死ぬなよ、絶対に死ぬなよ! ※コレは、フリではありません。   作:リゼロ良し

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原因は余裕で解るw


迷子探しと崩壊

 

 

「全く……王都だから治安対策は万全だ、何せ今日も《剣聖ラインハルト》が頑張ってるから! くらいに思ってたケド…… やっぱり貧富の格差ってのはあるんだ。んん? そう言えば、ラインハルトは実は今日非番だったらしいから……、だからスリが活発化したり……?」

「そりゃ、案内してない……と言うより、案内する気も元々無かったですが、貧民街(・・・)って所もありますから。……それと、いくらラインハルトさんの影響力でも、それは無いでしょ」

 

 

 

スリの少女の襲撃から、聖金貨を守る事が出来た事は良かったが、胸中は穏やかではいられない。自分自身の事ではなく、あの少女に向けて。

 

 

「……あんな小さな子も、スリ(それ)をしないと生きられない、か………。全員救うとか、全員平等なんて 実現できる、って思える程子供じゃないつもりだけど」

 

 

胸中穏やかではない。出会ったのは本当に一瞬だったが、何処か活発な女の子だった。

環境さえ違えば、悪党(そっち)の道に進む事は無かっただろう、と思う程。

 

 

「はぁ…… ツカサさんってば、やっぱり甘い所がありますよね。盗られそうになった被害者だって言うのに、加害者(向こう)の心配とか……。まぁ 確かに僕も、逃げたあんな幼気な女の子を 追いかけてひっ捕まえて、罰しよう! とまでは 心情的には思いませんが、それでも 商人としては、窃盗、強盗は天敵ですからね。素直に頷けません」

「追いかけて捕まえる、って言うのがオットーに出来るなら、その選択肢も考えても良いと思うけど、結構高望みしてない? 隙はあまり作らない方が良いよ。今のコ凄い速さだったし」

「そ、そりゃ、僕はちょっとした護身術を嗜んでるだけのただの商人ですから。……今、隙が多いと思われちゃってるのは、ツカサさんと一緒に居る事に対する安心感が勝っちゃってるからだと思います。……だから 大丈夫です」

 

 

これからもずっと一緒‼ と言う訳にはいかないだろう。

オットーにはオットーの生活があるだろうし、ツカサはツカサでどうにか生活の基盤の構築から徐々に作り続けなければならない。

 

幸いな事に、纏まった聖金貨を頂けたので、当面は余裕が出来たが、安心しきるのは安定してからだ。

 

 

「……確かにどこか心配になるけど、あんまり心配し過ぎるのは、商人としてこの世界を生きていくオットーに失礼かな。まだ知り合って数日程度だし」

「いえいえ。嬉しいですよ。もう、僕たちは トモダチですしね」

 

 

ニッ、と笑うオットー。

ツカサも何処か擽ったい気はするが、まだまだ右も左も解らない世界で繋がりが広がっていくのは歓迎すべき事だ。それに、オットーは商人。商人であれば それなりに顔の広さは持ち合わせている筈だから、そこからも広がる事を期待しよう。

 

 

 

ツカサは、頷き返すと そのまま城下町を巡る。

 

 

 

王都まで運んでもらう他、王都を案内してもらう、と言う最後の頼みを聴いてもらう為。それは依頼としてではなく、もう既にトモダチに案内する、と言う感覚になっていた。

 

 

 

 

 

一通り、城下町を案内してもらった所で、オットーがツカサの肩を叩いて早口、小声で忙しなく言う。

 

 

「見て下さい、ツカサさん。メイド、メイドさんが居ますよ。凄く珍しいです。ここは、商業施設からは大分離れてるのに。それに、ここは、長居するには好ましくない場所でもありますし……」

「ん?」

 

 

オットーの声に誘われ、視線を右へと移す。

 

確かにこの場所は人通りが多いとは言えない。

 

浮浪者が1人や2人出てきてもおかしくない程静まり返った場所だ。日の当たらない箇所も有る為、大通りや商業区と比べたら圧倒的に暗い。

 

城下町を一通り全て案内してもらう、と言うのがツカサとの約束。

 

本来ならオットーも比較的人通りが多く、安全な道を選ぶのだが、トモダチであるツカサの頼みである事とツカサ自身が居れば大丈夫だろうと言う事もあり一通り案内する為に通っている。

 

そんな場所にメイドとは……。

 

後ほんの少し先に行くと、路上生活者たちの寝床が幾つかある、とオットーに聞かされていた事も有り、確かにオットーが言う様に少々不自然かもしれない。

 

 

「後ろ姿だけど、確かにメイドだね。桃色の髪にあのメイド服。……うん、目立つ」

「でしょ? それにココ、結構古い家屋だから、倒壊の恐れがあるとか無いとかで………。と言うより、何だかメチャクチャ傷ついたりしてる建物が多いから、崩れちゃってもおかしくないですよ、ココ」

 

 

オットーの指摘通り。

デカい棍棒か何かで抉り取った様な後が点々としている。鋭利な刃物でスパっ! と斬った様な傷じゃないから、相応の力だと言う事が解る。高い所にもその傷はついているから、災害か何かが直撃した様な印象だ。

 

 

治安的な意味で悪い場所、安全的な意味でも悪い場所、そんな悪条件下の中でも、やはり10数m先に居るメイドは一切構う事なく突き進んでいた。

 

 

 

 

そして、偶然なのか、或いは必然なのか、痛んだ家屋、その屋根の一部に入った亀裂が大きくなり、その一部が桃色髪のメイドの上に落ちてきた。

 

 

「危ない!」

「ッ……!」

 

 

オットーが叫ぶのと同時に、ツカサは両手を前に出した。

その両手から放たれるソレ(・・)は、白鯨の時のモノに似ているが、当然 力は大分抑えている。白鯨に打ち放った一撃をこんな街中でしたら当たり前だけど大変な事になるから。

助けようとして放ったのに、その周囲一帯、建物やメイド事 空に吹き飛ばしてしまうから。

 

白鯨の時、一発でダウンした時から、ツカサは 力の効率的な運用、更に省エネ運転を出来る様に練習を続けてきている。

最適の力で、最高の威力を出せる様に。無理無意味に放出し過ぎたから、直ぐにガス欠となって失神(ブラックアウト)してしまったのだ。

 

知識は兎も角 力に関しては、ある程度覚えている(・・・・・)からこそ出来る芸当とも取れるだろう。

 

 

ツカサが放った極小の竜巻は メイドの丁度真上で留まり、倒壊する建物の破片を宙に巻き上げ 丁度バリアの役割を果たす。

 

これで、あの場所から逃げれば大丈夫……と思っていたのだが。

 

 

「エル・フーラ」

 

 

ここでまた、想像とは違った光景が広がった。

 

カズキの魔法で支えている間に、メイドがその場から逃げる……と言う算段だったのだが、あのメイドはカズキの竜巻ごと、己が放った魔法で吹っ飛ばしてしまったのだ。

 

 

「余計な真似、したかな」

 

 

弾かれてしまった竜巻を解除。

驚きはしたが、それ以上に安堵もしたので、身体から力を抜いた。少々―――射程範囲外(・・・・・)だから。

 

 

「そうね。余計な真似だわ。ラムを甘く見ないで」

 

 

 

この時初めて正面から、桃色の髪を持つメイド少女の姿を見た。

凛とした佇まいは、何処か隙の無さを強調する様にも見える。

 

 

「―――……倒壊しちゃった建物に驚けば良いのか、メイドさんの力に驚けば良いのか、耳が良すぎる事に驚けば良いのか……」

「ただ安心すれば良いと思うよ。誰も怪我無くて良かった、って」

 

 

そう言っている間に、ラムと言う名の(名乗っては無いが、一人称がラムだったので)メイドが近づいてきた。

 

 

「ラムを侮った事に対しての謝罪は求めないわ。まがりなりにも救おうとしてくれたのだから」

「いや、謝罪求めるつもりだったの!? 何だか強烈なメイドさんだったよ! この子!? とっても可愛い顔してるのに、言ってる事がなんか色々と!」

「聞こえてなかったのかしら? 謝罪は求めないと言ったわ。それにラムが可愛いのは当然でしょ。この世界の真実と言うヤツよ」

「いや、流石にそれは自意識過剰過ぎでは!?」

 

 

ツカサは、2人のやり取りを見ていて、何だか混ぜると面白い組み合わせだと思う。

中々に新鮮なやり取り。見ていて面白いとも思うがとりあえず。

 

 

「それで、世界一可愛いラムさんは、ここで何を? 余計なお世話って思われるかもだけど、何か手がいるなら手伝うよ」

「余計なお世話よ」

「うわっ! 躊躇なくほんとに言った!! ちょっとは謙遜するかと思ったけど!! でも意味予想通りだ!」

 

 

オットーのツッコミも収まりそうもなく、ラムと言う少女もブレない所も確認したツカサは ニコッと笑う。

不思議と不快な気持ちにならないのは、きっとラムが言う通り、可愛いからだろう。可愛い子の可愛い悪戯? の様な感覚だろうか。

 

 

 

「そっか。じゃあ、気を付けて。ラムさんは きっと大丈夫だと思うけど、万が一、って事もあり得る事だし。……ラムさんの事を、無事帰ってくるのを待ってる人だっている筈だから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――桃色の髪のメイド……ラムは思う。

 

自身の主ロズワール・L・メイザースの言葉を思い返しながら。

 

 

それは あの日―――不可解な現象が起きたあの日から言われている事。

 

 

 

見つける(・・・・)事》

 

 

 

主の命令は何においても優先される。

主の願いは命を賭してでも成就させる。

 

その気概を持っているのは違いないが、あまりにも情報が少なすぎる。幾ら完璧である自分を持ってしても、やはり出来ない事はある。

 

 

解っているのは、あの本(・・・)をして、知り得ない事を見つけろと言う事。

魔女が作ったあの本……あらゆる叡智を求め続けた知識欲の権化をして、知り得ない事。

 

 

 

 

正直、それがこの世に存在する事自体が疑わしいとさえ思ったが、それでもラム自身もあの本が暴れだし、文字が走り書きされていく様を目撃しているから……認めざるを得ない。

 

それは主の命であり、悲願でもあるから。

ラムは雲をつかむような話であったとしても、突き進むだけだ。

 

だから、可能性がほんの少しでもあるなら、0%で無いのなら、普段は一笑に伏す所であったとしても、———行動に移す。

 

 

 

「そう。万が一を心配するのなら、手伝ってもらおうかしら」

 

 

 

―――行動する、と決めた時のラムは早い。

 

 

 

そして、当然これまでのラムの言動から、まさか 手を貸す様に言うとは思わなかったオットーは目を丸くさせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……迷子の捜索ね」

「ええ。ラムは探すのは得意なんだけど、ちょっと今日は雲行きが怪しいみたいなの」

「随分素直になっちゃったみたいですね? 何があったんですか?」

「別にそっちは要らないわ」

「何で僕だけそんな辛辣なんですか!?」

 

 

粗方ラムから説明を聞いた。

 

何でも人を探している、との事。その風貌の特徴を粗方頭に入れて、この城下町を捜索、と言う事になった。

 

待ち合わせ場所・時間指定等を決めて。

ラム・ツカサ・オットーの3人で街中を迷子探し開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風貌は確かに聞いたが、その人物に関しての細かな情報はラムは説明しなかった。

その仕草で何となく解る。……探しているのは 相応の重要な人物である、と。

 

 

「予想じゃ、お忍びで来た王族とか、そう言う感じかな? 市政に混ざって色々と体験してみたい、浮かれに浮かれた結果…… 従者であるラムと離れ離れになった、って感じ」

 

 

ある程度の予想を立てつつ、聞き込みをしていく。

一番の特徴は長い銀の髪を持つ少女。

 

 

 

幸いにも、商業区の面々は実に協力的になってくれた。

買い物をする事、それなりに金銭を持っているという事、この2点あれば。

 

 

……無一文だったなら、冷やかしと思われる可能性も高いので、きっといい顔はしないだろうから。

 

そして、地道な調査の結果―――運よく実を結ぶ結果になる。

 

 

「ああ、銀色の長い髪のコなら、ちょい前に見たぜ。兄ちゃんが言う子かどうかまでは確証無いけどな!」

「いや、それでもありがたいよ。結構頑張って情報収集したのに、あんまり成果なくて……」

「かっかっか! その両手の袋みりゃ解る。色んなとこで買いモンして、聞きまくったんだ、ってな! そんでもって、ウチも沢山買ってくれるとなりゃ、知ってる事なら何でも話すぜ! ただし、行先は解っても、肝心のそこ(・・)の正確な場所までは解らねぇ。それでも良いか?」

「全然問題なし! ほぼ情報無しだったから、十分!」

 

 

果物屋の主人が、しっかり覚えていると太鼓判をしてくれたのである。

 

大変だったのは間違いないが、これは仕方が無い。

この人通りの多さを考えたら、いちいち一人一人を覚えているとは中々思えない。だけど、この果物屋の主人、オヤジだけは違った。

 

 

「でも、こんだけの人数で良く覚えてたよね? まぁ嘘だった~ って言うなら、お礼に買おうと思ってた、全種の果物たち、全部まとめて返品する予定にしてるケド」

「誓って嘘じゃねぇよ。銀髪の嬢ちゃんは 目つき悪い黒い髪の兄ちゃんと一緒にちょいと前に此処に来た。何せ娘の恩人だ。そう簡単に忘れたりしねぇ」

「……良かった。オレもオヤジさんの娘さんも。ハイ、代金」

「おう!」

 

 

支払いをしている間に詳細を聞いた。

 

何でも貧民街にある盗掘蔵……盗品を売り捌いている店にいったとの事だ。

何でも盗まれた物を獲り返したい。その為に向かう、と。そして危険も顧みない。それ程までに大切な物だと。

 

 

「兄ちゃんもいくってのかい? あの2人にも言ったんだが……、あまりすすめれる場所じゃねーぜ?」

「貧民街ならつい最近通った事あるし、スリの常習犯っぽい女の子にも注意してきた所だ。大丈夫大丈夫」

「いや、そこは注意するだけじゃなく、衛兵に突き出せよ。女だろうが、子供だろうが何でもして良いワケじゃないんだぜ? ……境遇には同情するがな」

 

 

店を切り盛りしている身からすれば、やはり強盗の類は死活問題だからか表情が険しくなっている。

ただ、女の子、とツカサが言っていたからか、その表情は硬くもなっていた。……娘が居る父親だから。

 

 

「兎に角、初めてじゃねーにしろ、行くんなら気を付けな」

「うん、ありがとう」

「こっちこそ、まいどー! また来てくれよな!」

 

 

 

両手に沢山のお土産を、そして頭の中には有力な情報を抱えて――――ツカサは待ち合わせの場所へと戻る。

 

 

少し、待ち合わせの時間までにはまだ時間はあるが、もう2人はついていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ。啖呵きって出ていった割にはなんて無様なの」

「うぐぐっっ、た、確かにそうですが、ラムさんこそどーなんですか!」

「ラムは今日雲行きが怪しい、って言った筈だわ」

「ほら成果無し! だったら僕と同じでしょっ!」

 

 

 

また楽しそうに絡んでいる。

見ていたい気もするが、有力情報を持っているので直ぐに声を掛けた。

 

「お待たせー」

「遅いわよ、ツカサ。………店巡りして楽しんできたみたいね」

「ツカサさん、お疲れ様です! 早速ですが聞いてくださいよ! ラムさんが酷いんです! こんな短期間で有力な情報なんて、普通に難しいって分かる筈なのに…………………え?」

 

 

オットーが愚痴を始めたが……、ツカサの笑顔と握りこぶしを前に出す所作を見て、固まった。

 

 

「有力情報得てきた。これお土産」

「ラムはこれを予見していたのよ。先見の明があったからこそだわ」

「ツカサさんはやっぱ凄いし、ラムさんは そんなのズルい! メチャクチャ後付け感満載なのに!!」

「まぁまぁ。勿論 外れって可能性も十分あるけど、一先ず説明するよ」

 

 

両手に持った袋を下ろして、仕入れた情報を説明しようとしたその時だ。

 

 

 

「ッッ!??」

 

 

 

突如、世界が歪みだした(・・・・・・・・)

 

 

 

 

「な、に……!?」

 

 

 

人も建物も、目に映る全てが歪に歪みだした。

目の前のオットーも、ラムも。その表情は一切変わらない。その身体が、表情部分以外が不自然に歪み、捻じれ、軈て……全てが崩壊した。

 

 

「おっとー、ら、らむ……、ぐ、が、ぁ………」

 

 

2人が、建物が、世界がバラバラになった次には、自分自身。

 

大地が闇に消え、足先から徐々に身体が粉々に砕けてゆく。

 

一切動く事が出来ない。ただただ、信じられない程の苦痛だけが津波の様に襲ってくる。

どう表現していいか解らない程の痛み。対応しようにも何も出来ない。一切の手段を遮断されている。

 

 

 

 

「う、が、が……ギッッ!!?」

 

『ほほぅ……、この鳴動、時空振か』

 

 

 

 

身体が粉々になり、砂になり……闇に呑まれていく。

 

 

 

 

『時の流れをも変える力、か。…………やっぱり面白い!』

 

 

 

 

 

そして、永遠に続くとさえ思えていたありとあらゆる苦痛が、身体が完全に闇へ消えると同時に、消失した。

 

 

 




言葉に出来ない苦痛を味わえば……タイトル通りになりそうな気がする

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