Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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自分で書いたのに、《え……………?》 って思っちゃうセリフだったww


2人の英雄

 

 

――――今、何て言った?

 

 

スバルは、己の耳を疑った。

どうしようもない。誰かを傷付ける事しか出来ない自分を……アイシテイル?

 

何を言っているのか理解が出来なかった。

或いは、まだ五感の一部をあの逃げてしまった世界に置いてきてしまったのか? とさえ思えてしまう。

今目の前に見えている少女……レムも、幻なのではないか? とまで思ってしまう。

 

 

だが、レムは真っ直ぐとこちらを見据えている。

その顔は仄かに赤みが掛かり、瞳は潤みを見せていた。

 

 

「―――何度でも言います。レムはスバル君を愛しています。お疑いの様なら、スバル君の好きな所を、愛するに至ったまでの過程として上げていきますね。……とても、時間がかかってしまいますので、極々一部をご紹介いたします。続きをご所望されるのであれば、スバル君の時間が許す限り、レムは言いますので」

 

 

スバルが疑っている事を、レムではない、と思っている事を……、レム自身が察したのだろう。疑いの余地がない、と言わせるかの様に続けた。

 

 

「レムはスバル君に頭を撫でられるのが好きです。掌と髪の毛を通して、スバル君と通じ合ってる気がするから」

 

 

1つ、1つ言葉を口にする度に、レムの大きく見開かれた瞳から、雫が溢れ出てくる。

 

 

「レムはスバル君の声が好きです。言葉をひとつ聞く度に、心が温かくなるのを感じるから」

 

 

まやかしではない、幻でもない。

この場にレムは居る。スバルの傍に居る、そう告げ続ける。

 

 

「スバル君の目が好きです。普段は鋭いんですけど、誰かに優しくしようとしているとき、柔らかくなるその目が好きなんです」

 

 

好き、好き、好き……、幾つ上げてもキリが無い程に。

 

これは、レムもラムも同じだ。

共感覚で繋がっているからこそ、解る事もある。

愛おしいと言う感情。好きだと言う感情。そこに理由などはないかもしれないが、敢えて言葉にするのであれば、それこそ湯水のごとく湧いて出てくる。

 

 

好きな所?

 

 

他にも沢山だ。

 

 

目も耳も指も、その歩き方も……全てが好き。

 

 

 

 

「……すごく胸が痛くなるほど、好きです」

 

 

 

 

両の指では数えきれない程の好きを重ねた所で、スバルが声を上げた。

 

 

「オレは、オレはそんなヤツじゃない。……レムに、そこまで想ってもらえる様なオレは……まやかしだ」

「声を掛ける事が出来ます。触れ合う事が出来ます。……今のレムには、スバル君がまやかしだなんて思えません。思う事も、決してありません」

 

 

レムの瞳から涙が零れ、一筋流れ出る。

だが、それをもスバルは否定する様に訴えた。

 

 

「オレは、オレが、一体何をしてきたか、今レムに話してやるよ……! これは、これくらいは、話す事が出来る(・・・・・・・)。出来るんだから」

 

 

スバルはそう言うと、ギュっ、と胸を掴んだ。

心臓を己の手で握りつぶす勢いで。

 

 

「オレのせいで、ツカサが苦しんだ! 血ィ吐いて、苦しんで倒れて、……まるで死んだ様になるまでに、追い詰めた。……レムの大好きで、至上な姉のラムを泣かせた! だから、オレは……オレは、カッコつけて、いっちょ前にカッコつけて言ったんだよ! 《お前の代わりになれるなら》ってな!!」

 

 

掻きむしり、左胸に当てた拳を振り下ろす。

 

 

「するとな……? 奇跡が起きたんだよ。レムも知る様に、ツカサの力はほんと未知数なんだ。……アイツが、アイツの意思(・・・・・・)じゃないナニカが、オレに機会をくれたんだ。……ツカサが体験してきた事を、感じた事をオレも体験させてやる、って」

 

 

ぐ、ぐぐ、と握り拳に力が入り続ける。

爪が掌の皮を破り、血がしたたり落ちてきていた。

 

 

「それで、それで思ったんだ。……オレも、おれも、ツカサと……ツカサと同じになれば? ………同じだけの重みを、リスクを背負えば、少しでもアイツの為になるんじゃないか。って餓鬼見てぇな自己満足引っ提げて。そんな事しても、ツカサが喜ぶワケねぇ、って解ってたのに。……また、くだらねぇテメェの自尊心(プライド)を満足させたい、それだけで……、オレは、話しに乗ったんだ」

 

 

握った拳を開き、そしてスバルは両手を見た。

両手を見ながら……レムに聞く。

 

 

 

「それで……どうなったと思う? 何かあったと……、何か出来たと、レムは思うか……? オレは、オレは………何にも出来なかった(・・・・・・・・・)

 

 

 

めいっぱい広げた両手を己の顔面へと激しく叩きつける。

そして、その勢いのままに、頭を掻きむしった。

 

 

「アイツは、アイツの精神は、身体の死以上の苦しみを、その身で味わってた! 身体が粉々になっても、無茶苦茶に歪まされても、死ねない。……アイツがオレのせいで、繰り返す度に……同じだけ苦しんで……苦しんで……、それを、オレは体験して………逃げたんだ(・・・・・)

 

 

 

最後の最後で、引き揚げられた。

死ぬ一歩手前で、精神が死ぬ一歩手前で、引き揚げられた。

 

あの時————スバルは殺してくれたなら、とは一切考えてなかった。

 

ただただ、安堵感。終わってくれたと言う安心感。生きてて良かったと思う安らぎ。それだけしか考えてなかった。

 

 

早く終わってくれ、戻してくれ、もう嫌だ。

 

 

 

そんな自分の中の本能の部分が叫ぶのを感じて―――元の世界に戻ってツカサを目の当たりにした。

 

 

 

「オレの性根は……何も変わっちゃない。あの爺さんも、実に的確に剣を振るう時1つ1つ指摘をしていた。そりゃ、そうだ。見抜いていたんだ。オレは、自分を正当化する為だけに、剣を振っていたって事を。やってるつもりだった、ポーズだったって事を。――――剣に一生を捧げる覚悟を持って振っていた爺さんを、オレは侮辱してたんだよ! 何もかもが薄っぺらで、自分可愛さで逃げて………小さくて卑怯者。それが……オレなんだ」

 

 

 

虚ろな視線をレムへと向けた。

 

 

「そんなオレを愛する? オレは……レムに、他の誰かに、愛してもらえる様な男じゃない。――――だから、どれだけレムが好きだって言ってくれても……、オレは、オレが大嫌いだ。……それが、あの一瞬で全てわかった。……解らせてくれたんだ」

 

 

涙が流れる。どうしようもない自分と対面し、打ちのめされてしまった。心を折られてしまったから。

 

 

「―――レムは知っています」

 

 

そんなスバルをレムは真っ直ぐに見据えて、一歩も怯まずに返す。

 

 

「スバル君が、どんなに先の見えない暗闇の中でも、手を伸ばしてくれる勇気があるひとだってことを」

 

 

レムは続けた。

どれだけ言っても、何を言っても、途切らせる事はない。

 

 

「レムは知っています。スバル君がとても優しい人だと言う事を。逃げようとした事だって、ツカサ君を想っての事です。これ以上ツカサ君を苦しめない為に、逃げようとしていたんだって。それは、優しいからです」

 

 

ツカサが自分のせいで傷つく?

もしも、スバルが利己的な男なのであれば、他人の痛みが解らない人間なのであれば。見捨てるなんて容易い事だろう。表面上だけで取り繕う事だって出来る。

 

何よりも、この傷は目には見えない。どんな高名な治癒術士でも完治出来ない精神の最奥の事であり、誰にも証明しようがないのだから尚更だ。

 

 

「レムは知っています。少しレムが妬いてしまいますが、スバル君がエミリア様の事が大好きだって事を。大好きでいつも傍に居たくて、居たくて、エミリア様に会う為には、王城にだって忍び込む。……それ程までに好きだって事を。エミリア様がレムは羨ましいです」

 

 

エミリアに対する好意も当然知っている。

王城に入った事だってそう。それに何より、この1ヶ月と言う期間で幾度も見てきたから。

 

 

「その想いを押し殺してでも……スバル君が大好きなエミリア様への想いを押し殺してでも、ツカサ君が傷つかない道を選ぼうとした。――――レムは、スバル君が優しいからだ、と思っています」

 

 

 

スバルの中で、様々な単語が踊り狂う。

エミリアの事もそうだ。

確かにエミリアの事は今でも想っている……が、自分の本性を、本質を、その性根を見た瞬間から、その恋慕の情は掠れてしまった。

 

エミリアを守ると言う気持ちはある。……だが、それをするためには自分は不要な存在だと思えたからだ。

ツカサがいれば、守ってくれる。どんな敵からでも守ってくれる。……そのツカサを自分が殺そうとしているのだ。

 

 

「―――ゆうき? やさしさ……?? にげた、おれが……? くるしめてる、オレが? どうして、そんなことを……?」

 

 

勇気。勇気。勇気。

優しさ。優しさ。優しさ。

 

 

それらが欠片でもあるなら、あんな事はしないだろう。

 

 

真に覚悟を見せて、隣に立って。……1人じゃ無い、と言えるくらいの男になるだろう。

 

自分は、自分で選択して置いて、最後は逃げ出したんだ。……いや、最後の最後、死ぬ前に助けてくれるんじゃないか? と頭の何処かでは思っていたかもしれない。

その程度の覚悟しかない自分に勇気なんて言葉はあまりにも不相応だ。

 

 

「スバル君が、自分の事を嫌いだと言うのなら、レムはその倍。スバル君の良い所を口にします。レムが知って欲しい事を知って欲しくなりましたから」

「……まやかしだ。レムは、本当のオレを知らないから。エミリアに対してだって、そう……だ。餓鬼だから、理解出来なくて、結果……怒らせて……。………そう、だ。何なら、またアイツ(・・・)に頼んでレムに……見せて貰ったって構わねぇ。餓鬼みてぇに、無様になっちまったオレを。だから―――絶対に、絶対にレムが間違ってる(・・・・・)!!」

 

 

 

―――間違っている?

 

 

その言葉が、レムの一線を超えてしまう結果へと導く。

 

 

 

「レムが、レムが間違ってる? スバル君が、レムの何を知っているんですか!? レムがどれだけ思っているかを、どれだけスバル君の事を想っているのかを、一体どれだけ知っているって言うんですか!!? スバル君は、スバル君は……、自分の事しか(・・・・・・)知らないっっ!!」

「――――ッッ!?」

 

 

正直……レムに何を言われようとも、どういわれようとも、折れてしまった心は治らない。折り目が一度でもついてしまった心は、もう元に戻らない。

そう思っていた筈なのに、レムの反射的に上げられた声が。荒げた声に……完全に気圧されてしまっていた。

 

 

「なんで、だ? ここまで……どうして? 何回でも、何十回でも、何千回でも言ってやる。……オレは、逃げたんだぞ。自分のせいなのに、逃げたんだ。アイツの苦しみ解り合うつもりで手を出して……逃げたんだ。……今も、逃げようとしてる……なのに、どうして……」

 

 

何故自分の事を信じられるのかが解らなかった。

至る所で、見るのは、かの男の姿。

スバル自身は何もしてない。ただ、憧れの男の背中を見て、異世界チート能力を身に纏い、多少なりリスクを背負っても、それを笑って乗り越える、本物の主人公(ヒーロー)の傍で、その仲間(パーティ)として、ただ……見てきただけだった。

 

賞賛されるのは、主人公(ヒーロー)であって、情けない自分(モブ)ではない。

 

 

 

「―――だって、スバル君はレムの英雄なんですよ? あの薄暗い森の中で、暴れていた時。命を懸けて、自分自身の身体も厭わずに……助けてくれました。自分が、自分が、自分が……と、ずっと自分の事しか見てこなかったレムに、周りに目を向ける様に教えてくれたのも、スバル君です。今のスバル君の様に、自分しか見えてなかった。……スバル君は、それを、見方を教えてくれた人なんです」

 

 

魔獣騒動の時。

 

鬼化をして、ウルガルムを、ギルティラウを、岩豚を、無限とも思える闇の大群を迎え撃とうとした時。

傷つくのは自分だけで良い、と自分の事しか考えなかったあの時。

 

 

 

―――自分が傷つく事で、自分以上に傷ついてしまう姉の存在を、解らせてくれた。

 

 

 

 

 

「あの時……スバル君は、戻ってきてくれました。生き残ってくれました。温かいままで、レムの元へと戻ってきてくれました。……沢山の事を教えてくれました。……笑いながら、未来の事を話す歓びを教えてくれました。……未来なんて無い。代替品だと劣化品だと自分の世界の中でずっと止まっていたレムを、そのレムの時間を、あの炎の夜に、凍ってしまったレムの時間を、スバル君が溶かしてくれました。……姉様にとっての英雄はツカサ君です。……でも、でもでもでも、レムにとっての英雄は、スバル君なんです。スバル君が、一番なんです。……だから、スバル君が信じられなくなっても、レムは信じています」

 

 

両手を広げて、レムは力強く断言する。

 

 

 

「レムは――間違えてません。あの瞬間に、あの日の朝……、鬼がかっている(・・・・・・・)あの朝。どれだけ救われたのか、レムがどれだけ嬉しかったのか、……きっとスバル君にだってわかりません」

 

 

 

ぴしっ―――。

 

何かが、何かにヒビが入った様な気がした。

欠けて、割れて、砕けて……、その先にあるものを、スバルは見た。

 

 

―――ずっと、ずっと勘違いをしてきた。レムは、レムなら、逃げようとしている自分をその通りにしてくれると。それが最善だから、と言う意思を尊重してくれると。

 

 

 

だから、レムに打ち明け、そして依頼までしたのだ。どの面下げて逃げる相手を守るんだ、と今なら思うが、それでもレムなら、と思っていた。

 

 

―――レムなら、レムだけは自分が堕落していくのをどこまでも許してくれる思っていた。

 

 

スバルは知っている。

ツカサはこの判断を決して許さなかっただろう。

 

あの苦しみを知って尚、スバルの事を優先させたほどの男だ。だから、全てを擲って逃げる事を…………ツカサの為に(・・・・・・)と言う言葉を使う以上は、決して許さないだろう事を。

 

だから、だからスバルはレムに……。

 

 

 

―――でも、それは間違いだった。

 

 

 

 

「レムは信じています。レムは願っています。直ぐにはムリでも、あの皆と笑い合って、笑顔で未来の事を話していたスバル君が戻ってきてくれる事を。……必ず戻ってくる事を」

 

 

 

―――レムだけは、スバルの甘えを絶対に許さない。

 

 

 

「レムは想っています。例えどんな状況に陥っても……レムの元へ戻ってきてくれる事を。―――レムの英雄は、必ずレムの元に戻ってきてくれると」

 

 

 

レムはスバルの身体を抱きしめた。

 

 

 

「オレは………傷つけるだけの存在だ」

「レムがそんな事はさせません。スバル君の意に反する事を、レム自身がさせるワケがありません」

「オレは………弱い存在だ」

「レムだって同じです。寄りかからなければ、生きていけない程ですよ?」

「オレは……逃げた。逃げて逃げて……オレはオレが大嫌いで……」

 

 

 

がくっ、とスバルは膝から力が抜けて、地に膝を付いた。

レムは、そのスバルの額にそっとキスをする。

 

 

 

「レムは、スバル君を愛しています。逃げたいと思う気持ちを咎めたりなんかしない。……レムの元に、戻ってきてくれるのなら」

 

 

 

スバルは再び涙を流した。

 

 

「こんな、情けないオレで……良いのか? お前の大切な姉を、苦しめる存在かもしれないんだぞ……?」

「レムはスバル君じゃないとダメなんです。……英雄が姉様を苦しめる存在なんかじゃありません。レムの英雄はスバル君なんです」

 

 

レムはそう言うと、スバルを解放していった。

 

 

 

「目に見えない傷を、時間さえも超えた世界で感じた苦悩や挫折。……それで折れてしまった自分が許せないなら―――今、ここから始めましょう」

「……なに、を?」

「レムの止まっていた時間をスバル君が動かしてくれたみたいに。スバル君の時間を、今から、今この瞬間から動かすんです」

 

 

 

レムは再び両手を広げる。

 

 

 

「今、この瞬間は時は止まっていません。レムが保証します。だから、ここから。一からではなく……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

温かな一陣の風が2人を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――ゼロから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは。

 

 

 

動くまいと思っていた心が。

治るまいと思っていた心が。

 

 

 

 

――――今この瞬間に変わったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼロから始める2人の決意。

同じく、始まりを告げるかの様に、2人の間には一陣の温かな風が吹き……緩やかに2人を撫でていた。

 

 

それは呪詛などでは無く、間違いなく祝福の風。

 

 

 

 

 

そして―――その風はもう2人に届くのだろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツカサはラムの英雄よ。……何度でも言うわ。ラムはツカサの事が好き」

「っ……、っっ………」

 

 

薄く日の光だけが照らす部屋で、一世一代の告白を行ったラム。

そして、それは今度こそ捕えて逃がさない、と言う決意にも満ちていた。

 

 

 

屋敷でも幾度もあったから。

直接的な言葉にした事は無い。遠回しに、遠回しに。……それが良く無かった。

 

ラム自身もそれは解っていたのだが、踏み込んでいなかった。

 

それは、恥ずかしいとか、そう言う幼稚な類のモノではない。

言葉を交わす度に、触れ合う度に、その瞳の奥に揺れる小さな炎が……黒い炎が見えた気がしたからだ。

 

 

その炎が何を意味するのか、それを知る事も出来た。

 

 

 

 

―――ツカサは、何かに怯えている。何かを恐れている。

 

 

 

 

正直、恐怖と言う感情はとてつもない力を持つこの青年には似つかわしくない感情だ。

 

 

 

白鯨を単独撃退したのを始め。

◇ 王都でエミリア(ついでにスバルも)を腸狩りから救い。

◇ ロズワール邸では、領民の村を魔獣の群れから救い

◇ 王国で最高位の勲章を宛がわれ。

剣聖(ラインハルト)が認め、剣鬼(ヴィルヘルム)が目を見張り、戦乙女(クルシュ)を魅了し、最優(ユリウス)をあしらう。

 

 

 

 

そんな男の何処に恐怖の弐文字が入る隙間があるのだろうか。

 

理由は解らないが、ラムは直感していた。そして、それが間違いないであろう事も同じ理由で解っている。

 

 

「ラムがそう言ってくれるのは嬉しい。……凄く嬉しいよ。空っぽだったオレに。……本当に嬉しい」

 

 

ツカサは笑っている。

だが、その目の奥は決して笑っていない。怖れを抱いている。恐らく本人もそれには気付いていない様だ。

 

 

「でも……、ラムはひょっとしたら、あの時―――……一緒に戻った時の事(・・・・・・・・・)。それがあるんじゃないかな?」

「ラムの全幅の信頼の事?」

「……うん。そう、だよ。ラムがあの時から、オレの事を信頼してくれてるのは解ってた、凄く感謝をしてくれた事も。ラムが言う通り、別にスバルと自分だけで戻っても良かったのに、ラムを連れて帰ったのは正直オレのエゴだった。……だから、それを恩義に思う必要は……」

 

 

そこまで言い切った所で、ラムは思い切り顔を近づける。

鼻先が当たるか当たらないか、ほんの僅かな隙間を残してピタリと止めると。

 

 

「このラムが、一時の感情だけで。大恩で、誰を愛するかが決まる。……心を許すまでに至る。そんな単純な女なのだと思っているのかしら? 見縊らないで」

 

 

また、ラムに言われた言葉だ。

ラムを見縊るな。

易い女ではない、と言わんばかりに。

 

 

「確かに。レムを……、ラムを救ってくれた事は感謝している。感謝してもしたりないくらいよ。―――仮に、ツカサがあの時の恩を、このラムの身体で返せ、と言うなら、躊躇わずそうしていた。ラムと婚儀を結べ、と言われたとしても、躊躇わずそうしていたわ。―――ツカサに言われたから(・・・・・・・・・・)ラムがそうした(・・・・・・・)のであれば、ツカサの言う通りだと言える」

「い、いや………」

「だから」

 

 

ラムは、自身の鼻先をツカサの鼻先でつんっ、と押して下がらせると、その黒い瞳を真っ直ぐに見据えて言い切る。

 

 

 

「―――誰を愛するか、何を愛するかまで、ツカサに口出しされたくないわ。ラムはラムの意思で、恩義等関係なく、ツカサに惚れたのだから。切っ掛けはそうだったかもしれない。ロズワール様に命じられた事でもある。ツカサの信頼を得る様に、と。でも、短い間でも一緒に過ごしてきて、ラムの心が動いたのは紛れもない事実よ」

 

 

ラムは非常に男らしい……とでも言えば良いのだろうか。

筋の通り方は流石の一言であり、ツカサは何も言えなくなってしまった。

 

 

何に見惚れるか、それは確かに時間じゃない。

 

 

ツカサにだって言える事だから。

ラムと王都で知り合い、言葉を重ね……軈て、あの思い出したくもない場面へと当たる。

何も感じない相手なのであれば、あのまま戻っていても問題なかった筈だ。

 

それでも、忘れ去られる世界であっても、無かった事になる世界であっても、ラムのあの絶望は、悲鳴は、慟哭は、魂にまで刻まれている。記憶の奥底にまで燻り続けるであろう事は理解出来ていた。

 

 

あの時のラムが笑顔だからこそ、ツカサの心は晴れやかなのだから。

 

 

 

「………で、でも。ほら。ラムはロズワールさんの事も、想ってるんじゃなかった……かな? 直接聞いた訳でもないけど、初めて目にした時のラムの顔は、覚えているから」

 

 

 

ロズワールはラムの主だ。

主従関係ではあるが、ただの貴族と使用人……と言う間柄とはツカサも思ってはいない。

 

ロズワールは何処か読めない表情……そもそも、あの化粧故に表情を読取る事など出来るワケが無い。

唯一読取れた場面と言えば、勿論思い出したくない場面ではあるが、あのレムが犠牲になった世界での事だ。

 

レムを失った事、ラムの慟哭。それらを受けて、何も感じない様な男では無かった事は解った。

スバルを見るあの目――――ベアトリスが止めなければ、あの地水火風、4属性の超高密度なマナの球体は、スバルに迫っていただろう。

それは恐らくラムが止めるまでもなく。

 

 

「ええ。隠すつもりは無いわ。……ラムは、炎のあの日。故郷を魔女教徒に焼かれ、レム以外を失った。ラムの角も失ったあの日に、ロズワール様に助けられて、連れられて今日がある。信頼と信用、親愛。ロズワール様にも向けられている。ラムの全て―――だった(・・・)から」

「っ…………」

「でも、情が移る事がある様に。……愛情だって移ると思うもの。ラムはロズワール様の事を慕っていた。愛していた。でも、今はそれ超える程、愛している人が出来た。ロズワール様から信用こそはされても愛情を向けられた事は無いし、ラムと本当の意味で身体を重ねた事もない。―――だからラムは生娘よ。いつ確かめて貰っても構わないわ」

 

 

ニコリと笑って大胆な事を口にするラムはやはり男らしい、男前と言うに値するだろう。

 

そんなラムの事はさて置き―――、言葉に詰まるのはツカサだ。

 

 

事ある事に理由を模索していた。

 

 

妹を救った事に対する恩義からくる情ではないか?

他にも好きな人が居たのではないか?

 

 

ツカサの中で、特に思い当たる節である2大理由を、そのカードを速攻で切ったのだが、物の見事につき返されてしまった形だ。

 

 

「―――ツカサ」

「ッ!」

 

 

そんなツカサを、ラムは慈愛に満ちた目で見ながら……ラム自身も気を引き締めながら聞く。

 

 

 

「ツカサはラムの事が嫌い?」

「………そんなわけない」

 

 

ラムにとっても、大真面目に、いざ聞きなおす事は躊躇われる事だ。

自信に満ちたラムであっても、それが聞くべき時と軽く流して良い所と空気を読む事は出来るのだから。

 

 

だからこそ、ツカサの即答は何よりも嬉しい。

 

 

「――当然、よね。このラムだもの。……なら、もう1つ聞くわ」

 

 

これ以上、はぐらかす事は無い。

ただ、もう1歩だけ深く踏み込むだけだ。

 

ツカサの心の内側へと。

 

 

 

 

「―――ツカサは、何をそんなに怖がっているの?」

「――――え」

 

 

 

 

ラムの言葉に、ツカサはきょとん、とした顔をしていた。

これまでの顔つきとはまるで違う。

先ほどの顔つきが一気に霧散し、ラムが何を言っているのか解らなくなっていた様だ。

 

 

「怖がってる……? オレが……?」

「ええ。……直接的な告白は無いにしても、ラムはセックスアピールはしてきたつもりだったわ。殆ど初めての事だったから、加減がよく解らなかったけれど。……ツカサは気付いてなかったのね。オットーにラムの事を話していた時も、屋敷での時でも。……断ろうとする仕草をする時、何処か怯えた顔をしていた」

「………………」

 

 

 

そこまで言い切った所で……、ツカサの表情がまたガラリと変わった。

変わりに変わった2度目の変化は、いまだかつて見た事が無いもの。

 

 

そう―――ラムが瞳の奥に見たと言うその怯えたもの、怖がったもの。それが表面化してきたかの様だった。

 

 

ラムと言う少女は―――どうして知っているのだろう?

どうして、解ったのだろう?

 

 

解ったからこそ、自分を知ってくれた事は嬉しい。心の底から嬉しい―――が、それ以上に負の感情が喜の感情を塗りつぶしていく。

 

 

 

「……どうして……、どう、して……?」

「どうしてラムが解ったか? それなら答えは簡単だわ。……ラムが一番ツカサの事を見てきたから。ラムが一番ツカサの事を好きだから。だから、気付く事が出来た。それだけの事よ」

 

 

はっきり言い切って見せた。

怯えているかの様に震える彼は、まるで怖がっている少年のものだ。巨大で強大な力を内包しているとは思えない、まるで迷子になった子供の様な目になってしまっていた。

 

 

「ッ……そ、それは………」

「ラムは全て話した。だから、ツカサも話して欲しい。ラムに打ち明けて欲しい。―――ラムにも、ツカサを背負わせて欲しい」

「ッッ―――」

 

 

 

ツカサは、一瞬表情を沈めた……が、直ぐにラムを見た。

ラムの表情は全く変わらない。

 

ただただ、慈愛のものであり、不思議と心から落ち着けるものだった。

 

 

 

「―――――――……っ」

 

 

 

ツカサは無言だった。……やがてラムを正面から見ていて、心が動かされる。

そして部屋の天井、或いは空までを見るかの様に視線を上へと向けた。

 

 

 

それは、ツカサの固く閉ざしていた心の扉が開く瞬間でもあった。

 

 

 

 

 

 

「……オレには、記憶がない、って言ったのを覚えている、かな?」

「忘れるワケが無いわ」

 

 

ツカサの事だから、と言って笑って言うラム。

記憶障害の事を、負い目に想っているのなら、どんな時でも支えるつもりではいた……が、ことはそう単純な話ではないと言う事を直ぐに悟る事になる。

 

 

 

「実は……厳密に言えば、少し、違うんだ。確かに記憶はない。でも―――――オレは、この世界の外(・・・・・・)からやって来た。……それは間違いなく、断言できるんだ」

 

 

 

その説明は、まさに矛盾そのものだと言える。

記憶がない、と言っているのに、断言できるとは一体如何に?

 

まさに相反する事柄。相容れる事のないものだ、と言える。

でも、ツカサのそれは違う。

 

 

「……だから、記憶なんて、この世界の記憶なんて、あるワケが無い。外の世界の記憶があるか? って言われたら、無いとしか言えない。……でも、仮に世界中で、オレの事を、オレの記憶を探した所で、オレを知っている人を探した所で。……絶対見つかる事は無い。……断言、出来る」

 

 

 

ラムの表情は険しくなる。

 

確かに、その手の話、実際に体験者から聞くのは初だが、又聞きで聞いたことがある。

 

大体が、大瀑布の彼方が故郷だと言って吹聴している者が殆どで、その大多数が世迷言に分類される。

調べれば、出生を明らかにする事が出来た者も居るし、そもそも捨て子であり、判明出来なかった者も勿論居るが、関わった事がある者まで消す事は出来ないから。

 

幼少期より捨てられて――――そこから生き延びる為には、誰かの手が必要なのは言うまでもない事だから。

 

 

だが、ツカサのそれは、これまで耳にしてきたものとは全く違う……。異質そのもの。

ラムはそう直感していた。

でも、追及はしたい。

 

 

 

「なんで、そう断言できるの?」

「理由の1つは、コイツ(・・・)だよ」

 

 

ツカサが手を翳すと、そこには先ほどまではツカサの身体を治療する……としていた筈の精霊が、いつの間にか掌サイズになってツカサの手の上に乗っていた。

 

 

 

「クルルの存在が、オレに直感をさせた。記憶とはまた違う。本能的な部分、って言ったら良いのか……、どう言ったら良いのか、解らないけれど。その……ラム。このクルルとは違う、もう1人のヤツがいて……」

「言葉を話す方のクルルね」

 

 

ツカサの身体を治療していた方のクルルだ。

今のクルルも恐らく治療の力は備わっているだろうが、あの言葉を介して、色々とコミュニケーションを取ってきた方が、ツカサが言うもう1人、の方に当てはまるのだろう。

 

 

 

「記憶とはまた違う、ね。本能や魂とでも言った方が良いのかな? 覚えていないけれど、間違いないって言える。絶対に。信じて貰えるかどうかは、解らないけど……」

「ラムはツカサを信じてるわ。信じてない訳がない。そこは安心して頂戴」

「ッ――――……ありがとう」

 

 

 

渇いた笑みでラムに礼を言うツカサ。

ただ―――正直嬉しくはない。

何故なら、その笑みは、ラムの好きな笑顔じゃないから。

 

 

 

「自分の事が解らないから、得体が知れないから、恐怖を感じているの?」

 

 

 

そう、恐怖と言う感情の根幹部分がラムにはまだ見えてこないのだ。

それが知らなければ、対処の仕様も見出せないから。

 

 

だが、ツカサは大きく首を横に振った。

 

 

 

「違う。……オレの正体なんて、正直どうだって良いんだ。この世界の外から来たって事実だって、別にどうとでもない。だって、オレは今が…………だから。自分の事より、皆の事、って考えてしまう程だから……」

「―――……なら、どうして?」

 

 

ツカサの自己犠牲的な考えはここからきているのかもしれない。

 

単にやり直しがきくから……とも思えていたが、スバルの件で話は変わってくる。

安易に戻れない状況であるのなら、やり直せる、と言う意識は根底から変わってしまうから。

 

 

 

「…………ラムが、そう見えたのは……、きっと オレが消えてしまうかもしれない(・・・・・・・・・・・・)って、思う様になったからなのと、……ラムの事を好きになったから……だと思う」

「…………え」

 

 

ラムは一瞬耳を疑った。

それは、ラムが好き、ラムの事が好き――――ではなく、その前。

 

ツカサが消える(・・・)と言う部分だ。

 

 

 

「オレは、外の世界から来た。……突然、この世界に落とされた。……なら、その逆は? 突然、ここに連れてこられたんだから、また同じ理由で、ここから消されてしまうかも知れない。……抗ったりする事が出来ない、途方もない位巨大なナニカ(・・・)の力で」

 

 

ツカサは己の手を見た。

王国最高峰の勲章を授与し、最優とも呼ばれる近衛騎士、ユリウスと一戦交えた。

この世界最強の剣聖にも認めさせる事が出来た。

魔獣を撃破した。白鯨を退ける事も出来た。

 

手にしてきた事、成してきた事は大きな事かもしれない。

 

 

 

だが、まるで小さい。まるで足りない。……抗える事は無い。

 

 

 

そう思えてしまったのだ。

 

だが、怖くなったのはラムの存在だった。

ラムに心配されて、ラムを好きになった。その時から。

 

 

「ラムが、見縊るな、って言った。……苦しむオレを見たくない、って言ってくれた。………オレがもし、オレ……オレ、が消えたら……どうなる? 皆を置いて、消えたら……?? 心を満たしてくれる人達が沢山出来れば出来る程、怖くなっていった。……残してしまう人達の苦しみを知ったから……。何より、自分自身が怖くてたまらないんだ。大切な人に、……好きになった人に会えなくなるのが………」

 

 

ラムの慟哭。

レムを失い、残されたラムの悲しみは想像を遥かに超える苦悩だろう。

己が苦しむのは良い。己が死ぬ事だって構わない。

 

 

だが……己ではどうしようもないのが、残された側の人達。

そして、自分自身。

 

 

 

「心の繋がりを、空っぽだった自分の心の中を、今更空に戻せない。今更遠ざけたりなんか、出来ない。………したくない。怖くたって、例え怖くたって……。満たしてくれた皆に嫌われて、繋がりを絶とうとかまでは出来そうにない、から。……だから、より強く結ばれる事は、出来なかった。………でき、ないんだ」

「………………」

 

 

 

顔を覆っているツカサをみて、ラムははっきりした。

 

誰よりも強いとさえ思えるこの人は、絆を欲した、心からの繋がりを欲したこの男は、それが絶たれる事を恐れている。

 

そして、残される者の悲しみをも知り……尚更恐れている。

 

 

対策の取り様がない、世界と世界を繋ぐ程の強大なナニカ。知覚する事だって恐らくは出来ないだろう。

 

 

―――気付いたら、そうなっていた。

 

 

と言うのが正しいかもしれない。

今は大丈夫でも、軈てその時が来たらとなると恐ろしくてたまらないのだ。

 

 

 

「―――ツカサは、自分が(ゼロ)になる事を恐れていたのね」

 

 

 

自己犠牲精神。

それは、自分が犠牲になれば、他人が救われれば自分はどうなっても良いと言う精神。

だが、その実、他人の事を考えている様で、考えてはいない行為。

 

残された者たちは、犠牲にして、助かった所で、残された者たちが満たされる事は無いのだから。残された者たちには悲しみが遅いかかり、本当の意味での幸福は得られない。

互いに生きていく、生きる意志が必要不可欠だから。

 

 

だが ツカサは必ず帰ってくる、と言う誓いは立ててくれた。約束してくれた。

 

 

自己犠牲精神ではない。

ツカサは残された者の悲しみを知っているから。

 

 

 

怖いのは、意思は関係なく、そして一切抗う事も出来ず……(ゼロ)になる事。

その時が来たら……と思うとこれ以上ない程に恐怖を感じる。

 

繋がりが深ければ深い程尚更だ。

 

 

だから、好意を……心のつながりと言うのであれば、最上級とも言って良い間柄で結ばれる事を、それがゼロによって消失する事を恐れている。

 

 

 

「……なら、ツカサ。こうしましょう」

 

 

 

ラムはツカサの身体を抱いた。

腕を回し、その頭を抱えて……。

 

 

「ツカサが生きた証を、ラムに刻む。……目に見えないナニカに恐怖するより、今を生きてるツカサが、ラムに……ツカサが生きていたんだ、って言う証を」

「……いきて、いた証……?」

 

 

ラムの言葉の真意が読めない。

そんなツカサの目を真っ直ぐに見据え、ラムは続けた。

 

 

「簡単に言うと、ラムと子供を作りましょう」

「――――――………え?」

 

 

ラムの真意を聞いた瞬間、ほんの僅かにだが、確実に震えていたツカサの身体が一瞬止まった。

 

突然な事に、何を言われているのか解らない様だった……が、慌てたり、何か感情を出す前に、ラムは畳みかける。

 

 

「ラムとツカサで子を成す。……きっと、天才、神童、って言葉じゃ足りないくらいの子が出来る……と思うわ。ラムとツカサの子だもの」

 

 

ラムは自分で言った事を想像して、そして顔を赤く染め上げる。油断すれば思わず表情筋が緩んでしまいそうになるが、どうにか堪えると更に続けた。

 

 

「1人でも、2人でも……、双子でも三つ子でも。それでラムとツカサが一緒に居た、って言う証がこの世界に生まれるわ」

「っっ、そ、そんな無責任な事出来ないよ! だって、それでもし――――」

「ラムはツカサを信じているもの」

「!!」

 

 

ラムはツカサに最後まで言わせない。

目を見開いて、その目を見据えて、言い聞かせる様に。

 

いつの間にか、ラムの瞳には涙が溜まっていた。

 

 

「生きた証を残せば、この世界から消える未練を残したなら……。あやふやな感情じゃない。ただの愛情だけじゃない。2人の子宝がこの世界に残ったなら。……ツカサは絶対抗って抗って、最後には勝ってくれるもの。ラムだけじゃない。ラムの子を、二人の宝を残して、この世界から消えるなんて、絶対しないもの」

「それ、は………」

 

 

 

 

ラムは目を見開き、そしてその宝石の様な涙が宙に散りばめられる。

ツカサも想像をしてみる。

ラムとその子供。……自分の子供。

 

2人を、若しくは3人? いや4人? ……今の様ないわば抽象的なものではなく、具体的で明確な家族が出来たとしたら……?

 

 

残して逝けるか?

 

何より怖がってばかりで居るか?

 

 

 

答えは――――(NO)だ。

 

 

 

「いつか来るかもしれない、その(ゼロ)の恐怖に怯えるくらいなら、迎え撃つだけの心の強さを持ちなさい。……それでも(ゼロ)が、迫ってくるかもしれない。絶対来ない、なんてラムは言えないわ。だって、ツカサが来てくれた。この世界に来てくれたんだから」

 

 

この世は良い事だけじゃない。甘い世界じゃないのは重々承知している。

 

悪い事だって起こる。……何なら、そちらの割合の方が大きいかもしれない。生まれたときから知っている。

 

 

この世界が残酷だと言うことを。

 

 

 

 

「何度でも言う。ツカサはラムの英雄よ。だから、負けたりしない。……ラムのツカサは、そんなに弱くないから。……だから、だから、ラムと一緒に立ち向かっていきましょう……?」

 

 

 

ラムははっきりと伝えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ゼロに」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




2人の英雄は、ツカサ君とスバル君をさす言葉だったり。ラムとレムの事をさす言葉だったり、と結構いい言い回し方出来タ!!!

AI生成 ラムちーイラスト「ーーーゼロに」
https://www.pixiv.net/artworks/117811461

とまあ、、いろいろ自画自賛しておりますwww


さてさて、前書きの《え……?》ですが、まさかの子●り発言に、《え…………?》でした( ´艸`)
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