一方、この日の用事を済ませ、亀のゲーム屋へ戻ろうとしていた武藤双六は大勢の決闘者が行きかっていることに気づく。
なにやら、あわただしい。
「一体、何事じゃ?」
「関係ない奴はすっこんでいろ!」
「ふむ…。」
ニット帽をかぶった青年を見つめる双六。
「では、これで決めるかの?」
「ハハッ!斎王美寿知様が配下、四帝の一人、氷丸に挑むか!いいだろう、受けてたってやる!」
「ま、まずいですよ!」
「迂闊にデュエルして負けたら」
「下がっていろ!他の連中ならまだしも、俺が負けるわけないだろう!」
「「デュエルッ!!」」
双六 ライフ4000
手5 場
氷丸 ライフ4000
手5 場
「先攻は譲ってやるよ!」
「ならばワシの先攻、ドロー!ふむ…。モンスターをセット、カードを5枚伏せてターンエンドじゃ」
双六 ライフ4000
手0 場 セットモンスター 伏せ5
氷丸 ライフ4000
手5 場
「俺のターン、ドロー!チッ…。まぁいい、爺さんの魔法・罠ゾーンにカードが二枚以上存在することで、氷帝家臣エッシャーを特殊召喚!」
「ほぅ。家臣と名前がついているが、氷帝というとあのカードを連想してしまうの。」
「さらに!氷騎士を通常召喚!俺の場の水族モンスターの数×400ポイント攻撃力がアップ!そして、通常召喚に加え、水属性モンスターを召喚出来る!」
「来るか!」
「俺は、二体のモンスターをリリース!凍氷帝メビウスをアドバンス召喚!効果発動!爺さんの伏せカードを俺から見て右から三枚、破壊させてもらう!」
「ならばそれにチェーンして」
「おっと!水属性モンスターをリリースした凍氷帝の効果の発動に対し、相手は選択されたカードを発動できない!」
「ほほ。左端の伏せカード、ご隠居の猛毒薬を発動!」
「ああ?それに何の意味が」
「そして、ご隠居の猛毒薬の効果に『チェーン』して、メビウスの対象となったカードを発動する!」
「おいおい、話を聞いて…へ?」
あざ笑う氷丸だが、その表情がこわばる。
「なんで発動できるんだぁ?!おかしいだろう!凍氷帝メビウスの効果である、水属性モンスターのリリースという条件は満たしているはずだろ!」
「ほほ…、中々やりおるが、チェーン処理の理解について多少の難があるの…。」
デュエルディスクがその辺りの処理を行ってくれる為、この辺りをきちんと理解している決闘者は少ない。
この場に城之内が居れば。
『凍氷帝メビウスの効果にチェーンしたんじゃあ無くて、ご隠居の猛毒薬に対するチェーンだから発動できるんだ』
と即答していただろう。サイクロンにチェーンして王宮の勅命、勅命にチェーンしてスケープ・ゴートを発動した場合の処理について、理解できなかった頃とは違う。
「針虫の巣窟を発動。さらにチェーンして月の書を発動、チェーン4以降になったので積み上げる幸福を発動じゃ。効果処理に入るぞ?」
「…好きにしろ」
考える事を放棄した氷丸に対し、年長者として大人の対応をする双六。
「念のために説明しておくかの。ワシも最近物忘れが激しいからの…。メビウスの効果がチェーン1、ご隠居の猛毒薬がチェーン2、針虫の巣窟がチェーン3、月の書がチェーン4、積み上げる幸福がチェーン5じゃ。まず積み上げる幸福で2枚ドロー、月の書でメビウスを裏側守備表示に。そして針虫の巣窟でデッキの上から5枚を墓地に送る…」
「ロード・オブ・ドラゴン、カードトレーダー、死者蘇生、守護神の矛、旅人の試練か。」
「そして、ライフを1200回復」ライフ4000から5200
氷丸は手札の帝王の凍志を見つめる。
これさえ発動できれば、効果を受けない攻撃力2800のモンスターになるのだが…。
「俺はカードを一枚伏せ、ターンエンド!」
双六 ライフ5200
手2 場 セットモンスター 伏せ1
氷丸 ライフ4000
手2 場 セットモンスター 伏せ1
「ワシのターン、ドロー!ふむ。カードを二枚伏せ、セットモンスターを反転召喚!メタモルポット!ワシは神竜エクセリオンを捨てて5枚ドローじゃ」
「俺はサルベージとウォーターワールドを捨てて、二枚ドローだ!」
新たに5枚ドローした双六は、先ほど伏せたカードを発動する。
「リバースカードオープン!死者転生!ワシは手札の神竜ラグナロクを捨てて、墓地の神竜エクセリオンを手札に戻す!」
「ああ?そいつを回収するのか?いや、神竜ラグナロクとロード・オブ・ドラゴンが墓地に…?!まさかっ!竜魔人キングドラグーンか!」
「ほほ、知識はあるようじゃの。しかし!ワシは場のメタモルポットをリリースして、神竜エクセリオンを召喚!そしてエクセリオンの効果にチェーンして罠発動!連鎖破壊!」
「はぁっ?!」
「連鎖破壊の効果で、ワシはデッキから二体のエクセリオンを墓地に送るぞ。ここでアドバンス召喚に成功したエクセリオンの効果発動!墓地のエクセリオンの数だけ、次の効果から選択して発動出来る。一つ目!このカードの攻撃力は1000ポイントアップ!それか、このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、もう一度だけ続けて攻撃を行う事ができる効果、3つ目に、このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える効果じゃ」
「となると攻撃力1000アップして2500打点。その後、効果ダメージを与える効果か、連続攻撃か…」
考え込む氷丸に対し、双六は別の選択を取る。
「ほほ、ワシは二回攻撃と戦闘ダメージを与える効果を選択する。バトル!エクセリオンで、セットされているメビウスを攻撃!」
「メビウスがっ!」
「そして、エクセリオンの効果発動!2800のダメージを受けて貰うぞ」
「がああああっ!」ライフ4000から1200
「そして、エクセリオンが戦闘破壊した事で、二回目の攻撃が出来る!」
「こ、この俺が…爺さん、アンタは」
愕然とする氷丸。
「そういえば、自己紹介がまだじゃったの。ワシは武藤双六。」
「武藤?!決闘王武藤遊戯の祖父、だったのか…」ライフ0
「氷丸様が負けた?」
「い、急いで報告を!」
「その前に少しいいかの?一体ここで何をやっておるのじゃ?」
穏やかに聞く武藤双六だが、彼にたいして強気に出れる信者は居なかった。
「…氷丸が負けた?」
『はっ。武藤双六と対戦して』
「…双六さんのデッキ構築とプレイング、そして経験は当方たちが束になっても敵わないというのに…。」
何故挑んだ、というのが光海の感想でしかない。
バトルシティにおいては助言に徹していたが、そもそも武藤遊戯のデッキの基礎を作り上げたのがあの老人なのだ。
侮れる相手では無い。
「…伝えておく。炎丸が敗れた」
『?!この短時間で、半分が…。』
「悔しいが、これがデュエルアカデミアに入学すらできなかった当方達の実力という事。だが、まだ終わっていない。各自、責務を果たすように」
『はっ!』
即座に連絡を入れる光海。
『炎丸と氷丸が?!』
「岩丸、直接対決は避ける事を最優先してもらう。」
『…わかった』
続けざまに、雷丸にも連絡を入れる光海。
『…そうか。』
「雷丸、当方が敵を叩く。」
『危険すぎる』
「猫除け、が負けた以上突入されたら」
『だが、既に四帝の内二人が倒された以上、締め出した猫崎より前線を救うべきだ。』
「それは…」
『慎重なのはお前の良いところだが、ここは出し惜しみしている場合では無い。』
「…感謝する。前線を救う。」
童美野町を歩いていたクロノス新校長だが、デュエルを挑まれ、蹴散らしているうちにナポレオン教頭と離れ離れになってしまった。
「何なノーネ!デュエリストの聖地といっても、これほど挑まれるトーハ、大会でも開催されているノーネ?!」
もちろん返り討ちにしているが、数が多い。
「くっ、これがアカデミアの校長の実力か。」
「鮫島、才災と続いてクロノス。オーナーはドラゴン使いなのに、校長は機械族使いばかりかよ。」
「ちょっとちょっと、どうしたの?!」
黄色い帽子を被り、黄色のジャケットを羽織った軽装の少女が、光の結社の信者に駆け寄る。
「ま、また新手なノーネ…。」
「鎧塚!あいつはデュエルアカデミアの校長、クロノス・デ・メディチだ!」
「【暗黒の中世デッキ】使いの?!倒せば大金星じゃない!」
真っ直ぐな、どこまでも純粋な瞳で少女はクロノス校長の前に立つ。
「私とデュエルしてもらうわ!」
「受けてたつノーネ!」
「「デュエルッ!!」」
クロノス ライフ4000
手5 場
鎧塚 ライフ4000
手5 場
「先攻は私か、私のターン、ドロー!魔法カード、E-エマージェンシーコールを発動!」
「ナヌー?!」
よく知っているカードを使われ、クロノス校長は思わず声を上げる。
「私はデッキから、E・HEROプリズマーを手札に加え、通常召喚!効果発動、融合デッキのE・HEROネクロイド・シャーマンを公開し、デッキからE・HEROネクロ・ダークマンを墓地へ送る。」
そのプレイングを見て、クロノスは察する。E・HEROの上級モンスターを召喚する際に、リリースを減らすモンスター。となれば彼女の狙いは、E・HEROエッジマンの召喚。
「カードを一枚伏せて、ターンエンド!」
クロノス ライフ4000
手5 場
鎧塚 ライフ4000
手4 場 プリズマー 伏せ1
「私のターン、ドロー!」
「鎧塚!あのクロノス相手にそんな1ターンじゃあ」
「大丈夫よ!【古代の機械】デッキの主力モンスター、古代の機械巨人は攻守3000だけど、特殊召喚が出来ない。そして古代の機械モンスターの下級は古代の機械兵士の1300。攻撃力1700のプリズマーは倒せない!」
ギャラリーとの会話に聞き捨てならないセリフが含まれていたため、クロノス校長は怒る。
「のぼせ上っているんじゃないノーネ!手札から永続魔法、古代の機械城を二枚発動!」
「?!古代の機械城は、場の古代の機械モンスターの攻撃力を300アップする。それが二枚…」
「古代の機械兵士を召喚するノーネ!そして、古代の機械城に、カウンターが一つずつ乗るノーネ!」
「攻撃力1900!」
「バトルなノーネ!プリズマーをやっつけるノーネ!」
「っつ!」ライフ4000から3800
「カードを一枚伏せて、ターンエンドなノーネ!」
クロノス ライフ4000
手2 場 古代の機械兵士 古代の機械城(1) 古代の機械城(1) 伏せ1
鎧塚 ライフ3800
手4 場 伏せ1
まさかの古代の機械城を二枚張ってのごり押し。想定外ではあったが、それならそれで打つ手はある。
「私のターン、ドロー!墓地のE・HEROネクロダークマンの効果発動!墓地に存在する時、1度だけE・HEROの召喚にリリースが不要になる!出番よ!私のHERO!E・HEROエッジマン!」
遊城十代はフレイム・ウィングマンにこだわりを持っているが、彼女が信頼しているのはこのエッジマン。
「この瞬間、古代の機械城にカウンターが乗るノーネ!」
「魔法カード、戦士の生還を発動!墓地のネクロダークマンを手札に戻す。魔法カード、融合を発動!手札のネクロダークマンとスパークマンを融合!来なさい、E・HEROダークブライトマン!」
「ぬっ」
出て来た融合モンスターも厄介だが、一度手札に戻り、融合素材として墓地へ送られたことで、ネクロダークマンの効果をもう一度使える。
「バトル!ダークブライトマンで、古代の機械兵士を攻撃!」
「くっ」ライフ4000から3900
「ダークブライトマンはダメージステップ終了時に、守備表示になる。エッジマンでダイレクトアタック!」
「マンマミーア!」ライフ3900から1300
「ターンエンド!」
クロノス ライフ1300
手2 場 古代の機械城(2) 古代の機械城(2) 伏せ1
鎧塚 ライフ3800
手1 場 エッジマン ダークブライトマン 伏せ1
「私のターン、ドローなノーネ!カウンターが二つ乗った、古代の機械城を墓地に送-り、古代の機械巨人をリリース無しで召喚するノーネ!」
「出て来た…しかも、古代の機械城の効果で攻撃力が3300…」
「バトル!古代の機械巨人で、エッジマンを攻撃!」
振り下ろされる拳に対し、エッジマンは果敢に挑む!
「っつ!エッジマンッ!」ライフ3800から3100
「ターンエンドなノーネ!」
クロノス ライフ1300
手2 場 古代の機械巨人 古代の機械城(2) 伏せ1
鎧塚 ライフ3100
手1 場 ダークブライトマン 伏せ1
「私のターン、ドロー!」
ライフでは負けていても、状況は有利。ドロップアウトボーイならば逆転のカードを引いてくるが…。
「魔法カード、戦士の生還を発動!墓地からE・HEROエッジマンを手札に戻す。そして墓地のネクロダークマンの効果発動!エッジマンをリリース無しで召喚!」
「ヌヌ、カウンターが一つ乗るノーネ…」
またしても現れるエッジマン。
「そして、ダークブライトマンを攻撃表示に変更!バトル、ダークブライトマンで古代の機械巨人を攻撃!」
「返り討ちにするノーネ!」
「HEROは死してなお、責務を果たす!戦闘で破壊されたダークブライトマンの効果発動!相手モンスターを破壊する!」ライフ3100から2800
「通じないノーネ!カウンター罠、デストラクション・ジャマー!」
「ダークブライトマンの効果を止められたっ?!…私はカードを一枚伏せて、ターンエンド」
クロノス ライフ1300
手1 場 古代の機械巨人 古代の機械城(3)
鎧塚 ライフ2800
手0 場 エッジマン 伏せ2
「私のターン、ドロー!古代の機械巨人で、エッジマンを攻撃なノーネ!」
振り下ろされる拳に、真っ向から立ち向かうエッジマン。しかし、その結末は同じだった。
「っつ!」ライフ2800から2100
「メインフェイズ2で、カードを一枚伏せてターンエンドなのーね!」
クロノス ライフ1300
手1 場 古代の機械巨人 古代の機械城(3) 伏せ1
鎧塚 ライフ2100
手0 場 伏せ2
「私のターン、ドロー!…カードを1枚伏せて、ターンエンド!」
「お、おい!それでターンエンド?!」
「打つ手はないって事か…」
クロノス ライフ1300
手1 場 古代の機械巨人 古代の機械城(3) 伏せ1
鎧塚 ライフ2100
手0 場 伏せ3
モンスターは尽きた。攻撃すれば勝てる盤面。
周りのギャラリーは意気消沈。
だが、相手は勝利を確信した笑みを浮かべている。
「私のターン、ドロー!古代の機械城を墓地に送ーり、現れるノーネ、古代の機械巨人!」
「二体目を召喚?!そのまま攻撃しても勝てるはず…」
「ホホホのヒュー!これで終わりなノーネ!バトル!」
「勝つのは私よっ!バトルステップ開始時、永続罠発動!リビングデッドの呼び声!戻ってきて、エッジマン!」
「今更戻ってきたところで、勝敗は見えているノーネ!」
「それはどうかしら?罠発動!エッジハンマー!エッジマンをリリースして相手モンスターを破壊!破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」
突っ込んでいくエッジマン!巻き起こる爆発。
「これで決まり…?!」
エッジマンの対象となった古代の機械巨人が突如消える。
「そんなっ!一体何処…に…」
クロノス校長の場に、一枚のカードが発動していた。
「あ、亜空間物質転送装置…?!」
「対象となった、古代の機械巨人を除外したノーネ。対象が居なくなったこと-デ、エッジハンマーは空振りに終わるノーネ。」
「伏せカードが、見抜かれていた?古代の機械巨人は攻撃する時、相手の魔法・罠カードの発動を封じる。そのまま攻撃が通れば勝てるはず」
「シニョーラが、エッジマンに特別な思い入れがある事は伝わってきたノーネ、となれば、エッジマンのサポートカードも見えてくるノーネ。」
古代の機械巨人が、拳を振り下ろす!
「きゃああああああっ!」ライフ0
「仕方ない、予定地点まで下がるぞ!急げ!」
逃げていく信者達。
連戦続きで追いかける体力が残っていないクロノス校長は、息を切らす。
同時刻。
『影丸様!新手が来ました!サイバー流です!メガ・サイバー流を名乗っています』
「…対処できるか?」
『ぜ、全力を尽くします!』
サイバー流とはいえ、残党。前線指揮官である炎丸が倒されていては、指揮系統が乱れかねない。
残った戦力でどうにかするしかない。
しかし、この時乱入してきたのは、メガ・サイバー流だけでは無かった…。