もしも影丸理事長に孫が居た場合、十代は祖父の暴走を止めてくれた相手となるのか、それとも祖父の悲願を阻止した敵になるのか。拙作の光海は祖父が思いを託した相手という事もあり、敬意は持っています。
その上で、今回自覚が無いまま、破滅の光の手駒となって立ちはだかります。
光の結社の拠点。その一室で破滅の光は思わぬ展開に頭を悩ます。
この時、斎王本来の人格も動揺していた。エドが成長すればあるいは自分の運命が変わるかもしれないと思っていたのだが…。
「サイバー・ランカーズのブロック代表がこれほどとは…。エドの成長の糧になってもらい、遊城十代を光の結社に誘う運命に歪みが生じてしまった。」
誰に十代を洗脳させるか。そう考えた時、一人の少女の顔が頭に浮かぶ。
「そうだ、彼女ならば…。」
斎王がそう考えた数日後。
デュエルアカデミアの定期便。そこから、一人の少女が降りたつ。
手に花束を持って。
十代が、オシリスレッド寮の近くで釣りをしていると声をかけられる。
「…失礼」
「ん?あれ、誰だ、お前。」
「当方は光海。」
「俺は遊城十代だ。」
「?!遊城…十代…!」
少女の目が大きく揺れる。
「…当方の姓は、影丸」
「?!まさか、理事長の…孫?」
頷く少女。
「おーい、アニキ-!ってお客さんドン?」
「遊城十代、貴公と二人きりで話がしたい。」
「…わかった。剣山、すまないがちょっとこれを頼む。」
「ええっ?!わ、わかったザウルス…。綺麗な人ドン、うう~、俺も彼女が欲しいザウルス…」
ティラノ団を結成していた時に、何かと突っかかってたE・HEROを使う少女が居たが、結局彼女とは疎遠になってしまった。
彼女がエースとしていたのが、E・HEROエッジマンであり、基本戦術はネクロダークマンを墓地に送ってからのリリース無しでの召喚だった。
高い攻撃力とエッジハンマーに恐竜さんが何度倒されたか、剣山は覚えて居ない。
恋愛事にはさほど興味を示していなかったが、やはりこうして見せつけられると堪えるものがある。
かつて、影丸理事長が三幻魔を覚醒させ、才災勝作を叩き潰した場所。
そこに、十代と光海は来ていた。
「…ここで、おじい様が。」
「ああ。立派な、とても立派な人だった。もしもサイバー流を叩き潰すのに、三幻魔を使わなければ俺は止めなかった。」
「…そう。」
花束を献花し、長く祈りをささげる光海。その隣で十代も深く頭を下げる。
「貴公、ここで当方とデュエルをしてほしい。」
「ここで…。」
「おじい様とラストデュエルをした相手、そして当方が入学できなかった狭き門を潜り抜けたデュエルエリートに、当方の戦略がどこまで通じるか…試したい。」
入学できなかった、という光海の言葉を受け、影丸理事長が糾弾した事を思いだす十代。
リスペクトに反する意見を述べたら、成績を問わずに不合格にしていた…。もしかしたら、彼女も不合格にされてしまった生徒なのかもしれない。
「…ああ、やろう!」
「一つだけ言っておく。当方は、貴公のデッキを研究し尽くしてきている。それでも、受けてたつか?」
「へぇ、別にいいぜ。対策されるのは慣れている!それでも俺は自分のデッキを信じて前に進むだけだ!」
「よい答え。では…」
「「デュエルッ!!」」
光海 ライフ4000
手5 場
十代 ライフ4000
手5 場
「当方の先攻、ドロー。魔法カード、フォトン・サンクチュアリを発動。場にフォトン・トークンを守備表示で二体、特殊召喚する。」
「守備力0…。」
「しかし、このカードを発動するターン、当方は光属性以外のモンスターを召喚、特殊召喚、反転召喚できない。二体のフォトン・トークンをリリース。アドバンス召喚、轟雷帝ザボルグ!」
「攻撃力、2800!これがお前のエースモンスターか?!」
「轟雷帝ザボルグが召喚されたとき、フィールド上のモンスター1体を破壊する。」
「…へ?」
「当方は、轟雷帝ザボルグを破壊する。」
「な、何をやっているんだ?!」
滅茶苦茶としか思えないプレイング。これは…リスペクトに反する云々以前の問題ではないか。
不合格なのは実力だったのかもしれないと思ってしまう十代だが、その認識は即座に改められる。
「狙いはある。轟雷帝ザボルグの効果発動。自身の効果で光属性モンスターを破壊したとき、そのレベルと同じ枚数だけ、融合デッキのカードを墓地に送る。レベルは8枚、よって8枚のカードを貴公は墓地に送らなければならないが…光属性モンスターをリリースしてザボルグを召喚した場合、墓地へ送る相手のカードは当方が選ぶ。」
「ま、まさか…融合先そのものを破壊してくるなんて!」
「…E・HERO フレイム・ウィングマン、E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン、E・HERO エリクシーラー、E・HERO サンダー・ジャイアント、E・HERO ダーク・ブライトマン、E・HERO プラズマ・ヴァイスマンE・HERO テンペスター、E・HERO ワイルドジャギーマン。この8枚を墓地に送ってもらう。」
「ぐっ…」
「当方は、XY-ドラゴン・キャノン、YZ-キャタピラー・ドラゴン、XZ-キャタピラー・キャノン、レア・フィッシュ、フュージョニスト、深海に潜むサメ、水陸両用バグロス、朱雀を墓地に送る。」
墓地に送られた融合モンスターはまとまりがなく、バラバラだ。
おそらく光海はこれらを主軸に置いておらず、今回の融合デッキを破壊する戦術のために適当に入れたのだろうと推測する十代。
「二枚目のフォトン・サンクチュアリを発動。フォトン・トークンを二体特殊召喚。そして二重召喚を発動。再び、二体のフォトン・トークンをリリースして、轟雷帝ザボルグを召喚。」
「ま、また融合デッキを…!」
「その通り。再び轟雷帝ザボルグを破壊する。当方は戦場の死装束、マブラス、カオス・ウィザード、キメラテック・フォートレス・ドラゴン、黒き人喰い鮫、バロックス、轟きの大海蛇の7枚を墓地に送る。」
「…E・HERO スチーム・ヒーラー、E・HERO セイラーマン、E・HERO ネクロイド・シャーマン、、E・HERO マッドボールマン、E・HERO ランパートガンナー、E・HERO ワイルド・ウィングマン、の6枚だ。だけど、光海!これでお前の手札は1枚!俺の融合戦術を崩したのは見事だけど、E・HEROは融合召喚だけじゃあ無い!」
「知っている。魔法カード、貪欲な壺を発動。XY-ドラゴン・キャノン、YZ-キャタピラー・ドラゴン、XZ-キャタピラー・キャノン、レア・フィッシュ、フュージョニストをデッキに戻して、二枚ドロー。二枚目の貪欲な壺を発動。深海に潜むサメ、水陸両用バグロス、朱雀、戦場の死装束、マブラスをデッキに戻して、二枚ドロー。三枚目の貪欲な壺を発動。墓地のカオス・ウィザード、キメラテック・フォートレス・ドラゴン、黒き人喰い鮫、バロックス、轟きの大海蛇をデッキに戻して二枚ドロー。」
「手札1枚が、4枚になった?!」
驚く十代。だが、これをほかのアカデミア生徒が聞けば「お前が言うな」と返されるだろう。
「当方は、カードを一枚伏せてターンエンド。」
淡々とプレイングする光海。その無表情から内面を読み取れない十代。
だが、光海の内心は違う。
(…決まった!初手がフォトン・サンクチュアリ2枚と轟雷帝ザボルグが2枚、二重召喚という状況で、ドローが貪欲な壺!エクストラデッキ全破壊コンボ達成した上で、連続貪欲な壺を引き当てられるなんて…きっと雷丸のカードをデッキに入れていたから、デッキが応えてくれたという奴に違いない!融合モンスターや、Sモンスターを個々に対処するという戦術では無く、出てくる前に根こそぎ破壊するという戦略!雷丸と当方がじっくり議論して編み出した、共同作業!戦略は戦術では潰せない。…後は、この伏せカードで王手。決まらなかったとしても、この状況ならば最低でもブラフの役割を果たすはず!)
光海 ライフ4000
手3 場 伏せ1
十代 ライフ4000
手5 場
「俺のターン、ドロー!今のは驚いたぜ…。だけど、さっきのターン、貪欲な壺で手札を補充したよな。」
「このコンボを使えば、墓地に15体のモンスターがたまる。貪欲な壺で手札補強は選択肢に入る。」
「なら、俺も使わせてもらう!魔法カード、ホープ・オブ・フィフス!墓地のE・HEROを5体デッキに戻して」
「させない。罠発動、大火葬。」
「……え?」
十代の墓地のE・HEROの融合モンスター14体と、二体の轟雷帝ザボルグが除外される。
よろよろと、十代は除外されたE・HEROを除外ゾーンに置く。
「当方が、墓地利用を想定していないとでも?」
「お、俺は…E・HEROプリズマーを召喚。バトルだ、プリズマーでダイレクトアタック!」
「……」ライフ4000から2300
「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」
光海 ライフ2300
手3 場
十代 ライフ4000
手3 場 プリズマー 伏せ1
(……え?あそこでホープ・オブ・フィフスを引き込む?どんなドロー力をしているの?それにしても何故プリズマーでネクロダークマンを墓地に送らない?)
訝しむ光海だが、直後に気づく。
(そうか!融合モンスターを見せる必要があるけれど、見せる融合モンスターが居ないからか!融合モンスターをヘル・ポリマーで奪う、融合禁止エリアで融合召喚自体を封じるというのも案に上がったが、やはりこれが正解だった!)
「当方のターン、ドロー!オーシャンズ・オーパーを召喚。そしてオーシャンズ・オーパーをリリースして、マザー・ブレインを特殊召喚。」
「攻撃力2400!」
「効果発動、手札の水属性モンスター、ヒゲアンコウを捨てて、その伏せカードを破壊。」
「ヒーローシグナルが!」
「バトル、マザー・ブレインでプリズマーを攻撃」
「うわあああっ!」ライフ4000から3300
「カードを一枚伏せ、ターンエンド。」
光海 ライフ2300
手0 場 マザー・ブレイン 伏せ1
十代 ライフ3300
手3 場
「くっ…俺のターン、ドロー!マザー・ブレインはセットカードを破壊できる…俺は、カードを二枚伏せてターンエンド!」
光海 ライフ2300
手0 場 マザー・ブレイン 伏せ1
十代 ライフ3300
手2 場 伏せ2
(…HEROデッキの切り札、融合モンスターを根こそぎ破壊&除外と徹底的に叩かれてなお諦めない、か。何故これほどの信念と強さを兼ね備えていて、オシリスレッドなのか?ラーイエローやオベリスクブルーはこんなのばっかり…だとしたら、当方が不合格なのも当然…か。)
デュエルアカデミアのレベルの高さを勘違いする光海。
「当方のターン、ドロー。」
引いたカードを見つめる光海。マザー・ブレインだけではライフを削り切れない。
(さて、と。伏せを割れると分かっていて二枚の伏せ。順当に考えて一枚はブラフでもう一枚が本命…。本命の伏せカードとなると…激流葬か、ミラフォか…。はたまた、炸裂装甲や落とし穴かもしれない。)
水属性のモンスターであるため、一枚を割って不確定要素を減らせる…。そう考えた直後に思い直す。
(いや、これほどの引きの強さがある相手に時間を与えるなど、敵に塩を送るようなもの。破壊効果であれば対処も可能。ここは臆せず攻める!)
「オイスター・マイスターを召喚。バトル、オイスター・マイスターでダイレクトアタック。」
「リバースカードオープン!クリボーを呼ぶ笛!デッキからハネクリボーを特殊召喚!」
「……ハネクリボー。」
小さな羽の生えたクリボーを前に、光海は混乱する。
(えっ?なんでHEROデッキに天使族?シナジーあるの?異次元の女戦士、ならず者傭兵部隊といった戦士族や、クリッターというサーチモンスターならわかるけれど…フレンドッグみたいな、融合補助モンスター?)
「そして手札のミラクルフュージョンとE-エマージェンシー・コールを捨てて、速攻魔法、進化する翼を発動!デッキから現れろ、ハネクリボーLv10!」
「ハネクリボーLv10?」
「ハネクリボーLv10は自身をリリースする事で、相手モンスターを全て破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!このデュエルは俺の勝ちだ!」
(…なるほど、除去要員。手札消費が激しいHEROデッキだとしてもこれほどの引き運があるなら、順当に回る、と。融合回収や闇の量産工場なら手札コストの回収も容易。だが…。)
「その効果にチェーンしてリバースカードオープン。ライフを1500払い、速攻魔法発動、我が身を盾に。」ライフ2300から800
「?!」
「ハネクリボーLv10の効果を無効にして破壊。デュエル・エリートである貴公に、浅学非才の当方が追いつくには、ここまでやってようやく勝利が見えてくる。」
「は、はは…。すげえなぁ…。」ライフ3300から1700
もしも、もしも大火葬が無ければ。ホープ・オブ・フィフスでE・HERO ワイルドジャギーマン、E・HERO サンダー・ジャイアント、E・HERO ダーク・ブライトマン、E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマン、E・HERO プラズマ・ヴァイスマンをデッキに戻して2枚ドロー。プリズマーの効果でスパークマンを墓地に送り、ミラクルフュージョンでスパークマンとフレイム・ウィングマンを除外。シャイニング・フレア・ウィングマンを融合召喚。墓地の融合HEROが9枚居る事で攻撃力は5200となり、戦闘ダメージと効果による逆転するつもりだった。
だが、光海が雷丸と共に積み重ねた勝利へのロジックは、遊城十代という天才を上回った。最も、遊城十代はまだ成長途上のデュエリストなのだが。
「マザー・ブレインでダイレクトアタック」
「……」ライフ0
十代のライフが尽きた時、遠く離れた地で、斎王琢磨にとりついた『破滅の光』は笑みを浮かべる。
「これで!遊城十代!お前の運命は…我が手に落ちた!!」
真っ白、ただどこまでも真っ白な空間。そこに、遊城十代は居た。
「…どこなんだ?ここは…。俺はさっきまでデュエルをしていて…。」
意識が飲まれそうになる。懸命にこらえる十代だが、その気力は限界を迎えつつあった。
足の先が、白く染まっていく…。
『…遊城十代っ!』
力強い、とても力強い声が、十代の意識を覚醒させる!
「だ、誰だ…?」
その声の主が、十代を掴んで動かすと、白い侵食が止まる。
『時間が無い、光海に伝えろ!ウジャド眼の、サークレットを常に持っていろとな!』
「なんで光海のことを知って…、まさか!」
声の主の正体に気づいた十代が、口を開く前に。
『…おのれ、おのれおのれぇ!残留思念がっ!』
白い、靄のようなナニカが、敵意をむき出しにして現れる!
『行け!ここは私が食い止める!』
「…すまない!」
『逃がすかっ!!』
白い靄が伸ばした光の波動が、十代の頭を掠る!
「ぐうっ…」
『直撃しなかったみたいね!なら…?!』
『これ以上はさせぬ!』
「…ありがとう、影丸理事長!」
十代は、白い空間から脱出を果たす!
同時刻。
(うーん、目が覚めないぞ?)
祖父の残留思念が、破滅の光が送り込んだ先兵と懸命に戦っているというのに、のんきに遊城十代を眺める影丸光海。
(…意外と、良い身体している。ボディービルダーでムキムキなのと違って、ナチュラルな感じが実に良い…。彼氏欲しがっていた友達に紹介してもいいな。マッチョは嫌だけど程よく筋肉がついていないとダメと言っていたし。…どれ、胸板は…ほほう、これはこれは…。)
スッと十代の胸板に触れる光海。
もしもこの場面を某レベル10の悪魔族が見れば、泡を吹いて卒倒するだろう。
(融合デッキ全破壊&除外、という対【猫シンクロ】デッキへのアンチデッキは実戦通用する事が判明した。やはり実戦しないとわからない。)
鎖骨をなで、首筋をさすりながら光海は考える。
(後は、霞の谷の戦士を除外してイージーチューニングで1700の打点強化をどうにか処理できれば間違いなく勝てるはず…。とはいえ、今回のは運が良かったのもある。精進しないと。待て、ホープ・オブ・フィフス…墓地に落とす融合モンスターをE・HEROの融合モンスターばかりにしておけば、四枚目の貪欲な壺になるのでは?しかし、轟雷帝ザボルグにはまだまだ可能性がありそうだ。墓地に融合モンスターやSモンスターがたまるなら、それを素材に融合召喚…は無理か?うーむ。墓地の種族をドラゴン族にしてF・G・D?)
十代の腕の肉付きを確かめ、続いて太ももに手を伸ばした所で。
「…っつ!こ、ここは…」
「…目が覚めた?」
光海は、平然と空とぼける。
「か、影丸!アムナエルの、ウジャド眼のサークレットを持っているな!」
「…何故、それを知って?」
「今後は、それを肌身離さず持っていて…く…れ…」
また気絶した十代を見て、考え込む光海。
(いやちょっと待って。何故、あれを知っているの?セブンスターズに選ばれた百野真澄には渡していないから、知っているはずが無い…。しかし)
この必死さは、何かしら理由があるに違いない。今後は、あれを持ち歩こう。そう光海は決意する。
改めて太ももに手を伸ばした所で、これは流石にアウトか、と思い直し手を引っ込める光海。
代わりに十代の胸ポケットから、PDAを拝借して電話を掛ける。