死ぬなよ、絶対に死ぬなよ! ※コレは、フリではありません。   作:リゼロ良し

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召喚

 

 

 

 

「ふむふむ……。時を巻き戻すか。その元、原因となるモノは………いや、やめておこうか………」

 

 

無の世界。

何も見えない真っ暗の世界にて、近いのか遠いのかさえ分からないが、妙な声が聞こえてきた。

その声は、懐かしい様な………、それでいて何故か腹だたしい様な……。

 

 

 

「――――……我もそろそろ出たかった気分でもある。……良いだろう、我はここから始めるとしよう」

 

 

 

額に何かが触れたかと思えば……何もない虚無の世界に光が灯った。

五感の殆どが無かったと言って良いのに、ゆっくりと瞼を開く事が出来た。

 

 

「さぁ、目を覚ませ」

「ッッ!!?」

 

 

眼前に迫る物体に思わず仰け反りたい気になるが、瞼を開ける、見る・聞く以外の行為が出来なかった。

 

眼前の物体を目を凝らしながら確認する。少しずつ朧気に輪郭が見えてきた。

エメラルドの輝きを持ち、その額にはルビーの紅玉が埋め込まれている。

 

 

「ここは、固定した次元の狭間。我と貴様だけの空間だ。……ふふ、確か、似た様なのが、そう言う世界(・・・・・・)が確かあったな? あれは……そう、無を求める男が暗躍する世界。55番目の世界か。くくくっ、」

「ッ、ッッ……」

「ふむ、口が利けないか。ならば……」

 

 

表情を読んだのだろう。

今度は顔を更に近づけてきた。厳密に言えば、その額に存在する紅玉を近づけてきた。

すると、赤く輝き出し、身体を包み込んだ。

 

 

「っっは!!?」

 

 

すると、ビックリ。

言葉を使う事が出来た。

言葉を口にする事が出来た。

 

 

 

「良かっただろ? 我が貴様の魂にほんのすこ~~~し、ほんのちょっ~~~ぴりついてきたお陰だ。でもなければ、貴様自身も崩壊しとったかもしれんぞ。崩壊した己の能力(・・・・)の一部の余波で。貴様が記録(セーブ)した次元は完全に壊れたがな。最早戻れん」

「お前は……、お前………、確か…………」

 

 

 

目の前の存在を思い出そうとするが、どうしても思い出せない。全く知らない相手じゃないのは間違いないが、どうしても思い出せない。

 

 

「記憶・技能共に テキトーにくっつけて送り出したからその影響がでておるのだろう。……まぁ、それはそれで良い」

 

 

愛くるしい程の姿で笑い、宙を泳ぐ獣。

何度も何度も思い出そうとするが、どうしても記憶の扉が開かない。ビクともしなかった。

それを察したのか、泳いでいた獣はピタリと止まってこちら側を見てくる。

 

 

「そもそも、我を無理に思い出す必要もあるまい? 本能で悟れば良い。それに ほれほれ、我は今は(・・)無害じゃ、無害の愛くるしく頼りにもなる獣じゃ。……ふふふ、やはり思った通りだった。降りる(・・・)のは楽しい。ただ見てる(・・・)より楽しい。何故、もっと早くせなんだ。そこだけが悔やまれる」

 

 

ひゅるひゅる、再び宙を泳ぐ様に、縦横無尽に回る獣。

確かに言われた通り……何処か解る気はしていた。どういう存在なのかを。

だが気がかりが1つ…………。

 

 

「何か、嫌な感じだけはする。……非常に、物凄く」

「おうおう、流石じゃの流石。その感情を持つ事の説明は、最早我には出来ん。……だが、今の我の事(・・・・・)を知らぬのは少々面倒か。もう少しだけ、手を加える(・・・・・)事にしよう」

 

 

今度は、額ではなく そのエメラルドの輝きを持つ身体の手をゆっくりと伸ばして、頭に着けてきた。

すると、頭に温もりを感じたその瞬間。

 

 

 

「ッ!!?」

 

 

 

ガツン!! と頭を思いっきりぶん殴られる感覚に見舞われた。

気絶したくても出来ない故に、収まるまで味わうしかない。……気を失えない現在の状況を恨みたくなる、と言うより目の前の……。

 

 

そう、目の前の………存在。

 

 

何故だろうか、何故解らなかったのだろうか、と思う程 その姿には覚えが有った。

本能で解る、と言ったあやふやなモノではない。はっきりとその姿形が解る。

 

 

 

「く、る、る…………? しょう、かん………、じゅう……」

「そうじゃ、そう。前の世界(・・・・)の存在。我は、召喚獣クルル、それを依り代に、この世界へと降りてきた。くくくっ。……ああ、この世界では精霊と呼んだ方が都合が良いかもしれんぞ。召喚獣、と似た様な存在だ」

 

 

 

召喚獣クルル。

名の通り、召喚士が召喚して世に顕現させる聖獣。

 

その召喚獣と言う存在そのものについては何故、自分が知っていたのかは別として、頭では理解出来ていた。

 

 

 

――ただし、クルルと言う召喚獣を知っているそれだけだ。

 

 

 

それ以上は 解らない。

明らかにクルルの身体を依り代に、中身が違う事だって察しがついてるけれど、解らない。

 

目の前の召喚獣クルルと言う存在の事しか思い出せない。

それに他にもクルルと同種、数多の存在、その世界の成り立ち等があったと思う。

《前の世界》と言うものが。……それらは一切思い出せなかった。

 

 

 

――――……実に都合が良い事だ。

 

 

 

「くくっ、さぁ 我も共に行くぞ。これより クルルとしての(・・・・・・・)力は貴様は使える。我と共にもっともっと楽しもう。さぁ、少女よ。勝負じゃ勝負! 楽しみじゃっ♪」

 

 

 

クルルが光を放ったかと思えば、目の前が再び黒く染まり……漆黒に包まれ 意識は遮断された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……サ、……んッ!?」

 

 

黒く沈む世界の中で、何かが聞こえてくる。

 

 

 

「しっ……り……! ツ……、さん!?」

 

 

 

ただただ、激しい痛みを覚え、闇が全身を覆ってくる。圧倒的な嫌悪感。それを拭い去る事が出来ない。

 

この苦しみが……永遠に続くのか……? とも思えたその時だった。

闇の中に光が差したと同時に、妙な感覚に見舞われる。まるで、飛ばされる様なそんな感覚がした気がした。

 

 

 

 

「フーラ」

「!」

 

 

 

気がした、のではなく、実際に飛ばされた。

 

浮かされた身体は、ずっと宙に浮いている筈もなく、起こった風が消えると同時に身体は落下。しこたま身体を地面に打ち付けてしまった。

 

 

「ちょ、ちょっとラムさん! 幾ら何でもそれはやり過ぎでしょ!」

「突然固まったかと思えば、そのまま このラムの話も一切聞かず無視する。これでも優しく対応してあげた方よ。スッキリしたんじゃないかしら」

「ほんの少しでも優しくなって欲しいですよ、優しく慈しむメイドさんになってくださいよ!」

「ハッ、ラムが優しくするのは この世界に2人だけ。もう埋まっているわ」

「ヒドイ!」

 

 

2人の声がはっきり聞こえてきた所で、どうにか元に(・・)戻れた。

 

 

「悪い……ありがとな、ラム……」

 

 

傍から見れば、ラムが魔法をツカサにぶっ放した構図。

だが、ツカサはラムに礼を言っていた。

 

勿論、それを聞いて驚くのはラム……ではなくオットー。

 

 

「いやいやいや、ツカサさんもおかしいですって! 明らかにツカサさんの状態がおかしくなっちゃったのに、そこに フーラですよ!? 気付けどころか更に怪我しちゃいますよ」

「つまり、そう言った類の性癖の持ち主だったってワケね。軽蔑するわ」

「いや……、とりあえず性癖って言うのは否定しとくよ。軽蔑どころか、もっと痛めつけてやろう、って顔するのもやめておこうか」

 

 

ツカサはそう言い切ると同時に、プッと口から血反吐を吐いた。

 

それを見て、ぎょっとするオットー、そして流石のラムも想像以上の傷? を与えたのか、セリフとは裏腹に表情を曇らせた。

 

無視したとは言っても、明らかにおかしかったのはラム自身にも解っていたから。気付けと言う意味で軽い風を当てたに過ぎない。……身体が浮いて、地面にダイブしたのは間違いないけれど。

 

 

「だ、大丈夫ですか!?」

「うん、大丈夫。だからオットーも気にしないで。コレ(・・)はちょっと違うから。……説明しにくいけど、これはちょっと違う。ラムのせいじゃない」

「…………当然よ。ラムは悪い事なんてしていないもの」

 

 

ぐいっ、と口元を拭うと、ツカサは周囲を見渡した。

先ほど(・・・)までの2人じゃない事は気付いていた。両手に持っていた筈の土産が一切無いし、何より時間(・・)が違う。集合予定時刻と違うのだ。

 

 

「ごめんごめん。それで……なんの、話だったっけ?」

「……………万が一にでも、ラムの身に危険があれば 自分達が生きている意味が無い、死にたくなるから、どうか手伝わせてくれ、とラムに言った後の話よ」

「脚色が酷い!?」

 

 

ラムの発言で、今の時間を理解出来た。

 

理解したのと同時に――――意識する。

 

 

「(———読込(ロード))」

 

 

頭の中で、意識し、魔法を発動させようとするが……、失敗した。

いや、出来なくなっている。

 

 

「(崩壊した、って言うのは、こういう事……か。記録(セーブ)が全て壊れてる。……戻る(・・)つもりは全然なかったから、困っては無いけど…………。……揶揄者(ザ・フール)……は、使えそうだ。…………相当キツイけど、何とかなる……かな)」

 

 

ズキンッ、と頭に鈍い痛みが走った。

身体が相当消耗しているのも解った。

 

原因が何故なのか、それだけが解らないが……。

 

 

「じゃ、話すから しっかり聞きなさい」

 

 

再び2人と分かれた後に考え直す事にしよう、とツカサは思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後は同じだ。

予定通り、迷子探しが始まった。

ラムの探し人は 長い銀の髪を持つ少女。その手掛かりを手分けして探す。

 

 

「……店先の皆には悪いけど、買い物は無しだ。………変な事が起きてるのは間違いないから、そっちを優先……しないと。アレ(・・)はキツイ……。出来れば、2度と味わいたくない……」

 

 

頭を抑え、ふらつく身体を抑えて足を前に運ぶ。

2人の前ではどうにか虚勢を張る事が出来たが、中々にキツイ。

 

 

「くっそ……、仕方ない。……正直、呼ぶのは嫌だったけど」

 

 

ツカサは呟くと右掌が上を向く様にして顕現させる。

 

 

 

「――――出てこい、クルル」

「きゅっっ♪」

 

 

 

それは、あの空間が、あの全てが白昼夢じゃなかった事の証明でもあった。

身体の中身は兎も角、外側は愛くるしい緑の獣の姿で。

 

 

「話を色々聞きたいが、どうせ喋ってくれないんだろ?」

「きゅっ?? きゅきゅ??」

 

 

首を45度捻ってくりくりの目を向けてくる。

この獣は、人の言葉は理解出来ているのはツカサも知っているから、言葉の意味が解らない訳じゃないのは理解していた。

 

 

「………惚けてるのか、本気で解らないのか、微妙だな。…………こほんっ! 楽しみたいんなら、少し協力してくれないか? 同じ様な時間を行ったり来たりするだけなんて、つまらないだろ?」

「……………きゅっ」

 

 

先ほどまで解らないような仕草をしていた癖に、今度は手を東の方向へと差し出した。

 

「あっちだな。……何があるかなんてわかるワケ無いし。どうすれば良いかまで教えてくれても良いだろ」

「きゅきゅっ??」

「あーー、もう! 解ったよ!! だったら、召喚獣クルルとしての力は使うからな! こき使ってやる!」

「きゅうっっ!」

 

 

クルルを顕現する為にも、その力を発揮させる為にも、自分自身の力を有しなければならない………と言う事を、知っている筈の知識を、この時のツカサはすっかり失念。

 

 

 

 

 

そして この後に更に大変な目に合うのだった。

 

 


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