Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

82 / 150
暑さでダウン――――――――………Σ( ̄ロ ̄lll)…………


白鯨戦③

 

 

「ランバート。……ラムを頼むよ」

「フルルッ」

 

 

ランバートの背を2度、3度と叩いて告げるツカサ。

まるで意思疎通が出来ているかの様に、ランバートは駆けながらも頷いた。

 

 

「ラムも、()が起きたら ラムの魔法で位置を教えて。必ず帰ってくるから」

「言質取ったわ。破ったらただじゃ置かないから」

 

 

ツカサの方は向かず、手綱を握り、前を見続けるラム。

ツカサが何をするのか、それを聞かされて、正直止めたい気持ちはあった。1人で無茶を、とも思った。

 

だが、現時点で、この討伐隊で あの白鯨に効果的な攻撃を入れる事が出来るのは? あの白鯨を一刻でも早く討伐する為の攻撃を行えるのは?

 

クルシュやヴィルヘルムの剣撃。

討伐隊の総力を結集した魔法攻撃。

傭兵部隊の総攻撃。

 

 

数多の攻撃を受けても尚、あの白鯨の高度が落ちてこない。

 

 

なら―――、白鯨を撃退した英雄の力を借りる他無い。

 

 

「……………ッ」

 

 

ラムは、自然に手綱を握る力が上がる。

ラム自身は、たら、れば、は言えない。言う事が出来ない。

 

 

でも、どうしても思ってしまう。

 

 

―――ラムに角があったら?

 

 

それは、レムを責める訳でもなければ、失った事に対して後悔を、蒸し返す訳でもない。

だが、それでもツカサに関しての事柄となれば話は別だ。

 

鬼族の皆からは神童であると持て囃された。

魔女教の襲撃から、どうにか抗って見せる事が出来ていた。

 

 

―――その力を如何なく発揮する事が出来たら? 

 

 

少なくとも、ツカサを1人にはさせてない筈だ。

 

そんな時、だった。

ラムの頭に感触があったのは。

 

 

「ラムにも、思いっきり頼るから。だから、助けてよ? ……ね?」

 

 

それはまるでラムの心情を見抜いていたかの様だった。

ラムの心に深く深く入り込んでくる言の葉。

 

そして、ラムがそのツカサの気持ちを解らない訳がない。

 

何故なら、ラムだって同じ事を言い続けてきたも同然だから。

角を失い、自らを責め、代替品であると卑下し続けてきたレムに対して、ラム自身がずっと言い聞かせていた事と同じ事だから。

 

 

 

「当然、よ。必ずラムも力になる。……必ずラムも助ける。だから、頼んだわ。ツカサ」

「ん。スバル風に言うなら オーケーって感じかな。……なんか良い。俄然最強な気分」

「当然よ。ラムとツカサだもの。―――んっ」

 

 

ツカサがスバルに関する事柄を持ち出してきた事に関しては不満が残るが、ラムは咄嗟に振り返り、素早く、それでいて的確にツカサの白鯨の方を見続けているツカサの頬に向かって口づけをする。

 

 

 

「景気付けよ。―――行ってきなさい」

「んっ。……行ってくる」

 

 

 

爆炎が晴れ、白鯨の目が明らかに変わったのを視認した。

奇襲攻撃を受け続け、身体を負傷し続けた。

皆の攻撃は決して無駄ではなかった分、厄災を冠する魔獣の()を変えた。

嫌な予感しかしない悪魔の目。

 

 

 

だが、その更に上を行くのが、英雄だ。―――ラムの、英雄だ。

 

 

 

 

 

ランバートの背より、飛び出したツカサは普段子供達と遊んでいる時以上に。王都でラムと空を飛んだ時以上に、更に更に高度を上げていく。

 

嵐を纏い、宙を泳ぎ、白鯨の死角(頭上)を捕った。

 

 

 

「テンペスト、エクスプロージョン」

 

 

 

左手に嵐を、右手に爆炎を。

2つの魔法を合わせて放つ。

 

ギルティラウを一蹴し、ウルガルムを焼き飛ばした爆炎の竜巻。

 

アーラム村の事を考え、規模を縮小させていたが、ここは空の上。下は三大魔獣。

何を遠慮する事があろうか。―――景気よく放つ事が出来ると言うものだ。

 

 

 

 

「クリムゾンフレア」

 

 

 

 

巻き上がる爆炎の竜巻ではなく、上から下へと落ちる爆炎の竜巻。

 

白鯨が上部に熱源を感じた時にはもう既に遅いだろう。

竜巻の速度、暴風の速度を纏った焔を回避する事など出来ない。

 

 

 

「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

 

 

 

それはまるで、デカい身体が、くの字に降り曲がるかの様。

懸命に落ちない様に高度を保とうとし続けているのだが、上から下へと伝わる重力も合わさり、身体を持ち上げる事が出来なくなった。

 

 

上から押され続け、更に炎が身を包む。

高度を保ったまま、焼かれ続けるか、若しくは大地へと逃げ、地を這いずって炎をどうにかするか。

 

 

 

―――魔獣が本能的に選んだのは、地の方だった。

 

 

 

大地に叩きつけられて、転げまわる。

暴れ狂っている今の状態では、高度が下がったとしても近付くのは困難。

おまけに多少は、白鯨の荒療治で炎は散りつつあるとは言え、まだ健在。

 

生憎、味方は燃やさず、敵だけを燃やす、と言った様な都合の良い炎ではないのだ。

 

 

 

 

「―――解除っ」

 

 

 

 

そこはツカサも重々承知だ。

 

白鯨を強引に堕とす事は成功したが、炎が味方にまで影響が出てしまえば本末転倒。

炙り続けるより、やはり接近して攻撃した方が余力を削れるのは確認済みだから。

 

 

 

「あの白い毛………、想像より全然焼けてないな。……鯨肉にするのは難しそうだ」

 

 

 

討伐隊の魔法、アル・ゴーアの集中砲火。

ツカサの魔法。

 

 

どれもこれも、生物を焼くと言う意味では、白鯨の身体を包む程の規模の炎だった。

普通に考えれば、焼け爛れ、燃えカスが地に降り注いでも不思議ではないのだが……。

 

 

 

「っ、と。それは兎も角。早く下りないと……」

 

 

 

眼下では、リカードら傭兵部隊も阻まれていた炎が消えたのと同時に。歓声の類は消え、痺れを切らせた様に、白鯨に乗り込む。

 

同じく、ヴィルヘルムも尾の方から白鯨の上を目指していた。高度が届く様になった分、討伐隊も次なる行動に打って出ている。

総攻撃の第二陣だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃー、炙られ続けるの勘弁にゃ」

「わっはっは!! オレの自慢の兄弟だからな!」

 

 

眼下にて、直接的な戦闘力を持たないスバル、そして回復特化であるフェリスが合流していた。

 

ツカサが白鯨を落とす、とは聞いていたが……、討伐、と言う意味ではなく、本当に物理的に白鯨の高度を落とした結果に度胆を抜かれたのは当然の事。

 

何をするのか、ツカサ本人の口からはきいていたが、実際に目の当たりにするのと聞くだけのとではワケが違うのだから。

 

 

 

「っとと、笑っても居られねぇ。皆の武器が届く位置まで落としてくれたのは完璧! だが、こんだけ火力集中してる場面にオレが近づくのはかえって邪魔になるな。レム、さっきみたいに魔法をぶち込んで、援護! って訳にはいかねぇか?」

「先ほどと同規模の詠唱はまだまだ時間がかかってしまいます。それとレム単独の水属性の魔法は、恐らくマナが散らされてダメージらしいダメージが通りません。ツカサ君の魔法と合わせて打てば或いは、と思いますが」

「兄弟は極大魔法ぶっ放したばっかで、今どこに居るかわかんねーし。戻ってきた途端に働け、なんて、分が悪過ぎるよな。ラムにぶっ飛ばされそうだ」

 

 

ツカサのおかげで、白鯨に手の届く位置で戦えてる。

かなりの貢献であり、戦果だ。

クルシュもそれは思っている事であり、現在でこそ、最前線で指揮をしていて、攻撃に集中しているが、スバルが伝令に向かった時は、感心しっぱなしで、感謝の言葉を口々に言い、そして討伐隊の士気向上にも利用した。

 

 

流石は英雄―――と言いたい所だが……。

 

 

「悔しいぜ、クソ。動きがあるまで見てるしかねぇ、ってのは」

「歯痒い気持ちは、解るよ、スバルきゅん。フェリちゃんってば、攻撃手段ないから、基本見てるだけしか出来ないし? 慣れてると言えば慣れてるんだけど。歯痒い気持ちってのはいつだってあるよネ。ツカサきゅんに クルシュ様とられちゃう可能性が上がる~~って考えちゃうのも困ったもんだヨ」

「……クルシュさんをエミリアたんに当てはめて考えてみると……、他人事じゃねーからなぁ……っとと、それより! フェリスは良いじゃねーか。お前は回復特化の生命線だしな。元々最強の囮であるオレと違って、前に出て貰っちゃ困るってもんだ。だから、役割が回ってきた時はビシッ、とこなしてくれよ、頼むからよ!」

 

 

この戦いの場、修羅の場において、いつも通りの雰囲気、調子で話しかけてくるフェリスにスバルははっきりと念を押した。

 

良い具合に緊張を解してくれる、と言う意味では有難かったりもするが、それはそれ、である。

 

 

その答えにフェリスは、ふーん、と片目を瞑って笑う。

 

 

「……ホント、大分変わったよネ? スバルきゅん。ユリウスにボコボコにされた時とは大違い」

「オレのトラウマほじくってくんなよ!!」

「にゃはは。……でも、ほんとすごいよネ? いったい、何があったの?」

 

 

ツカサの影響か? とも思えたが、それなりに付き合いのある間柄だ。

今更ツカサが何かした所で、大きく影響されるとは到底思えない、と言うのがフェリスの考え。

 

スバルは、ユリウスの名が出て、盛大に抗議したが……次第に頭を掻きながらトーンダウンし、苦笑いしながら告げた。

 

 

「しいて言えば、ちょっとだけマシな男を目指した、ってだけだよ」

「ほーー、ひょっとして、レムちゃんがスバルきゅんを男にしたのかにゃ? お祝いした方が良い??」

 

 

その答えはイエスでありノーでもある。お祝いは要らない。

 

場違いな下世話さを発揮し過ぎだろ、と怒鳴りかけた。

 

 

 

その時だ。

 

 

 

 

「!! ヴィルヘルム様とツカサ君が!!」

 

 

 

 

怒鳴る前に、レムが叫んだ。

 

 

 

慌ててレムの見る方角へ視線を合わせれば、そこには白鯨の背を走る老剣士が、そして白鯨の直ぐ真上に、白鯨と共に飛んでいる英雄がいた。

 

老剣士、ヴィルヘルムはただただ鬼気迫るが如く勢いで、白鯨の胴体を縦に切り開き続ける。

尾から背にかけて疾走。

 

その開き、鮮血を彩る最中、英雄ツカサは これ以上無いえぐい攻撃手段を展開していた。

切り開く傷口を無理矢理こじ開けるかの様に、切れ込みに風の刃、暴風を強引に捻じ込ませ、自己再生を阻害し続けているのだ。

 

白鯨は再生する事は出来ない。傷口が閉じる事無く、鮮血がまるで鯨の潮吹きの様に空を紅く染め続けていた。

 

それは戦いとは呼べない。……拷問に等しい行為だ。

常軌を逸した責苦。

 

 

だが、スバルも含め、思わず苦言は呈したとしても、白鯨に同情する者は皆無である。

 

 

苦痛に耐えかね、中空で身を捩り、時には地面に身体を擦り付けて紛らわせ続ける。

 

これまでの攻撃手段の全てが、白鯨に当たっている。白鯨は一切対応が出来ていない。

 

あの三大魔獣の一翼。

 

霧の魔獣。

 

400年もの間、世界を苦しめ続けてきた厄災の哀れな姿に、完全にこちらが追い風になり、圧倒しているのを実感。

 

 

「いい加減、ラムも暴れたりないわ」

 

 

地でツカサを待っていたラムだったが、白鯨を落として戻ってきた時は安堵したし、心の底からホッとしていたが、すぐさま第二の攻撃が始まるや否や、ツカサは飛び出してしまう。

 

頃合いを見て何度も戻ってきては、白鯨の元へと飛んで~を繰り返していく内に、ラムも充てられた様子。

鬼族の血か、ツカサと共に、隣で共に在りたいと言う欲求故にか。

 

 

「んっ! リカードも、まだまだ暴れたりないんじゃないっっ!!」

 

 

ツカサは、ラムが来たのを確認。

フーラで、ツカサがしていた様に、ヴィルヘルムが切り開いた傷口を開き続けるのを見届けた後に、リカードの傍へと飛んだ。

リカードは最初こそ驚いたが、すぐさま意図を察した。

 

 

「どうする、上――――――来る?」

「おおよ! その招待、是非とも乗らしてくれ!」

 

 

まさに風の渡り船。

 

ツカサは、リカードの乗るライガ―事、風で浮かせて白鯨の背に案内。

 

最初こそ、足が地から離れて混乱し、動揺していたライガ―だったが、リカードが宥め、そして何より直ぐに白鯨の背に到着した事もあって直ぐに落ち着けた。

 

 

「んじゃ……」

 

 

白鯨の背に乗ったのを確認すると、リカードとアイコンタクト。

 

 

 

 

 

 

「切り放題」

「食い放題や!!」

 

 

 

 

 

 

リカードとツカサは二手に分かれた。

 

ヴィルヘルム、リカード、ツカサ、ラム。

 

4人の猛者は、只管 巨大な白鯨の背の上で暴れまわるのだった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。