遊城十代は行方不明のまま、ホワイト寮計画がスタート。高田が中心になっているようだ。
幸い、万丈目が洗脳されていないのが救いだが…。
クロノス新校長は念願の校長職を得たが…激務でかなりきついらしい。
ラーイエローに降格した虎之井はラーイエローでも相変わらずらしく、トラブルばかり起こしその対応で樺山先生は日に日に痩せている。
ナポレオン教頭はオベリスクブルー男子寮の寮長というのに、ろくに対抗策を打たない。
斎王を慕う生徒が増えてしまい、なし崩し的にデュエルアカデミアにとどまっている。とっとと追い出して出禁にしたい俊二は行動していたのだが…。
「新たなS召喚のテスター?!」
「そういう事なのでアール。ムッシュ猫崎、オベリスクブルー男子寮の心配する前に、自分の立場を心配するのでアール」
嫌味を言っている場合ではないのだが…。制服を白く染めた生徒に対し、即急に対処すべしと度々言う俊二をナポレオン教頭は疎ましく思っていた。
斎王はプロのマネージャー、彼がプロデビューさせるために色々とアドバイスしているので、斎王がとどまっているこの状況をナポレオン教頭は好ましく思っている。
……時は、少しさかのぼる。
その新たなS召喚のテスター、相川 士道(あいかわ しどう)は出社していた。
始業の20分前には席に着き、始業までの間にパソコンを起動しメールをチェックする。
「おはようございます、相川副主任。」
「本日もよろしくお願いします。田代(たしろ)さん。」
同僚から挨拶され、それに返事をしつつ相川はメールチェックを済ませる。
「本日は外食産業、とりわけ弁当部門についての会議がミーティング後にあるとか。」
「弁当部門…、そろそろ潮時では?」
「ですよねぇ。かつては日本各地にあった弁当業界も大多数がサイバー流により吸収、そのサイバー流が壊滅した後は独立して業績を回復しています。」
「今更、ここにつぎ込んだところで見返りがあるとは。」
「思えませんよねぇ…。まぁ、続けるなら少しでも利益を出すしかありませんね。」
ミーティングが終わり、会議室へ移動する直前。
「おはようございまーす!あれ、皆さん何処に?」
「虎之井さん、また遅刻ですか?」
「遅刻では無いですよ~、田代さん。」
「…本日は、外食産業の弁当部門に関する会議があります。」
「弁当部門かぁ、ここらで攻勢に出るんだろうなぁ。」
ちなみにこの虎之井は、アカデミアに在籍しているオベリスクブルーの兄である。
何を言っているのやら、と冷たい目を向けた後、田代は踵を返して歩き出す。
彼女の威風堂々と、毅然とした態度は同僚として実に頼もしい。
「良く集まったな!今日は弁当部門について会議を行うぞ!」
「毒岡(どくおか)課長、資料は?」
「何?!なんで無いんだ!田代、手際が悪いぞ!」
「…申し訳ございません。」
「謝罪はいい!なんで作っていない!今日会議を行う事は通達していただろう!」
「…資料作成をするよう指示を受けておりません」
「うるさいっ!臨機応変にやれっ!お前は資料作成を怠った!これは、芽出(めで)部長に報告しておくぞ…。」
始業前にメールボックスを確認していた社員に圧力をかける毒岡。
「まぁいい、無いなら無いで続けるまでだ!弁当部門の売り上げだが、前年同月比から34%も落ちている…何故だ!」
「はい。」
「何だ、相川!言ってみろ!」
「弁当の米の質を落とし、容器を上げ底にして容量を減らし、サラダと煮物とコーンパスタを無くし、チキンの香草焼きと米だけの弁当にした事だと思われます。」
「違う!」
コストカットと宣い、毒岡は自社の弁当をかなり改悪していた。
「…にも拘らず、値段据え置きで購買層が66%居るのですか。まぁ、あのチキンの香草焼きは美味しいですが。」
「そうか、34%下がったが…まだそれだけの購買層が居るという事か…。弁当のコストを半分にすれば黒字になるな、コストカットだ!」
弁当部門そのものをコストカットしたほうがいいのでは?虎之井がしゃしゃり出る。
「毒岡課長!僕に名案があります!」
「おおっ!虎之井!いいぞ、言ってみろ!」
「おまけをつけるのはどうでしょう?」
「おまけ…?」
「デュエルモンスターズのカードですよ!サイバー流の弁当が売れているのは、カードが付いているからです!」
「確か、使えない役立たずのゴミカス雑魚カードが、倉庫にあったな。」
「これで処分できます!」
「よし決まりだ!やはりお前は俺が見込んだ男だ!ナーハッハッハ!」
嘆息する相川。何故この現状をコステロ会長は放置するのか。
「よし、その方針で行く!さぁ、仕事に戻れ!俺と芽出部長は、買収したサイバー流が関わっていた店舗の視察に行く。」
「いつ頃戻られますか?」
「馬鹿野郎!直帰するに決まっているだろう!何か問題があったら、お前が解決しろ。」
「…申し訳ございません。俺もこの後、デュエルアカデミア本校に行かなくてはなりません。」
「なぁにぃ?だったら、お前の仕事は誰がするんだ?」
「朝のミーテイングが終わったら出張する、と予定表に記載していますが。」
「ええい、屁理屈をペラペラペラ…お前が居なくなったら問題が起きた時、誰が対処するんだ!」
「…田代さん、お願いできますか?」
「かしこまりました。」
万丈目グループが関わった店舗により実家の電気屋を倒産に追い込まれた過去を持つ女性、それが田代である。
この部署で、相川が最も信頼している人物でもある。
「まぁいい、俺は出発するぞ。才災の経営方針を守った結果、売り上げが前年同月比と比べて12%しか上がっていないからな。有能な俺がテコ入れしないと!」
ドタドタと歩いていく毒岡課長。
「…才災が居なくなったのに、それだけ結果を出せるって…どんなシステムを残して行ったのよ。経営手腕を再現できるAIがあったら言い値で買いたいわ」
相川は必要なものをまとめ、出発する。
「それでは寒川さん、行ってきます。」
「いってらっしゃいませ…え?相川副主任も?」
「田代さんが残ります。」
「なら、大丈夫ですね。いってらっしゃいませ。」
美人で巨乳で長身で髪の綺麗な受付嬢にあいさつし、相川はデュエル・アカデミアに向かう。
デュエルアカデミア本校。
「失礼します。俊二、お客さんが到着したわ。」
「ありがとう、透子義姉さん。」
デュエルリングへ向かう俊二。そこにはすでに教職員が集まっている。
「初めまして、猫崎俊二さんですね。お会いできて光栄です。」
爽やかな感じの好青年。中肉中背、黒髪黒目。
「S召喚の新たなテスターと言う事ですが、お名前は?」
「相川士道です。」
突然、黙って見ていたナポレオン教頭が騒ぎ出す。
「いい事を思いついたのでアール!」
「ナパ!突然何なのーネ!」
「このデュエルで、勝った方を実技担当最高責任者に任命するのでアール!」
「それはオーナーの了承が必要なのーネ!」
「そもそも、オシリスレッドの卒業生に実技担当をさせること自体が間違っているのでアール!」
「申し訳ありませんが、お断りします。」
きっぱりと断ったのは、俊二ではなく、相川だった。
「な、何故でアール?!」
「猫崎さんは、海馬瀬人とペガサス会長が認めた決闘者。サイバー・ランカーズ相手にも連戦連勝を収めた。それだけの肩書と実績があるにも関わらず、クビを仄めかすような方が教頭をしている学校で、働きたいと思いません。」
「な、ナナナナ」
「そもそも、私は既に千里眼グループのアジア総局、極東支部の副主任です。」
「千里眼グループ?」
「…万丈目グループに押され気味ですが。猫崎さん、貴方は私の父を知っていますね?」
「父親?」
「良く知っているはずですよ。母に似ている、と言われて育ちましたが…。」
見覚えがない。光里も困惑している。
「…私の父は、才災勝作。」
「?!」
思わぬ名前が出たことで、俊二は硬直する。
「ナヌっ!」
「マンマミーア!」
「で、でも!貴方の姓は…」
「ええ、そうです。離婚した時に、母に引き取られました。それ以来、相川の姓を名乗っています。」
「…父の夢を砕いたから、俺に復讐を?」
「そんなつもりはありません。もう十数年会っていません。父親の顔より、職場の受付嬢の顔をみた回数が多いです。ここに来たのは挨拶と、腕試しと…。」
「…と?」
「猫崎俊二とのデュエルに勝てば、コステロ会長が私を副主任から主任に格上げする、と言ってくださいました。正直2年後に配属された遅刻の常習犯の後輩に、先を越されたくないのです。」
「…貴方も大変だな。」
「そちらこそ。上が海馬瀬人ではさぞやつらいのでは?コステロ会長は温厚篤実にして、気前も良い方です。」
遅刻の常習犯なのに出世競争で先を越されそうになっている辺り、その後輩がよほど有能なのか、それとも相川さんになにかしら問題があるのか不明だが。
余計な思考を追い出し、俊二はデュエルディスクを構える。
「「デュエルッ!!」」
俊二 ライフ4000
手5 場
相川 ライフ4000
手5 場
「先攻は貰います。私の先攻、ドロー!魔法カード、予想GUYを発動!私の場にモンスターがいない時、デッキからレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚!現れろ、X-セイバー アナペレラ!」
「X-セイバー?!」
サイバー流の師範だった才災の息子が、【X-セイバー】という事に驚く俊二だが、直後に思い直す。
X-セイバーエアベルンを試験的に作り、それを主軸に置いた【猫シンクロ】でサイバー流を壊滅させた事でX-セイバーというテーマが着目されたのだろう。
「さらに魔法カード、ワン・フォー・ワンを発動!手札のX-セイバー アクセルを捨て、デッキからチューナーモンスター、X-セイバー パロムロを特殊召喚!」
「レベルの合計は5…」
「レベル4のアナペレラに、レベル1のパロムロをチューニング!S召喚!X-セイバー ウェイン!効果発動!S召喚に成功した時、手札からレベル4以下の戦士族1体を特殊召喚出来る!X-セイバー ガラハド!」
「ガラハド…!」
「さらに、X-セイバー エアベルンを通常召喚!レベル4のX-セイバー ガラハドに、レベル3のエアベルンをチューニング!来い、このデッキのエースモンスター!X-セイバー ソウザ!」
二刀流の大剣を持つ、大柄な戦士族が現れる!
「ソウザ、か」
「カードを一枚伏せ、ターンエンド!」
俊二 ライフ4000
手5 場
相川 ライフ4000
手0 場 X-セイバー ウェイン X-セイバー ソウザ 伏せ1
「ふむ、中々優秀なのでアール!これは期待できるのでアール!」
「俺のターン、ドロー!行くぞ!俺はレスキューキャットを召喚!」
「来ましたね、S召喚の登場と貴方が愛用している事で評価が一変したカード!カウンター罠、セイバー・ホール!私の場にX-セイバーと名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、モンスターの召喚・反転召喚・特殊召喚を無効にし破壊!」
「っつ!」
迂闊だった、と反省する俊二。
「貴方とサイバー・ランカーズのデュエルは見させていただきました。多彩なSモンスターを使いこなしていますが、その基本戦術はレスキューキャットからチューナーとチューナー以外のモンスターを並べてS召喚をする、という物。初動を潰せば行動出来ないでしょう!」
その相川の言葉に内心同意する光里。一時期、『猫崎って、禁止令でレスキューキャットを宣言すれば勝てるのでは?それとマジック・ジャマー辺りで除去札対策をすれば…』と思ったことが彼女にはある。
どちらも、才災の「リスペクト精神」に反するため出来ないが。禁止令で宣言するならば自分のデッキにもそのカードが入っていないといけない、という屁理屈のせいだ。
「確かにその通りだな。俺はカードを3枚伏せてターンエンド!」
俊二 ライフ4000
手2 場 伏せ3
相川 ライフ4000
手0 場 X-セイバー ウェイン X-セイバー ソウザ
「私のターン、ドロー!伏せは3枚か…だけど、ここは臆さず攻めます!バトル!ウェインでダイレクトアタック!」
「罠発動!和睦の使者!戦闘ダメージを0にする!」
「しのがれた…!メインフェイズ2に入ります。カードを一枚伏せ、ターンエンド!」
俊二 ライフ4000
手2 場 伏せ2
相川 ライフ4000
手0 場 X-セイバー ウェイン X-セイバー ソウザ 伏せ1
「俺のターン、ドロー!ローンファイアブロッサムを召喚!」
「…植物族?」
今まで使ってこなかった種族のモンスターに、当惑する相川。
「効果発動、このカードをリリースし、デッキから2体目のローンファイアブロッサムを特殊召喚!さらに効果発動!2体目のローンファイアブロッサムをリリースし、3体目のローンファイアブロッサムを特殊召喚!3体目の効果でデッキから椿姫ティタニアルを特殊召喚!」
「?!攻撃力、2800!」
「バトル!ティタニアルでソウザを攻撃!」
「ぐっ!X-セイバーが戦闘で破壊された事で、墓地のパロムロの効果発動!ライフを500払って、墓地から特殊召喚!」ライフ4000から3700、3700から3200
「ターンエンド」
俊二 ライフ4000
手2 場 ティタニアル 伏せ2
相川 ライフ3200
手0 場 X-セイバー ウェイン パロムロ 伏せ1
「私のターン、ドロー!よし、フィールド魔法、セイバー・ヴォールト!場のX-セイバーと名のついたモンスターの攻撃力は、そのレベルの100倍攻撃力がアップする!」
「ウェインの攻撃力が2100から2600に。」
「レベル5のX-セイバー ウェインに、レベル1のパロムロをチューニング!」
「地属性チューナーとそれ以外のモンスター、となれば出てくるのは!」
その組み合わせとレベルから、光里はゴヨウ・ガーディアンのS召喚を予測するが。
「現れろ!XX-セイバー ヒュンレイ!」
赤いマントを纏ったヒュンレイを見た俊二は、ヒュンレイが女性だったことに内心驚く。
「攻撃力2300だが、セイバー・ヴォールトで攻撃力2900に!罠発動!激流葬!」
「くっ!このタイミングで…!ならばヒュンレイの効果発動!S召喚成功時、相手の魔法・罠カードを3枚まで破壊できる!」
降り立った直後に激流が押し寄せた事にヒュンレイは、絶望の表情を浮かべるも相川の言葉を聞いて我にかえると、残った伏せカードに向かってダガーを投擲する!
「魔宮の賄賂が破壊される」
「ターンエンドです」
俊二 ライフ4000
手2 場
相川 ライフ3200
手0 場 セイバー・ヴォールト 伏せ1
「俺のターン、ドロー!魔法カード、貪欲な壺を発動!墓地のローンファイアブロッサム3枚と椿姫ティタニアルとレスキューキャットをデッキに戻し、二枚ドロー!」
「…何を、引く?」
「召喚僧サモンプリーストを召喚、効果発動!守備表示になる。そして手札の魔法カード、精神操作を捨て、デッキからチューナーモンスター、霞の谷の戦士を特殊召喚!」
「レベルの合計は8!」
「レベル4のサモンプリーストに、レベル4の霞の谷の戦士をチューニング!S召喚!メンタルスフィアデーモン!」
「攻撃力2700!ならまだライフは!」
「バトル!メンタルスフィアデーモンで、ダイレクトアタック!そしてダメージステップに速攻魔法、イージーチューニング!墓地の霞の谷の戦士を除外して、攻撃力を1700ポイントアップ!」
「攻撃力4400…!ぐううううっ!」ライフ0
「良いデュエルだった。」
「こちらこそ。色々と気づかされました。ところで、最後のターン、レスキューキャットを呼び出さなかったのは何故ですか?そこから、エアベルンと異次元の狂獣を並べ、ナチュル・パルキオンという流れで来ると思っていたのですが」
「それも考えたが、俺の場にX-セイバー エアベルンが居る状況を作りたくなかった」
俊二が自論を述べるが、光里も相川もついていけない。
「どういう事ですか?」
「ガトムズの緊急指令を発動されたら、墓地からソウザとヒュンレイが復活する。ソウザをイージーチューニングで強化したナチュル・パルキオンで戦闘破壊すればパロムロが特殊召喚出来る。そうなればヒュンレイを使って二体目のソウザにつなげられる。次のドローでX-セイバーを引かれたらソウザの効果で突破される」
「…確かに、この伏せカードはガトムズの緊急指令です。でも、私の場にX-セイバーが居ないので発動すら出来ませんよ?」
「そのテキスト、自分の場では無く、フィールド上となっていないか?」
「…あれ?もしかして、X-セイバーが相手の場にいれば発動出来る?」
この旦那は、何故テスターに選ばれるほどの使い手も把握していないX-セイバーのサポートカードの裁定まで把握しているのか。
頼もしいが、時折末恐ろしく感じる光里。
「インダストリアルイリュージョン社アジア総局から送られたメールにはそう書いてあったから、ミラーマッチだと割と愉快な事になると思っていた。」
「という事は、この罠をエクスチェンジなりで奪われたら、私のX-セイバーを奪われる…?」
「X-セイバーは傭兵という設定だから、蘇生させてくれた相手に従うというのは設定と合致している気はする。しかし、X-セイバーという割に、もうXX-セイバーまで開発しているのか。」
「ええ、X-セイバーのSモンスターが5と7だけで、6だけ無いので急遽制作されたと。」
「レベル7だと、ソウザとウルベルムが居るとか。」
「ええ。何故レベル7に二種類来たのか謎です。すみません、もしもよろしければこの後色々相談に乗ってくれませんか?」
「大丈夫、この日のために時間を空けておいたから。クロノス校長、授業用のデッキをお借りしても?」
「構わないノーネ!存分に議論するノーネ!」
「ありがとうございます。」
「…そういえば、千里眼グループのアジア総局、極東支部で勤務されているとか。」
「はい、そうですが。」
「となると、寒川さんが受付嬢をしているわけか。」
俊二が透子義姉に目を向ける。
「そうなるわね。」
「?!も、もしかして寒川さんと知り合い…?」
「妹さんとは同級生だ。」
「その姉とは友人だけど…。入職前の学生時代の話、興味ある?」
「ぜ、是非とも!」
途端に声が弾む相川。どうやらかなり熱を上げているらしい。
「…デッキ構築よりも、色恋優先か。」
まぁ、元とはいえアイドル志望として研鑽を積んでいた女性だ。容姿に恵まれているのだろう。
そう思いながら、俊二は指導用のデッキを取りに教員室へ向かう。
生徒への指導用のデッキだから力不足感は否めないが、調整としては十分だろう。
カードを持ってきた猫崎が扉を開くと、透子義姉さんの弾んだ声が聞こえてくる。
「理恵子はキノコ類全般が嫌い。」
「好きなものはガトーショコラですよね?」
「そんな事言っているの?理恵子の好物はローストビーフよ。自然食の食べ放題に行ったとき、ずーっとローストビーフしか食べていなかったもの。」
「バイキングで?!」
「そうよ。だから食事に誘うなら美味しいローストビーフを出してくれる店を選ぶべき…あ、俊二。」
「とりあえず、カードを持ってきた。色々調整…の前に、少しいいか?」
「何でしょう?」
「S召喚のテスターに選ばれた経緯を知りたい。」
「そういう事なら…」
相川は話し始める。
「あれは、私と寒川さんが出張に行った帰り。地下駐車場に止めていた社用の車に乗ろうとした時…」
………
……
…
「ふぅん。貴様が才災勝作の息子か。」
「海馬、瀬人…」
「か、海馬瀬人?!どうして…」
「下がっていてくれ、寒川さん!」
「父親の居場所を答えろ。さもなくば」
「離婚して母に引き取られて以来、父とは会っていない。」
「それを信じるとでも。構えろ。」
「「デュエルッ!!」」
海馬 ライフ4000
手5 場
相川 ライフ4000
手5 場
「先攻、後攻は選ばせてやる」
「なら、先攻は貰います。サイバー・ヴァリーを召喚!魔法カード、機械複製術を発動!デッキからサイバー・ヴァリーを2体、特殊召喚。」
「壁モンスターを並べて来たか。」
「カードを3枚伏せ、ターンエンド!」
海馬 ライフ4000
手5 場
相川 ライフ4000
手1 場 サイバー・ヴァリー サイバー・ヴァリー サイバー・ヴァリー 伏せ3
「俺のターン、ドロー!ふぅん、攻撃されれば自身を除外しバトルフェイズを終了させ、カードを1枚ドローするモンスター。壁としては優秀。だが!そんな物、この俺の前では時間稼ぎにもならん!憑依するブラッドソウルを召喚!」
「?!リバースカードオープン!捨て身の宝札を三枚発動!」
海馬が召喚したモンスターに対し、即座に伏せカードを発動する相川。
「捨て身の、宝札?」
「これは私の場にモンスターが2体以上いる時発動できる!その2体以上のモンスターの攻撃力の合計が、相手モンスターの1番攻撃力の低いモンスターよりも攻撃力が低い場合、カードを2枚ドローできる。」
「でも、どうしてこのタイミングで…」
「わからんのか、小娘。俺は憑依するブラッドソウルの効果発動!自身をリリースして、相手の場のレベル3以下のモンスター全てのコントロールを得る!」
「?!」
「貴様のサイバー・ヴァリー共は根こそぎ貰う!俺はサイバー・ヴァリーの効果発動、場のサイバー・ヴァリーを除外して、カードを2枚ドロー。魔法カード、古のルールを発動。手札からレベル5以上の通常モンスターを特殊召喚。現れろ!青眼の白龍!」
「ブルーアイズ…」
「バトルだ!行け、青眼の白龍!滅びのバーストストリーム!」
「ぐうううっ!」ライフ4000から1000
「俺はカードを2枚伏せ、ターンエンドだ」
海馬 ライフ4000
手3 場 青眼の白龍 サイバー・ヴァリー 伏せ2
相川 ライフ1000
手7 場
「私のターン、ドロー!魔法カード、地割れを発動!」
「むっ」
サイバー流の師範、才災がリスペクトの名のもと除去カードを批判・否定していた。
その息子ならばその教えを受け継いでいるもの、と無意識に思い込んでいた事に海馬は気づく。
「サイバー・ヴァリーを破壊!サイバー・ジラフを召喚!このカードをリリースすることで、このターン、私が受ける効果ダメージは0になる!魔法カード、パワー・ボンドを発動!手札のサイバー・ドラゴン3体を融合!現れろ、サイバー・エンド・ドラゴン!」
「ふぅん。攻撃力8000か」
「バトル!サイバー・エンド・ドラゴンで、青眼の白龍を攻撃!」
「リバースカードオープン!亜空間物質転送装置!青眼の白龍を除外!」
「どうして、青眼の白龍を?!」
「なら、そのままダイレクトアタック!」
「リバースカードオープン!カウンター・ゲート発動!相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動!その攻撃を無効にし、俺はデッキから1枚ドロー!」
「しのがれた…。カードを1枚伏せてターンエンド!エンドフェイズ、パワー・ボンドによりサイバー・エンド・ドラゴンの元々の攻撃力分のダメージ受けるが、サイバー・ジラフの効果により、ダメージは受けない!」
「エンドフェイズ、青眼の白龍は俺の場に戻ってくる。」
海馬 ライフ4000
手4 場 青眼の白龍
相川 ライフ1000
手1 場 サイバー・エンド・ドラゴン 伏せ1
「俺のターン、ドロー!魔法カード、強欲な壺を発動!カードを2枚ドロー!」
手札を一瞬見つめる海馬。直後に戦略を立ててプレイングを進める。
「魔法カード、ドラゴン・目覚めの旋律を発動。手札のアサルトワイバーンを捨て、デッキから青眼の白龍二枚を手札に加える。」
「青眼の白龍が3枚そろった…!」
「魔法カード、融合!場と手札の青眼の白龍3体を融合!現れろ、青眼の究極竜!」
三つ首の青眼の究極竜が、相川を見下ろす!
「これが、青眼の究極竜…」
「まだだ!俺はこの青眼の究極竜をリリース!」
「?!」
「青眼の光龍を特殊召喚!このカードの攻撃力は、墓地のドラゴン族の数×300ポイントアップする!よって、攻撃力は4500!」
「だが、サイバー・エンド・ドラゴンの方が攻撃力は上!」
「俺は装備魔法、巨大化を貴様のサイバー・エンド・ドラゴンに装備!巨大化の効果を受けたことで、パワー・ボンドによる攻撃力アップは適用されなくなり、攻撃力は2000になる。」
「?!」
その光景を見て、寒川は首をかしげる。
「えっ?2000まで攻撃力が下がって、その後パワー・ボンドにより攻撃力が4000ポイントアップして6000になるんじゃあ…?」
「収縮だったら、寒川さんの言うとおりになるが、巨大化は違うんだ。」
巨大化と収縮で何故裁定が違うのか、と寒川さんは混乱する。
「ふぅん。これで終わりだ!バトル!青眼の光龍で、サイバー・エンド・ドラゴンを攻撃!」
「リバースカードオープン!速攻魔法発動、コンセントレイト!私の場のモンスターの攻撃力は、その守備力分アップする!サイバー・エンド・ドラゴンの守備力は2800!よって攻撃力は4800までアップ!」
「何ぃ!」ライフ4000から3700
サイバー・エンド・ドラゴンが死力を振り絞り、青眼の光龍を撃破する!
「…ふぅん。貴様、何と言う名だ?」
「相川、相川士道。」
「青眼の光龍を倒すとは。だが、ここで引導を渡してやる!ブルーアイズモンスターが戦闘で破壊された時、ディープアイズ・ホワイト・ドラゴンの効果発動!このカードを手札から特殊召喚して、俺の墓地のドラゴン族の種類×600ポイントのダメージを与える!」
「アサルトワイバーン、青眼の白龍、青眼の究極竜、青眼の光龍の4種類っ!これが、伝説の決闘者か…!」ライフ0
ライフが尽きたが、相川は膝をつかなかった。
「一応、聞いておく。相川、貴様はS召喚のテスターに興味は無いか?」
「S召喚、というとレベルの足し算する新しい召喚方法…。でも、何故私に?」
「答えろ、YESかNOか」
「い、YES」
「ならば良い。貴様の住所にデッキを送る。こちらが指定した時に報告書を送れ。以上だ。」
「…という感じで決まりました。」
「不思議ね。何故急にテスターにしようと思ったのかしら?」
透子義姉さんはその点が解せないようだったが、猫崎には分った。
父親の業を背負いながらも歩き続ける姿に、海馬瀬人は親近感を覚えたのだろう。