ディアバウンド・カーネルは音一つ立てずにすり抜けそうですが、ユベルは十代と引き離されるぐらいなら、気合と根性と愛でどうにか突破してきそうです。
修学旅行に来た、デュエルアカデミア一行だが。
「申し訳ないが、我々は別行動させてもらう。」
光の結社の盟主、斎王が早々に去り、白い制服もそれに追従してしまった。
「…ならば、本日は自由行動にするノーネ。」
「その通りでアール。」
クロノス新校長とナポレオン教頭は一緒に歩き出す。
「私は待ち人が居るから、そちらに行くわ。またね。」
透子義姉も行ってしまう。
猫崎俊二とその妻、光里はかるくため息をつく。
「レッド寮は、キャンプ。イエロー寮は旅館、ブルーとホワイト達はホテル。」
「レッド寮長の響先生だけでは大変でしょう。手伝いに行きましょう。」
レッド寮のキャンプ予定地にたどり着くが。
「あら、手伝いに来てくれたの?」
「…テントが、張り終わっている…。」
「キャンプは私の趣味だから。猫崎先生たちは、生徒をお願い。」
「わかりました。」
とりあえず、十代達を探そうと決めて歩き出す俊二。だが、既に遅かった。
「っつ!」
「ど、どうなっているの?!」
猫崎夫妻は、突然障壁に阻まれる。
「…結界?!」
「ええっ?!い、一体誰が!」
その様子を双眼鏡で見ていた炎丸は、連絡を入れる。
「影丸。『猫』は予定通り追い出せた」
『…これで、不確定要素は消えた。『猫よけ』を投入する。』
双眼鏡を下ろし、炎丸は深呼吸をする。この作戦で成果を上げれば、一度は諦めたプロデュエリストへの道が開かれる。
斎王琢磨様のマネージメントで。
「俊二と義妹に何の用だ?」
「?!お前は…。」
振り返った炎丸は、一瞬猫崎俊二が瞬間移動したのかと思った。
髪の色は違うが、顔立ちがやや精悍だ。
「猫崎恭一。妻が修学旅行の付き添いで来ていると言うから、ここで待ち合わせていたが…。」
「お前には関係ない!」
「この妙な結界を張っている、という訳では無さそうだが。重要な場所を任されているらしいな。とりあえず、倒しておくとしよう。」
「とりあえず倒すだと!俺は斎王美寿知様が配下、四帝の一人、炎丸!返り討ちにしてやる!」
「「デュエルッ!!」」
恭一 ライフ4000
手5 場
炎丸 ライフ4000
手5 場
「俺の先攻、ドロー!魔法カード、デビルズ・サンクチュアリを発動!現れろ、メタルデビルトークン!」
「狙いは、アドバンス召喚か…!」
「現れろ、炎帝テスタロス!効果発動、お前の手札をランダムに一枚捨てさせる!」
「…ホルスの黒炎竜Lv6だ。」
「ならば600のダメージを受けろ!」
「……」ライフ4000から3400
「ホルスデッキか…なら、出し惜しみはしない!魔法カード、カード・アドバンスを発動!これにより、通常召喚に加え、アドバンス召喚を行える!」
「またテスタロスか?」
やや呆れが混じった声を上げる恭一。
「このカードは、アドバンス召喚したモンスターをリリースして、アドバンス召喚出来る!爆炎帝テスタロス!」
「テスタロスの上位種?!」
「効果発動!お前の手札を確認して、一枚を捨てさせる!」
「手札は、死者蘇生、早すぎた埋葬、レベルアップ!収縮だ。」
「ぐっ…」
炎丸は思考をめぐらす。蘇生札がある以上、ホルスの黒炎竜Lv6が復活する。そしてレベルアップと収縮、どちらを撃ち抜いてもホルスの黒炎竜Lv8が出てくる。
ふと、ある事に気づく。相手が単調なプレイングをしてきたら…。
「…ええい、死者蘇生を捨てろ!」
「わかった。」
「俺は、俺はぁっ…カードを二枚伏せ、ターンエンド!」
絞り出すようにエンド宣言をする炎丸。
恭一 ライフ3400
手3 場
炎丸 ライフ4000
手0 場 爆炎帝 伏せ2
「俺のターン、ドロー!ホルスの黒炎竜Lv4を召喚!」
「よし、これならまだライフは残る…。」
そういう炎丸をじっと睨むと、恭一は手札を見つめる。
「…読めたぞ、火霊術-「紅」か。」
「?!」
「早すぎた埋葬で800のライフを失えば、残り2800、紅でテスタロスを射出されたら俺のライフは0になる。」
「大した名推理だが、外していたらどうする?」
「それは今から明らかになる。レベルアップ!を発動!ホルスの黒炎竜をレベルアップ!現れろ、Lv6!バトル、テスタロスを攻撃!」
「攻撃力はこちらが上だが…。罠発動!火霊術-「紅」!」
「Lv8を出させてはくれないかっ!」ライフ3400から800
大幅にライフを削られたが、場は空いた。
「いけ、ホルスの黒炎竜Lv6!」
「ぐううううっ!」ライフ4000から1700
「カードを1枚伏せ、ターンエンド。」
恭一 ライフ800
手1 場 ホルスの黒炎竜Lv6 伏せ1
炎丸 ライフ1700
手0 場 伏せ1
「俺のターン、ドロー!俺はモンスターをセット!ターンエンド!」
恭一 ライフ800
手1 場 ホルスの黒炎竜Lv6 伏せ1
炎丸 ライフ1700
手0 場 セットモンスター 伏せ1
「俺のターン、ドロー!魔法カード、増援を発動!デッキからレベル4以下の戦士族を手札に加える。」
「ホルスデッキに、戦士族だと?」
「俺は、ならず者傭兵部隊を手札に加え、召喚!」
「?!」
「効果発動!セットモンスターを破壊する!」
「マシュマロンが?!」
「厄介なモンスターだったようだな。だがこれで終わりだ!行け、ホルスの黒炎竜Lv6!ダイレクトアタック!」
「うわああああああっ!」ライフ0
帝王の溶撃を伏せていた炎丸だが、敗北してしまった。
「…ん?何かしらの気配が消えた…?」
同時刻。祭壇の前で結界を維持していた斎王美寿知は、結界の一つが崩れたことを悟る。
「…炎丸が敗れたか。くっ…。」
この結界の中に破滅の光を捕らえる事さえできれば、自身の力と協力してくれたデュエルモンスターズの部族で倒せると思っていたが。
とりあえず、中に入ろうとしていた猫崎夫妻だが。その前にデュエリストが現れる。
「…猫崎俊二だな。」
「お前は…?」
「俺は斎王美寿知様が配下、四帝直属の須郷。お前を倒す命を受けてやってきた!さぁ、構えろ!」
「俊二、ここは私が!」
「挑まれたからには、俺が受けてたつ!行くぞ!」
「「デュエルッ!!」」
俊二 ライフ4000
手5 場
須郷 ライフ4000
手5 場
「先攻は貰うぞ、俺のターン、ドロー!魔法カード、フォトン・サンクチュアリを発動!現れろ、2体のフォトン・トークン!」
「フォトン・トークン…」
「俺は二体のフォトン・トークンをリリース!轟雷帝ザボルグをアドバンス召喚!効果発動、場のモンスターを破壊!そして破壊したモンスターの数だけ、お互いのエクストラデッキのカードを墓地に送る!ザボルグを破壊!」
「この流れはっ!」
初見のモンスター効果を把握している俊二を見ながら、海馬コーポレーションと関わりがあるから知っているのだろうと推測する光里。
「この時、破壊したのが光属性モンスターならば、墓地に送るカードは俺が選ぶ!」
「…これが、エクストラデッキだ」
「A・O・J カタストル、ナチュル・ビースト、ナチュル・パルキオン、ダーク・ダイブ・ボンバー、アーカナイト・マジシャン、ゴヨウ・ガーディアン2枚、A・O・Jディサイシブ・アームズを墓地に送れ!」
「…だが、お前もカードを墓地に送ってもらう。」
「フン、E・HERO スチーム・ヒーラー3枚、E・HERO セイラーマン3枚、E・HERO ネクロイド・シャーマン2枚を墓地に送る。魔法カード、ホープ・オブ・フィフス!墓地のE・HEROを5枚デッキに戻し、2枚ドロー出来る!スチーム・ヒーラー3枚とセイラーマン2枚をデッキに戻し、2枚ドロー!」
「……」
「死者蘇生を発動!蘇れ、轟雷帝ザボルグ!カードを2枚伏せ、ターンエンド!」
俊二 ライフ4000
手5 場
須郷 ライフ4000
手2 場 轟雷帝 伏せ2
「俺のターン、ドロー!魔法カード、貪欲な壺を発動!墓地の」
「かかったな!罠発動!大火葬!」
「?!」
「これって、もしかして!」
「そう!互いの墓地のモンスターを全て除外する!さぁ、これで打つ手はあるまい!」
「……それはどうかな?」
「強がりを!」
「手札のライトロードハンターライコウを捨て、ライトニング・ボルテックスを発動!」
「カウンター罠、八式対魔法多重結界を発動!!手札の収縮を捨てて、ライトニング・ボルテックスの発動と効果を無効にして破壊!」
「…八式対魔法多重結界?」
「手札コストが魔法カード限定のマジック・ジャマーと、フォース・フィールドを合わせたようなカードだ。俺の精神操作へのメタにもなる。」
「なるほど。」
「俺はモンスターをセット。カードを一枚伏せてターンエンドだ!」
俊二 ライフ4000
手1 場 セットモンスター 伏せ1
須郷 ライフ4000
手1 場 轟雷帝
「俺のターン、ドロー!魔法カード、強欲な壺を発動!カードを二枚ドローする。よし、永続魔法、アドバンス・フォースを発動!そして場の轟雷帝ザボルグをリリースし、轟雷帝ザボルグをアドバンス召喚!」
「またかっ!」
「これで懸念事項は消える!轟雷帝ザボルグを破壊!効果発動!俺はE・HERO ネクロイド・シャーマン、E・HERO マッドボールマン3枚、E・HERO ランパートガンナー、E・HERO フレイム・ウィングマン、E・HERO シャイニング・フレア・ウィングマンを墓地に送る。さぁ、エクストラデッキのマジカル・アンドロイド、氷結界の龍 ブリューナク2枚、ギガンテック・ファイター、メンタルスフィア・デーモン、ダークエンド・ドラゴン、ミスト・ウォームの7枚を墓地に送れ!」
「だが、これで手札は1枚!」
「それはどうかな?貪欲な壺!墓地のネクロイド・シャーマン、マッドボールマン3枚、ランパートガンナーをデッキに戻して二枚ドロー!ライフを800払い、早すぎた埋葬を発動!蘇れ、轟雷帝ザボルグ!」ライフ4000から3200
「またザボルグが…」
「バトルだ!轟雷帝ザボルグで、セットモンスターを攻撃!」
「墓守の偵察者の効果発動!デッキから墓守の偵察者を特殊召喚!」
「墓守だとっ!情報には無かったはずだ!」
レスキューキャットのエラッタと、光里に敗北した事で、今までの【猫シンクロ】では限界を感じた俊二は、前世で知っている猫シンクロの派生デッキを模索していた。
ローンファイアブロッサムと椿姫ティタニアルを採用する【猫姫】以外も追加している。
「ターンエンドだ。」
俊二 ライフ4000
手1 場 墓守の偵察者 伏せ1
須郷 ライフ3200
手1 場 轟雷帝 アドバンス・フォース
「俺のターン」
「無駄だ!お前のシンクロモンスターは全滅した!レベル3か4のチューナーを引いた所で、打つ手はない!」
「それは、ドローしてから考える。」
さらりと呟く俊二。
「…ザボルグを使った戦術は見事だったが。俺は墓地の光属性のライコウと闇属性の墓守の偵察者を除外!」
「何だと!?」
「答えはこれだ!現れろ、カオス・ソルジャー -開闢の使者-!」
「っつ!」
「バトル!開闢の使者で轟雷帝ザボルグを攻撃!」
「ぐっ!」ライフ3200から3000
「開闢の使者が攻撃した時、もう一度続けて攻撃できる!ダイレクトアタックだ!」
「…ぐ、があああああああっ!」ライフ0
気絶する須郷。
そんな相手を見ながら、俊二は考える。まさか、轟雷帝でエクストラデッキを全破壊したうえに、大火葬されるとは思わなかった。
随分と豪快な戦術を編み出したものだ。
「手札消費を、E・HEROの融合モンスターを墓地に送り、貪欲な壺でのドロー強化に使っていたわね。あんな戦術が…」
「サイバー流だと、警戒しないといけない一手だな。」
ふと、光里は想像する。もしも、サイバー・ランカーズや鮫島元師範、丸藤亮がこのコンボをくらったらどうするのかを。
…リミッター解除で力押し、という光景が光里の脳裏をよぎる。
その様子を、双眼鏡で見ていた人影がある。
「…影丸様、『猫よけ』が敗れました」
『ライトニング・ボルテックスを使われても、レスキューキャットから展開できるのはエアベルン2体で3200打点のはず。』
「開闢の使者です。」
『…開闢まで。轟雷帝ザボルグを回収後、雷丸と合流。追って指示を出す。』
「はっ。」
司令塔である影丸光海の指示を受け、信者は動き出す。