Re:ゼロから苦しむ異世界生活   作:リゼロ良し

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バトルpartはまだデス。

怠惰ぁぁぁぁぁぁ(/・ω・)/


小さな勇気

 

さぁ、ここから魔女教連中を蹂躙だ!!

やられたらやり返す。10倍返しだ!!

 

この世界線ではまだ何もしてない?

 

答えはNOだ。

 

存在するだけで悪。

綺麗事抜きに、本当にそんなモノが存在するとは、笑ってしまうと言うもの。

連中が暴れまわり、幾多の悲劇を生み出し続けたか。

魔女と言う名の免罪符にもならない単語を用いて、種族が同じである、と言う理由だけで、ハーフエルフも嫌悪され続ける歴史を彩って……、そして世界の未来では、必ず悲劇を起こす。

アーラム村の壊滅、エミリアの死……そして怒りに震える巨獣による世界への八つ当たり。

 

そのトリガーが、怠惰なのであれば、最早万死に値する!

 

 

 

と、このまま殴り込みをといきたい所だが、更に万全を期す為に作戦会議はまだ続く。

 

以前ツカサも言っていたが、今回はただ殲滅出来れば良いと言う問題ではない。大切な人を、皆を守る事が出来なければ意味が無い。

誰一人欠ける事を良しとしていない。

 

400年もの間、世界に対して多大なる被害を齎し、悲劇を生み続けてきた魔女教。その一角相手に、あまりにも甘すぎる考え、と思われるかもしれないが、ツカサはそれを譲らない、当然スバルも同じく、である。

 

そして、この場に集った者たちの中で、その考えを変えさせようとする者など皆無。

犠牲はつきものだと説き伏せる者も皆無、である。

 

戦に挑み、その結果おとしてしまう命ならまだしも、此処から先に居るのは平和に暮らしていた村人だ。弱肉強食の理の世界とは違う。

 

 

 

「なぁ、せっかく懐にスパイがいるってわかったんだ。上手く逆手にとって、偽情報を掴ませれば、とりあえずエミリアたちを安全に逃がす時間が作れる、って思うんだが」

 

スバルの提案に、皆が注目する。

少々怪訝そうな顔をしているのはリカード。

 

魔女教連中の位置も完全に把握し、奇襲をかける事だって容易だ。これだけの条件下の中であれば、このまま攻め入っても犠牲者を出さずに殲滅、は十分可能だろう、と。

 

 

「あー、勿論。兄弟や皆の力なら、連中を一網打尽に出来る。全く疑っちゃいねーんだけど、……それでも、何よりも助けるべき命を優先させてくれ」

「反対する理由は一切ないよ。スバルが先に言わなかったら、オレが言うつもりだった。顔が割れた、だからさっさと始末する、ってなったら、あの連中の動きが読みにくくなる。最悪、この森の外からの増援とでもなったら、より危険になるからね。把握出来たのは、あくまでこの森の中だけだから」

 

 

魔女教の実態は、正直な所不明確な所が多い所。

あの白鯨も魔女教に関連する魔獣なのであれば、あんな神出鬼没な大魔獣まで飼っている事になる。……森の外から一気に増援が押し寄せてくる、なんてパターンも決してないとは言い切れないだろう。

戦える者達であれば、捌く事も出来るだろうが、乱戦にでもなってしまえば、必ず犠牲者が出る。そして、真っ先に犠牲になるのは村人たちだ。……それも、力のない女子供から犠牲になるだろう。

 

 

皆が一様に、スバルの案に頷いた。

 

 

「間者への対策は問題ない、と私も判断する。どういった偽の情報を流すかは、君に一任して良いのだろうか」

「スゲー不安な言い方だな、おい。……不安かもしれねーけど、小賢しい頭で考えてやっから信じれ。それに、レムが一緒だからな。ヘンだと思われた時点で、横っ面ひっぱたいてもらうわ」

 

 

スバルは、ちらりとレムを見た。

頼りにされている意図をくみ取ると、レムははち切れんばかりの笑顔をスバルに向けた。

 

 

「レムレム。バルスってば、とんだマゾ野郎だから、鬼化の力使って気付けしてあげなさい」

「はい姉様。頑張ります!」

「ちょいまてちょいまて!! オレの頭が吹っ飛んじゃうパターンじゃねーか、お手柔らかに、お手柔らかに頼むぜ、オイ!」

 

 

レムの鬼化全開のビンタ。

如何にレムの身体が万全ではないとは言っても、そんなものを、軟弱貧弱生身な極々一般人の身体能力なスバルが受けてしまえば、良くて重症、大体即死だ。

 

 

「ラム。この……少し離れた位置、結界の周囲を見回ってるのは……フレデリカさんで間違いないよね?」

「――――ええ。顔をフードで隠しているけど、間違いないわ」

「屋敷の外に出てきてくれてたのは、運が良い。彼女とも合流して、現状を伝えておきたい。その足で、エミリアさんの居る屋敷に向かう、って手筈で。だから、村に入った後は 二手に分かれて行動をしよう。間違っても、連中の警戒網に引っかからない様にね。―――……あの間者の顔は焼き付けてるし、テンペストはかけたままにしておくから。動いたら、直ぐに解る」

 

 

広範囲の探索魔法をこのままキープし続ける事に、ぎょっとするのはフェリスだ。

 

 

「そーんにゃ、ものすっごく魔法を使い続けるのにゃんて、ツカサきゅんのマナ、大丈夫にゃの? 空っけつになっちゃったら、後々が大変だよ??」

 

 

フェリスの言う通りだ。

現在、ツカサの存在はこちら側でも最大戦力。

安全を意識するあまり、本番の戦いで力を発揮できないのであれば、本末転倒も良い所だ。

仲間を信じてるから~~と美談に持っていけるかもしれないが、それでも最善と過剰の分別はつけて置くべきだろう。

 

 

「ありがと、フェリス。大丈夫だよ。……無理する、させるのは、コッチ(・・・)だって言ってた通り、頑張って貰うから」

 

 

そういうと、ひょいっ、と取り出した(様に見える)のはツカサの精霊クルル。

その特徴的なエメラルドに輝く耳をピコピコ動かして、《聞いてないよーー》みたいな表情をしている気がするが、耳の動きが愛玩動物過ぎる、とスバルが目を輝かせたりしたのは別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

魔女教の森の中での警戒網を突破し、結界を確認しているフレデリカとも問題なく合流、そして村へと到着した。

ただ、件の間者には動きがあった。どうやら、一足先に村へと向かった様なのだ。

それが何を意味するのか解らないが、単独で動く所を見ると、ただ紛れ込む(・・・・・・)だけだと言う方が公算が高いだろう。

 

 

「如何にカルステン家より、同盟に関する親書を受け取っているとはいえ、突然の武装集団で押しかけてくるとは、少々肝が冷えましたわ」

「それについては申し訳ない。……事が事、なので御叱りはまた後に。……全てが終わった後にしてくれると助かるよ、フレデリカさん」

 

 

だが、森の見回りをしているフレデリカにとってしてみれば、突然の訪問。おまけに大人数。カルステン家の一団は勿論、鉄の牙の傭兵、ユーリと偽ってる近衛騎士のユリウスに、青のフェリス。

驚くな、と言う方が無理がある。

 

 

「ラムの姿を見たら疑う余地はないと判断するのが普通の事よ。フレデリカの対応に問題があるのであって、ツカサが気に病む事は無いわ」

「あらあら、より強くツカサ様とは結ばれた様ですわね、ラム」

 

 

ツカサに対して、御叱りは後、と言う旨を了承しようとする刹那、ラムが割って入ってきた。偶然なのか、トンデモナイ嗅覚なのか、恐らくツカサ関連であれば、ラムの嗅覚はレム以上なのだろう。

 

 

 

「軽口はそこまでよ。これからエミリア様に伝える事は解っているでしょうね?」

「はぁ。その軽口を始めたのはラムからですのに。……解っておりますわ。森に潜む不埒者を排除する為にも」

 

 

 

フレデリカも、森の異様な気配については、何となくではあるが察知をしている。

こういう時は、ラムの千里眼の方がより鮮明に、ハッキリと調査出来る事ではあるのだが、生憎ラムは不在だった。

だからフレデリカがより注意深く村や結界を見回る日課を増やし、更にはエミリアも自発的に見回る回数を増やして対応していたのだが……、何一つ引っかかる事無く、口に出す訳にはいかないが、少々不安を覚えていた矢先の事。

 

口では肝が冷えた、と称しているが、先頭に居るスバルやツカサ、そして勿論ラムとレムの姿を見て、心底安堵したのが本心だ。

―――先輩メイドとして、その様な情けない姿は見せなかったが。

 

 

 

そして、少し進んだ後に、村の入り口へと到達した。

当然、ここまでの騒ぎだ。村人の気付いている。武装集団に不安げな顔を向けていたが。

 

 

「――――おい、あれって、ツカサ様じゃないか?」

「本当だ。ツカサ様、それにラム様。スバル様とレム様も一緒だ! 戻られたのか」

「あーーー! スバルだーー! ツカサだーーー!! 帰ってきたーー!」

「空中相撲の決着だーーー!」

 

 

ラムが言っていた様に。

信頼している人達の姿を見れば安心すると言うものだ。

見ず知らずの集団が、心底信頼している人が率いている集団となって、警戒を解く事が出来た。

 

命を懸けて村を守り、子供達を守り、平和と平穏を齎せてくれたあの魔獣騒動の手柄は、思いのほか大きい。

ウルガルムだけでなく、ギルティラウから岩豚とトンデモナイ数の魔獣を撃退したのだ。いう人がいえば、当然と言い切るかもしれないが。

 

 

「……ここから、大変だよスバル」

「あぁ、解ってるよ」

 

 

ツカサとスバルは表情にはなるべく出さない様にしたが、気を引き締めなおした。

 

 

フレデリカと合流した時に、聞いている。

村の安否が気がかりとなり、一先ずロズワール邸へ避難を呼びかけに村へと降りたエミリア。

あれ程までに、村に降りるのを躊躇っていたエミリアだったが、村が危険だ。自分以外の誰かが脅かされる、ともなれば行動は早い。躊躇いも無い。

 

だから、皆の元へと向かった。

今回は、あの認識阻害のローブは持っていない。ありのままのエミリアの姿を見せて。

 

 

そして、帰ってきた答えが―――。

 

 

【王選の話は聞いております。―――貴女の素性がハーフエルフであることも】

 

 

危険が迫っている。

それが解ったとしても、その原因は何故なのか? 

何故、こんな辺鄙な村を襲う必要があるのか?

あまりに無意味で不可解。……ならば、原因は決まっている。

ハーフエルフの存在が全てだ。

 

平和な村を脅かされるその怒りを、家族に危害が加えられるかもしれないと言う嫌悪を、全て目の前の少女エミリアに向けたい所ではあったが、そこまでは至らなかった。

 

村人にも良心と言うものもある。

 

 

「貴女の言葉には従えません。――それが私達の総意です」

 

 

正面だって申し出を断る事にした。

背を向け、顔を背け、視界に入れない様にする事にした。

関りさえしなければ大丈夫だ、と己に言い聞かせる様に。

 

 

 

準備は着々と進められている。

アナスタシアの計らいも有って、揃えられた竜車の数々。

村人皆を乗せるだけの数は揃えられており、後はラムが言う様に少しでもリスク分散させるため、王都行と聖域行へ分ける。

 

王都に入ってしまえば、クルシュが居る、近衛騎士も居る。間違いなく身の安全は保障されるだろう。カルステン家の計らいも有れば、衣食住にも困らない筈だ。

 

そして聖域。

詳しい場所は知らないし、内情も解ってないが、そこにロズワールが居る、と言うラムの言葉が全てだ。

彼ならば、領民の身の安全は、己の責を以て保証してくれるだろう。そして、災いを打ち払うだけの力も持ち合わせている。王国筆頭魔導士の冠を持ち、青以外の全ての色の称号を持つ男なのだ。

此度の魔女教討伐戦や白鯨討伐戦で参戦出来なかったのは悔やまれるが。

 

 

問題解決に向けて、もう走り出している。

後は、物理的な問題じゃない。……人の心に起因する問題が残っている。

 

そう、彼らの説得だ。

 

 

エミリアに対しては一切聞く耳を持ってくれなかった。

歴史を鑑みれば仕方ないのかもしれないが、スバルにとっては、何よりも我慢ならない事柄の1つ。

魔女なんて知らない、ハーフエルフなんて知らない。ただのエミリアしか知らない。ドがつく程のお人よしで、何でも前のめりで一生懸命、時折柔らかく笑って見せる姿は万人を魅了すると言ったって良い。

そんな少女の顔が暗く、沈み、淀んでしまう。それがハーフエルフ。切っても切れない魔女との関連。

 

王選でも嫌と言う程聞いた。

 

 

だが、それを村の皆にぶつけるのは間違っている。

村の皆の中では、それが常識として根付いており、―――ある意味では証明もされているから。村の壊滅と言う最悪の未来を視てきたからこそ、解る。

 

 

「ツカサ様、スバル様」

 

 

そんな中、先に歩を進めたのは《ムラオサ》と呼ばれ、それでいて村長職とは無縁のご老人。

いつもの惚けた年寄り風な装いが、完全に消されており、ただただ毅然とした様子で前に立った。

 

 

「物々しい方々をお連れになったのは、有事に備えての事ですかな。……既に、フレデリカ様から聞き及んでおります。―――同盟、そして森に怪しげな気配がある、と」

「…………」

「い、いや、それは……!」

 

 

スバルが何か言いかけたが、それを制するツカサの手。

そして――。

 

 

「もう、誤魔化すのは止めてください! オレ達だってとっくにわかってます!! ……ある意味、覚悟を………っっ」

 

 

悲痛な声を上げたのは青年団の若者。

村での魔獣騒動の際にも、共に戦った間柄でもある。

 

 

青年の言葉で、完全に決壊をした。

口々に、森に潜む存在の正体。言葉にすら出したくないもののの、正体を口にする。

 

 

《魔女教》

半魔(ハーフエルフ)

 

 

 

不安と恐怖を我先にと分かち合う。

 

3度、この村には悲劇が起こった。

パックが暴れ出し、問答無用でスバルが殺されて戻った1度目。

原因を追究しようとして、パックと相対した2度目。

アーラム村へと戻り、エミリアの安否こそ確認は出来たが、村は壊滅していた3度。

 

 

皆が不安だったからこそ、最善の手段を取る事を拒んだ。……その差し出される手が、災いを齎すモノの手だと思ったから。

 

 

 

「少し、聞いてください。……オレ、皆に嘘をついていました」

 

 

 

そんな時に、ツカサの言葉が静かに、小さく響く。

予想外の言葉。《嘘》と言う言葉に、恐怖で縛られかけていた皆だったが、僅かにほどけて、注目する事が出来た。

 

 

 

「オレは、隣国の大魔法使いなんかじゃありません。……ロズワールさんの計らいで、そう名乗っていただけなんです」

「! そ、それは一体どういう……?」

 

 

 

以前伝え聞かされていた身の内話が嘘だった。

それに対する驚きは勿論あるが、一体、この告白に何の意味があるのか、そちらの方も気がかりだ。

そして、悪い方へと想像を膨らませてしまうのも無理はない。魔女教や魔女、ハーフエルフとこの村を救ってくれた大恩人であり、英雄であり、村の一員でもあるツカサが繋がってしまっているのか? と否定したくても、疑いたくなってしまう。

 

 

 

 

―――そして、その後に語られた話。ツカサの口から語られた身の内話は、誰もが予想してなかった事柄だった。

 

 

 

 

王都にて、話を聞いていた者以外は、まだ伝わっていない話。

記憶障害があり、自分が誰かも解らず何処から来たのかも解らない。

 

 

「何も解らず、暗闇に居たオレでしたが、こうして温かく村に迎えられて。皆が手を取ってくれて、離さないでいてくれて。―――迎えられたからこそ、オレがオレで居られてるんだ、って思ってます。凄く偶然で幸運で……身に余る程光栄で……」

 

 

両手を見ながら、ツカサは更に紡いだ。

当然、次に思うのはあの屋敷に居る少女の姿。

 

 

ハーフエルフと言う名の宿命。

魔女に似た容姿と言う呪い。

 

それを背負って懸命に前を歩こうとしている少女の姿。

 

 

 

「―――彼女は、今も尚、闇を彷徨ってます。……記憶が無いからこそ、安易には言えないかもしれません。でも、オレが、エミリアさんの為に、出来るのは、これだけしか、なくて」

 

 

 

そういうと、ツカサは90度上半身を折って、頭を下げた。

 

 

 

「どうか、彼女を、エミリアさんを助けてあげてください。彷徨って、迷子になって、悲しみに暮れている彼女に、手を伸ばしてあげてください。……彼女は悪い子なんかじゃない。温かく、オレを迎えてくれた内の1人、なんです」

 

 

 

 

記憶が無い。刷り込まれてない。

だからこそ、世界に刻まれた魔女の恐怖を真の意味で知らない身。

 

だけど―――まだ出来る事はある。

 

 

「村の皆に、出来る事。――――必ず、皆を守ります。オレの全てに懸けて、皆を守ります。怖がらなくて良い。もう、大丈夫なんだ、って心から思える日を目指して、身を粉にして戦います。―――だから」

 

 

 

 

ツカサの言葉に、もう何も言えない。

支持表明をしたロズワールに、そして元凶でもある魔女に。ハーフエルフに、エミリアに、口々につく悪態は完全に消え失せている。

 

 

ただ、思うのは、ほんの少し前の事。

 

 

村の最前線で、魔獣の脅威から皆を守ってくれたあの大きな大きな背の人。

とても明るく、優しく、それこそ太陽の様な人。

 

 

だけど、今、彼はあの頃の姿とは程遠かった。

 

 

返しても返しきれない恩、とさえ思えた人の姿を、こんな風に、悲痛な想いを背負わせる様にしたのは、一体誰だろうか。

 

 

皆が一様に言葉を発する事が出来ない状況で、ざんっ!! と大きな音を立てて動いたのは横にいたスバルだった。

 

地面に手をつき、頭を思い切り地面に叩きつける。

 

 

 

「頼むよ、皆。―――オレからも、お願いします」

 

 

 

言葉は短めに、懇願の姿勢を示す。

スバルにも言いたい事は沢山ある。

エミリアの事を、沢山言いたい。

一緒に笑い合える子だと、そして他の誰でもない、彼女こそがそう思っていると。……皆の不安が紛れるなら、と自分に矛先を集めさせて我慢をしているんだ、って事。

 

何より、他人の為に損をする事ばかりを選んで、自分が傷つくだけで済むのなら、迷わずそうする姿を。

 

言葉にするのは容易いかもしれない。

だが、今は言葉よりも誠意を以て相対する事を選んだ。

 

自分程度が頭を下げた所で、一体何になるのかはわからない。

だけど、ツカサ1人に頭を下げさせて、何もしないのは許せなかった。

 

 

 

そんな時、だった。

 

 

 

 

 

「どうして? どうしてみんな、話を聞いてあげないの?」

 

 

 

 

ひどく真っ直ぐで、真っ正直で、全く飾り気のない一言。

幼い子供の声。

 

頭を下げた為、姿は見えない。でも声を聞くだけで解る。

赤みがかかった茶髪の少女、大きなリボンを結わせた少女、ペトラだ。

 

 

「こんなに、たくさん、たくさん困った顔してるツカサなんて、泣きそうな顔なんて、みたくない。スバルだって、そう。いっつも楽しそうに笑うスバルの方が良い。わたしたちと一緒に、はしゃぎまわって、らじーお体操して……、そんなスバルの方が良い。……こんな、泣きそうな顔、わたしはみたくない。なのに、どうして助けようとしないの?」

 

 

 

飾り気がなく、真っ直ぐだったからこそ、他の誰よりも村人の心に深く抉る。

 

何より、ペトラ自身も辛く、悲しい事なのだろう。

 

 

 

助けてくれた2人。

遊んでくれた2人。

大切で、大好きな2人。

 

でも、今の姿は………。

 

 

 

 

《わたしは、みたくない》

 

 

 

 

金縛りにあったかの様に動けない村人の皆に変わって、ペトラが今一歩足を進める。

子供ながら感じた異様な雰囲気の中、小さな少女は、勇気を振り絞って前に出る。

 

 

 

 

「わたしは、助けてあげたい。わたしに、できることなんて、少ないのかもしれないけど……それでも!」

 

 

 

 

ペトラは、ぐっ、と目に滲んでいた涙を拭い去ると、完全にツカサやスバルの側に立つのだった。

 

 

 

 

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