猫シンクロ使いが行く遊戯王GX!   作:交響魔人

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 今回は以前コラボして頂いた、カイナ先生の作品、サイバー流系メスガキinデュエルアカデミアの主人公の並行世界におけるキャラクターが登場します。
 デュエルパートに関してはカイナ先生に監修していただいております。この場を借りてお礼申し上げます。

 翔がラーイエローに昇格出来たのは、クロノス臨時校長とナポレオン教頭による『スター発掘計画』において、丸藤亮の弟なら話題性があると思われたからです。ブルー女子の胡蝶蘭を倒せるぐらいには成長していましたが。

 今回は結構長いです。


第23話!さらば、デュエルアカデミア!丸藤翔、退学!

 デュエルアカデミアは、新たな校長としてクロノス教諭が就任。その他の人事も一新となり、厳しい評価が下されるようになった。

その中で、丸藤翔の処遇が決まる。臆病でありながら、デュエルで有利になると調子に乗るという傲慢さ。しかも相手のカードを批判する言動。

 2年生への進級を前に、ノース校などの分校への留学か、自主退学という選択肢を突き付けられる。

 

「どうしますか?」

「…も、もういいッス!!才災師範の理念が分からないデュエルアカデミアにこれ以上居たって意味は無いッス!僕は、僕を受け入れてくれるサイバー流を、リスペクト・デュエルを続けるッス!」

「ではこちらに署名を。はい、ありがとうございました。」

 

 

 もはや見限っていた教員は、冷たく事務作業を完遂する。

 そのやり取りから一時間後。

 

「…翔、本当に行っちまうのかよ。」

「もう決めた事ッス。」

「お前、ここでデュエルキング目指して頑張るんじゃ無かったのかよ!」

「こんなアカデミアに居ても意味がないッス!」

 

 翔は荷物をまとめ、デュエルアカデミアから去る。

 

「ああ、アニキ。このカードあげるッス。もう僕には必要のないカードッス」

「?!これ、シールドクラッシュじゃないか!お前の大事なカードだろ!」

「うるさいッス!もう決めた事ッス!」

「…わかった。このカードは大切に使わせてもらう。」

 

 

 翔は定期便に乗り込む。

 

「さらば、デュエルアカデミア。まぁ、これで良かったッス。」

 

 勉強せず、オシリスの天空竜の祭壇を作って拝むという神頼みをしていた事で成績はもちろん伸びない。

 『スター発掘計画』としてラーイエローへ昇格させるという学園上層部の思惑も無い為、この世界線においてアカデミアに留まっても昇格は難しいだろう。

 

 

 デュエルアカデミアで踏ん張る事をせず、逃げ出した翔を待っていた現実は厳しかった。実家は更地になっており、両親及び兄とは連絡がつかない。

 両親はそれぞれの実家へ行き、丸藤亮はサイバー・ランカーズの一人、才園の助けを借りて京都へ逃げていたのだが翔は知る由もない。

 

 丸藤亮は、翔が卒業した頃に迎えに来る予定だったが…。自主退学しておきながら実家に連絡すら入れていない為、両親も兄も気づかなかった。

 

 

「そ、そんな~!で、でも!サイバー流の門下生なら、住み込みで働ける職場の一つや二つ、すぐに見つかるッス!」

 

 楽観的に考えていた翔だったが…。

 

 

「出ていけぇ!」

「そ、そんなぁ~!」

 

 行く先々で、サイバー流がかかわっていた店舗から追い出される。手持ちのなけなしの小遣いは、ネットカフェで職場を探したり、漫画を読んだりアニメ鑑賞をしているとあっという間に尽きてしまった。デュエルアカデミアで購入した大事な大事な期間限定のレアフィギュアをショップやマニアに売りさばき、それを元手に職場を探す日々。

 

 

 

 

 

 

 そんなある日。翔は賞金目的に小さな大会に参加する。

 一回戦の相手は、黒髪黒目で平凡そうな少年だ。

 

「僕はサイバー流継承者、丸藤亮の弟、丸藤翔ッス!」

「僕は有坂 信(ありさか しん)!行くよ!」

 

 

 

「「デュエルッ!!」」

 

翔 ライフ4000

手5 場 

有坂 ライフ4000

手5 場 

 

 

「僕の先攻、ドロー!僕は手札からエンジェルO1の効果発動!手札のレベル7以上のモンスター、エンジェルO7を見せる事で、手札から特殊召喚できる!」

「攻撃力200なら怖く無いッス!」

「うっ…僕は、創世の預言者を召喚!さらに永続魔法、冥界の宝札を発動!」

「モンスター二体をリリースしてアドバンス召喚に成功した時、2枚ドローする永続魔法っスね。」

 

「ここでエンジェル01の効果、特殊召喚したモンスターが場にある限り、通常召喚に加えて、レベル7以上のモンスターを攻撃表示でアドバンス召喚出来る!二体のモンスターをリリース!現れろ、僕のエースモンスター、エンジェル07!」

「エースモンスターが攻撃力、2500ッスかぁ…。」

 

 小馬鹿にしたようにつぶやく丸藤翔。リスペクトとは何なのか。

 

「ぼ、僕のエースを馬鹿にするな!冥界の宝札で二枚ドロー!カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

 

 

翔 ライフ4000

手5 場 

有坂 ライフ4000

手3 場 エンジェル07 冥界の宝札 伏せ1

 

 

「僕のターン、ドローっス!速攻魔法、サイクロンを発動!その伏せカードを破壊するッス!」

「メタル化魔法反射装甲が!」

 

「よし!相手の場にのみモンスターが存在することで、サイバー・ドラゴンを特殊召喚するッス!」

「ええっ?!ぼ、僕の場にはエンジェル07が居るのに、どうしてモンスター効果が…。」

 

 エンジェル07の効果は万能ではない。召喚ルールまでは止められない。

 

「魔法カード、パワー・ボンドを発動!手札のサブマリンロイド、ドリルロイド、スチームロイドを融合!スーパービークロイド-ジャンボドリル!」

「攻撃力3000なら、まだライフは。」

「フッフッフ、パワー・ボンドで融合召喚した機械族は、その攻撃力が元々の攻撃力分アップするッス~!」

「?!攻撃力、6000!」

「バトル!ジャンボドリルで、エンジェル07を攻撃!」

「う、うわああああっ!」ライフ4000から500

「トドメッス!サイバー・ドラゴンでダイレクトアタック!」

「うわああああああああっ!」ライフ0

 

 

「やったー!僕の勝ちっス!そんな実力で、僕に挑むなんて100年早いッス~!」

「う、うう…」

「もっとまともなデッキを組んでやり直せッス~!」

「うわーん!」

 

 両手を腰に当て、馬鹿笑いをする翔。

 泣き出してしまう有坂を、他の参加者が慰める。

 

 

 

 

 

 

 準決勝。翔の対戦相手は黒髪ボブカット、八重歯が印象的な女の子だ。

 敵意を剥き出しにして、丸藤翔を睨みつける。

 

 

「アタシは山脇 麻代(やまわき まよ)!幼馴染の仇を取らせて貰うわ!」

「フン、この僕に勝てると思っているっスかぁ~?返り討ちにしてやるッス!」

 

 

「「デュエルッ!!」」

 

翔 ライフ4000

手5 場 

山脇 ライフ4000

手5 場 

 

 

 

「先攻はアンタよ!さっさと始めなさい!」

「なら僕の先攻、ドローっス!僕は魔法カード、パワー・ボンドを発動!手札のサブマリンロイド、ドリルロイド、スチームロイドを融合!スーパービークロイド-ジャンボドリル!」

「出たわね、攻撃力6000!」

「だけど、パワー・ボンドにはリスクがあるッス…ターン終了時に、融合召喚したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受けるッス。」

「そんな効果があったのね。なら、3000のダメージを受けなさい!」

「だから、サイバー・ジラフを召喚するッス~。このカードをリリースして、このターン僕が受ける効果ダメージを0にするッス!」

「?!」

「カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

 

翔 ライフ4000

手0 場 スーパービークロイド-ジャンボドリル 伏せ1

山脇 ライフ4000

手5 場 

 

 

「アタシのターン、ドロー!永続魔法、次元の裂け目を発動!墓地に送られるモンスターは、ゲームから除外される!」

「くっ、除外するカードっスか…」

「魔法カード、苦渋の選択を発動!デッキから暗黒ステゴ、暗黒プテラ、暗黒ヴェロキ、暗黒ブラキ、暗黒恐獣を選択!さぁ、一枚を選びなさい!」

「なら、攻撃力1000のプテラッス~!」

「もう一枚、苦渋の選択を発動!選択するのは、ベビケラサウルス、奇跡のジュラシックエッグ、セイバーザウルス、フロストザウルス、暗黒ドリケラトプスよ!」

「ベビケラサウルスッス~!」

 

 苦渋の選択と次元の裂け目で恐竜族を除外しながら、山脇は素早く次の一手を打つ。

 

「魔法カード、天使の施しを発動!三枚ドローして、二枚を捨てる!アタシは暗黒プテラとベビケラサウルスを捨てる!」

「ま、また恐竜族を除外したっス…。」

「これで、ゲームから除外された恐竜族は10枚!ディノインフィニティを召喚!」

「攻撃力が決まっていないッス!」

「このカードの攻撃力は、ゲームから除外された恐竜族の枚数×1000!よって攻撃力は10000!」

「ええええっ?!」

 

 大げさに驚く翔。

 

「この一撃で終わらせてやるわ!行け、ディノインフィニティ!」

「フフン!それはどうっスかぁ?」

「?!」

「罠発動!進入禁止!No Entry!!場のモンスターを全て守備表示にするッス~!」

「ディノインフィニティの守備力は0…バトルは終了。」

 

 

 山脇は手札を見つめる。D・D・R、生存本能、俊足のギラザウルス、二枚目のディノインフィニティ。

 例え倒されても、次のターンにはD・D・Rと通常召喚で、攻撃力11000のディノインフィニティが並ぶ。

 

「アタシはこれでターンエンド!」

 

 山脇はデュエルを始めて日が浅い。ゆえに彼女はカードの知識については不十分だ。

 スーパービークロイド-ジャンボドリルの効果を、彼女は知らない。

 

 

 

翔 ライフ4000

手0 場 スーパービークロイド-ジャンボドリル 

山脇 ライフ4000

手4 場 ディノインフィニティ 次元の裂け目 

 

 

「僕のターン、ドローっス!僕はスーパービークロイド-ジャンボドリルを攻撃表示に戻すッス!」

「でも、アタシのディノインフィニティは守備表示。ダメージは無いわ!」

「それはどうかなッス!バトル!スーパービークロイド-ジャンボドリルで、ディノインフィニティを攻撃っス!」

 

 地面を潜り、ディノインフィニティに向かって突き進むジャンボドリル!

 

「ジャンボドリルの効果!それは攻撃力が守備力を超えていれば、その数値分のダメージを与えるッス!」

「か、貫通効果!い、いやああああああっ!」ライフ0

 

 

 目を閉じ、Vサインをする丸藤翔!

 ライフが尽き、崩れ落ちる山脇。

 

「どうだ、参ったか!」

「あ、アタシが負けた…。」

「ディノインフィニティの攻撃力を上げる為だけに、恐竜族を大量に除外するような『リスペクト』に反する戦術を取るから負けるんス!」

「っつ!」

「なんなんスか?文句があるッスか?その戦術で、君は僕に負けたッスよ!」

 

 歯を食いしばり、悔し涙を流す山脇。

 

 

「…行こう、麻代」

「ごめん、信。アタシ、勝てなかった…。」

「よくやってくれた。」

 

 

 一回戦で翔に負けた少年が幼馴染を連れてその場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 決勝戦。

 

 猫耳パーカーを羽織った、小柄な少女が翔の対戦相手として立ちはだかる。

 

 

「や、柳里(やなり)彩葉(あやは)…ちゃん…」

「久しぶり、翔おにーさん。」

 

 

 一応は幼馴染であり、元サイバー流の門下生である彼女はかつての同門でもあるが、丸藤翔は彼女が苦手だった。

 自分より小柄で年下だが、逆らえない感じがしたからだ。

 

 

「デュエル、見てたよ。相変わらず才災おじさんの教えを守ってるんだね。」

「あ、当たり前ッス!才災師範の教えは、正しいッス!」

「正しい、かぁ…。」

 

 とても、とても悲しい眼を向ける彩葉。

 

「相手のエースモンスターや、練り上げた戦術を批判・否定するのがリスペクトデュエルなの?」

「当たり前ッス!攻撃力2500のモンスターがエースとかレベルが低すぎるッス!そして恐竜族をドンドン除外するような戦術なんて批判されて当然っス!僕は、正しい事をしているッス!」

 

 

 それを聞いた彩葉は、決心する。

 デッキから才災師範の言う「リスペクト」に反したカード、神の宣告、サンダー・ブレイク、炸裂装甲、奈落の落とし穴などを抜き、「リスペクト」に則ったカードを投入。

 デッキをシャッフルした後、セットする。

 

「だったら…その正しい・リスペクト・デュエルで引導を渡す!」

「ふ、フン!卑怯なカードさえ使われなければ、僕が負けるはずが無いッス!」

 

 

 

「「デュエルッ!!」」

 

翔 ライフ4000

手5 場 

彩葉 ライフ4000

手5 場 

 

「先攻は譲るッス!」

「なら遠慮なく。私のターン、ドロー!モンスターをセット!カードを一枚伏せて、ターンエンド!」

 

 

翔 ライフ4000

手5 場 

彩葉 ライフ4000

手4 場 セットモンスター 伏せ1

 

 

「僕のターン、ドロー!よし、僕はパトロイドを召喚!」

「パトロイド…。」

「バトル!パトロイドでセットモンスターを攻撃っス!」

「セットしていたのは、幻獣サンダーペガス!守備力は2000!」

「えっ?!う、うわああああああああっ!」ライフ4000から3200

 

 

 思わぬ反射ダメージを受ける丸藤翔。

 

「く、ひ、卑怯ッス!」

「そう?そもそもパトロイドは、相手の場にセットされているカードを確認する効果があるよね。なんで使わないの?」

「うっ、そ、それは…。」

「使っていれば反射ダメージは防げたはずだよね?」

 

 

 鋭い指摘に言い淀み、やや考えこむ丸藤翔。

 

「相手のカードを確認するのは、リスペクト違反だからッス!」

「なら、なんでそのリスペクト違反のカードを入れてるの?」

「うぐっ!」

 

 とってつけたような言い訳のようだがその通り、話の矛盾をついてやればすぐボロが出る。

 デュエルアカデミアに行ったから成長したのかと思っていたが、逆に劣化していた。一体何を学んでいたというのか。

 

 

「ぼ、僕はカードを一枚伏せてターンエンドっス!」

 

 

 

翔 ライフ3200

手4 場 パトロイド 伏せ1

彩葉 ライフ4000

手4 場 幻獣サンダーペガス 伏せ1

 

 

「私のターン、ドロー!私は、幻獣サンダーペガスをリリースして、バフォメットをアドバンス召喚!バフォメットの効果発動!デッキから幻獣王ガゼルを手札に加える!」

「アドバンス召喚しても攻撃力1400なら平気っス!」

「…魔法カード、融合を発動!場のバフォメットと手札の幻獣王ガゼルを融合!有翼幻獣キマイラを融合召喚!」

「ふ、フン!デュエルキングが使っていた融合モンスターだけど、その攻撃力は2100!大して怖く無いッス!」

 

 虚勢を張る丸藤翔。

 

 

「バトル!有翼幻獣キマイラで、パトロイドを攻撃!」

「くっ、罠発動!スーパーチャージ!僕の場のモンスターがロイドと名のつく機械族モンスターのみが存在する場合、相手の攻撃宣言時に発動できるッス!カードを二枚ドロー!」

「でも、戦闘破壊させてもらう。」

「わあああああっ!」ライフ3200から2300

「カードを2枚伏せてターンエンド!」

 

 

翔 ライフ2300

手6 場 

彩葉 ライフ4000

手1 場 有翼幻獣キマイラ 伏せ3

 

「ぼ、僕のターン、ドロー!よし!魔法カード、パワー・ボンドを発動!僕は手札のドリルロイド、トラックロイド、エクスプレスロイド、ステルスロイドを融合!現れるッス!スーパービークロイド-ステルス・ユニオン!」

「攻撃力、7200!場の機械族以外のモンスターを装備する効果があるけれど…。」

 

 ステルス・ユニオンが攻撃する時効果によりその攻撃力は元々の攻撃力の半分、1800になるがパワー・ボンドにより元々の攻撃力分、3600ポイントアップし5400になる。

 

「そんなリスペクトに反する効果を使わなくても、この攻撃で僕の勝ちっス!バトル!」

「罠発動!亜空間物質転送装置!有翼幻獣キマイラを除外!」

「フハハハッ!自分から場をがら空きにしてどうするんスかぁ?そのままダイレクトアタックッス~!」

 

 勝ち誇る丸藤翔!

 

 

「罠発動!ホーリー・ジャベリン!相手モンスターの攻撃宣言時、その攻撃力分ライフを回復!」ライフ4000から11200

「?!そ、そんなカードに何の意味があるッス?!」

「その後、戦闘ダメージ7200を受ける!」ライフ11200から4000

「い、一体何を考えているッス…。バトル終了!め、メインフェイズ2に入るッス!サイバー・ジラフを召喚!このカードをリリースして、僕が受ける効果ダメージを0にするッス!カードを一枚伏せてターンエンドっス!」

「このエンドフェイズ、亜空間物質転送装置の効果発動、有翼幻獣キマイラを場に戻す!」

 

 

翔 ライフ2300

手0 場 スーパービークロイド-ステルス・ユニオン 伏せ1

彩葉 ライフ4000

手1 場 有翼幻獣キマイラ 伏せ1

 

 

「私のターン、ドロー!モンスターをセット。そして魔法カード、太陽の書を発動!セットしたメタモルポットを反転召喚!」

「僕の手札も0だから、5枚ドローするッス!ウヒャヒャ!!」

 

 

 引いたカードを見て馬鹿笑いする丸藤翔。

 単純に手札が増えたのが嬉しいのか、それとも切り札を引き当てたのか。でも恐らく関係ないだろう。

 

「速攻魔法、サイクロンを発動!その伏せカードを破壊!」

「引っかかったっスね!これは罠カード、ワンダーガレージ!破壊された事で、手札からレベル4以下のロイドと名のつく機械族モンスター、ジャイロイドを守備表示で特殊召喚するッスよ!」

 

 妨害札かと思えばブラフだったが、これで懸念事項は消えた。

 

「装備魔法、フュージョン・ウェポンを有翼幻獣キマイラに装備!これで攻撃力と守備力が1500ポイントアップ!」

「ふふん!それっぽっちの強化で何ができるッス!」

「魔法カード、野性解放を2枚発動!有翼幻獣キマイラの攻撃力は、ターン終了時までその守備力分アップする!今の守備力は3300!よって攻撃力は6600ポイントアップ!さらにフュージョン・ウェポンで攻撃力が1500ポイントアップしているから、攻撃力は10200!」

「あ、あわわわわ…」

 

 

 丸藤翔は相手を批判しようとしたが…。

 このデュエル中、彩葉が使用したカードに『正しい・リスペクト・デュエル』に反するカードは無い。

 

「ま、負ける…?正しい・リスペクト・デュエルをしている相手に?」

「才災おじさんの正しい・リスペクト・デュエルに乗っ取ったデッキだよ? さぁ、私を『リスペクト』して。」

「う、うぐぐぐぐ…!」

 

 

 才災に変わった事で、彩葉はサイバー流から離れ、色々な場所に出かけて色々なデュエリストに出会った。

 多彩な戦術に、戦略に出会った。

 

 その間丸藤翔がしていた事と言えば、テスト前には祭壇を作って神頼みを行い、相手をリスペクトに反すると批判・否定するだけであった。

 

 

「…バトル!有翼幻獣キマイラで、スーパービークロイド-ステルス・ユニオンを攻撃!」

「うぎゃあああああああああっ!」ライフ0

 

 

 ライフが尽きた丸藤翔はその場にへたり込む。

 

「お、おめでとう!君の勝利だ!さぁ、優勝賞品だ!」

「2万円…分の、金券?」

「その通り!当店でのみ使用できる金券だ!有効期間は本日のみだ!」

 

 やや釈然としない顔で、柳里は入店する。

 

「丸藤翔君には、参加賞だ。」

 

 一方で店長から翔に手渡されたのはカードショップが用意した、オリジナルのカードパック一つ。

 

「う、うう~!く、悔しいッス~!!!」

 

 

 翔は、またしても逃げ出す。

 

 後ろから、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた気がしたが、振り切ってしばらく、走り続けた。

 止まったら、もう立ち上がれそうにないから、走り続ける。だが、途中で小さな、小さな小石に躓く。

 

 

「うわああああっ!」

 

 転んでしまい擦り傷を作るが、体より心が痛かった。

 

「うう~!うう~!!」

 

 翔は、うめいていたが、ややあって何とか立ち上がり、歩き出す。

 

 

 正しい・リスペクト・デュエルでも負けた事、そして荒んだ生活を送ったことで、遊城十代との出会いによって僅かながら成長した精神を摩耗させ、劣化させていく。

 だが、ようやく住み込みで働ける職場にありつく。

 

 

 

 

 

 

 

「…丸藤、か。」

「こ、ここで雇ってほしいッス!」

「デュエルアカデミアを中退したのね…。いいわ、サイバー流の門下生なのだから。住所はサイバー流門下生とシェアハウスになるけれど。」

「ええ~!!しぇ、シェアハウスッスかぁ?」

「嫌なら、別を当たって。」

「うっ、し、仕方がないッス。いまの所はそれで我慢するッス。」

「…そう。なら早く行って。」

 

 

 丸藤翔を追い出した後、元関東ブロック代表だった才魔は大きくため息をつく。

 

 サイコ流とのデュエルにも負け、彼女は『才災師範のリスペクト・デュエルを継承するが、それを相手に強要しない』という方針に切り替えた。

 城之内克也の言葉を受け入れた結果だ。除去やカウンター罠などは使わないが、使われても文句を言わないという事である。

 

 

「才魔様、よろしいのですか?」

「…何が?」

「丸藤亮の弟に、仕事と住居を斡旋するなんて!才魔様は…」

「そうよ。関東ブロック代表の入れ替えデュエルをするために、サイバー流に1000万円の上納金を払ったわ。郵便局の定額預金を解約して、必死になって貯めた貯金をつぎ込んで…私は、関東ブロック代表になった。しかし…」

「あの丸藤亮は、才魔様と入れ替えデュエルすら行われずその座を得た…なのに、何故!」

「才下(さいした)、彼は弟よ。丸藤亮本人では無い。今でも丸藤亮は憎いけれど、弟まで憎んだりしないわ。最も、態度がひどければ追い出すけれど。しっかり見張って。」

「はっ。」

 

 

 尊敬しており、個人的に好意も抱いている女性からの頼みである。

 才下はなるべく色眼鏡では無く、正当に評価しようと努力した。だが。

 

 

 丸藤翔は共同スペースを平気で汚し、掃除もしない。決められたことを守らないのに、同居人がルールを破ればそれを居丈高に責める。

 入居してからたった一週間で、今までうまくやっていたサイバー流門下生によるシェアハウスの空気はあっという間に悪くなる。

 

 決定的なのは、丸藤翔の後に新たな同居人となったサイバー流門下生…才竹(さいたけ)に対する言動である。

 相手が自分より高身長だが、門下生になった時期が自分より後だと知ると先輩風を吹かせ、自分からデュエルを挑んで置きながら。

 

「見たか!僕にデュエルを挑むなんて100年早いんだ!」

 と言い出したことである。

 

 その後、嘘のルールを教えて女性のサイバー流門下生、才元と風呂場で鉢合わせさせた。

 丸藤翔はうまくやったと思い込んでいたが、才竹の話と丸藤翔の話が食い違った事と、今までの言動からどちらが信じられるかは明らかだった。

 

 

「もういい加減にしてほしいわ!」

「才元(さいもと)…。本当に申し訳ない。」

 

 

 

 顔立ちは地味だが、スタイル抜群のサイバー流の女性門下生である才元と、被害者の才竹はシェアハウスのまとめ役である才下に直談判する。

 

「サイバー流はどんどん門下生が減って、残った門下生でも才災師範の教えを捨ててしまう者が多発しているわ…。だから、丸藤翔を保護する考えはわかるけれど。」

「本当、勘弁してくれよ…。あいつ『あれ?才竹くん居たんだ』って空気みたいに扱うんだ。そりゃあ、俺はあんまりパッとしないと思っているけどさ…。」

「あんた、背は高いじゃない。何センチあるの?」

「192cmだ。」

「ええっ?!」

 

 割と高身長な事に驚く才元。一方、直談判を受けていた才下は、丸藤翔の勤務態度について聞く。

 

「才竹、あいつの仕事は清掃と雑用だが、そこは真面目にやっているのか?」

「新人の俺がへまをしないかどうか、見張るのが僕の仕事って言って仕事は全然しないけれど。」

 

 その言葉を聞いてため息をつく才下。

 

「…よし、あいつが普段さぼっていること、嘘をついている事などを集めて、証拠として突き付けるぞ。」

「そ、それまで我慢しないといけないの?」

「耐えてくれ。」

 

 

 

 サイバー流が経営にかかわっていた、大型ショッピングモール。慢性的な人手不足を、協力しあう事で支えていた。

 丸藤翔が入居してから三か月たったある日。

 

「ぼ、僕に話ってなんなんスか?」

「来てくれたわね、丸藤翔。どう?ここでの生活は慣れた?」

「ま、まぁボチボチッス…」

「そう。ならもう…十分よね?」

「へ?」

 

 間抜けな面をさらす翔に、才魔は冷たく告げる。

 

「出ていきなさい。」

「ええ~!!な、なんなんスか!突然!」

「仕事はさぼって人に押し付ける、共用スペースを汚す、ルールを守らない…、まぁ、この辺りは教育すれば改善したでしょうけれど。自分より後からサイバー流に入った新人に嘘のルールを教え、しかも普段から『あれ?居たんだ』と馬鹿にする。貴方の言動にリスペクト精神は感じられないわ」

「ぐっ、あ、あいつめ~!僕にデュエルで負けたくせに!」

「ねぇ。教えてくれない?なんで才竹をあれだけ馬鹿にして、こき使っていじめる事が出来るの?」

「ち、違うっス!いじめでは無いっス!ルールは、その、間違えてしまったんス!」

「そう。それで?」

「あ、後は本当に存在感が無くて…だからそれを冗談でいじっていただけで」

「弄っているといったけれど、相手が不快に思った時点でそれは失言よ。もしかして、アカデミアでもそういう事をしていたの?」

「うぐっ…」

 

 図星だったようで、才魔は完全に見限る。

 

「貴方を追放するわ。」

「い、いいんスか!僕はあの丸藤亮の弟っスよ!」

 

 

 丸藤翔は、意図せずに地雷を踏みぬく。

 

 

「私は元々関東ブロック代表。それなのに…貴方のお兄さんと、デュエルをする機会すら与えられずにその座を追われた。」

「そ、それは。それを決めたのはお兄さんでは無くて、才災師範ッス。お兄さんも僕も関係ないッス。」

「私はブロック代表になるために、かなりのお金を使った。それなのに…。私は、それでも兄と弟は違うから、貴方個人を見極める事にしたの。でも、貴方が彼の弟であることを盾にするなら…。」

 

 断固とした態度を取る才魔。

 

「もう庇わない。改めて言うわ。出ていきなさい。」

「く、くっそぉおおおおっ!さ、才竹め!僕に負けたくせに、僕を嵌めるなんて!」

「先に嵌めたのは貴方でしょ。才元と才竹が風呂場で鉢合わせになるように仕向けて…。ねぇ、あれで一番誰が傷ついたと思うの?」

「へ?それは、平手打ちをされた才竹の覗き魔でしょ?」

「覗かれた才元よ!貴方は、貴方は…。女性にとって見せると見られるは全然違う!さぁ、入ってきなさい!」

 

 どかどかと入ってくる門下生。

 

「あ~!さ、才竹!」

「丸藤先輩、いや、あえてこう呼ぶ!このチビメガネ!」

「ち、チビメガネ!お前、僕に負けたくせに!」

「ああ、そうさ。俺はお前に負けた。だから、今この場でデュエルを申し込む!俺が勝ったらシェアハウスから出ていけ!俺が負けたら俺が出ていく!」

 

 そんな才竹の発言に対し、才下が口を開く。

 

「待て、そんな条件を付ける必要はない。」

「才下先輩、先ほど才魔様の言葉で俺はようやく理解したんだ。あの事件で傷ついたのが、才元さんだと言う事を。俺はこのチビメガネが許せない!」

「う、うぐぐぐ…!いいっス!そのデュエル、受けてたつッス!」

 

 

 

 

 

 

「「デュエルッ!!」」

 

翔 ライフ4000

手5 場 

才竹 ライフ4000

手5 場 

 

「先攻は譲ってやるッス!」

「なら遠慮なく!俺の先攻、ドロー!俺はモンスターをセット!ターンエンドだ!」

 

 

翔 ライフ4000

手5 場 

才竹 ライフ4000

手5 場 セットモンスター

 

「僕のターン、ドローッス!フッハッハッハッハ!!相手の場にのみモンスターが存在することで、サイバー・ドラゴンを特殊召喚!」

「し、しまった!」

「さらに、スチームロイドを召喚!バトル!サイバー・ドラゴンでセットモンスターを攻撃するッス!」

 

「ええっ?!サイバー・ドラゴンで攻撃?」

「何故、スチームロイドから仕掛けない…?」

 

 

「ぐっ、カードガンナーが破壊される。だが、効果発動!カードを一枚ドローする!」

「スチームロイドでダイレクトアタック!」

「ぐうううっ!」ライフ4000から2200

 

「ヌアハッハッハ!どうだ、参ったか!僕は丸藤亮の弟、丸藤翔ッス!この僕に勝てると思っていたッスかぁ?僕はこれでターンエンドっス!」

 

 

翔 ライフ4000

手4 場 サイバー・ドラゴン スチームロイド 

才竹 ライフ2200

手6 場 

 

「くっ、俺のターン。ドロー!俺は、モンスターをセット、カードを一枚伏せてターンエンド」

 

 

 

翔 ライフ4000

手4 場 サイバー・ドラゴン スチームロイド 

才竹 ライフ2200

手5 場 セットモンスター 伏せ1

 

「僕のターン、ドロー!このままバトル!サイバー・ドラゴンでセットモンスターを攻撃!」

「だが、こいつは起動砦のギア・ゴーレム!反射ダメージを受けて貰うぜ!」

「なっ?!ぼ、僕に負けたくせに生意気だぞぉ!」ライフ4000から3900

「よし、これで…」

 

「これでしのいだと思ったッスか?行け、スチームロイド!」

「ええっ?!守備力はこっちの方が高いぞ?」

「スチームロイドが相手モンスターに攻撃するとき、攻撃力を500ポイントアップさせるッス!」

「ぐううっ…」

「僕はカードを一枚伏せてターンエンド!」

 

 

翔 ライフ3900

手4 場 サイバー・ドラゴン スチームロイド 伏せ1

才竹 ライフ2200

手5 場 伏せ1

 

「くそっ、流石丸藤亮の弟なだけはあるぜ。本気を出されていたらさっきのターンで負けていた。」

「へ?」

「スチームロイドが相手モンスターに攻撃するとき攻撃力が2300になるなら、それで2ターン目と4ターン目の時、俺の壁モンスターを破壊し、サイバー・ドラゴンでダイレクトアタックを二回決められて前のターンで俺は負けていた…」

 

 4秒ほど丸藤翔は硬直した後、笑い出す。

 

「ふ、ふふん!その通りッス!お前は本来負けているんスよ!」

「…だけど、負けたくない!こんな、相手を見下したようなデュエルをする、『リスペクト精神』を持たない奴に!」

「なっ?!ぼ、僕がリスペクト精神を持たない?!と、取り消せッス!」

 

 激高する丸藤翔。

 

「俺のターン、ドロー!俺はパトロイドを召喚!」

「あ~!それは僕のカード!お前っ!」

「何を言っているんだ?これはお前が捨てたカードじゃねぇか。」

「うぐっ…でも!そいつに何ができるッスか?そいつはロイドデッキでは融合素材にもならないカードッスよ!」

 

 才竹が入ったころ、丸藤翔はパトロイドのカードを捨てた。効果を使い忘れたら、それについて指摘された時のことを思い出すからだ。

 

 

「俺はパトロイドの効果発動!相手の場にセットされているカードを確認する!そのセットカードを確認!えっと、融合解除か…。ならば俺は装備魔法、巨大化を装備!これでパトロイドは攻撃力2400になる!バトルだ!パトロイドでスチームロイドを攻撃!」

「うわああああああああっ!」ライフ3900から2800

「あ、あれ?なんかダメージが500ポイント多いぞ?」

 

 

「スチームロイドは相手モンスターに攻撃するとき、攻撃力を500ポイントアップさせるが、攻撃されれば攻撃力が500下がるんだ。」

「そんなデメリット効果があるの?」

 

 

「何か知らんがダメージをより多く与えられたからヨシ!俺はこれでターンエンドだ!」

 

 

翔 ライフ2800

手4 場 サイバー・ドラゴン 伏せ1

才竹 ライフ2200

手4 場 パトロイド 巨大化 伏せ1

 

 

「うう~、僕のカードを勝手に拾って使った上にダメージまで与えてくるなんて、生意気だぞ!僕のターン、ドロー!魔法カード、融合!手札のレスキューロイドと、キューキューロイドを融合!レスキューキューロイドを融合召喚!」

「くっ、流石は丸藤亮の弟!融合召喚はお手の物か!だが、攻撃力はパトロイドの方が上だ!」

「僕は魔法カード、磁力の召喚円 LV2を発動!現れろ、デコイロイド!守備表示ッス!」

「守備力500か。」

「僕はこれでターンエンドッス!フッフッフ、才竹くん!君は次のターン、この丸藤翔の恐るべきコンボを思い知る事になるッスよ!」

 

 

 

翔 ライフ2800

手0 場 サイバー・ドラゴン レスキューキューロイド デコイロイド 伏せ1

才竹 ライフ2200

手4 場 パトロイド 巨大化 伏せ1

 

 

「俺のターン、ドロー!」

「速攻魔法、融合解除!レスキューキューロイドの融合を解除して、レスキューロイドとキューキューロイドを墓地から守備表示で特殊召喚!」

「モンスターを一気に増やした!」

「フッフッフ…才竹クン?」

 

 丸藤翔は眼鏡をクイッと持ち上げながら言う。

 

「デコイロイドが場にいる限り、相手はデコイロイド以外を攻撃出来ない。」

「なら、デコイを倒すまでだ!」

「レスキューロイドが場にいる限り、戦闘破壊されたロイドは手札に戻る。そしてキューキューロイドは墓地からロイドが手札に戻った時、手札から特殊召喚出来る!」

「つ、つまり!俺はデコイロイドと永遠と戦わないといけないってことかぁ?!」

 

 

「お、落ち着いて才竹!必ず攻略法はあるはずよ!」

 

 そう励ます才元とは対照的に。

 

「あれ?でもキューキューロイドの効果は…」

「だが、助言は出来ない。これは才竹のデュエル。」

 

 才下と才魔は、丸藤翔が自信満々で敷いたコンボに疑念を抱く。

 

「だけど、モンスターが多いなら!俺は機械王-プロトタイプを召喚!こいつの攻撃力は、このカード以外の場の機械族一体につき、100ポイント攻撃力が上がる!場には5体の機械族がいる!よって攻撃力は2100だ!」

「くっそぉ…」

「俺はカードを一枚伏せて、ターンエンド!」

 

 

 

翔 ライフ2800

手0 場 サイバー・ドラゴン レスキューロイド キューキューロイド デコイロイド 

才竹 ライフ2200

手3 場 パトロイド 機械王-プロトタイプ 巨大化 伏せ2

 

 

「フン、僕のターン、ドロー!魔法カード、強欲な壺を発動!カードを二枚ドロー!フッフッフ…僕はカードを1枚伏せてターンエンド!」

 

 

 

 

翔 ライフ2800

手1 場 サイバー・ドラゴン レスキューロイド キューキューロイド デコイロイド 伏せ1

才竹 ライフ2200

手3 場 パトロイド 機械王-プロトタイプ 巨大化 伏せ2

 

 

「俺のターン、ドロー!パトロイドの効果発動、その伏せカードを確認するぜ!」

「コソコソ相手のカードを覗き見して…ああ、覗き魔同士気が合うんスねぇ?」

「元々お前のカードだろ!チェーン・マテリアル?何だこれ、融合しても攻撃出来ない上にエンドフェイズに破壊される?これでどうやって戦うつもりなんだ…。まぁいい、俺はモンスターをセットして、ターンエンドだ」

 

 

 

翔 ライフ2800

手1 場 サイバー・ドラゴン レスキューロイド キューキューロイド デコイロイド 伏せ1

才竹 ライフ2200

手3 場 パトロイド 機械王-プロトタイプ セットモンスター 巨大化 伏せ2

 

「僕のターン、ドロー!罠発動!チェーン・マテリアル!このターン、攻撃出来なくなる代わりに、融合素材モンスターを手札・デッキ・場、墓地から除外して融合素材に出来るッス!魔法カード、ビークロイド・コネクション・ゾーンを発動!デッキから二枚目のスチームロイド、ドリルロイド、サブマリンロイドを除外して、スーパービークロイド-ジャンボドリルを融合召喚!」

「こ、攻撃力3000?!」

「ターンエンドッス」

「だけど、その効果で融合召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊されるはずだ!」

「フッフッフ、ビークロイド・コネクション・ゾーンで融合召喚したスーパービークロイドは効果で破壊されないッス!」

「な、なんだって!」

 

 

翔 ライフ2800

手1 場 サイバー・ドラゴン レスキューロイド キューキューロイド デコイロイド スーパービークロイド-ジャンボドリル

才竹 ライフ2200

手3 場 パトロイド 機械王-プロトタイプ セットモンスター 巨大化 伏せ2

 

「くっそぉ、無敵の盾に加えて攻撃力3000かよ!俺のターン、ドロー!俺はセットしていた魔装機関車デコイチを反転召喚して効果発動!カードを一枚ドローする!俺は、機械王-プロトタイプとデコイチをリリースして、エメス・ザ・インフィニティをアドバンス召喚!」

「攻撃力2500でどうするつもりッス?」

「その無敵の盾は突破できないが、エメス・ザ・インフィニティは相手モンスターを破壊し墓地に送れば攻撃力が700ポイントアップする!こいつでデコイロイドを倒せば、攻撃力はこっちが上になる!行け、エメス・ザ・インフィニティ!デコイロイドを攻撃!」

「フン、レスキューロイドの効果で手札に戻すッス!そしてキューキューロイドの効果で…あれ?」

 

 だが、デコイロイドは出てこない。

 その光景に思わず声を漏らす才元。

 

「…え?どうして出てこないの?」

「キューキューロイドはダメージステップに効果が発動しない。」

「エクスプレスロイドか、死者転生といったカードならともかく、あれではコンボは成立しない。」

 

 才下と才魔がそれぞれ丸藤翔のコンボの穴を解説する。

 

「そ、そんなぁ!」

「ダメージステップとかよく知らない単語がでてきたけれど、何か突破できたからヨシ!」

 

 

「「「良くないッ!!!」」」

 

 才竹の馬鹿な発言に対し、観戦していた三人の声がハモる。

 

 

 

「これで攻撃力は3200!行け、パトロイド!レスキューロイドを攻撃!」

「ぐうううっ!ぼ、僕の無敵の盾が!」

「ひび割れていたようだな!俺はこれでターンエンド!」

 

 

 

 

翔 ライフ2800

手2 場 サイバー・ドラゴン キューキューロイド スーパービークロイド-ジャンボドリル

才竹 ライフ2200

手4 場 パトロイド エメス・ザ・インフィニティ 巨大化 伏せ2

 

 

「ぼ、僕のターン、ドロー!よし、スーパービークロイド-ジャンボドリルで、裏切り者のパトロイドを攻撃ぃ!」

「ぐっ、ぱ、パトロイド!」ライフ2200から1600

「思い知ったか!この覗き魔モンスターめ!カードを一枚伏せてターンエンド!」

 

 

 

翔 ライフ2800

手2 場 サイバー・ドラゴン キューキューロイド スーパービークロイド-ジャンボドリル 伏せ1

才竹 ライフ1600

手4 場 エメス・ザ・インフィニティ 伏せ2

 

 

「俺のターン、ドロー!バトルだ、エメス・ザ・インフィニティでスーパービークロイド-ジャンボドリルを攻撃!」

「罠発動!侵入禁止!No Entry!!場のモンスターを全て守備表示に変更するッス!ハッハッハ!これで次のターン、確実にお前のモンスターは破壊されて、サイバー・ドラゴンでトドメを差してお前をシェアハウスから追い出してやるッスよ!」

「…俺はカードを一枚伏せ、ターンエンド」

 

 

翔 ライフ2800

手2 場 サイバー・ドラゴン キューキューロイド スーパービークロイド-ジャンボドリル 

才竹 ライフ1600

手4 場 エメス・ザ・インフィニティ 伏せ3

 

 

「僕のターン、ドローっス!フッハッハッハ!僕は場のサイバー・ドラゴンとキューキューロイドをリリース!アーマロイドガイテンゴーをアドバンス召喚!」

 

 

 思い出したくない、柳里彩葉とのデュエルに負け、参加賞として渡されたオリジナルのカードパックに入っていたレアカード。

 それがこの、アーマロイドガイテンゴーだった。

 

 翔は知らない。大会の進行を担当していたカードショップの店長が、丸藤亮に助けられた過去がある事を。

 そしてその弟である丸藤翔のために、デッキコンセプトに合うレアカードをこっそり入れていたことを。

 その上で、丸藤翔を住み込みのバイトとして雇おうと彼が考え、去り際にその名前を呼んでいたことも。

 

 

「ロイドをリリースした事で効果発動ッス!場の魔法・罠カードを全て除外してやるッス~!」

「ならば罠発動!重力解除!場のモンスターの表示形式を変更する!これでエメス・ザ・インフィニティは攻撃表示になる!」

「んがっ?!で、でも!その伏せカード二枚は除外してやるッス!」

 

 

 除外されたのは、時の機械タイム・マシーンと2ターン目に伏せられた体力増強剤スーパーZだった。

 

「ま、不味いっス…こ、攻撃表示にされたジャンボドリルを守備表示に変更して、た、ターンエンド!」

 

 

 

 

翔 ライフ2800

手2 場 アーマロイドガイテンゴー スーパービークロイド-ジャンボドリル 

才竹 ライフ1600

手4 場 エメス・ザ・インフィニティ 

 

 

「俺のターン、ドロー!バトルだ!エメス・ザ・インフィニティでアーマロイドガイテンゴーを攻撃!」

「ぐうううっ!」

「これで攻撃力は3900!俺はメインフェイズ2でカードを一枚伏せ、ターンエンド!」

 

 

 

 

翔 ライフ2800

手2 場 スーパービークロイド-ジャンボドリル 

才竹 ライフ1600

手4 場 エメス・ザ・インフィニティ 伏せ1

 

 

「う、うう…ガイテンゴーが…。僕のターン、ドローッス!き、キタ~!ふ、フッフッフ。才竹クン!思ったよりデュエリストとしてのレベルが上がっていたけれど…どうやら僕を倒すには修行不足だったみたいッスね!」

「何!俺の場には攻撃力3900のエメス・ザ・インフィニティが居るんだぞ!」

「見るがいい、おののくがいい!そして僕にひれ伏すがいい!魔法カード、融合!手札のデコイロイド二体を融合!現れろ!ペアサイクロイド!」

「な、なんだ?攻撃力1600?」

「このカードは、相手に直接攻撃ができるッス!」

「?!」

「これで決まりッス!ペアサイクロイドで、ダイレクトアタック~!」

 

 目を閉じてVサインを決める丸藤翔。

 

「どうだ、思い知ったか!後輩の癖に、一度僕に負けた上に嵌めようとした癖に、再挑戦しようなんて、生意気ッス!」

「まだだ!まだ俺のライフは尽きてない!」ライフ1600から2500、2500から900

「…へ?ほ、ホーリーエルフの祝福?」

「ああ、そうさ!これでライフを900回復した!」

「ぐ、ぐぐぐぐぐ…た、ターンエンドっス!」

 

 

 

 

 

翔 ライフ2800

手0 場 スーパービークロイド-ジャンボドリル ペアサイクロイド 

才竹 ライフ900

手4 場 エメス・ザ・インフィニティ 

 

 

「俺のターン、ドロー!俺は機械軍曹を召喚!バトルだ、機械軍曹で、ペアサイクロイドを攻撃!」

「ぐっ!あ、相打ち…」

「そしてエメス・ザ・インフィニティで、ジャンボドリルを攻撃!」

「あ、あああああ~!!」

 

 場に残っていた主力モンスターも撃破され、翔の場は一掃される!

 

「これで攻撃力は4600!これでターンエンド!もうお前の場にも手札にもカードは無い!」

 

 

 

 

翔 ライフ2800

手0 場 

才竹 ライフ900

手4 場 エメス・ザ・インフィニティ 

 

 

 

「ぼ、僕のターン、ドロー。僕はサブマリンロイドを召喚!このカードは、ダイレクトアタックが出来るッス!」

「ま、またダイレクトアタック?!」

「いけ、サブマリンロイド!ダイレクトアタック!」

「ぐううううっ!」ライフ900から100

 

 

「才竹!」

「…デュエルアカデミアを退学になったとはいえ、狭き門を突破しただけの事はあるか。」

「…おかしい。才竹は何故サイバー・ドラゴン関連のカードを使わない?」

 

 

「サブマリンロイドは守備表示になるッス。ターンエンド!」

 

 

 

翔 ライフ2800

手0 場 サブマリンロイド

才竹 ライフ100

手4 場 エメス・ザ・インフィニティ 

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード発動!守備封じ!これでサブマリンロイドを攻撃表示に変更する!」

「ずるいぞ!攻撃力800のサブマリンロイドを攻撃表示なんかにされたら…」

「いけ、エメス・ザ・インフィニティ!サブマリンロイドを攻撃!」

「う、うわああああああああっ!」ライフ0

 

 

 

 

 

 

 ライフが尽き、放心する丸藤翔。

 

「よ、よっしゃー!か、勝ったぁ!勝ったぜぇ!お前に勝ったから、以前お前に負けた時に『君にサイバー・ドラゴンと派生カードはまだ早いッス、その時が来るまで預かっておくッス』と言って俺から封印したカード達は返してもらうぜ!」

「そんな事をしていたのか、コイツ。」

「…何故だ?何故後輩のサイバー・ドラゴン関連のカードを封印した?過去に何があった?」

 

 才竹の言葉を聞いてあきれる才下と、丸藤翔の動機が気になる才魔。

 

「……けてないッス」

「さぁ、荷物をまとめて出ていってもらうぞ!」

「ぼ、僕は負けていないッス!」

「は、はぁ?」

 

「お前!これで僕に勝ったと思っているのか!お前は僕が本気になればすぐに負けていたんだ!サイバー・ドラゴンのダイレクトアタックでね!フッハッハッハッハ!」

「それは違うわ。」

「な、なに?!」

「才竹の場には、既に体力増強剤スーパーZが伏せてあった。これは2000ポイント以上の戦闘ダメージを受ける前に、ライフを4000回復する罠。ライフは残っていたのよ。」

「あ、アガガガガガ…」

 

 才魔はそのまま畳みかける。

 

「答えなさい、何故才竹にあんなひどい仕打ちをしたの?」

「へ?」

「先輩風を吹かせて、仕事を押し付け、しかも嘘のルールまで教えた上に存在感が薄いように扱ったのは何故?」

「そ、それは…。才元さんに近づいたからッス!」

 

 自分の名前が出た事で、素っ頓狂な声を上げる才元。

 

「え?私に?」

「そうッス!僕がこのシェアハウスに入った時、優しくしてくれた才元さんに、才竹が近づいて…」

「ま、待ってよ!私は新規入居者だから色々ルールを説明したりしただけで…」

「へ?僕に一目ぼれしたからじゃあないんスか?」

「どれだけ自意識過剰なのよ…私とほぼ接点無いでしょ。」

 

 

「つまり、才元が好きでその才元と仲良くしている才竹が気に入らなかったと?それだけの理由で?」

「ま、まだあるッス!ぼ、僕の事をチビだと馬鹿にしていたッス!」

 

「え?そりゃあ俺の方が背が高いけれど…。」

「というか、それが本音か。本当にリスペクト精神が無いんだな。」

「う、ウガガガガガ…」

 

 丸藤翔はうめいていたが、突然激高する!

 

「うるさいッス!もういい、僕の方から出ていくッス!後で土下座して戻ってきてほしいと言ってきてももう遅いッス!」

 

 吠えまくった後、翔はまたしても逃げ出す。途中で、才竹から回収していたサイバー・ドラゴンとその派生カードを入れたケースを落とす。

 

「…才竹。受け取りなさい。」

「このデッキを?」

「今の機械族の寄せ集めデッキでは戦えないわ。カードを厳選して、才災師範が残したサイバー流のリスペクト・デュエルを引き継いで。」

「わかりました、才魔様!」

 

 

 こうして、才竹は丸藤翔からサイバー・ドラゴンとプロト・サイバー・ドラゴンとサイバー・ドラゴンの融合体を取り戻す。

 だが才災師範の除去カードやカウンター罠はダメ、という間違った思想を継続してしまった為、二人とも公式試合では強制脱出装置や次元幽閉などの汎用妨害札を使われて一回戦負けを何度も喫するのであった。

 

「どうして勝てないんだぁ~!」

「ま、また強制脱出装置で手札を全部使って出したサイバー・エンド・ドラゴンがバウンスされたぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、才魔の保護下から離れた丸藤翔を待っていた現実は厳しかった。

 

 元サイバー流だったことで世間の目は冷たい。しかも才魔から悪行が広まった事でサイバー流からもつまはじきにされ、途方に暮れる。

 金も尽き、売れそうなフィギュアも一つもない為に野宿生活。

 

「うう~、うう~!どうして、どうしてこんな事に!僕は一体、どこで間違えたッスかぁ?」

 

 嘆き、幸せそうな人を物陰から眺めて妬む。

 

 

「僕は、サイバー流継承者丸藤亮の弟、丸藤翔ッスよ~」

「それは本当か?」

「だ、誰っス?!」

 

 白髪白髭だが眉毛だけは黒い西洋人らしい老人と、その息子であろう50代の太った西洋人が、翔を見ていた。

 

「私はラング伯爵。この後時間があるなら、私達と一緒に来ないか?」

「父上、こんな奴を連れて行ったところで…。」

「そう言うな、ペッパー。城之内克也と戦うならば、戦力は必要だ。とりあえず、食事でもどうだ?」

 

「も、もちろんッス!」

 

 

 この西洋人達はミズガルズ王国にて悪事を働き、その結果城之内克也の活躍により失脚。投獄されたが脱獄して日本まで逃げのびていた。

 デュエルギャングなどの手先を見繕うべく行動していたラング伯爵は、この日、新たな手駒を手に入れる。

 

 

 一方で、息子のペッパー子爵は顔をしかめる。彼は元々日本人が嫌いなのだ。かつて…

 

 

 プロデュエリストになるための昇格デュエルにおいて、対戦相手である日本人の魔法カードを電磁波で封じて勝ったところ…。

 一年後にその時の不正を暴かれ、デュエルモンスターズの公式大会から永久追放されたからだ。

 

 

 とはいえ、家長であるラング伯爵には逆らえない。しぶしぶ、この小さな日本人を仲間に加える事に同意する。

 




元凶登場

次回は、影丸理事長の孫娘が登場します。
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