Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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ツーダウーーン( ≧∀≦)ノ


怠惰③

「スバルくんっっ!!」

「どわぁぁっっ、っちゃちゃちゃ!! ちょいまて、レム!! ソレ、凶器のソレがヤバイ、びゅんびゅん動いてる、動いてる!! うわあっっ、怖いぃぃ!!」

 

 

 

 

巨悪は討った。

スバルも無事、皆も無事だった。

確かに、村は守れなかったかもしれないが、それでも魔女教相手に正面からの戦闘では完勝した、と言って良いだろう。

 

 

そして、勝利の後のご褒美……と言えるかどうかは定かではないが、レムの抱擁がスバルを彩る。

但し、戦闘直後だった為、レム護身用のモーニングスターも一緒にスバルに抱き着く。

 

レムが押し倒し、倒れた頭の丁度横にモーニングスターがずんっ! と降りてくる。

感慨極まったとはいえ、レムも流石にスバルに当たらない様に配慮はしているだろう。夢中になり過ぎてると思うが、それでも。……………多分。

 

 

 

「あんな男の何処が良いのかしら」

「ま、まぁまぁ。……アレ(・・)に言った事だけど、好いた惚れたは個人の自由。スバルを仇だと怒って追いかけまわしていた、あの時のレムと比べたら。オレは断然こっちが良い」

「―――……そのレム(・・・・)の事は知らないけど、想像は出来る。だからラムも同感よ」

 

 

 

親愛なる妹が選んだ相手(バルス)に対しては、頗る不満が募るラムだったが、ラム自身が心から選んだ相手の言葉は、スムーズに脳内へと入ってくる。

 

涙を流しながら喜んでるレムと、怒りに我を忘れた鬼のままのレム。どちらが良いかなんて、考えるまでもない事だから。

 

 

「―――ラム、アーラム村は……」

「………………」

 

 

 

ツカサの言葉に、ラムは首を左右に振った。

アーラム村の惨状については、ラムが先に把握したのだ。

 

彼女が持つ力、千里眼の力を用いて。

 

千里眼で確認をした時、ラムと波長の合う生き物でさえ、激減していたらしい。

つまり、そこまで破壊をされていたと言う事だろう。裏を取るまでもなく、その後はっきりと見えた。

 

 

村は焼かれ、住人達は無残にも惨殺されたその光景を。

 

 

「………残党をどうにか処理。アイツらが情報を漏らすとは思えないから、ここ以外の拠点にしてた場所とかの情報をどうにか得て、後は………村の皆を弔ってから、戻りたい」

「ツカサ。……苦しいし、辛いわよ。戻れるなら、見ない方が良いとラムは思うわ」

「……いや」

 

 

ラムの提案に、ラムの優しさに、ツカサは感謝をするが、それでも首を横に振る。

 

 

 

「……起こった未来の1つとして。……世界を壊すも同然なオレ自身は覚えておかなきゃいけない、って思ってるから」

 

 

 

言うまでもない事だが、この未来……、つまり過去に戻った後する事はこの未来の回避だ。

つまり、この世界は壊れるも同然。並行世界(パラレルワールド)として続くのか否かは、正直断言できる訳ではないが、少なくともツカサの能力は上書き系であると言う事は認識している。

 

 

Aと言う世界線の過去は、実はAではなく、Bと言う世界線。

つまり、そこで紡いだ歴史は、その世界の未来はAではなくBとなる………。

 

 

と言う事では無く。

本当にAと言う世界の過去に戻り、そのまま上書きをする。つまり、元あった世界とは似て非なる未来。つまりは世界の破壊。

 

その議論は気が遠くなる程、身に住まうあの存在(クルル)と話をした―――様な気がする。

 

 

 

「……わかったわ。でも、1人で抱え込まないで。―――ラムが傍に居る事を忘れないで」

 

 

 

立ち尽くすツカサの手を握る。

その手の温もりが、ラムの温かさが手から伝わって心にまで入ってくるのが解る。

 

心の中にラムが入ってくるのが解る。

 

 

「ありがとう」

 

 

だからこそ、こんな時だと言うのに、心からツカサは笑う事が出来た。

惨劇を目の当たりにする勇気が。

 

 

 

「スバル、レム」

「おう」

「……はい」

 

 

 

2人も大体悟ってくれたのだろう。

レム自身はラムと繋がっている事、それに何より事前にラムと話をしている事もあった。

 

 

 

この場で直ぐに過去へと戻らない………と言う事はつまり、そう言う(・・・・)事だと言う事を。

 

 

 

 

 

「アーラム村の皆には、悪いけど……、まずはエミリアさんだ。情報を集める前に、屋敷の無事の確認しないといけない。……パックが暴れてない所を見ると、無事とは思うけど、この目で……ね」

 

 

 

アーラム村の皆を弔う。

そう言っていたツカサだったが、断腸の思いで優先順位を切り替えた。

 

ペテルギウスは、試練の前の人払い、だと言っていた。

 

つまり、恐らくは試練の内容はハーフエルフであるエミリアの殺害だろう。

人払いとは、周囲一帯の人間を皆殺し。目撃者を皆無にさせる事。

 

400年間、尻尾を掴ませない、と言う理由は恐らくここにあるのだろう。

目撃者を1人も残さない。或いは、指先と呼ばれる配下の様に、容易く切り捨てる。情報共有しているのも怪しい。

全ては、大罪司教と呼ばれる存在が魔女教の核だ。

 

だが、その配下。指先と呼ばれる連中が、頭であるペテルギウスを失ったからと言って、止まるとは到底思えない。

 

 

 

「あのイカレ野郎は、怠惰だ、っつってた。……大罪ってのが、そのまんま七つの大罪の意味なら、後6人居るって事だろ? ……そいつらが纏めてここに来てるって可能性は……?」

「………いいえ。恐らくそれは無いかと。大罪の名を冠する痴れ者は、怠惰を含めた大罪6つだと言われてます。伝え聞いた話によると、大罪司教は夫々競い合う間柄にあると言う話があるそうです。……魔女教の中でも特に有名とされるのが《怠惰》と《強欲》の2人です」

「……《怠惰》の次は《強欲》と来たか。やっぱ七つのソレで確定だな。キリスト教の~~ってヤツか。……。オレの事、傲慢? とか聞いてきたし、空席があるかもしれねぇのは朗報だよ。あんな気味が悪い奴が欠けてくれるってんなら上々だ」

 

 

残りの魔女教大罪司教。

 

 

怠惰を葬った事で、残存する魔女教が攻め入ってくる可能性を考慮していたが、競い合う関係性もあると言うのなら、仇討ち、と言った感覚で攻め入ってくる可能性は低いと言える。

 

勿論、警戒するに越したことは無いが。

 

 

「無駄話はそこまでにして、さっさと行くわよ。……屋敷へ」

 

 

考察は推測の域を出ない。

この場で考えても得られるものは少ないだろう。

 

だからこそ、ラムの一言で会話は切り上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森を超えて、アーラム村を横切る。

 

死臭が立ち込める地獄と化した村。生き物が焼ける臭いがまだ鼻の奥を突いてくる。

目を逸らしたくなる光景が、そこには広がっていた。

 

 

「―――……ジ・アース」

 

 

屋敷に向かう為には、アーラム村を通らなければならない。迂回するとなると、数が減ったとはいえ余計な魔獣と遭遇して時間をよりロスしてしまう可能性だってあるからだ。

 

だからと言って……、このまま村を素通りする事は出来なかった。

目に映る範囲内ではあるが、その無残な亡骸を、ツカサは魔法で大地操作を行い、今度は逆に地を陥没させた。

 

 

全員……はまだ出来ない。

少なくとも目に入る者たちだけは。地を陥没させて土葬として弔う。

 

 

 

 

「……絶対に、助ける。約束……するっ……」

「ペトラ……、リュカ……っ」

 

 

男だろうと女だろうと子供だろうと関係ない、と言わんばかりに破壊の限りを尽くされたアーラム村。

そこには、いつも遊んでいた子供達の姿も目に入った。

親子共に抱き合う形で剣を身体に突き立てられている。そして、壁に貼り付け、四肢を捥がれている。

 

 

レムもラムも、優先すべきは死者より生者、と解ってはいても、戻れると解っていても、割り切れない。胸中穏やかでいられるワケが無い。

 

領民の不利益は領主の責任。つまりロズワールの責任にもなる。主の為に命に代えても……と務めてきた彼女達にとって、この光景はあまりにも残酷過ぎる。

 

更に言うなら……、幼き日にあの炎に呑まれた村とこのアーラム村は、既視感を覚えてしまうのだ。

 

必要最低限の行為とは言え、早く、先へ行かなくてはならない、そうは思うが誰一人それを口に出して言える者は居なかった。

 

比較的気丈に接する事が出来るラムでさえ、その言葉は呑みこんだから。

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

「油断―――デスね!!」

 

 

 

 

 

あの不快な声が、場に響いた。

 

「「ッッ!!?」」

 

咄嗟に、ツカサは振り返り、傍に居たスバルの首根っこを掴んで、自身の後ろへと追いやった。

そして、次の瞬間には、同じく警戒していた不快なあの黒い手が迫ってくる。

 

 

迫る相手は、ツカサでも無ければスバルでもなく―――。

 

 

 

「あぐっっ……!!」

 

 

狙いを定められていたのはラムだ。

ラムとレムは、あの手を見る事が出来ない。知覚する事が出来ない不可視の(見えざる)手だから。

 

 

 

「油断、油断油断油断油断油断しましたねぇ……? あ、ぁあぁぁぁあ、脳が、脳が……ふる、えるっっ!!」

 

 

 

焼け爛れた家屋から、1人の男が出てきた。

全身をあの黒装束に身を包んでいる、指先と呼んでいた

 

 

 

「なん、なんだよ、お前!! ペテルギウスの、指先!?」

「姉様!!」

 

 

レムが手を伸ばすが、ラムは高く持ち上げられ、倒壊してない家屋に叩きつけられる。

 

 

「ぃッッ!!?」

 

 

「そう、そうそうそうそうそうそう!! ワタシは、指先!! 指先!! ワタシは寵愛に報いる者! 試練を執行し、愛の導に従い、忠実にして親愛なる使途! さぁさぁ、怠惰なるアナタ!? そう、アナタデスよ!」

 

 

フードを脱ぎ捨てた男の顔は、ペテルギウスのソレではない。あの瘦せこけた骸の様な素顔ではない。

 

狂気に満ちた目付きをしているのは正しいが、同一人物とは思えない。

 

 

「まだ、アナタ、アナタ‼ ワタシの見えざる手が見えている。本当に見えている!? 非常に不満、不服、不本意、不愉快、不条理、不合理!! 寵愛の欠片も無いアナタが!? 何故、何故何故何故何故見えると言うのデス!!」

 

 

 

ペテルギウス(?)は頭を掻きむしり、左右に揺らし、そしてその首を90度折り曲げる。

姿形は違えど、その所作だけは見間違える筈がない。

見えざる手以上に、間違える筈がない悍ましい代物だ。

 

 

 

「しかししかししかししかぁぁぁぁし!! アナタのその行いこそが!! この少女を殺スのデス!! アナタが今、この少女を殺スのデス!! ワタシの腕で! 指で! アナタがアナタがアナタがアナタがぁぁぁぁぁぁ―――――!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何を殺すんだ? その手で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……は?」

 

 

ここで、奇妙な事が起きた。

ペテルギウス(?)ははっきりと見ていた筈だ。

 

見えざる手で掴んだ桃髪の少女。

その少女を獲り返そうと藻掻き足掻き、無作為に、無情に、無駄に、行動をしようとしている青髪の少女。

 

そして傲慢ではないか、と疑っている男は後ろに、それを庇う男。

 

 

愛よりも先に、傲慢を庇おうとするその所作には、怠惰なるペテルギウスも呆れると言うモノではあったが……、ここで奇妙な事が起きた。

 

 

 

揶揄者(ザ・フール)

 

 

 

見えざる手。

その手の中に居た筈の少女の姿はそこには無い。

 

その代わりに、あの男の――――……、あの男の腕の中に。

 

 

その思考の停止。僅かな停止期間ではあったが、それは十分すぎる程の隙。

驚き固まったレムも、それは同じであり、逆にペテルギウスに近付き過ぎる事が無かった事が功を成す。

 

 

突如、現れた2つの氷柱が、まるで意思を持ったかの様に動き、ペテルギウスを挟み込んだ。

 

 

 

 

「デュアル・インヴェルノ」

「ぎゃあああああああ!!」

 

 

 

 

ペテルギウス(?)の身体を挟み潰さんが勢いだったが、絶命させる直前の威力でソレは止まる。最も苦痛が続くタイミングだと言って良いが、それがこのペテルギウスと言う男に対しての罰に成るとは到底思えない。

 

 

 

「ラムを狙った。それだけでも万死に値。……が、聞いておかないといけない事が増えた。元々、聞くつもりは無かったが」

 

 

 

氷柱に閉じ込められているペテルギウスの頭だけを引っこ抜く。

 

 

 

怠惰(お前)は、()だ? 自分が複数いる。とでもいうのか?」

 

 

 

怠惰の狂気に勝るとも劣らない程の狂気。こちらは怒りではあるが、睨むだけ人を殺しそうな眼でペテルギウスを見た。

だが、この狂人は、その眼はツカサを見ていない。まるで濁っており、何処を見ているのかさえ解らない。

 

 

 

 

「あ、ぁぁぁぁあああ、アナタ、アナタこそが、我が試練、最大の脅威……、なのデスね……、そう、そうそうそうそうそうそうそう、アナタを、アナタこそを、超えた暁に!! 魔女の、サテラの、最愛を、寵愛を慈愛を友愛を、この身に、この身に、この身に」

 

 

 

 

そう、ペテルギウスに話が通じないのは解りきっていた事だ。

そして、他者の怒りが、己の苦痛が、――――己の死が、この狂人には何の影響も与えないであろう事も。

 

 

だが、その狂気も、その自信も、恐らくは自分自身の力。まだ明かしていない力に依存しているだろう事くらいは解る。

絶対的な死の状況においても、本当の意味でペテルギウスを追い詰めたワケではないと言う事だろう。

 

仮に、ここで頭を砕いてもまた、復活する。そう想像は容易だ。

 

その異能……権能の正体を、その根幹を握り締めないかぎり。

 

 

 

 

 

「ケタ、ケタケタケタケタケタケタケタ……」

 

 

 

 

 

 

 

この狂人の笑みを止める事は出来ない。

 

 

 

「そう、アナタは半魔の娘を、守護する試練の最終関門!! 否、門番! 番人!! 故に故に故に、試練を超えるには、試練を開始する為の門を超えるには、アナタを超えなければならない!! だが、しかししかししかししかししかししかし、しかーーーーーし………?」

 

 

 

 

 

ペテルギウスは、何ら怯む事は無い。

その氷に砕かれる寸前の半身を、飛び出る勢いの眼球で見下ろし、ニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「アナタ……、ここに居て(・・・・・)良いのデスか?」

「何?」

「試練の門番たるアナタが、その道を、道筋を、答えに至るまでの道筋を!! ―――――素通りさせ過ぎではありませんか? その権能!! 試練の門番に足り得る権能をお持ちの様だが、かの村をお救いにならない? 少女を救っても、村は救わない怠惰! それ即ち、全てにおいて、アナタの手が全てに届くと言う訳ではないと言う事の証明」

 

 

 

混乱していた様で、冷静になっている頭も何処かにはあるのだろう。

ラムを助けた。まるで、時を止めたかの様に。不可思議にして、摩訶不思議な力。だがそれでも、それ程までの力を有していたとしても、あの焼け落ちた村を救う事はしなかった。……否、出来なかった。

 

 

 

 

「アナタを超える事、それ即ち、試練が果たされる。……と言う事では無いと言う事デス。アナタは、試練に至るまでの道を防ぐ番人。その番人が、門番が、この様な離れた場所に居る。――――――ああ、つまりアナタは…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――怠惰デスね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、ペテルギウスの身体は爆散した。

ペテルギウス自身が自爆したのではない。

 

何処に身を潜ませていたのだろうか、指先と呼ばれる黒装束の者たちが、一斉に火の魔法《アル・ゴーア》を放ったのだ。

 

 

合わさり、束となった炎は一本の巨大な槍となり、ペテルギウスを凍らせている柱に直撃。

そのまま、ペテルギウスは一瞬で灰になったのだった。

 

 

 

 

 

 

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