猫シンクロ使いが行く遊戯王GX!   作:交響魔人

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アンチリスペクト物で、入学式直後に鮫島校長と主人公がデュエルをするという展開が多いですが、個人的に「サイバー流師範と主人公の直接対決は引っ張るべきでは?」と思ってこういう流れにしました。


【最終回】第29話!デュエル・アカデミアを改革せよ!後編!俊二VS才災勝作!

 猫崎俊二と光里は、夜のアカデミアを散策する。

 夜の海を見てみたくなったのだ。学生の頃はできなかった夜間外出だが、今なら出来る。

 

 

「…いい潮風ね」

「そうだな。」

 

 

 夜風が心地よく、潮の香りも良い。定期的に来てもいいかもしれない。そう思った二人は異様な気配を感じる。

 海の中に渦が現れ…。

 

 ザバンッ!という音とともにナニカが飛び出してくる!

 

 

「魚?!」

「いや、人だ!一体、だ…」

 

 

 誰だろう、と俊二は最後まで言い切れなかった。

 

 

「猫崎ぃ…俊二ぃいいいいいいっ!」

「さ、才災!」

 

 現れたのは、行方不明になっていた、才災勝作!

 

「才災…その姿は一体」

 

 光里は思わず動揺する。才災の頭にはターバンがまかれており、サイバー・ドラゴンを模した黒いコートを羽織り、首からはサイバー・ドラゴンを連想させるメダルを下げている。

 血走った目が、俊二を睨みつける!

 

「はぁ、はぁ、はぁ…。お前には失望した!失望したぞぉおおお!」

「何を言っている!それはこっちのセリフだ!」

「何故だ!何故ぇ!リスペクトに反するカードを使える?使われたら嫌だろう!」

「別にそんな事は無いが。」

「この大嘘つきめ!もういい、私と闇のゲームだ!このデュエルで、私の、リスペクト精神がいかに正しい物かを、身をもって思い知らせてやる!」

 

 

 才災が足を大きく踏みならすと、そこから空間が広がり、猫崎夫妻を包み込む!

 

 アムナエルが作り上げた、この闇のアイテムには欠点があった。非常に強靭な意思を持つ者は脱出してしまう事がある。

 尤も、闇のアイテムであることを察知されづらいという利点はあるが。仮にもサイバー流の長にまで上り詰めた男を封じ込めるにはやや力不足だった。

 

 

「俊二!」

「心配いらない。闇のゲームを仕掛けてくるという事は、闇のデュエリストにまで落ちぶれたか。才災!お前が汚したデュエルアカデミアは俺達が正す!お前は闇の底で眠っていろ!」

「?!わ、私が、私が作り上げた!正しい・リスペクト・デュエルを学べる最高の学校と教育プランまで、叩き潰そうというのかぁ!このリスペクト精神を微塵も持たない屑めぇ!」

 

 

 

 

「「デュエルッ!!」」

 

俊二 ライフ4000

手5 場 

才災 ライフ4000

手5 場 

 

 

「先攻は譲ってやる!」

「なら遠慮なく。俺の先攻、ドロー!俺はレスキューキャットを召喚!そしてこのカードを墓地に送り、デッキからXセイバーエアベルンとコアラッコを特殊召喚!レベル2の地属性コアラッコに、レベル3の地属性エアベルンがチューニング!S召喚!ナチュル・ビースト!カードを二枚伏せてターンエンド」

 

 

 

俊二 ライフ4000

手3 場 ナチュル・ビースト 伏せ2

才災 ライフ4000

手5 場 

 

 

「私のターン、ドロー!っつ、はぁ、はぁ、はぁっ…」

 

 相当消耗しているらしく、才災勝作は息を切らし、その肩が激しく上下する。

 やや質が落ちるとはいえ、アムナエルの晩年の作品。闇の罰ゲームから脱出するのは、非常に体力を消耗する。

 

 

「私はサイバー・ドラゴン・ツヴァイを召喚!」

「?!シャドウバージョンのツヴァイ…」

 

 前世では無かったイラスト違いが出た事に驚く俊二。

 前世でカードコレクターだった友人がこれを知れば、さぞや欲しがるだろう。

 

「そしてサイバー・ドラゴン・ツヴァイを除外!現れろ、サイバー・エルタニン!」

「?!さ、才災が…エルタニンを使うなんて!」

 

 これも、シャドウバージョンである。

 そのことに俊二は驚いて声も出ないが、光里は才災が自らの教えを捨てた事に驚愕する。

 

「はぁ、はぁっ!私が、一生懸命!正しい!リスペクト!デュエルを!教えているのに!邪魔ばかりはいる!なら、思い知らせてやります!ぜぇ、ぜぇ…除去カードを使われた時に嫌な気分になる事を!効果発動!消え失せろ、Sモンスターぁ!」

「…ナチュル・ビーストは墓地に送られる。」

 

 サイバー・エルタニンから放たれた闇の波動が、ナチュル・ビーストを飲み込み、消滅させる!

 

「さらに、手札のサイバー・ドラゴン・ドライを捨てて、魔法カード、ワン・フォー・ワンを発動!デッキからサイバー・ヴァリーを特殊召喚!魔法カード、機械複製術を発動!デッキからサイバー・ヴァリーを二体、特殊召喚!」

「これは…」

「ヴァリーの効果発動!攻撃力500しかない用済みの、エルタニンを除外して、ぜぇ、はぁ…二枚、ドロー!そしてもう一体のヴァリーの効果発動!ヴァリーを除外して二枚ドロー!」

 

 しばし、肩を激しく上下させ、呼吸を整える才災。

 

「永続魔法、未来融合を発動!カードを一枚伏せ、ターンエンド!」

 

 

 

 

俊二 ライフ4000

手3 場 伏せ2

才災 ライフ4000

手3 場 未来融合(0) 伏せ1

 

 

「俺のターン、ドロー!レスキューキャットを召喚!効果発動、このカードを墓地に送り、デッキから現れろ、Xセイバーエアベルン!異次元の狂獣!」

「ここだぁ!罠発動!激流葬!場のモンスターを全て破壊する!どうだ、どうだぁ、俊二ぃ!ぜぇ、はぁ…」

「…俺はこのままターンエンドだ」

 

 

俊二 ライフ4000

手3 場 伏せ2

才災 ライフ4000

手3 場 未来融合(0)

 

 

「私のターン、ドロー!未来融合の1ターン目、デッキからサイバー・エルタニン、サイバー・ドラゴン3体、サイバー・ドラゴン・ツヴァイ2体、サイバー・ドラゴン・ドライ2体とサイバー・ドラゴン・コア3体と超電磁タートルの計12体を墓地に送る!」

「キメラテック・オーバー・ドラゴンを選択したか…となると。」

「フン!まずは露払いだ!魔法カード、オーバーロード・フュージョンを発動!墓地のサイバー・ドラゴンとサイバー・エルタニンを除外し、現れろぉ!キメラテック・ランページ・ドラゴン!」

「キメラテック・ランページ・ドラゴン…!」

 

 それが、それがついに現れたか。

 

「効果発動!融合素材にしたモンスターの数だけ、お前の伏せカードを破壊できる!私はお前の伏せカード二枚を破壊する!どうせリスペクトに反するカードだろう!」

「そうだな。罠発動!奈落の落とし穴!そして、和睦の使者!」

「フン、やはり除去カードか。だがそれぐらい想定済み!ターンエンド!」

 

 

 

俊二 ライフ4000

手3 場 

才災 ライフ4000

手3 場 未来融合(1)

 

 

「俺のターン、ドロー!死者蘇生を発動!蘇れ、ナチュル・ビースト!」

「ええい、忌々しいSモンスターめが!」

 

 ナチュル・ビーストを睨みつける才災。それに対し、ナチュル・ビーストもまた敵意を向ける。

 

 

「俺は召喚僧サモンプリーストを召喚!効果発動、このカードは守備表示になる。手札の精神操作を捨てて、デッキから三体目のレスキューキャットを特殊召喚!」

 

 俊二の場に出た、猫シンクロのキーカードを見た才災はわめきだす!

 

 

「しつこい!本当にしつこいっ!忌々しいクソ猫め!S召喚とやらが無ければ、古井戸に捨てられるようなっ、役にも立たぬカードの分際でぇ!!」

「レスキューキャットを墓地に送り、デッキからXセイバーエアベルンと逆ギレパンダを特殊召喚!レベル3の地属性の逆ギレパンダに、レベル3の地属性のエアベルンをチューニング!S召喚!ナチュル・パルキオン!」

「またSモンスターか!」

「魔法カード、貪欲な壺を発動!墓地のレスキューキャット3体とX-セイバーエアベルン2体をデッキに戻して、二枚ドロー!バトル!二体でダイレクトアタック!」

「ぜぇ、ぜぇ…、墓地の超電磁タートルを除外してバトルフェイズを終了!」

 

 未来融合で墓地に送られた、超電磁タートルが俊二のバトルフェイズを終了させる!

 

 

「はぁ、はぁ…どうだ、どうだぁ!俊二ぃ!私のデュエルはぁ…ぜぇ、はぁ…卑怯だろうっ!お前に対するぅ、リスペクト精神を、微塵も感じられないだろうっ!」

 

 とても、とても悲し気な目を才災勝作に向ける猫崎俊二。

 彼にも、才災勝作にもあったはずだ。ただ、カードを純粋に楽しんでいた、そんな時期が。

 

 流れる歳月が、数奇な運命が。彼を歪めてしまった。

 

 

 

「…カードを二枚伏せる。ターンエンド!」

 

 

俊二 ライフ4000

手0 場 ナチュル・ビースト ナチュル・パルキオン サモンプリースト 伏せ2

才災 ライフ4000

手3 場 未来融合(1)

 

「私のターン、ドロー!ここで、未来融合の効果で、デッキからキメラテック・オーバー・ドラゴンが特殊召喚されるが、未来融合が墓地に送られるため、キメラテック・オーバー・ドラゴンも、墓地に送られる…」

「才災…」

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ…私は、墓地のサイバー・ドラゴン2体、サイバー・ドラゴン・ツヴァイ3体、サイバー・ドラゴン・ドライ2体とサイバー・ドラゴン・コア3体の計10体を除外!現れろ!サイバー・エルタニン!」

「また、墓地送りか」

 

 つぶやいた俊二のセリフに、才災は敏感に反応する!

 

「そうだ、その通りだ!また墓地送りだ!ははは!さぁ、俊二ぃ!」

 

 

 才災は血走った目で叫ぶ!

 

 

「私のデュエルを、否定しろぉおおおおおおおっ!」

「カウンター罠、神の宣告!」ライフ4000から2000

「…は?」

 

 エルタニンが消滅する。

 

「しゅ、俊二ぃ!」

「さぁ、どうする?っと」

 

 一瞬、ふらつく俊二。

 

「俊二ッ!」

「…大丈夫だ、光里!俺はまだ、戦える!」

「ぐ…一枚、一枚カードを伏せ、ターンエンド…」

 

 

 

 

俊二 ライフ2000

手0 場 ナチュル・ビースト ナチュル・パルキオン サモンプリースト 伏せ1

才災 ライフ4000

手1 場 伏せ1

 

 

「俺のターン、ドロー!チューナーモンスター、霞の谷の戦士を召喚!レベル4のサモンプリーストに、レベル4の霞の谷の戦士をチューニング!S召喚!メンタルスフィアデーモン!」

「カウンター罠、昇天の黒角笛を発動!S召喚を無効にして破壊ぃ!ナチュル・パルキオンでは、カウンター罠は止められないだろうっ!」

 

 うっそだろお前?!と仰天するメンタルスフィア・デーモン。

 ナチュル・パルキオンも目を丸くし、ナチュル・ビーストは感心したように首を動かす。

 

 

「なんだ、才災。やればできるじゃないか。」

「だ…」

「ん?」

「黙れだまれダマレダマレェエエッ!なんだ、なんだお前の態度はぁ!否定しろっ!才災師範っ、今の貴方のデュエルはぁ、リスペクトに反しているとぉ!否定しろぉおおおおおおおっ!」

 

 才災は地団太を踏みながら、喚き散らす!

 

「…今の才災…師範のデュエルなら、普通にリスペクト出来る。」

「あ、ああああああああああああ!」

 

 茹で上がったタコのように顔を真っ赤にし、頭をかきむしりながら才災は叫ぶ!

 

 

「行け、ナチュル・ビースト!ナチュル・パルキオン!」

 

 二体のナチュルSモンスターは大きく跳躍し、才災に向かって飛びかかる!

 

 

「うぎゃあああああああああっ!」ライフ4000から1800、1800から0

 

 

 

 

 

 闇のゲームの空間が晴れる。

 

「才災!」

「ね、猫崎ぃ!これで、これで終わったと思うなよ!私は才災勝作!必ず、正しい・リスペクト・デュエルを世界に広めてやる!ぜぇ、ぜぇ…はぁ、はぁ…」

 

 

 才災の足につけられた鎖が、勢いよく引きずる!

 

「お、覚えていろよぉおおおお!」

 

 

 才災は再び、闇に飲まれていく!

 

「…才災、勝作…ん?」

 

 ふと、俊二は地面に落ちているカードに気が付く。

 

「キメラテック・ランページ・ドラゴンと…メダル?」

 

 

 サイバー・ドラゴンを模しているメダルだ。直径7cm、厚さは4mm、銀製でよい重みを感じる。

 鎖はついていない、才災の懐から落ちた物のようだ。

 

「光里、これはどうしようか?」

「…私がもらってもいい?」

「構わないが…。とりあえず、海馬オーナーとペガサス会長に報告だな。」

 

 

 その後、徹底的な検査が行われたが、その結果なんの変哲もないカードであり、メダルも銀製である事が判明。

 銀製のメダルのデザインは、才災の手記にあった『尋問官』に与える予定の物と言う事も分かった。

 

 

 『尋問官』というのは、サイバー流による完全支配が完成した後、リスペクトに反するカード。すなわちコントロール奪取を、除去カードを、バーンカードを、カウンター罠を、ハンデスカードを、全体除去からのワンキルを、ロックカードを使うアンチリスペクトを倒すため、サイバー流の走狗となって戦う組織。

 

 リスペクトに反するカードをデッキに入れている受験生を才災があえて、入学させていたのは…批判対象にする事で、正しいサイバー流の教えを定着させると同時に、リスペクトに反するカードを使いながらもサイバー流に縋るデュエリストを発掘するという狙いもあったからだ。

 

 

 『尋問官』には高級マンションの一室に加え、サイバー流から毎月多額の現金を振り込む代わりに、正しい・リスペクト・デュエルに反するデュエリストを倒すという役割を与える構想があったらしい。

 

 

 

 ちなみにメダルについて…地金としては1万2千円だが、デザインが秀逸であるため15万円で買い取るという打診があったが俊二は断った。

 

 

「…光里、これを受け取ってくれ。」

「ありがとう。ねぇ、俊二。才災は、また来るわよね?」

「…来るだろうな。」

「その時は、私も戦うわ。あの時は驚きすぎて足が動かなかったけれど…次こそは。」

 

 

 そんな光里の肩を、俊二は優しく抱く。

 

 

 二人の未来を祝福するかのように、光里の首から下げられた銀製のサイバーメダルが朝日を反射し、キラリと輝いた。




投稿開始した時点では、丸藤亮VS主人公か、今回を最終回という予定でした。
思った以上に好評を頂いたので、光の結社偏については書き溜めています。

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