の存在だ。

 

 

ツカサが居るから。

自分を理解をしてくれる人が傍に居るから……、何とか気を立て直す事が出来たのだ。

 

 

 

《まずは、身体を治して。………それが終わったら、もっとしっかりと話しましょう。だから、今はこれで終わり(・・・)

 

 

 

 

だけど、エミリアの口から、《終わり》と言う言葉だけは――――どうしても聞きたく無かった。

 

 

《私は……まだ、期待して良いんだよね?》

 

 

終わりと言う言葉を聞いたから、聞いてしまったから、スバルの精神状態はまた不安定になる。

 

 

 

《スバルは……スバルも、私を特別扱いしない、って。……普通の女の子と同じように見てくれるって……》

 

 

 

返答は何一つ出来なかった。

無理だから。

 

 

エミリアを想う気持ちに嘘偽りはない。

彼女が好きで、彼女のお陰で、立ち直る事が出来た。

 

そして、今は別の男が、その役目を担ってくれている。

 

誰かに寄りかからないと生きていけない自分は、誰にも頼りにされない、問題ないかの様な自分は……やはり、ユリウスが言う様に、相応しくない存在だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様々な事が頭の中を駆け巡る―――が、こうしてある程度は復活出来たのだ。

いつまでも腐る訳にはいかない。

 

 

「―――自分にとって、今の最善を尽くす。それが一番。……間違いねぇよな? レム」

「! はい、その通りだと思いますスバル君!」

「確かに、クルシュさんのトコで治療中は動けねぇし、名誉挽回なんて、ちゃんちゃら無理だ。……なら、少しでも強い男の子になる!! それしかねぇ!! と言う訳で、オレも兄弟と混ざってボコボコにされてくる!!」

 

 

勢いよく立ち上がるスバルにレムは苦笑いをした。

 

 

「ボコボコって……。怖く無いんですか? スバル君。また同じ様な怪我をしちゃう事が」

「やーー、それはあくまで比喩発言ね?? マジにボコボコにはされたくないよ?? 手足折られて、歯も折られて、気絶するまでやられて、トラウマ以外のナニモンでもねーからな。………ま、あれだ! ヤル気出たから、その勢いのままに、2人の邪魔でもしてやろうっ! ってな」

「邪魔、と言うよりは剣の稽古を共に、と言った方が良いと思いますよスバル君。そして、レムは大賛成です」

 

 

沈んでいる顔を見るよりは、当然前を向くスバルの方が何倍も良い。

どんなスバルでも、レムは愛す事が出来るが、それでもやっぱり一番は、前を見ている姿だ。

 

 

レムは窓から庭を見てみる。

最愛の姉は、その最愛の人と共に在った。

剣を携え、そしてその後ろに居る姉の構図。……別に暴漢や魔獣に襲われているワケではないが、姉の前に立ち、守ってくれている様な構図。

 

自分の傍には、自分の最愛の人が傍にいてくれている。

 

レムは自分が幸せだ、と改めて実感するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか。卿も剣を振るか」

「はい! 身体がなまってきたんで、ちょっとお邪魔でなかったら~~、になりますが」

「邪魔とは決して思うまい。卿にとっても有意義な時間となるだろう事は私にもわかる。……それはお互い様だがな」

「―――やっぱ、スゲーっスか?」

「当家に迎え入れて、相応に尽くしたいと思える程にな」

「おぉぅ……、まさかこうも堂々と引き抜き発言を貰うとは……」

「ふふ。まぁ、戯言だ。忘れてくれて良い。……だが、彼のその力を視て、剣に見惚れたからだけではない、と言う事は伝えておこう。……私は卿が羨ましくも思うよ、ナツキスバル。良い背中を追い求め続ける事が出来るのだからな」

 

 

クルシュに許可と木剣を貰い、それを手にスバルは庭園へと向かう。

 

ツカサも今剣を振るっている。……それは1人だけで素振りの類をしているのではなく、ちゃんと相手が居るのだ。

 

 

それが、ヴィルヘルム。

 

 

前回はただの御者だと思っていたかの老紳士は、このカルステン邸剣術指南役との事だ。

 

 

 

 

「ん? スバル??」

「兄弟! 精が出るな!! てな訳で、オレも混ぜてくれたらありがたい」

 

 

木剣を手に、ブンブンと手を振るスバルを見て、ツカサも笑みを浮かべて手を振る。

 

 

「また無様に地を這い擦り、舐め回しにきたのね、バルス」

「やっぱ、容赦ねえよなぁ、姉様‼ トラウマ抉るのヤメテ」

 

 

スバルの怪我を、その原因を知っているラム。

それなりに回復したかと思えば、早速剣を握ると言うのだから、やっぱり色んな意味で図太いのだろう。

 

 

「オレは構わないけど、ヴィルヘルムさんは……?」

「ええ。私も構いませんよ」

「!! じゃ、ご指南お願いします!」

 

 

一朝一夕、一長一短で強くなれると思っている程子供染みてはいない。

 

だが、クルシュが言う様にこのデカすぎる背を、そして少しでも強くなれるかもしれない環境を、十全に利用し、糧にすれば良い。

 

 

先の王選では、餓鬼過ぎた。それも質の悪い糞餓鬼だ。

それが大人の場で、駄々をこねて、結果があの体たらく。

 

 

頭を冷やして、自分が出来る事をやる。自分で決めて、最後までやり遂げて見せる。

 

少しでも前に、そしていつかは、飛び抜けて出る為に。

 

 

スバルは木剣を握り締め、手加減抜き、正真正銘の全力で振るった。

 

 

「うなっ!!」

「ふむ。少々力み過ぎです。手、足、首、腰、それと顔に」

 

 

剣を手足の様に扱う事が出来ると言うのはこの事なのだろうか。

いや、手足の様に扱えたからと言って、ここまで出来るとは到底思えない。

 

 

掌で踊らされる剣撃。

 

 

曲りなりにも、剣を交えた事はそれなりにあるスバル。

それも命の危機とも思える場面で交えた事があるからこそ、解る。

 

他人の強さを推し量れるだけの能力があるワケも無いと言うのに、このヴィルヘルムと言う老紳士は底なしに強い、と言う事が解る。

 

 

先ほどの指摘通りの位置、頭、喉、鳩尾、金的。人中とも言える正中線に連なる人体の急所を優しく撫でつけ……それでいてとんでもない衝撃となって吹き飛ばされた。

 

 

「ぐえっっ」

「最後、少々雑念が混ざりましたな。剣を振るときは、それだけを考え続ける事です」

「は、はい……………」

 

 

大の字に倒されて、返す首でツカサの方を見た。

ラムとレムと、そしてツカサと、こちら側を見ているが、時折慌てたり、笑ったり、嘲笑ったり、な様子が見て取れる。

 

聴くまでもない、ラムの辛辣なコメントが響き、それを諫めているツカサの構図。レムは姉様至上主義ゆえに、あからさまな否定は出来ないだろうから、ただ笑うしかないのだろう。

 

 

だが、やっぱり一番目がつくのは、ツカサの様子である。

 

このトンデモナイ老紳士相手に長時間剣を振るっていて……疲れてる様子が見れないのだから。

 

 

 

「―――また、雑念が芽生えましたな?」

「あ、バレちゃいました……?」

「ふむ。……気持ちはわかります。私も剣においては凡人の域。……かの姿は眩しかろうと存じ上げます」

「冗談でしょう? ヴィルヘルムさんが凡人とか。なら、オレ塵になっちゃいますよ?」

「それはそれは、自分を低く見過ぎている様だ。……ですが、事実です。才能が有れば私はここまで剣を握り続けてこれなかったでしょう。それに、かの逸材と相まみえる事が出来たのも、私が凡人だったからこそ。――――そう悪い物ではありますまい」

 

 

ヴィルヘルムは一瞬だけ、視線を向けて……そしてスバルにへと戻した。

 

 

「頂きの見えぬ相手とはいえ、その背は直ぐ傍にあります。……それを師とし、何処まで昇華する事が出来るのかは、スバル殿次第。少なくとも、私の域を申すのであれば、剣に半生を捧げる覚悟が必要でしょうな」

「――――成る程。兄弟見ながら、ひたすら無心で剣振ってれば、より高く行けるかもしれない、開眼‼って事なんですかね?」

「ふむ。私を例に挙げるとするなら……1つ訂正を」

 

 

ヴィルヘルムは、剣を手に持って、その刀身を見据えながら、スバルに言った。

 

 

 

「私は無心で剣を振った事はありません」

「……じゃあ、何を考えてたんです?」

「――――そうですな。……ただひたすらに、妻のことを……」

 

 

 

想い人が傍にいるから頑張れる。

それはスバルにも十分通じる想いの強さだ。

 

その点兄弟は半端なくスゴクて、あっさりと先に行ってる超人かもしれない……が、不思議と羨んだり、妬んだりと言った感性は無い。……敵じゃなくて良かった、と言う気持ちは非常に強いが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――そして、その日を境にスバルは剣に勤しむ事になる。

 

 

エミリアを想い、傍に居てくれているレムを想い、そして同じく共にいてくれるツカサやラムを思う。

 

 

想いの意味合いが少々違うが、沢山思う所があるのは良い事だ、と割り切って。

 

こうして、どんどん近付いていける筈、一歩ずつかもしれないが、確実に前へと進める筈。

 

 

 

……大切な人の、想い人の隣へと立てる筈。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――そう……思っていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけど、何の前触れもなく………破滅は突如現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――眠れ……我が娘と共に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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