Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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地味に戦後が長くなっちゃった(゜-゜)

ペテさんに会えるのはもうちょっとかかりそうデス!


絶対死ぬなよ?

 

「にゃははは……。しょーがないのよん、ラムちゃん。機嫌なおして~~!」

「大丈夫です。ラムは気にしていません」

 

「……めっちゃくちゃ悪オーラ満載だよ、姉様。ボケもツッコミも入り込む要素皆無だよ」

 

 

下手したら、心臓を狙ってくるあの闇の手……、内に秘めている魔女の手の闇よりも深いのでは? と思ってしまうオーラがラムに出ている様な気がするのは決して気のせいじゃないだろう。

悪戯っ子な所があるフェリスの揶揄いモードも、流石に息を潜めている所を見れば、彼も彼で解っている様だ。

 

王国最高の治癒術士、青の称号を持つ者じゃ無かったら………。

 

 

「超有能な回復役(ヒーラー)じゃ無かったら、威圧だけで気ィ失っちまいそうだなぁ……。回復出来るからこそ、あのキャラ崩さないのかもだが」

「……………」

 

 

フェリスは、死なない限りは治してやる、と豪語する程の治癒の使い手だ。

故に、ラムの凶悪なオーラを受けても……、物理的な攻撃であれば何とか回復が間に合うし、精神的な心のダメージが来たとしたら、……クルシュに甘えて回復する腹積もりなのだろうか。

流石のラムも、あのオーラのままクルシュにまで――――とは考えたくない。

折角の同盟関係なのに、物理的な精神的な亀裂を入れる訳にはいかない。

 

 

「その辺、どーなのよ、兄弟。おつかれ! って互いに讃え合う場面(シーン)カットした上でのこの展開。どーやって収集つける?」

「あ、いや……その……、お、オレだってまさかこんな所で……、最初は考えてなくって……」

 

 

ツカサは顔が赤い。

あの白鯨ですら、黒き暴風で叩き落すと言う功績を堂々と残した男。

スバルが心躍り、胸を弾ませる厨二感満載な超魔法を駆使する男。

 

なのに、今は本当に可愛い以外のコメントが見つけにくい。

レムやエミリア、或いはラムの事だって間違いなく可愛い分類に入るのだが、ツカサはまた別枠だ。完全に。

そっちの気は無いんだけど、初々しい感じが凄い。

自分が熟練(ベテラン)恋愛マスターって訳じゃないのに、スバル自身も色々と初めてばかりなのに、ツカサの反応を見ていたら、何だかちょっぴり上に立てた? って思う高揚感まで演出してくれる。

 

 

「ラムちーとの濃厚キスシーン見られて気まずい、恥ずかしい、ってのは まぁ、解らねーでもねーんだけど そこまでならなくても、なぁ?」

「や、そ、それはそう……だと思う。でも、その、ここで……。あのヴィルヘルムさんの言葉もあって、その――――」

「………ありゃ、心に来るよな。オレだって同じだ。レムにいい様に揶揄われたんだけど、ほんと、心に響いたよ」

 

 

事の経緯はそれとなく聞いている。

フェリスの弁明も当然ながら聞いている。

 

最初こそ、スバルは策士・スバルから名探偵スバル! と言わん勢いで状況から再現VTRを脳内で行っていた。

フェリスがいい空気の時に入り込んだのだろう、と。

名探偵と言う割には、安易で安直な妄想だと思われるかもしれないが、フェリスの様子を見ていたら、そうとしか思えない。

 

 

だが、その後色々聞いてみると、何でもクルシュの命令だったらしい。

 

 

勝利宣言をした後、直ぐにフェリスをクルシュは派遣したのだ。

周囲にツカサはいない。スバルの事は視界に捕えていたが、間違いなく、この見える範囲内でツカサはいなかった。

 

空を飛んでいて、白鯨を落とした後の事は打ち合わせはしていない。

白鯨をフリューゲルの大樹周辺まで誘き寄せる作戦は聞いていたので、結果少々離れた位置に降りてきたのではないか、と予想は立てていた……が、紛れもなく自他共に認める国の英雄の安否確認は、勝利宣言の後は、当然最重要で最優先だ。

 

大体の位置をフェリスに告げて、直ぐに状況確認。負傷等があれば治療を指示もした。

 

改めてフェリスが、クルシュから聞いたその位置を確認してみると―――よくよく確認してみると、なんだか不自然に大地が盛り上がっている。

 

この街道は、白鯨との戦いの傷跡が多く残っている。

大地が抉れてる所ばかりなのに、何やらボコッ、と非常に低い丘。丘の向こう側はハッキリと見えるが、もし倒れていたとしたら、丁度ここからでは見えないだろう。

 

 

 

 

速足で、英雄達の元に駆けつけてみると――――例の場面に出くわしたのである。

 

 

 

「むむむ、ラムちゃんに見つかっちゃっただけだったら、フェリちゃん、さっさと戻って大丈夫~~、って感じだったんにゃケド、ツカサきゅんに見られちゃったのが、痛かったにゃん? もう、濃密で濃厚なちゅ~、してたのに、遠目で見て解るくらい赤くなっちゃって、可愛いっ♪」

「あ、ぅっ………」

 

 

ツカサは当時の事を思い返して……、当時、と言うかほんの少し前の事を思い返して顔を真っ赤にさせた。

 

 

「――― 一体何を恥じる事があるのか解らないわ」

()じゃないよ。恥ずかしい(・・・・・)、だよ……。誰かに見られちゃうなんて思っても……だから」

「堂々としていれば良いのよ」

 

「男らし過ぎるだろ、ラムちー。つーか、()の方だな。うんうん」

「流石姉様です!」

 

 

 

 

散々弄られてたツカサ。

今、ラムの圧力もそれなりに残っていて、フェリスは まさに無言な説教実施中だ。

 

だからこそ、今ここでスバルが居た事を思い返したフェリスは、目をきらんっ! と輝かせて。

 

 

「スバルきゅんも可愛いよネ~♪ レムちゃんの事、あんにゃに必死になって―――お前がいなくちゃ、オレは生きていけない~~!」

「!!! う、うるせぇ!!」

 

 

スバルを弄りだした。

 

無論、あからさまな話題逸らしだ。

それを理解していたスバル。正直、絡んだタイミングが悪かった? ともスバルは思った。

 

ラムの矛先を紛らわせようとしているのが解ったが、スバルにとってはあまりにも痛々しい部分なので、傷口に塩を塗りたくられた様に、無視する事が出来ない。

 

 

「冷静ににゃれば、わかるじゃにゃい? フェリちゃん、クルシュ様の命令を受けるまで、ず~~っと負傷者の手当てして回ってたんにゃし? 悠長にラムちゃんの説教を受けてる時間があるくらいは余裕があるんだ~~って」

「んな、冷静になれるもんかよっっ!! そもそもお前がラムから説教受けてた、なんざ事後報告だ!! ……レムは、オレの事……す、好きって言ってくれた。愛してるっていってくれた! そんな大事な女……の子が、腕の中で今にも―――って感じなんだぞ!? 混乱して当たり前だろうが!!」

「ソコは、男としてキッスで、どうにか愛パワーをレムちゃんに授けて~~ってして貰ったら、レムちゃんあっという間に復活してたよネ! ハイ、スバルきゅんの負け~~、ツカサきゅんの勝利♪」

「っっ~~~!!」

 

 

ぼんっ!! と赤くなってしまったのは、ツカサである。

戦いのときは、本当に凛々しかったし、雄々しかったとも言えるだろう。

 

スバルに対して、ラムに格好をつけるのは自分である、と言い切ったり、白鯨の腹から出てきた時もそう。――――そして、極めつけは最後の口づけ。

 

ラムは全てを覚えている。感触のひとつひとつを、その温もりを、多幸感を、……その何にも勝る甘美さを。

 

だが、今のツカサは―――正直な所、あの時とは比べ物にならない程、かけ離れていると言って良い。

 

その代わりに、湧きに湧き出てくる想い。溢れてくる想いがある。

 

 

「はぁ、ほんと、しょうがないのだから。……ツカサは」

 

 

母性が生まれ、庇護欲を掻き立てられてしまう程の愛らしさ、である。

 

 

 

 

「じゃ、じゃあ、フェリス! ラムとレムの治療を宜しくお願いするよ! オレから強くお願いする!」

「にゃっ!??」

 

 

ラムとの一件。

話題逸らしをしたかったからこそ、スバルの事を揶揄いだしたのだ。

なのに、また元に戻ってしまう、あの圧力をこの身に再び―――、と思うと、変な汗が出てしまう。

 

 

「クルシュさんには、オレから伝えるから。怪我した皆には悪いけど、予断を許さない人を除いて、2人を優先して欲しいっ! よろしくっ!!」

 

 

 

白鯨討伐の最大の功労者と言って良い男の頼みだ。

誰が断ろうものか。誰が無碍にしようものか。誰が悪いと思うだろうか。

 

そのくらい、フェリスとて容易に解る事―――だが。

 

 

 

「レム。ここはツカサの指示通り、フェリックス様の治療を受けましょう? まだすべき事は残っているのだから、万全にしておかないといけないわ」

 

 

 

ラムは クスッ、と笑っていた。

ツカサの意図を察したのだろう。

 

揶揄われ続けた最後のちょっとした意趣返し、と言うヤツだ。

フェリスにも、ラムは笑顔で。

 

 

「姉妹共々申し訳ありません。フェリックス様。宜しくお願いします」

「にゃ、にゃにゃにゃにゃ――――」

 

 

断るなんてあり得ない。それこそ天地がひっくり返ろうとも。

だがしかし、ラムの笑顔が怖過ぎる―――のである。

 

 

「つ、ツカサきゅ~……」

「……………」

 

 

ツカサは、んべっ! と舌を出して、右手の人差し指で、目尻を下へと引っ張り、赤目を剥き出しにした。所謂、あっかんべ~~である。

この所作の意味を知っているのかどうかは解らないが、自然とそうするのが良いのだろう、と思えたのは、スバルの影響だろうか。

 

 

「ま、観念するこった! わっはっはっは! オレも兄弟とは同じ気分だぜぃ! ラムもレムも、しっかり治療して貰っとけよな!」

「ええ。ツカサとバルスが比べられるなんて、烏滸がましいを通り越して嫌悪と唾棄しか覚えないから、丁度良いタイミングね。消えて」

「ヒデぇぇ!?? 私達が出ていくわ、じゃなく、オレに消えろとか!??」

 

 

ラムの毒舌のキレも元に戻っている。

もう大丈夫だ―――と思っていたその時。

 

 

 

「無事か、ナツキ・スバル。ツカサ」

 

 

問題を起こしてくれた件のフェリスの主、クルシュがゆっくりと現れた。

まだまだ、フェリスは対応を考えてはいたのだが、当たり前だ。クルシュがツカサやスバルの頼みならば聞かない訳が無い。当然だ。当たり前だ当然。何度でも言う。

 

最早、選択肢はなし―――、最初から選択の余地など無し。と言うより自分が蒔いた種。

フェリスは、甘んじて受け入れる~ と言わんばかりに、肩と耳と尻尾を折らせて、ラムとレムの2人と共に、クルシュに事情を説明した後、去っていったのである。

 

 

 

 

取り合えず、フェリスの対応は終わったので、次はクルシュだ。

 

 

「クルシュさんも無事でよかったぜ。……まぁ、俺は兎も角、兄弟は 今し方一戦やり合ってたばっかみてーだが、どうにか……な」

「何だと? 一戦とは?」

「あー、いや。こっちの話だ。気にしないでくれ」

「……………」

 

まだ余韻が残っているのだろう。

先ほどよりは顔色も元に戻っている様だが、ツカサは誤魔化す様に明後日の方向を向いていた。

 

「ふむ。フェリスがもう既にツカサの対応を済ませた、とはつい今しがた聞いた。問題なし、と太鼓判との事。……流石だなツカサ」

 

 

風見の加護があるクルシュは、フェリスが嘘をついていない事は解っている。

 

身体は問題なし、そして 白鯨戦を超えても尚、元気有り余っている(・・・・・・・・・)状態なのだとフェリスは報告している。濃厚なキスシーンを見たのだ。元気が有り余ってるのは、まさに見た通り。

 

クルシュは当然見てないので、ただただフェリスが嘘を言っていない、と言う情報から、流石の一言しか浮かばなかったのである。

 

 

 

純粋にお褒めの言葉を頂けるのは、大変光栄恐縮至極……なのだが、手放しで喜んでいられる様な案件ではないので、苦い顔をするしかないのはツカサ。

取り合えず、誤魔化しながらも、頭を描きながらも、ずっとそっぽ向いているワケにはいかないので、クルシュに向き直した。

 

 

 

クルシュは、頭に【?】と疑問符を浮かべていたが、フェリスも居ないので、その疑問に関しては追及しない事にした。

 

 

「クルシュさん。ご無事で何よりです。討伐隊の皆さんの方は……?」

 

 

勝利を収めて大歓声で、大団円―――で終われる程、生易しい事ではない。

戦いを終えた事、その高揚感の高まり、衝動を抑えきれなかったが故に、衝動的にラムを求めてしまった自分も居るけれど……。

 

 

「ああ。私は大丈夫だ。……だが、討伐隊の皆の消耗は決して少ないとは言えない。白鯨を討って尚、消えた者たちは戻らないのだから」

「―――暴食の権能……、世界からの、消失」

「ッ………」

 

 

クルシュに促されるまでも無い。

 

このリーファウス平原。

 

見渡す限り怪我人が視界の中に居る。

中には丁重に横たえている人。……即ち、命を落としてしまった人数も決して少なくない。

 

だが、共に戦った戦友として、心に、記憶に残る事が出来る彼らはまだ良い。

 

白鯨の消滅の霧で消失された身体は、その魂は元に戻らないのだから。

 

 

「―――ん? あの白鯨んトコでは何やってんだ?」

 

 

スバルが声を掛けた。

大樹の下敷きになったままの白鯨の屍―――の周囲に、生き残った討伐隊の、比較的負傷の少ないであろう面々が集まっていたのだ。

あの白鯨よりも更に巨大なフリューゲルの大樹をどうにかこうにかして、白鯨から除けようとしている様に見える。

 

 

「ああ。白鯨の屍を王都へと運ばなければならないのでな。そして、作戦の犠牲になったフリューゲルの大樹に対しても、何等かの処置は必要だ。戦いの後こそ、気が休まらない」

「運び出す? あのどでかい死体を?」

「全長50mを超す超大型の魔獣だから、全部は多分……。俺が王都に持ち込んだ、白鯨のほんの一欠けらでも、オットーが居なかったら絶対にもっと大変だったし。それでも、大変だとしても、討伐の証に頭部だけでも―――って事じゃないかな。今躍起になって斬る作業をしている様にも見える」

 

 

ツカサは指を指しながら、丁度ヴィルヘルムが居た場所に近い位置に立ち、大きな刃をどうにかこうにか向けたり、風の魔法フーラを利用したりと、試行錯誤しているのが見えて解る。

白鯨の死体を斬る―――なんて事、この400年間一度たりとも無かった筈だ。大変なのは当然。

 

 

「その通りだ。だが、頭部でもあの巨躯……非常に難しいと言わざるを得ないが、出来ないでは話にならないな。四百年、世界の空を泳ぎ続けてきた脅威だ。その屍と言う確かな証拠があってこそ、人心は真の安堵を得る」

 

 

 

無理だろうと何だろうと、運ばなければならない。

当然の事だ。当たり前の事を聞いてしまったな、とスバルは苦笑いをした。

 

 

400年間世界を蹂躙し続けてきた三大魔獣の一角の討伐。

まさに王選における目に見える成果。

 

 

当然、クルシュが功績ばかりを優先する様な卑賎な人柄ではない事くらい解っている。

人の上に立つ器を持つ者、即ち、王の器である事くらい……。

 

別の王候補側についている身としては、正直複雑な気持ちではあるが。

 

 

王選の最有力候補、更に国民の支持も高い。

支持、と言うなら 勲章を授与されたツカサも、広く周知された英雄だと言えるかも知れないが、クルシュと比べたら……無理問題だ。

 

万全中の万全、王選にまさに王手をかけた――――。

 

 

「……ひょっとして、オレ達って、結構マズい後押ししてね? エミリアたんに開口一番裏切りモノだ~~~~って、罵られたって不思議じゃねぇぞ、オレ」

「まぁ、真面目に解答すれば、白鯨って言う世界の脅威を退ける為に、少しでも力になる事が出来たんだ。エミリアさんなら、笑ってくれるよ。………いや、驚かれるかな? すごーく」

 

 

話半分、と言うのは解るが、エミリアを王にする事を目指す身としては、中々にまずい事をしでかしたのは事実としてある。

 

他の陣営に肩入れをし続けている様なモノだ。

ラムやレムも一緒だから、訳を話す事は出来そうなモノ。……でも、それでも、と、ややオーバー気味に困ってるスバル。

 

 

「ふっ。謙遜をし過ぎる事を美徳とは、私は思わないぞ、ツカサ。そしてナツキ・スバルもそこまで暗い顔をする事もあるまい。嘘の風が吹いていない事を考慮すれば、本心であるのは解っているがな」

 

 

クルシュは朗らかに笑い、そして更に続ける。

 

 

「国にとっても、私にとっても、卿らこそが英雄だと思っている。白鯨を落とした英雄だ。……卿らがいなければ、我々の道は半ばで潰えていた事だろう。それ程の功績を、全て当家の手柄にするなどと、恥知らずではありたくない」

 

 

白鯨の亡骸に視線を映して、クルシュは鋭い眼差しを向けた。

あの魔獣を、三大魔獣を、自らが計画していた大征伐で討伐する事が出来たか? と自問自答をすれば、決して首を縦には振れない。

かの魔獣が、三大魔獣と呼ばれ四百年もの間世界を跋扈し蹂躙し続けてきた意味が、理由が、骨身にしみたからだ。

 

そんな魔獣を、方や膨大な魔力とその心力を以て、討伐の要となり、方や類稀なる頭脳。凡そ常人では考えつかないであろう鋭角な策を用いて、討伐の要となった。

 

2人の内、どちらが欠けていても恐らくは駄目だった事だろう。

 

 

クルシュは、目配せをする。

 

 

「此度の協力、感謝に堪えない。何度でも言おう。卿らがいなければ我々は全滅していた。卿らこそが、真の英雄だ」

 

 

そう言いながら、深々とツカサとスバルに対して例の姿勢をとった。

高潔なクルシュに向けられる真摯な謝意。熱が籠ってしまうのも無理はない。

 

 

「俺なんか、兄弟のに比べりゃ――――って言っちまうのは、無粋。……だよな?」

「ああ。人には役割と言う誰しもがあるものだと私は思っている。ナツキ・スバル。ツカサが出来ない事を、卿が行い、そして卿が出来ない事を、ツカサが行う。……だからこその結果だ。自身を卑下にするのではなく、誇ると良い」

 

 

クルシュは、そういうと空を見上げながら言った。

 

 

「誇るべきだ。ナツキ・スバル。卿は 白鯨の出現場所と時間を、そのミーティアで我らに伝えてくれた。足りぬ戦力を整えるのにも奔走し、更には折れかけた士気を、騎士たちの覚悟を奮い立たせた。何処に己を卑下にする要素があると言うのだ? 私にはわからないな」

「っ―――――」

 

 

スバルは、クルシュの言葉を噛みしめる様に、脳と心に叩きこむ様に聞き入った。

その後、ツカサの方を見て。

 

 

兄弟(ツカサ)は、あの白鯨と直接武力でやり合った。分身体の1体を完全に屠って見せた挙句、本体が上空の彼方に居るって分かるや否や、ラムと共に空からあのデケェのを落として見せた。……おかげで、白鯨を釣り上げる事だって出来た。…………オレは、オレでも、兄弟に、ツカサにも届き得る事が――――?」

 

 

頭で思っていた事。

幾度も幾度も考えていた事。

 

羨ましいとだって思った事があるし、嫉妬だって少し前までは持っていたモノだ。

色々と事件が重なり、その性質、悪辣な呪いに似たナニカを背負っている事も知った。

 

誰よりも信頼して、尊敬して、兄弟で友で親友で、と思ってきたが、その背を追う事は止めなかった。

背すら見えないと思っていた。一生追いつく事なんて無いのだろう、と何処かで諦めてしまってる自分も居た。

 

 

「今一度言おう」

 

 

 

スバルの心情を大方読みきったクルシュは、穏やかな表情、それでいて真剣身を帯びた表情でスバルに言った。

 

 

「――誇りに思えナツキ・スバル。もしも、卿の行いが軽んじられる事があるのであれば、私は私の名誉に誓ってそれを正すだろう」

「――――――ッ」

 

 

万感の思い。

ヴィルヘルムやレム、ラムと言った愛を叫ぶ様な想いとはまた種類が違うが、津波の様に押し寄せてくる。

 

 

 

「全部、クルシュさんと同じ。同じ意見だ。オレは近くで見てきたんだから。――――託せるからこそ、全身全霊で、迷う事なく突き進む事が出来た。オレだっていうよ。畏れ多くも頂いた勲章やその名誉に懸けて。いや、存分に活用・利用してでも、軽んじられる様な真似をされたら、黙っていない」

「………ツカサ」

「まぁ、ラムからは仕方ないから我慢してもらうけどね」

「ぐへっ!?」

 

 

まさかのオチに、スバルは思いっきりズッコケてしまった。

良い場面が台無し、である。

 

だが、ラムだったら仕方ない、とスバル自身も思ってるのは事実だ。

 

 

「ったくよぉ、やっぱまだまだ敵わねぇな、兄弟」

「敵う必要なんて無いって。スバルにはスバルにしか出来ない事がある。オレは、オレにしか出来ない事を頑張ってやって……先に進んだら良いと思うよ。……うん、だから―――――」

 

 

 

ニコッ、と笑うと……改めて、改めてハッキリとスバルに告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これからも―――絶対死ぬなよ?」

 

 

 

 

 

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