Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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もうちょい……!! (/・ω・)/
後、2~3話くらい? 


白鯨戦⑨

「―――!」

 

 

先ず最初に、スバルよりも遥かに早く異変に気付いたのはヴィルヘルムだった。

ラムとレムが気づかなかったのは、ラムが白鯨の圧により弾かれた為レムが傍へと駆け寄り、戦線をやや外れていた為、である。

それが功を成したのか、或いは――――。

 

 

兎にも角にも、ヴィルヘルムは白鯨の背の上から離脱。

身体中を切り刻んでいた刃を外し、そのまま地竜目掛けて降りた。

 

勢いよく地竜に飛び乗ると、手綱を握り、操る。地竜も解っている、と言わんばかりにヴィルヘルムの指示に従い、駆け出した。

目指す先は、レムとラムの居る場所。

 

 

「レム殿、ラム殿、白鯨に異変が!」

「「!!」」

 

 

無我夢中で攻め続けていたが故に、考える事が疎かになってしまった事は否めない。

だが、それも無理ない話だ。相手は長年に亘り―――400年と言う悠久を生き続け、世界を蹂躙してきた霧の魔獣。

加えて、目の前で愛しい人を喰われた場面を目撃している。

 

冷静に戦え、と言うのが土台難しい話なのである。

 

 

だが、流石に剣鬼。現状 この場で一番の戦闘力を誇る男の声はラムとレムに届く。

 

 

視線を白鯨へと向けた。

 

中空を泳いでいた白鯨が、消滅型の霧を周囲にまき散らしていた白鯨が、全身を震わせている。

その体毛の全てが逆立っているかの様に。

細かな体毛で覆われた白鯨だが、その距離・大きさ故に、初見では流線型の身体にすら思えていた白鯨の身体が、毛が逆立った事により生理的嫌悪感を誘う。

 

 

だが、それがあの白鯨の攻撃手段だとは思えない。

 

 

ガタガタと震える身体、更に今度は。

 

 

 

 

 

 

「ブオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

 

 

 

 

 

身を捩り始めた。

旋回し、身体を捻じり、時には大地へ身体を叩きつける。

 

一体何をしているのか? とこの疑問の答えに一番最初に辿り着いたのは、他の誰でもない。

 

 

 

「……遅いわよ」

 

 

 

赤みが掛かった頬を、怨敵である白鯨に向けている、桃色の髪を持つ鬼の少女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は―――少し遡る。

永遠にさえ思える時。

絶望、3体の白鯨の出現。そして戦意喪失から再び復活。

 

時間にすれば、ほんの僅かだったと言えるかも知れないが、体感時間は恐ろしく長い。

それは、()も同じだった。

 

 

「きゅきゅい………」

「臭い? 言ってる場合か。ガマンしてくれ」

 

 

白鯨に呑まれる瞬間、勝機(チャンス)到来だと思った。

あの大きな口、無数の牙。全てを呑みこみ、消滅させる霧の魔獣の口に勝機を見出す等、狂っていると言われる、正気の沙汰じゃない、とも思われるだろうが、勝機(チャンス)をそこに見た。

 

 

3体に増えた白鯨を削る為の。

 

 

 

 

そして―――全てが整った。

 

 

 

「さぁ、出るぞ。………早くしないと、皆に、ラムに怒られる」

 

 

 

英雄は伏して死なず。

ラムが信じた通り、レムも同じく、そしてクルシュも言った通り。

 

 

白鯨の体内にて、己に風の加護(クルル)を纏わせて、ツカサは顕在していた。

 

 

呑まれた時、咄嗟にクルルを使い、身を全力で守った。外はクルルに、そして内ではマナを溜めに溜めて、白鯨を内側から爆ぜさせる為に。

 

並大抵の魔法では白鯨はビクともしないが、それは外からの話。

レムも言っていた様に、あの白鯨の体毛が、無数に無限に存在するかの様な体毛が魔法そのものを散らしている結果、見た目以上のダメージを与える事が出来ていない。

 

討伐隊の全力の魔法攻撃に加えて、魔石による砲撃、全火力を集中させた最大砲火でさえも、白鯨を落とす事は叶わず、あの名の通り白い身体に焦げ跡さえつける事が叶わなかった。

 

物理的な力でしか倒せないと言うのなら、体躯の差、広範囲への拡散型・消滅型の霧、何より数。圧倒的に人間側に分が悪い。

 

 

だが、それは外からの話。

今ツカサが居るのは、白鯨の内側。

 

 

「テンペスト」

 

 

風の魔法をその掌に発生させると同時に、握り潰す。

テンペストが掌から、右腕にかけて広がっていくのが解る。

 

 

「インヴェルノ」

 

 

続いて氷の魔法を同じく掌に顕現。

同様に握り潰す――――取り込む。

 

 

「ジ・アース」

 

 

土の魔法、大地を操る魔法。

 

 

「エクスプロージョン」

 

 

火の魔法。火焔を生む魔法。

 

 

この世界でも(・・・・・・)代表的、と言える四大属性をその身に宿した。

集中力と膨大なマナを要する。クルルは身を守る為に使っている。おまけに、何処かの誰かさんが何度もコロコロ死んでくれた為、感覚で全盛期の半分程の力。

 

ツカサにとっても、永遠にすら思える時の流れの中で―――ようやく辿り着いた。

 

そして、内側にいても理解出来る。

白鯨が察した事に。

 

 

「―――今更、もう遅い」

 

 

白鯨と言う魔獣は、実は頭が極めて良いと言うのがツカサの評価。

奇襲されて一斉攻撃されたが、決して怯む事は無く、最善にして最悪の手を打ってきた。

 

頭が良いからこその行動。獣のソレではない。

スバルの臭い。……魔女の残り香に当てられても尚、実に理に適った攻撃をしてくる。

 

そんな頭脳の持ち主だからこそ、気付く事が出来たのだろう。

 

 

「オレが、これから何を(・・)するのかを」

 

 

白鯨の腹。

居心地は最悪だ。当たり前だ。

消滅の霧によって消滅してしまう事はクルルの守り故にないが、それでも最悪。

 

この口は、400年の間、どれだけの命を食んできたのだろう?

どれだけの無念をその身体の内に取り込んできたのだろう?

 

 

世界から取り残される、存在そのものを、記憶から消滅させる。

残された人は、悲しみにすら辿り着けない。

文献より確認されているのは、例外的に辿り着いたとしても、失ったものが大きすぎるが故に精神を崩壊させてしまうというもの。

 

 

この魔獣は、一体どれだけの無念を。……この内側だからこそ、感じる事が出来る人々の怨嗟。

 

 

それを背負う、無念を晴らす、なんて気前よく格好をつけるつもりはない。

ハッキリ言えば、自分自身はまだまだ底が浅すぎるからだ。悲しみを背負うには、足りないものが多い。ヴィルヘルムこそが、それを背負うに足る人物だと言えるだろう。

 

 

だが、それでも――――。

 

 

 

「数分、数十分、数百分の一でも、晴らさせてもらうよ」

 

 

 

人々の嘆きを背に、ツカサは前を歩く。

何だか背を押してくれた様な、そんな感覚がした。

 

 

白鯨は今も尚、暴れ続けている。これ以上無差別に暴れられても迷惑だ。

 

 

 

 

「―――万象を成し得る根源の力だ。この世界には無いかもな。………さぁ、この腹に収まりきるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

 

 

白鯨の絶叫が腹の中にまで響いてくるが、構わず続けた。

左と右、夫々に纏わせた四属性の力を、合掌の所作を以て、合わせる。

 

 

 

 

 

「大口開けて、笑え。……オレも嗤ってやる」

 

 

 

 

合わさった途端、世界は白に満たされた。

 

 

 

 

 

 

―――カタストロフィ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありとあらゆる光が合わさると、それは最終的に白へと向かうらしい。

何処かで聞いた事がある事象。

 

 

この光景が、まさにそれだった。

 

 

白鯨は身体半分、丁度頭の部分だけを大きく仰け反らせて、身体をLの字に曲げて空を見上げる様な姿勢をとった。

 

大きく大きく口を開き、今戦最大の大絶叫を奏でる。

 

 

クルシュ率いる討伐隊が相手をしている白鯨が、その更に頭上で戦況を見ている白鯨が、視線を一様に向けた。

 

身悶え絶叫する白鯨に全視線が集まったその時だ。

 

 

 

白き波動は、白鯨の全てを包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白の世界。

夜払いの魔法も真っ青な神々しい現象を前に、さしもの討伐隊でさえも足が止まる。

士気を上げ、仲間が倒れようとも折れる事なく雄叫びを上げ続けていたが、この瞬間だけは全てが静止したかの様だった。

 

白鯨も例外ではない。

 

 

 

 

軈て、世界に色が戻りつつあるその時。

光に照らされていたラムが、唯一動いた。

その両手を大きく広げて、何かを迎え入れる様な動作をとった次の瞬間。

 

 

 

「「ッ―――――!」」

 

 

 

最愛の人が、ラムの胸の中に飛び込んでくる。

 

 

 

 

「お帰りなさい」

「ただいま」

 

 

 

 

しっかりと胸に抱き留めたラム。

胸の中の感触が、その存在が嘘ではない、と確かめる様に。

 

 

 

―――(ゼロ)になんかなってない、と確かめる様に。

 

 

 

ツカサも、同じく。

白鯨への渾身の魔法を放った直後で、全身に深い倦怠感が襲いつつある中ででも、ラムの傍へと帰る事が出来た安堵感が、倦怠感(それ)に勝った形となった。

 

 

これで、白鯨討伐、大団円! となるなら、このまま暫く――――と言いたい所ではあるが、生憎。Loveシーンはお預けだ。

 

 

 

 

 

「ツカサ。ラムを待たせた償いは、しっかりとして貰うから。この後にでも」

「勿論。それにナイスキャッチ……、だったよラム。今の撃つのに集中し過ぎて、外に出る事忘れてて……」

「…………珍しい事もあるものね」

 

 

 

基本的にはしっかり者な所が多いツカサ。

たま~に抜けた部分があるにはあるが、こと戦闘においてはなりをひそめているという印象だった。

 

裏を返せば、後先考えず誰かを頼ろうとした、という事だろう。

 

 

 

「ツカサ殿!」

「ツカサ君っっ!!」

 

 

続いて、ヴィルヘルムが、そしてレムが駆け寄ってきた。

膨大な魔法攻撃につき、マナを相当に消費してしまった様だが、そこは異端中の異端の1人? であるクルルが居る。

 

 

「きゅへっ! きゅへっっ!! きゅっっっへんっ!」

 

 

空からツカサの頭へと飛び乗って帰ってきた。

……何だか咽てる?

 

 

咽ながらも、ツカサにマナ移譲の光を向けた。

 

マナ補充後、直ぐにもう1発、今のを連発!! と出来れば最高なのだが、生憎そこまでの万能性、超火力兵器、という訳でもないのが残念だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶお、お、……ぶ、ぐ………おお、おおお…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな時だ。

光が完全に晴れたと思った瞬間、あの白鯨が顔を出した。

 

 

「! タフ過ぎるだろ……、だけど」

「もう虫の息、ね」

「ああ。あともう少しで、堕ちる(・・・)

 

 

そこからは、目配せするまでも無い、これ以上言葉を交わすまでもない。

 

 

ラムはツカサの介抱で動けないから、直ぐに共感覚を用いて、レムへと指示。

ヴィルヘルムは、今の一撃で死滅していない事に驚いたが、それもほんの一瞬。時間にしてコンマ数秒レベルの時。

3体の内の1体を確実に沈める最大の好機と見るや否や、跳躍した。

 

 

「アル・ヒューマ!!」

 

 

全力で、最短。

レムは巨大な氷柱を出現させ、まるで攻城兵器の様な氷の槍を出現させると、白鯨に打ち放った。

 

呻く事は出来ても、吼える事は出来ても、動く事が出来ない。

氷の槍と剣鬼が接近している事が、最早見えていない様だ。

 

 

「ちぇえええええええッッッ!!!」

 

 

裂帛の気合。

全身全霊をもって 剣鬼が突きを放つ。

 

あの攻撃、ツカサの攻撃で内臓がやられたのか、或いはもう力が入らないのか、その肉質はこれまでにない程の手応えの無さだった。

 

ヴィルヘルムが放った剣撃は、飛ぶ斬撃となり、白鯨を一直線に貫く。

 

レムのアル・ヒューマが白鯨の額に深々と突き刺さる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白鯨の瞳から完全に光が失われていくのを皆が見届けた。

この期に及び、目の前の光景が信じられないと言わんばかりに、残った白鯨2体は未だ動かず。

 

 

 

「何も寂しがる事は無い。――――直ぐに、貴様の後を追わせる」

 

 

 

ズッ……、と白鯨の身体から引き抜かれる宝剣。

 

ヴィルヘルムが突き立てた剣を引き抜くと同時に、鮮血が舞い散る。

それは まるで、赤い花びらの様に。

 

 

 

「―――まだ、まだだ」

 

 

 

ヴィルヘルムは、剣を強く、更に強く握り締めた。

 

白鯨の屍を、そして一太刀を妻、テレシア・ヴァン・アストレアに捧げると誓っていた。

 

討伐隊と、そして何より英雄達のおかげで願いを果たす事が出来た、と錯覚しかけたが、まだ白鯨は健在なのだ。

 

まだ、終わっていない。

 

終わっても無い事を捧げでもすれば、妻は心底軽蔑する事だろう。

 

 

すぐさま、残党を―――と身構えたその時だ。

 

 

 

「!! ヴィルヘルムさん!」

 

 

 

白鯨の身体が、淡く光出した。

ツカサの声で、討つ事が出来た、と不覚にも錯覚した自分を取り戻す。

 

 

跳躍し、後方へと跳ね飛び、距離をとった。

 

 

 

「これは―――!?」

 

 

淡い光が、白鯨の身体を包んでいる。

間違いなく、白鯨は、3体の内の1体は、これで絶命した筈だ。それだけの感触を経た。身体の内側から破壊され、外からも貫かれ、不死でもない限り、生存するなど不可能だ。

 

 

一体何事、と思っていたその時だった。

 

 

まるで時間が止まっていたかの様に静止していた白鯨の1体が動き出した。

 

 

 

 

 

 

「ブオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

 

 

 

 

凄まじい咆哮。遥か高い位置にいて十分以上に離れている筈なのに、耳を塞ぎ、衝撃波に備えなければならない程の咆哮に、英雄が帰還し、白鯨の1体を打倒し、士気が更に上がっていた全員が身を震わせる。

 

 

 

空高く佇んでいる白鯨は、咆哮を止めると同時に、再び霧を発生させた。

それは、これまでの様に自分達を、人間を狙ったものではなく……。

 

 

 

 

「あの野郎! まさか(・・・)―――!!」

 

 

パトラッシュに乗ったスバル。

ツカサが帰還した時は、一目散に駆け寄ってラムの後に力いっぱい抱きしめたい衝動に駆られていたが、色々問題があって離れた位置で見ていたからこそ、その意図を誰よりも早く理解する事が出来た。

 

 

スバルが想像した通り、あの上空の白鯨の放った霧は、打倒し屍となった白鯨、淡く光を放っている白鯨を覆いつくし、呑みこんだ。

 

 

 

次なる絶望へのステージ。

それは、霧によって運ばれてくる。

 

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