古いしきたりにとらわれた名家がある。猫崎家という。
昨今急速に勢いを増したデュエルモンスターズに、彼らも手を出し始めた。
しかし兄弟と唯一外見が異なる次男の俊二は落ちこぼれであり、連戦連敗。折角カードを手に入れてもアンティルールで奪われるというありさま。
そんな彼は学校にも居場所は無く、家にも居場所がなく、孤独な日々を送っていた。
「どうして、どうして僕は…。」
少年の心は、とうの昔に折れていた。
そんな彼からいつものようにレアカードを奪った同級生は容赦なく。
川へ突き落した。
本来ならば、この後は同級生のいじめにより死亡したというニュースが流れ、川遊びには気をつけましょう、という注意喚起がなされて終わりだろう。
だが。物語はここから始まる。
「寒っ!」
途方も無く寒く、俺はびっくりして飛び起きる。
妙に視線が低い。
川原のようだが…。何故ここに?
「なんだこれ?遊戯王のカード?」
かつて中学生から高校生のころまで友人と遊んでいたカードゲームで使用するカードが落ちている。
しかし、こんな材質だったか?
近くの水面を見る。そこには金と銀のツートンカラーの少年が映っている。
「…は?」
こんな変な髪形にした覚えはない。どうなっている?頭が痛い、ややあって俺の頭にある名前が浮かぶ。
「…猫崎、俊二?」
そこから情報収集を始めた。
どうやら猫崎家の次男で、いじめにあっているらしい。
川辺でいじめっ子に俺は川へ落とされて流されたようだ。
そこで意識を失っていたらしい。
「…その子供に俺が憑依したって事か。」
いじめられていた理由は、この髪の色が原因だろうか?
それ以外にも理由があるのだろうが…。
いじめはいじめる方に問題がある。いじめはいじめられる方に問題がある、という奴に限って自分がいじめられると反発するんだよな。
そもそも、先に手を出したほうが悪いと思うがね。
「とりあえず、さっさと独り立ちしてこの家とも縁を切るか。」
数日後、俺を川に突き落とした加害者の糞親が、『子供がやったことですから~』と言っただけで済ませられた。
それを言っていいのは被害者の方で加害者ではない。しかもそれで済ませるこの肉体の家族に対する愛も無くなった。
最低限の接触にとどめ、極力関わらないように過ごす。
この中学校でもデュエルモンスターズは流行っている。
決闘者の発掘に来ていた海馬コーポレーションの社員に接触し、色々と話をした。
同年代とは別格のカード知識とプレイングに、社員は驚いたようだ。
そんな社員と二人きりになった時。俺は川に突き落とされた事などを話し、このままだと殺されるから助けてほしい!と訴えた。
その人は俺と変わらない年齢の子供がいるらしく、上に掛け合ってくれた。尤も。
『中等部の全国大会で優勝したら、新しい召喚方法のテスターになってもらう。代わりに身元を保証する』という内容だったが。
俺は海馬コーポレーションの保護下に入った。
そのまま順当に中等部の大会を制し、俺はS召喚のテスターになった。
「貴様はS召喚という新しい召喚方法を提示したら、即座にレスキューキャット、召喚僧サモンプリースト、精神操作の有用性を指摘する子供ならではの柔軟な発想力がある。レベルや攻撃力が低くても戦える事を知らしめれば、アカデミアひいてはデュエルモンスターズの発展に繋がる。期待しているぞ、ワハハハハハハ!」
悪役同然の笑い声をあげる芸に…ゲフンゲフン、変じn…ゲフンゲフン。上司に一礼する俺。
これがいつまで続くのかと思うと、ややうんざりする。
高校は卒業しておけ、というので前世で地元だった地域の公立高校を選択する。
ドミノ高校だと事件に巻き込まれかねないから。
GXの時間軸だが、デュエルアカデミアは事件が多すぎる。
…残念なことに、前世の知り合いは一人も居なかった。
そして前世では話をしなかったが、密かに気になっていたあの女の子と話をしてみたかったが…。
これで原作と関わらずに済む…と考えていたがどうやら俺に逃げ場は無いらしい。
二年生に進級する前にある命令を受ける。
「デュエルアカデミアに編入?校長は…才災?鮫島校長では無いのですか?」
「ふぅん、詳しいな。確かに俺はサイバー流の師範である鮫島を校長にしていたが、サイバー流で動きがあって鮫島が追われ、才災という男が後任になった。」
「才災校長…。」
俺が憑依した事による変化か?
そのやり取りをした数日後。
『猫崎 俊二さん。会場までお越しください。』
俺の出番が来たようだ。ここは、デュエル・アカデミアの会場、海馬ドーム。
俺は今日、デュエル・アカデミアの編入試験を受ける。
『クロノス教諭!試験用デッキをお持ちください!』
『本来のデッキでは、試験の公平性が失われます。』
「必要ありませんーノ。自分のデッキでデュエルシマース!」
声がここまで聞こえてくる。本気って事は【暗黒の中世】デッキか。
「シニョールが、ペガサス会長と海馬オーナーから推薦を受けた編入生なノーネ?」
「はい。猫崎俊二。S召喚のテスターです。」
「ブラララララ、そんな肩書は、このデュエルアカデミアでは通用しないノーネ!それを思い知らせてやるノーネ!」
「よろしくお願いします。」
俺は一礼して、デュエルを始める。
「「デュエルッ!!」」
クロノス ライフ4000
手5 場
猫崎 ライフ4000
手5 場
「先攻は貰うノーネ、ドローなノーネ!魔法カード、デビルズ・サンクチュアリを二枚発動!ワターシの場に二体のメタルデビルトークンを特殊召喚!
このトークン二体をリリース!現れるノーネ、エメス・ザ・インフィニティ!カードを2枚伏せてターンエンドなノーネ!」
時系列的には遊戯王GXだが、すでに生贄はリリース、生贄召喚はアドバンス召喚という名称になっている。
クロノス ライフ4000
手1 場 エメス・ザ・インフィニティ 伏せ2
猫崎 ライフ4000
手5 場
「俺のターン、ドロー!魔法カード、大寒波を発動!メインフェイズ1でのみ発動可能!次の俺のターンまで、お互いに魔法・罠カードを発動及びセットできない!」
「ブララ、魔法・罠を使わずにワターシのエメス・ザ・インフィニティを倒すなど不可能なノーネ!」
「それはどうかな?召喚僧サモンプリーストを召喚!効果発動、守備表示になる。そして手札の魔法カード、精神操作を捨てて効果発動!デッキからレベル4のモンスターを特殊召喚!現れろ、二体目の召喚僧サモンプリースト!効果発動、手札の貪欲な壺を捨てて、デッキからレスキューキャットを特殊召喚!」
「一気にモンスターが三体。デスーガ、どれもワターシのエメス・ザ・インフィニティの敵ではないノーネ!」
「レスキューキャットの効果発動、デッキからレベル3以下の獣族二体を特殊召喚。現れろ、二体のチューナーモンスター、Xセイバーエアベルン!」
「それで呼び出したところ-で、エンドフェイズには破壊されるノーネ。無駄死になノーネ!」
「俺は、レベル4のサモンプリーストに、レベル3のエアベルンをチューニング!」
光が輪になり、包み込む!
「何が起きているノーネ?ミネストローネ!」
「チューナーモンスターを含む素材となるモンスターのレベルの合計と、同じレベルのモンスターを特殊召喚する。S召喚!Lv7!現れろ、ダーク・ダイブ・ボンバー!」
オレンジ色の爆撃機が降り立つ!
『やぁ、画面の前のみんな!安心してね!エラッタ前だよ!』
カードの精霊と心を通わす能力は無いんだよなぁ。
何か言ったかもしれないが俺には分からない。
「攻撃力2600?!」
「そして、レベル4の魔法使い族の召喚僧サモンプリーストに、レベル3のエアベルンをチューニング!S召喚!Lv7!アーカナイト・マジシャン!」
「なんなノーネ?!今度ーハ爆撃機ではなく-テ、魔法使い族が出てきたノーネ?!」
「効果発動、魔力カウンターが二つ乗る。魔力カウンター一つにつき、このカードの攻撃力は1000アップする。」
「ふ、フフーン!攻撃力2400デーハ、私のエメス・ザ・インフィニティの足元にも及ばないノーネ!その爆撃機にエメス・ザ・インフィニティが倒されて、ダイレクトアタックを受けテーモ、まだライフは残るノーネ!」
「アーカナイト・マジシャンの効果発動!魔力カウンターを一つ取り除いて、相手の場のカードを破壊する。砕け散れ、エメス・ザ・インフィニティ!」
「マンマミーア!」
アーカナイト・マジシャンが放った魔力弾が、エメス・ザ・インフィニティの足を粉砕する!
「バトル、アーカナイト・マジシャンとダーク・ダイブ・ボンバーでダイレクトアタック!」
「マンマミーア!」ライフ0
「対戦、ありがとうございました。」
俺は一礼して、試験会場を後にする。