Re:ゼロから苦しむ異世界生活 作:リゼロ良し
そして、ほぼ原作通り( ´~`)
ツカサ君出番なし……(;>_<;)
ラムちーもほぼ。
レムりんも……
スバルくんがんばれーp(^-^)q
「――――では、聞かせてもらおうか。ナツキ・スバル。この集まりの趣旨を。――――卿の口からな」
場面はカルステン家、応接室。
熟考を重ねて、練りに練った策を、明るい未来を目指す為に、今こそ見せ時だとスバルは力を入れた。
曲がりなりにも、英雄を目指そうと決めた時から。自分を信じて託してくれたツカサやラム、そして自分を英雄としてみてくれるレム。
強い想いがスバルの中にあるからこそ、この一貫して甘さが無い鋭い視線のクルシュを前にして、決して怖気付いたりはしない。
「そりゃ、勿論。……エミリア陣営とクルシュ陣営の、対等な条件での同盟―――その為の交渉がしたい」
隣には左右にはレムとラムが。
そして、少し後ろにはツカサが。
怯える必要が一体どこにあると言うのだろうか?
陣営最強の布陣である、と断言できる。
ここにロズワールが……、エミリアが加わればどうなるだろうか?
最早、それは陣営最強どころか、世界最強だとさえスバルは思える。
魔女教だろうが、白鯨だろうが、恐るるに足らない。
これは最初の関門である。
位置的には、最初にして最大の関門―――としていたが、一切怯む事なく、スバルは真っすぐにクルシュを見据えていた。
―――世界を、またやり直した。
ツカサの力で、情報収集を第一に考え、可能な限りの手札を揃えてきたつもりだ。
最初にして最大の関門。クルシュ陣営との同盟の交渉を超える為に。
「ほう。……同盟か」
クルシュは考え込むように、わずかに顎を引き、そしてレムとラムの2人を見た。
探る様な視線は、その心の奥まで見据えているかの様だ。
だが、2人は一貫としてブレる事は無い。
「ロズワール様の言いつけ通り、レムは何も申し上げていません」
「ロズワール様の言いつけ通り、ラムは何も申し上げていません」
そして、一歩レムは前に出た。
いつもシンクロしていたレムとラムの所作が、違える瞬間でもある。
しっかりとスバルの横に立つレム。本当の意味で、支える人はスバルだとレムは決めているからだ。ラムがツカサであるように。
「―――全ては、スバルくんがご自分で辿り着いたことです」
心からの言葉。敬意や尊敬の念。淀みの無い風をクルシュは見て、ゆっくりと頷いた。
「卿らの忠義を今更疑う訳ではない。だが、そうか―――此度の交渉はナツキ・スバルに権限が委譲されたと受け取って良いわけだな?」
「ああ、そうだ。―――クルシュさんにとっては意外かもしれねぇがな」
「意外? ほう―――私がそう感じた、とするその根拠は」
「クルシュさんと違って、オレは風を読んだり、見たりする事は出来ねぇ。……でも、ほんの一瞬視線が動いたのは ばっちり見えた。直ぐ後ろに控えてくれてる、最高にして最強にして、もう、何個二つ名つければ良いか解らねぇ男が、エミリア陣営最強の男が、直ぐ側に控えてんのに、何で無能なナツキ・スバルなのか、ってな」
スバルの言葉に、クルシュは一瞬だけ視線を狭めた。
数秒交差するスバルとクルシュの視線。……軈て、クルシュは目を閉じて、少しため息を吐く。
だが、クルシュの前に認めたくない、認めたくない、と表情は笑顔で。ブツブツと呪詛を呟くかのように、フェリスが青筋浮かべて言った。
「スバルきゅーん。大切な交渉の場面で、自分下げ、相手上げ、それに更にクルシュ様の心読もうとするのは、よくにゃいと思ったり? 思ったり??」
風見の加護で、相手の嘘を見抜く……つまり、心を読むも同然な所作をしてきたのはクルシュだろうに。自分たちは良くて、相手方はダメだ、と言うのは筋が通らない話だと思えるが、フェリスのそれは、感情論全開なので、ある意味理不尽に聞こえてくるのも仕方ない。
「よせ、フェリス。……私にも困ったものだな。こうも素直に暴かれると恥ずべき行為であり。ナツキ・スバル。卿をも侮辱する事に繋がる。即座に否定できなかった事もな。……私の好みの問題とはいえ、許せ」
「いえ。普通の感性だと思ってますよ。あの王城でのことを考慮すりゃ、どう考えても」
「……ならば、こちらから問おう。そこまで卿自身も認めておきながら、権限を自身に委譲された事に対し、迷いの類は無いのか?」
そこまで言った所で、後ろで控えていたツカサもゆっくりとした動きで、表情を動かし、微笑んだ。
「エミリアの一の騎士を目指す。そう心に決めた。覚悟もな。
はっきりと、真っすぐ見据えるスバルの風は、実に心地よいモノだった。魂の在り方、その者の価値は、魂の在り方と輝かせ方で決まるのだと言う事を信条としているクルシュだからこそ、その輝きをはっきりと受け取った。
「……たった数日で、見違えるまでに変わるものなのだな。認識を改めなければなるまい」
「フェリちゃんも、ちょっぴりビックリ」
2人の見る目がはっきりと変わったのをスバルは見た。
「今、はっきりと認めよう。ナツキ・スバル。卿がメイザース卿の名代、並びにエミリアからの正式な使者であると。この交渉の場において、卿と私の間で交わした内容はそのまま、エミリアと私の間で交わされたものであると」
はっきりと認めてくれた事。
これは僥倖……と言えなくもない、交渉事に関しては、あまり関係のない部分でもある。
いわば、クルシュの本気をスバルはその身で味わう事になったのだから。
先ほどまでのクルシュとはまた一味も二味も違う。狙って威圧などしている訳ではないだろうが、今まさに明確に、これまでの私人としてではなく、公人として、クルシュ・カルステンへと意識を切り替えたのだ。
ルグニカで最も王座に近い女傑。これが彼女の本来の姿なのだ、と言う事だろう。
漸く、同じラインに立てた事を誇りに思うスバル。
今の今まで、これまで、後ろで背を守ってくれている男は、このクルシュを相手にしていたのだ。
漸く、本当に漸く――――1歩、いや半歩前に進めた。
「……故に、メイザース辺境伯の思惑を見抜いたのも卿である。今は風を見るまでもなく、信じるに値する」
「……それは評価が上がったようで何より。ロズワールも随分そこ意地の悪い真似してくれたもんだけどな。そもそも、あの変人がこの時期に、レムやラム、更にツカサまで期日を決めずに手放すなんて、到底思えない。人手不足は自明なのにな。……何かしら裏がある、って考えるのが自然だ。……むしろ、気づくの遅ぇ、って突っ込まれる所だよ」
「ふむ。そして当家との交渉事に行きつく、か。……だが、既に卿は聞いておろう。交渉……エリオール大森林の魔鉱石の採掘権の分譲を提示された上で、合意には至っていない、それは承知しているはずだな?」
ゆっくり、それでいて大きく頷いて見せた。
何ら迷いのない真っすぐな瞳。
ナツキ・スバルと言う男の姿を、クルシュもその目に焼き付ける。
「それは、改めてこっちも確認したかった事項だ。今の条件じゃ足りない。互いの陣営への過干渉なしに、エリオール大森林の採掘権の分譲、採掘された魔鉱石自体の取り扱いの細部は後で詰めるにしても」
「草案については、既に2人から提示されている。……流石はメイザース辺境伯、というべきだろうな。自陣の利益を十分に確保したうえで、当家を納得させられるだけの利を提示している。本来ならば、断るような事はあり得ない。直ぐに同意書を用意させたくなる条件ではある……が、私が王選の盤石を急いで進める必要はない、と感じているのも事実。期限は3年だ。あまり早急に状況を動かしてしまえば、後々に禍根を残す事になるだろう」
魔鉱石の採掘権の分譲。それは大いに利のある話だそうが、早急に決めなければならない案件である、と言う訳でもない。
クルシュは、今でこそ口には出していないが、恐らくエミリアがハーフエルフである、と言う事実も考慮している事だろう。
スバルをはっきりと認めたからには、そういった先入観を前に持ち出すのは悪手だと感じているからこそだ。
勿論、クルシュもエミリアの事をハーフエルフだから、と差別的な考えを持っている訳ではない。
あの王城で、王選の場で、はっきりと対立候補の1人である。敵対するに値する……全霊をもって戦うに値する相手である、と敬意を示しているからだ。
「つまり、エミリアと同盟を結ぶことのメリットが、デメリットに見合ってない、と言う事か?」
「それも少し違うな。現状メリットとデメリットは打ち消し合っている。だが、先ほども言った通り、早急と言える場面ではない。……あと一歩、こちらの背を押す口実が欲しいと言ったところだ」
クルシュ個人としては乗り気であるのは、その言葉から感じるが、事は王選絡み。慎重になるのも解る。それに加えてカルステン家、と言うのはそう簡単にクルシュの意のままに動かせる存在ではない、と言う事もあるのだろう。
だからこそ、もう一歩。
クルシュが認め、更には周りをも黙らせるに足る一押し。
ハーフエルフである、と公になっても尚、周りを黙らせるに足る最強の一手。
「―――じゃあ、クルシュさん。オレからもう1つ、差し出させてもらう」
「……ほう?」
空気が変わったのを感じた。
風が吹いているのを感じる。
形容しがたい風が、大きくエミリア陣営から。まるで暴風のように。
「―――同盟締結のために、うちから差し出せるカード。採掘権と、とある情報だ」
「情報? ……聞かせてもらおう、察するに卿の持てる最大の手である、と私は考える、その情報とやらを。……そして、それが果たして、こちらを動かせるに足る
手を差し出し、スバルからの情報を待つクルシュ。
感じる風の正体……それを知りたいが故のはやる気持ちが、そこにある様に感じる。
スバルは目を閉じた。
目を閉じて、視界以外の五感でこの場にいる味方の3人を感じ取る。
隣にはレムが、傍にいてくれる温もりも感じる。そしてもう1つ、反対側のラムが。ぶっきらぼうではあるし、スバル自身ではなくツカサを信じろ、と言っている様にも感じるが、それはそれで助かると言うものだ。
最後に、直ぐ後ろで控えてくれているツカサが。
一歩、前に歩を進めたのを感じた。感じ取れた。
迷わず、躊躇わず、前へと進め。進める、と自分の背を押してくれたように思える。
絶対に大丈夫。
この瞬間の為に、準備を進めてきたのだから。
皆を信じる。……そして、話に乗ってくれるクルシュの事も。
「―――白鯨の出現時間と場所。それがオレの切れるカードだ!」
時には、ハッタリと言うのも大切だ。
如何に自分を大きく見せ、口のうまさで、それがさも真実であるように、虚実を交えて交渉事を進めるのもテクニックの1つだ。
だが、今はスバルはそう言った猪口才な小細工を弄する必要性さえ感じていない。
ただただ、皆を信じて歩を進めるだけ。差し出した手は、もうひっこめないし、ひっこめる気はさらさらない。
「―――白鯨」
そんな時だ。
スバルの言葉に一番強く、そしてあらゆる負の感情を込めながら言葉を発した男がいた。
今の今まで、フェリスとは違い、一言も言葉を介さず、ただただクルシュの剣であり続けた男……ヴィルヘルムである。
一瞬ではあるが、その一瞬で十分過ぎる。
前に進む、信じて進むだけを考えていた筈のラムやレム、そしてツカサまでも、警戒させる程の圧。
剣鬼と呼ばれる男の、身体の内側にまで抉られる、そんな剣圧を真正面から、一切隠す事なく向けられている。
そんなヴィルヘルムだったが、直ぐに圧を収めた。
首を左右に振り、深々と頭を下げる。
「……大変、失礼を致しました。私もまだまだ未熟ですな」
「いや、構わん」
ヴィルヘルムの性格上、粗相を犯したとすれば、この場より退出する、と言い出しかねないので、出鼻を挫くクルシュ。
と言うより、クルシュ自身も混乱の渦中にいると言っても過言ではない。表面には決して出さない様にしているが、あまりにも予想外の言葉だったからだ。
「白鯨とは、聊か唐突な単語が出てきたな。卿の語る白鯨とは、《霧の魔獣》こと三大魔獣の一角のことと考えていいのか?」
「ああ。霧をばらまきながら、空を泳ぐ巨大なバケモノ。……そんな相手と一戦やって見せた男がオレの傍にいるんだぜ? 今更確認するまでもねぇよ。………それに、唐突でもない、とオレは考えているぜ。……白鯨を討伐する。それを計画しているクルシュさんにとっちゃ、絶対に役立つ情報だと、オレは思っているからな!」
「………………!」
確信をもって話をしている。
逆巻く風が、沸き起こる風の全てが、ナツキ・スバルの自信の表れだと言う事がクルシュには見えた。
そして、それは控える一同全員に共振している事も。
「………1つ、考えを聞こう。ナツキ・スバル。その発想の根拠はなんだ? 言いがかりでは済まされない類の発言だぞ?」
クルシュの圧が一段と強まるのを感じた。
周りの仲間たちが居なければ、臆してしまう、屈してしまう、と思える程の圧力を。
弱気には決してならない。自分には不相応とも言える仲間たちが居るのだから。
「……根拠、か。ここ何日かでいくつか引っかかったんだよ。まず、クルシュさんの屋敷の出入りの多さだ。ちょっとばかし、人と物の出入りが多すぎる。加えて、クルシュさんが武器や防具を買い集めてる、って情報も王都で聞いた。――――おまけに、クルシュさんが何かでかい事を企んでる、ってことも」
繰り返したからこそ、情報を収集する事が出来る。
そして、クルシュだからこそ、これらの情報は最短にして、最高の威力を発揮する。
そう、彼女の風見の加護だ。
事細かな詳細を説明せずとも、今言ったスバルの言葉が嘘ではない、ハッタリではない、と言う事がクルシュには確認するまでもなく理解できるからだ。
繰り返す時間の流れ。その中でも矛盾と言うものは存在する。
何せ、今スバルが言った情報の殆どは、今日得た物ではない。数日後の事だからだ。
今の時間軸ではまだ知る事が出来ない情報も混ざっているのだ。
「確証がはっきりある訳じゃないんだ。……だけど、近いうちにまた、あの白鯨が現れるのを知ってるからこそ、関連づけちまってるだけかもしれねぇ」
「……ならば、もう1つ問おう。ナツキ・スバル。卿が白鯨が現れると知っている、その根拠は?」
クルシュのその問いは当然の事であり、十全に入念な打ち合わせをしてある。
それも――――あの三大魔獣の一角、巨大にして、強大な白鯨と既に接触している上で。
「これだよ」
懐から、スバルは掌サイズの金属を取り出した。
白いメタリックなボディライン、鮮やかに光り輝く物体。明らかにこの世界の者ではないと言うのが解る。
少なくとも、ルグニカ王都ではお目にかかる事が出来ない代物。
「――――これは一体なんだ?」
「いわゆる、《ミーティア》ってヤツでな。こいつが白鯨の現れる時間と場所を教えてくれる。精度に関しちゃ、信じてくれて構わねぇ。――――安く見積もってる訳じゃねぇけど、ここでも、上乗せ。この命賭けるつもりだ」
その気迫。嘘ではない事は十分解る事ではあるが、それ以上にミーティアと呼ばれた金属に興味が移っている。
「見慣れない金属のようですな……」
「ふむ………。む? 開いたぞ……」
「わっ、光ってる?? それに見たことない文字も……」
スバルの故郷の文字だそうだが、この場でそれを解読できるのは紛れもなくスバルただ一人。それは全幅の信頼をおいているツカサにも出来ない事だ。
「卿には、これが使いこなせるのか?」
「全部って、訳じゃねぇけどな。……信じてくれて良いぜ」
「……にわかには信じがたいが、嘘の風は見えないな」
「クルシュさんに、その加護がある事。今程喜ばしく思う事は無いぜ。……掛け値なしだ。だからこそオレの全てを賭けたんだ」
「その姿勢は好ましくあるが、まだまだ早計だぞ、ナツキ・スバル。―――何故なら、同盟を結ぶかどうかとその情報を信じるか信じないかは別の問題だ。事は王選の。……否、この国の未来をも左右する判断だ。軽はずみには行えまい」
背をこれ以上ない程に押した。
だが、それでもまだ足りなければ、最悪の場合クルシュの情にも訴える事になるかもしれないが、ツカサの事を買ってくれている面をも惜しげもなく使う事になる。
今でこそ、ナツキスバルと相対しているからこそ、ツカサの事は考えない様に話しているようだが、間違いなくスバルの情報に加えて、ツカサの存在……白鯨を単独撃退出来た者も居れば、討伐成功率が増すのは、最早クルシュが確認するまでもない周知の事実。
ツカサの存在は既に公のものになっており、ハーフエルフであるエミリアと肩を並べるとさえいえるもの。
政治利用をしようと思えば、クルシュ程の者なら幾らでも使い道を導きだすだろう。
好ましくないと思われるかもしれないし、当然ながら、味方にも罵声を浴びる覚悟。……いや、実際は浴びた。主にラムから。
でも、それでも命には代えられないから。
あのアーラム村の住民たちの命には……。
その時だった。
『そのお話、ウチらにも聞かせてもらってもええ?』
『失礼します。出戻りとは、聊か居心地が悪いものですが』
新たな来訪者が現れた。
もう数人来る――――とクルシュには伝えていたが、人物の詳細は明かしていない。
だからこそ、その人物には驚きを隠せられない。
「アナスタシア・ホーシン!! ラッセル・フェロー!!」
方や、王選候補者にしてホーシン商会のトップ。
方や、ルグニカ王都商人組合の代表。
大物が一同に会す……と言っても大袈裟ではない程の集まりだ。
「なんや、呼び出されたのに先に進めてるなんてズルいやないの。ウチも混ぜたって? それに、安心してええよ。ユリウスならこぉへんから」
「……だろうな」
「あら? そこまで気にしてへんのや。こら、予想外やわぁ」
ユリウスの現状については、ツカサ経由で知っているし、ユリウスの本心も知っているつもりだ。認めるか認めないかは自分次第。
色々と濃い出来事が何度も何度もあったので、今はユリウスの事まで頭が回っていない、と言うのが本音な部分はある……が、譲れない部分があるとするなら、エミリアとの恋敵の様な視線くらいだろう。
「……呼び出されたとは、卿を呼んだのは……」
「そうやで? 正確には、ツカサ君と桃髪の女の子にやね。大まかやけど、話は聞かせてもろうたよ? 白鯨の討伐。ほんまやったら、大いに期待するわ。うちら商人にとっては白鯨がおるおらんは死活問題やし、今回の期待値は結構高いんやで?」
アナスタシアは、クルシュの方を見ていたが、視線を変えて、ツカサの方を見た。
「次は白鯨を落とそう、なんて力強ぉいうてた、英雄も参戦するとなれば、期待せざるをえん、ってヤツやな。うちらの傭兵団も手ェ貸すよ? これで終止符打てる。そんな場面に立ち会えるなんて、血も騒ぐもんやわ」
「……ああ、期待してくれ。つっても武力面じゃ、オレは役に立てるかというと正直難ありだが」
「そら、ウチもユリウスとやりおうとるの見とるから、解るわぁ。……でも、ツカサ君が一緒にいてはる理由、よぉ知らんけど スバル君にも、期待するで? 一応な」
「……一応かよ。……おう!」
アナスタシアは、そこまで言うと一歩引きさがり、次にラッセルが前に出た。
「私は白鯨の件もそうなのですが、エリオール大森林の魔鉱石の割譲の方に興味がありまして。もし同盟が結ばれるのであれば、クルシュ様を通じて、手付かずの魔石が王都へと流れる事になります。商業組合の代表としては、聞き逃せません」
「…………卿も、だな」
「えぇ。私は青髪の少女から話を伺いました」
ここに、全てのカードが出そろった。
単発でも十分効果ありの最強カードだと言って良いが、合わさって使えば、更なる進化を遂げる。
それを今、体現したし、体感した。
「じゃあ、改めて言うぜ。同盟を結ぶにあたって、こちらから差し出せるのは、魔鉱石の採掘権の一部と、白鯨出現の時間と場所の情報。――――つまり、長い事世界を脅かしてきた魔獣を討伐する。……討伐出来る!! その栄誉だ!!」
これだけ揃えば、例え相手が三大魔獣だろうと、400年もの間世界を蹂躙し続けた厄災だろうと、跳ね返せる。……目にものを見せてやれる。
確信がある。
スバルは、ツカサと違って未来がはっきりと見える様な力は持ちえないが、それでもはっきりと解る。
「もしも、オレの言葉が的外れで、意味がさっぱりってんなら、切り捨ててくれ。……けど、もしあんたの狙いと、オレたちの願いがかち合うのなら……白鯨を討伐しよう」
スバルは立ち上がり、手を差し出した。
「―――ひと狩りいこうぜ!」
真っすぐに、ただ真っすぐ……スバルの目を見据えた。
今日、何度目だろうか?
白鯨の名を出して尚、討伐出来る事を疑ってない。一切疑ってない目をしている。
クルシュも、ツカサの事は買っているが、それでも今のナツキ・スバル程信じられるか? と問われれば、そこまでは頷けられない。
決して長い歳月ではないのは解るが、そこにははっきりとした、明確な信頼関係が築けているのが解る。
あの三大魔獣の一角を前に――――ひと狩り、か。
そして、何より。
ここまでナツキ・スバルと言う男は、強大な武を持つ彼を全く利用していない面にも目を見張る。
積み重ね上げ続けた論理、それは力持たざる者であったとしても、言の葉さえ扱う事が出来るのなら、考える事が出来るのなら………。
「……いくらか疑問の余地はあるが、こちらの思惑を見抜いたのは見事だった」
「……それじゃ……」
「……まだ疑問はある、疑念もある、腑に落ちない点も多く、即座に頷けない、と言える……が」
クルシュは、真っすぐにスバルの目を見返して、そして手を差し出しながら言った。
「この状況を作り出した卿の意気と、この目を信じることにしよう」
―――交渉が成立した瞬間だった。
ここに、スバルの戦い、第一部。
勝利を飾る。