Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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晩酌

「スゲーな兄弟! 告白を余裕ですっ飛ばして、子〇りまで受け入れる! 男として、尊敬する! ほんっと、脱帽です」

「………スバルもな。自分の事捧げるとまで言った相手の告白をフった挙げ句、別の女性(ひと)の為の手伝いまでさせるとか。到底真似できません」

「それ改めて聞くと、オレ相当屑だ!! 屑過ぎるな!? だからあんま言わないでっっ!!」

「そもそも言い出したのスバルなんだけど。オレ、今後の対策の話とかしてなかった?」

 

 

ほんのつい先ほどまで、スバルとツカサ。主にスバルだが、謝罪の嵐だったのだけれど、いつの間にか、いつも通りな感じになった。

 

スバルが逃げた事を、逃げようとした事をツカサに謝罪。

当然ながら、ツカサがそれを気にする筈もなく、原因系を聞けば、何ともなかったそれこそスバルに脱帽もの。

 

精神擦り切れても可笑しくない苦痛、苦悩だった筈なのに。地獄と言う表現が生ぬるい責め苦だった筈なのに。強靭を通り越した精神力に脱帽だ。

 

 

 

そして、それぞれの事情(ラムとレムの件)を聞いて、お互いにリスペクト? しあっているのである。

 

 

 

「良かったですね、姉様!」

「そうね。でも、可愛いレムをフった挙句に別の女の手伝いとか。バルスが屑過ぎて、視界から消し飛ばしたい気分になるわ」

「良いんですよ。レムは、スバル君と一緒にいられるだけで幸せなんです。それに、第二婦人でもレムは構いません。隣にいらわれるのなら」

「まぁ、解らなくもないわ。人選は解らないけど、ツカサが同じだったとしたら、って考えたらね」

 

 

夫々の報告会? が終わったのである。

今後の対策……云々はツカサだけだったのだ……。

 

 

 

「姉様とツカサ君の、子……、楽しみにしています! とても可愛くて腕白で…………、困りました。レムの頭では想像できない程の子供だと確信してしまいます」

「当然よ。ラムとツカサの子だもの」

 

 

 

決定事項の様に、ラムとツカサの子供トークに花咲かせている鬼姉妹。

その件に関してもしっかりとツカサとラムは熟考をして、互いに納得のいく結論を出せた筈なのだが……。

 

 

 

「ラムをこの忙しい時期で、産休取らせるのか? まぁ、屋敷の仕事だったら、大体レムがやってるから問題ないと思うけど。フレデリカもいるし」

「い、いやいやいや、最初にラムとの事話しただろ?? そもそも5日後の厄災だってあるし、何より王選の事だってあるんだ。……そ、その………、ラムとは王選を終えた後に、って………」

 

 

ツカサはだんだん顔が赤くなっていっている。

 

失うかもしれない恐怖はある。だが、気持ちがラムに届くなら、そしてラムが幸せなのなら、それに応えてあげたい気持ちはツカサにはある。

(ゼロ)の恐怖立ち向かえる事が出来る様になったのは、ラムなのだから。

 

 

エミリア陣営、最強候補の男。(王国筆頭魔術師ロズワールの存在もあるので、候補)

 

今の様子があまりにもギャップがあり過ぎて、ツカサは男だというのにスバルの目には非常に可愛く見えてくる。

 

 

「……今なら、男の娘部門、決勝戦! フェリスと良い勝負するかもしれねぇぜ! 兄弟!!」

「何言ってるか解らねぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取り合えず、今じたばたしても始まらない。

今から当日まで、特にこれと言った問題が起こらなかったのは全員が解っているからだ。

全ては世界が一変した、5日目の夕刻にかかっている。

 

 

「ラムが言っていた通り、当日は単独行動厳禁。原因調査が第一だけど……、アレ(・・)が来てから、確認するしかない……かな」

「でもよぉ、オレ殆ど知覚出来なかった程の冷凍ビーム(疑)らしいんだぜ? どうすりゃ良いんだよ」

 

 

スバルの言い分ももっともである。

スバルがあまりにも弱く、弱小で、最弱なのは置いといて。

 

 

「……なんか、今、スゲーヒデェ事言われた気がする」

「まぁ、当然な事を言われたんじゃない? ラムは納得だわ。……でも、バルスが言いたい事も解る」

「そう、ですね。レムも悔しいですが……、手も足も出ませんでした……」

「だよな。西の方からやってきたのは解ってるなら、逃げるくらいしか出来ねぇんじゃ? 未来の話なんて突拍子もない事、誰も信じてくれねぇだろうし」

 

 

ラムやレムで、圧倒的な力を感じ、抗えない程のナニカを感じる程の厄災。

便宜上、呼ぶとするなら白銀。(スバル命名)

白鯨とはまた違う厄災……と言うより、世界の終わりを感じる程だ。

 

 

「その点は、考えがあるよ。―――― 一応、切り札があるから」

 

 

そこを敢えてサラッといいのけてしまうのが、このラムの英雄だ。

レムの英雄はなかなかやってのけるとまで言ってくれないのに……、とレムは思わないので、ある意味安心だ。

 

 

「―――……なんでも星人かよ」

「成人? 歳は解らないけど」

「いや、それはいーんス。………でも」

 

 

スバルが視線を鋭く、更にあくどい顔をしたその時、ラムの方が早かった。

 

 

「また、ツカサがあんな風になる、っていうなら許容しかねるわ。………方法が他にないとしても」

 

 

 

ラムの険しい表情を見て、ツカサは慌てて両手を振った。

 

 

「大丈夫、大丈夫。そもそも、アレ(・・)は、スバルがアレ(・・)したからだし、だから、スバルが頑張れば問題ないから」

「ああ、成程。……つまり、バルスが問題起こしたら、死ぬ手前まで殺せば解決ね」

「何一つ解決しませんから!! いや、頑張りますとも!!」

「流石スバル君です。スバル君が頑張れば、きっと大丈夫ですよ! レムは、そう確信できます!」

 

 

意気投合するツカサとラム、恋は盲目同然なレム。

結構なプレッシャーがのしかかるスバルだった。

 

 

 

「つか、切り札だけど、お前、次は変身でもすんのか? スーパーサ〇ヤ人みてぇに?」

「?? そのすーぱー〇いやじん、っていうのは解らないけど、切り札はオレと言うより、こいつ(・・・)だよ」

「きゅきゅっ♪」

 

 

ツカサは、掌に、クルルを取り出した。

スバルはその姿を見て、一瞬後ずさる。

 

ある意味、相応なトラウマを植え付けた相手だから仕方がない。

 

 

「クルル様、大精霊様ですね」

「安心して良いのね?」

「ああ。大丈夫……って言いたいけど、当然切り札、ってだけあって乱用は出来ないから、そこまでの過剰期待が出来ないって所もあるかな。無理だと分かった時点で、また飛ぶから、その時は戻ってから説明するよ。……何とか納得してほしい。一緒に戻れない可能性も高い」

 

時間遡行する場合、説明する事が面倒、と言うより非常に難しくなってくるのが通常だが、それは能力を隠している場合に限る。仲間に打ち明けているのであれば、さして問題はないが、真偽を確かめる術がないのが欠点ではある、が。その辺に関しては余計に問題ない。

 

「無理して血を吐く位なら、そうしなさい。ラムはツカサの事を信じているから、後から説明されても問題ないわ」

「勿論、姉様だけじゃなく、レムも信じてますよ。スバル君も、そうでしょう?」

「兄弟を信じられなくて、誰を信じるってんだ? んな、選択肢、オレん中の分岐点にゃ、存在しねー、って断言できるね」

 

 

信頼と信用は問題ない、と真っすぐに言ってもらえるのも嬉しい事だ。

 

 

 

「―――……」

 

 

 

時間遡行は、当初は孤独である、と思っていたのだが、今は欠片も思っていない。

 

 

 

 

「んじゃ、取り合えず王都攻略2周目だ! がんばってこーぜ!!」

「はいっ! スバル君!」

「なんでバルスが仕切り出すのか。シャクだけど、当日までは特に問題はないのは間違いない事だし、目を瞑る事にするわ」

「やっぱ、辛辣ですね‼ 安心できるってもんですよ姉様‼」

 

 

 

 

仲間と言う存在は、どんな剣よりも、どんな魔法よりも強力で……何よりも安心できるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前回と同じ様に、同じ通りに熟していき、限りなく同じ道筋をたどる事で、前回と同じ未来へと行きつく事が出来るだろう。

 

と―――口で言うには容易い事だが、それが非常に難しい事はロズワール邸でも、エミリアと初めて出会った時の王都でも十分過ぎる程理解している。

 

ほんの少しの差異で、起こるイベントが刻々と変化する事など、体験済みだ。

前回は無かった筈の、とある変態貴族と入浴シーン。一体誰が、そんなの見たいと思うだろうか……と言う意思などお構いなく進んでしまう。仕様が無い事だと半ばあきらめていた事でもあるが。

 

 

「まぁ、前回同様 レム先生の元で、きっちり復習する時間を取るのが、吉! って事で」

「流石スバル君です。前回の様にゆるゆるでだるだるでどうしようもないスバル君から、一歩進歩してます!」

「久しぶりに来たな! 無自覚な毒吐き」

 

 

前回は、確かにゆるゆるで、だるだるだった事は否めない。

だが、すべき事や起こる事がわかった今……、早々ゆるゆるで、だるだる、な訳にはいかない。

 

出来る事など殆ど無いかもしれないが、この短い時間。少しでも身になる事をするとスバルは決めているのである。

 

 

「時間ロスして、また凍結死エンド直行フラグ発生、とかだったら笑えねぇ。晩飯呼ばれるまでの間、お勉強しようぜ、レム先生!」

「ふふふ。やっぱり何度聞いても慣れませんね? レム先生」

「まっ、教わってる立場だしな。……レムだって好きだって言ってただろ? 先生」

「はい! スバル君になら、なんでも!」

 

 

せめて、前回質問した所、解らない所くらいは、正解して見せる! と意気込んでたスバルだったが……、結局そこもループする事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――ちょうど良いところにいたな。ツカサ。少し、付き合わないか?」

 

 

それは、ツカサが湯浴みを終えてラムが待つ部屋へと戻ろうという途中だった。

今回の出来事は……どうやら、前回と同じ様だ。

 

 

「クルシュさん? はい。大丈夫です」

「それはありがたい。卿とはゆっくりと話をしてみたかったのでな」

 

 

普段のクルシュの恰好ではない。

軍服のような衣装ではなく、黒い薄手の寝衣に肩掛けのケープを羽織った状態。

普段の姿しか見ていないので、その印象の違いに戸惑うかもしれない、が。ツカサは前回に次いで2度目だ。

初回もそこまで驚きを見せる事は無かったのが、功をなしたのか特にクルシュに不審がられる事は無かった。

 

嘘を見抜く彼女の力は、正直脅威と言える力だからだ。

 

 

自身の力はなるべく知られたくないというのが本音だからだ。

 

 

スバルは、ツカサを無敵だ最強だ、と称しているようだが……ツカサは当然ながら自身の事をそんな風には思っていない。

用心するに越した事は無いのだ。

 

 

「しばし、晩酌に付き合ってもらいたいのだが」

「解りました。オレは、酒は強くありませんが……」

「ふふ。あれほどの強さを持つ男が、か。印象とは違うものだな。……それに、それで良い。私も酔うほど飲むつもりは無い」

 

 

薄く笑うクルシュは階段をさらに上へと上がる。

ツカサもその後についていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

3階のバルコニー。

この場所に来るのは2度目だ。晩酌を行うには、絶好の場所である、と言う事は覚えている。

 

 

 

「―――ふむ。今日は夜風が涼やかで良いな。夜空を見ながら酒を嗜むのに絶好の日和だ」

 

 

 

バルコニーの端に設置された白いテーブル、椅子。対面する形で、クルシュと対面をした。

 

 

「最初に断言をしておこう。卿から何かを聞き出そうと目論むつもりは毛頭ない」

「勿論、解ってますよ。クルシュさんが、例え政敵相手だったとしても そんな卑小な事は好まない、と言う事くらい解ります。――――剣を交えた間柄です。それくらいは」

 

 

クルシュは、ツカサを見る。

にこやかにそう返すツカサには、嘘の風は一切感じなかった。

 

 

「―――ナツキ・スバルとはやはりモノが違うという訳か。まぁ、彼の不安と疑念、警戒は好ましい。所信を忘れずにいられるがな。……卿の様な大胆不敵にして、押し通すだけの力を持つ男、強者とこうやって酒を酌み交わす事もまた、心地が良いものだ」

「……誓って言いますが、押し通す(そういう)つもりも一切ないですよ。後、スバルの前では、オレと比べる様な事は……なるべく言わないでくれると助かります。結構気にしながら、今も高みを目指しているそうですから」

「ふふっ。了解した。………だが、口外を、と言うのなら、もう一人に対しての方が良いのか? 私と卿がこうして晩酌を交わしている、と言う事実に対し」

「ラムにですか? ……大丈夫ですよ。恐らく少々強めなお仕置きを受けるくらいでしょうか。ラムは優しいので」

「卿をも手玉に取る従者か。当家に欲しがる人材だと言えるな」

 

 

愉快そうにワインを口に運ぶ。

ツカサも同じく、口にした。

 

一口飲むだけで、上等なものだという事がよく解る。

別に舌が肥えている、と言う訳ではないというのに、それを覚えさせるのだから、相当な酒だ。

 

ある程度、会話が弾んだ所で……今回はツカサから一歩踏み込む。

 

 

「――少々、屋敷の人と物の出入りが多いようですが、それも王選関係ですか?」

「……ふむ。卿には話しておきたい、と言う私もいるが………政敵であるという事実もあるが故に、正確に事を説明するには気が引けるな。卿を当家に迎え入れるのであれば、話は別だが」

「それは申し訳ない。……今のオレには 切っても切れない。そんな絆が、大切な絆が、ありますから」

「ああ。本気にはしていないさ。その絆とやらは、私も気になる所ではある、がな。………伝えれる部分は伝えよう。王選の関係雑務は増えた。故に人材と物資が行き来している。フェリスとヴィルヘルムにも苦労をかけてくれているな」

 

 

酒を楽し気に飲み、クルシュは上機嫌の様だ。

喉から手が出る程、欲している事も包み隠さず本心で本音で、だからこそ クルシュの様な嘘を見抜く力がなくとも、クルシュが本当の事を言っているのくらい解る。

 

 

「―――近日中に、事を起こす可能性が極めて高い。少し卿たちにも迷惑をかけるかもしれんな」

「いえ。寧ろ世話になっているのはこちらです。スバルの事を考えたら。ユリウスとの模擬戦も重ねてお世話になったんですから。そして、勿論手伝える範囲内で、オレも協力は惜しみませんよ」

「それは実に魅力的だな。……ならば、1つ問うておこうか。ヴィルヘルムが私に仕えている経緯。卿は聞き及んでいるか?」

 

 

ツカサは少しばかり考える。

1周目も2周目もヴィルヘルムと私用的な話は皆無だ。

 

 

「剣での会話を交わす以外は何も……と、それっぽい言葉を残しておきますよ。……はは、今のラムに聞かれたら、笑われそうだ」

「ほう、卿もいうのだな。1つ、卿の事をまた知れて良かったよ。………ならば、私もこれ以上は口にしないでおこう。如何にヴィルヘルムが認めた卿でも、余計な事を話せば、 責されるやもしれん」

「あはは。ヴィルヘルムさんなら、例え主人でも言うときは言う……って、思いますね」

「その印象は的を得ている。あれで容赦がない男だからな」

 

 

ほほえみながら、再び互いにグラスを口につけた。

 

 

「我々は同じ相手と剣を交えているのだ。解って当然と言えばそうか」

「クルシュさん程ではないと思いますよ?」

「ふむ。……女だてらに剣を、いつも振るって……と卿は苦言を呈したいか?」

「いいえ。微塵も」

「ふふ。それが本心である事が、加護を使うまでもなく解る。………心地よいものだ」

 

 

ほろ酔い気分、とでもいえば良いだろうか、頬を僅かに赤くさせて、笑うクルシュの姿は、夜空の、満天の星空の下では、非常に絵になるというものだった。

謙遜をしているが、クルシュも十二分に魅力的な女性だ。例え、剣を振ろうと、戦乙女と呼ばれようと。

それも嘘偽りない想いだ。

少々口に出すのは憚れるが。

 

 

「花を愛でるより、手折るのを好む。カルステンの姫君は、乙女であるのに剣術狂い。公爵家きっての痴れ者、そう呼ばれていたがな」

「少なくとも、オレが、オレたちが聞いた街の声は、全く違いました、とだけ伝えておきますよ」

「それは光栄だ。―――王選の話が広まって以降の話、ともなるなら、縁談の話が飛躍的増した事も、決して無関係ではないやもしれぬな」

 

 

縁談話……に関しては初めて聞いた事柄。

少しだけ目を丸くした。

 

未来の王候補だ。

 

だから、縁談の1つや2つあってもおかしくないと思えるが、王選が広まったと同時に、と考えれば、それは本当に好むべきものか? とも思えてしまう。

 

 

「ふむ。少々目の色が変わったな。……絆とやらに付け入る隙間が見える様に思える」

「……改めて物凄く、オレの事を評価してくれてるみたいで、こちらこそが光栄ですよ」

 

 

クルシュは再び酒を口に運ぶ。

朗らかに笑いながら続けた。

 

 

「卿の目には心配の色も見えるな。だが、それは無用だ。私も既に20歳。年齢的には婚姻を結んでいてもおかしくない。性別と立場がややこしいが故に、これまでは適当にかわしてきた話題だったが、それが王選でより増えた。それだけの事だ。ナツキ・スバルにも注意しておけ、と忠告するもの是か。かの者の想い人にも、そのような話は出てるやもしれんのでな」

 

 

スバルの想い人。

当然それが誰なのか……、最早関係者ならだれもが知っていると言って良いだろう。

公衆の面前、と言う意味ではこれ以上ない場所で大宣言したのだから。

 

 

「スバルをあまり揶揄って遊ぶのは止めてあげてください……。すごく本気にすると思うので」

「ほう? 揶揄うとは?」

「まぁ、確信がある訳ではないですが、王選期間中に婚姻……と言うのは少々危険な気がするので、許してないと思ってますが」

「なるほど。……ふむ。鋭いな。卿の言う通りだ。無用で、余計な派閥争いを生み出さないためにも、禁じられているよ。……だが、それは候補者たちの間柄だ。卿とかの使用人との婚儀であれば、問題ないぞ? 当家も祝福を送ろうではないか」

「それは光栄です――――が、同じ理由で王選中は、おめでたい披露目は無いですよ」

 

 

ここまで言った所で、クルシュは こらえきれない様に、口元に指をあてながら、笑いだした。

 

 

 

 

「卿と言葉を交わすのが、こうも楽しいとはな。……卿の関係者を見ていればよくわかる。あのナツキ・スバルが調子を取り戻したのも、卿の存在あっての事だろう。……卿の瞳は真っすぐだ。曇る事もなく、翳る事もない。未来へと生きる意味を見失う事も卿にはなかろう」

「未来………。そう、ですね。未来を掴む為に、オレは戦おうと思ってますから。……皆と(・・)

「………………」

 

 

 

 

 

クルシュは、そのツカサの言葉に、言葉に込められたナニカに、少し反応を見せた。

一切淀みも歪みも、曇る事さえない眼が、一瞬揺らいだ。

 

だが、それは心配する類のモノではない、と言う事もすぐに解る。

 

 

ゆるぎない決意を、そこに見たから。

 

 

 

 

 

「………風が出てきたな。ここまでにしておこうか。ツカサ。……実に、有意義な時間だった。礼を言おう」

「こちらこそ、ありがとうございました」

 

 

ここで、話が終わる―――と思いきや。

 

 

 

「あーーーっ! にゃんで、ツカサきゅんがここにっっ!? どーして?? なんで??」

 

 

 

唐突に割り込む声が非難の色をしていたからだ。

バルコニーに飛び込んで肩で息をする乱入者は、フェリスだ。

 

 

「ご苦労だったな、フェリス。すまない。帰りが遅いと思ったので、ツカサと談笑をしていた」

「ううーー、油断も隙もにゃいんだから! ラムちゃんに言っちゃうよ??」

「ふふっ。それは効果がなさそうだぞ、フェリス。多少怒られる程度の様だ」

「うにゃぁぁっ! って、あれ? クルシュ様、お酒がずいぶんといつもより進んでいるじゃにゃにですか!!」

 

 

今更ながら、フェリスはクルシュの姿を凝視。

酒の量もそうだが、それ以上に思う所は……。

 

 

「無防備な恰好!? にゃんなのにゃんなの! むきーーー!」

 

 

フェリスの指摘に、クルシュは寝衣に肩掛けだけの自分を見下ろした。……が、何が問題なのか解らない、と言った様子で首をかしげる。

 

 

「おかしいか? 普段、フェリスと晩酌する時と変わらない格好のつもりだが?」

「そーれーがー! ダメって言ってるんです! フェリちゃんと一緒なときと、スバルきゅんとは、また違った獣。それも内に秘めたもの、野生を秘めたもの、加えるなら、超が付く一級品の野生を秘めた獣王みたいな男と2人きりとか!! 男は狼にゃんですからね!?」

「―――……正直、嬉しくない評価の仕方ですね、それ」

 

 

獣だの狼だの、あまり嬉しくない発言を連発するフェリス。これは何を言っても無駄だろう、と言う事を悟って、大人しくしていたが。

 

 

「その心配は皆無だなフェリス。ツカサは私には靡かぬようだ。こう見えて、少々迫って見せたのだが、見事に躱されてしまったよ」

「むきーーー!! それはそれで、クルシュ様に失礼極まりない事だにゃんっっ!! 男として、どーなの!? ツカサきゅん!!」

「え、えと……、それは、どう反応して良いか困るんですが……」

 

 

フェリスの言い方であれば、クルシュに靡かなかった事を今咎められた様だが、靡いていれば、狼、獣、獣王認定されて、またまた叱責(と言う名の嫉妬)されてしまう未来しか見えない。

どちらを選んでも同じ未来と言う、なんとも理不尽な話だ。

 

 

「ふふ。戯れもほどほどにしておけよ、フェリス。ツカサには切っても切れない絆があると言われているんだ。私の様な可愛げのない女に、言い寄られた所で、見向きするとは思えんよ」

「……えっと、それは……」

「クルシュ様に不足でも?? 今そこで頷いたら殺すよツカサきゅん?? ユリウスの話聞く限り、正直フェリちゃんじゃ、荷が重いどころか、絶対無理かもしれないけど、刺し違えてでも、殺っちゃうよ?? 世界一優しいフェリちゃんの手が、狂気の手ににゃるよ???」

「………ここにきて、初めて理不尽な目にあった、って思ってるよ」

 

 

 

実に騒がしい晩酌時間はもうしばらく続き――――やがて、想定以上に遅くなってしまった様で、余裕だった筈のラムが嫉妬なラムにへと変貌。

 

 

 

 

ツカサが思っていた数倍以上のお叱りの言葉が待つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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