敗北後に修行したり、自分自身を見つめなおし、色々な人と出会った事で考えを改めたり…という『敵も成長する』という展開は好きなのですが。
光の結社を名乗る連中の襲撃を、他のアカデミアの関係者とともに迎撃していた透子の前に別の一団が現れる。
「新手?!」
「何者だ、お前たちは!」
中央の年長者が前に出てくる。
「我々はサイバー流を超える、メガ・サイバー流!そして私はメガ・サイバー流師範、才津健三!お前たち光の結社と、才災師範の正しい・リスペクト・デュエルを捨てたアカデミアに鉄槌を下すべく駆け付けた!覚悟しろ!」
あれか、あの狂った思想を引き継いだ連中か。お前たちが引継ぎ作業をしっかり終わらせてから去らなかったせいで…!
「速攻魔法、エネミーコントローラーを発動!サイバー・ツイン・ドラゴンを守備表示に変更!バトル!天界王シナトで、サイバー・ツイン・ドラゴンを攻撃!そして、天界王シナトの効果発動!守備モンスターを戦闘で破壊した事で、破壊したモンスターの守備力分のダメージを与える!」」
「モンスターの表示形式を変更するなんて、この、ひ、卑怯者~!」
「地割れを発動!サイバー・バリア・ドラゴンを破壊!行きなさい、グリーン・ガジェット、レッド・ガジェット!ダイレクトアタック!」
光の結社、そしてアカデミア勢によりメガ・サイバー流を名乗る連中は瞬く間に蹴散らされていく。
猫崎俊二にあっさり倒されていたサイバー流の関係者達だが、初手にサイバー・ドラゴンを複数枚、さらにパワー・ボンドやサイバー・ジラフ、融合関連カードを引き当てられる彼らは運命力が高い。
このレベルの門下生であれば、ある程度は善戦できたかもしれないが、才津が集めたのは寄せ集め。粗暴で性格が悪ければデュエルの腕も悪い。
「お、おのれ!卑怯なカードばかり使いおって!バーンカードを使うな!除去カードなど使うな!お前たちには対戦相手に対するリスペクト精神は無いのか!」
喚きちらす才津を、透子は睨む。
この男はリスペクト精神が無いと批判するが、その言動こそ『リスペクト精神が無い』と透子は思っていた。
しかし、光の結社もアカデミア側も、そしてメガ・サイバー流も想定していなかった乱入者が現れる!
「待て、メガ・サイバー流!」
「?!君達は、才光君と才花さんですね!私の義挙に駆け付けてくれるとは」
「違うわ!」
癖のある茶髪の精悍な青年と、ツンと尖った鼻と八重歯が印象的な凛々しい娘が現れる。
敵か味方か、透子は判断するべく黙って見守る。
「何が義挙だ!愚挙の間違いだろう!」
「サイバー流から追放された者を束ねて、サイバー流を名乗るなんて、恥ずかしいと思わないの!」
だが、その言葉に才津は激昂する!
「私の崇高な行動を否定するばかりか、私の流派まで否定するとは!デュエルです!」
「才光、私から行くわ!」
「ああ、任せた!」
「「デュエルッ!!」」
才津 ライフ4000
手5 場
才花 ライフ4000
手5 場
「先攻は譲りましょう」
「そう。私の先攻、ドロー!捕食植物オフリス・スコーピオを召喚!」
「?!な、何ですかそのモンスターは!」
「手札のモンスターカード、超電磁タートルを捨てて効果発動、デッキから同名カード以外の捕食植物モンスターを特殊召喚!来なさい、捕食植物ダーリング・コブラ!」
新たな捕食植物が出て来たことで、才津が喚く。
「あ、貴女は!デッキすら捨てたのですか!」
「ダーリング・コブラが捕食植物の効果で特殊召喚に成功した時、デッキから融合、もしくはフュージョンと名のついた魔法カードを手札に加える。もっとも、この効果はデュエル中一度しか使えないけれど。未来融合-フューチャー・フュージョンを手札にくわえて、発動!」
「……ふ、フン!未来融合を手札に加えるために随分と頑張りますね!」
「カードを一枚伏せて、ターンエンド!」
才津 ライフ4000
手5 場
才花 ライフ4000
手3 場 捕食植物オフリス・スコーピオ 捕食植物ダーリング・コブラ 未来融合(0) 伏せ1
「私のターン、ドロー!サイバー・ドラゴン・コアを召喚!デッキからエマージェンシー・サイバーを手札に加えて、発動!デッキからサイバー・ドラゴンを手札に加えます。魔法カード、機械複製術を発動!デッキから二体のサイバー・ドラゴンを特殊召喚!」
「場にサイバー・ドラゴンが3体、手札にもサイバー・ドラゴンが…」
「私は融合を発動!場のサイバー・ドラゴン・コアとサイバー・ドラゴンを融合!来なさい、サイバー・ツイン・ドラゴン!さらに融合を発動!場のサイバー・ドラゴンと手札のサイバー・ドラゴンを融合!サイバー・ツイン・ドラゴンを融合召喚!」
「サイバー・ツイン・ドラゴンが二体…」
「魔法カード、死者蘇生を発動!墓地のサイバー・ドラゴンを特殊召喚!魔法カード、融合回収を発動!墓地のサイバー・ドラゴンと融合を手札に戻し、発動!場と手札のサイバー・ドラゴンを融合!来なさい、サイバー・ツイン・ドラゴン!」
「サイバー・ツイン・ドラゴンが3体、流石は才津教頭。いえ、今は元教頭でしたか。」
手札消費こそ激しいが、1ターンでサイバー・ツイン・ドラゴンを3体出す辺り、すくたれ者と思っていたが腕はやや立つらしい。
とはいえ、相手の墓地に超電磁タートルがある上に伏せもある状態でするプレイングか?と透子は思う。
「バトル!サイバー・ツイン・ドラゴンで攻撃!」
「墓地の超電磁タートルを除外して、バトルフェイズを終了するわ!」
「小癪な!だが、攻撃力2800の6回攻撃!この火力と攻撃力の前に打つ手なんて無いでしょう!私はこれでターンエンド!」
才津 ライフ4000
手0 場 サイバー・ツイン・ドラゴン サイバー・ツイン・ドラゴン サイバー・ツイン・ドラゴン
才花 ライフ4000
手3 場 捕食植物オフリス・スコーピオ 捕食植物ダーリング・コブラ 未来融合(0) 伏せ1
「私のターン、ドロー!未来融合の効果発動!キメラテック・オーバー・ドラゴンを選択するわ!」
「それは、リスペクトに反する暴虐のカード!そこまで堕ちるとは!」
「私はデッキからサイバー・ドラゴン3枚、X-ヘッド・キャノン、Y-ドラゴン・ヘッド、Z-メタル・キャタピラー、シュレッダー、起動砦のギア・ゴーレム、魔鏡導士リフレクト・バウンダー、魔装機関車デコイチ、カードガンナー、計11枚を墓地に送る!」
墓地に送られるモンスターを、才津は訝し気に睨む。
「サイバー流の門下生でありながら、随分デッキが変わりましたね。プロト・サイバー・ドラゴンはどうしたのです?」
「…サイバー狩りに奪われて、目の前で道路に向かって投げ捨てられたわ」
「?!」
それをきいた透子は憤慨する。
アンティルールで奪うだけに飽き足らず、目の前で捨てるとは何事だと。
光の結社側も、その話に嫌悪感を示す。
「そんな事が…。ですが、攻撃力8800のキメラテック・オーバー・ドラゴンが出せても…。それをすれば未来融合も墓地に送られる!」
「私はサイバー・ヴァリーを召喚!魔法カード、機械複製術を発動!デッキからサイバー・ヴァリーを二体特殊召喚!」
「むっ」
「サイバー・ヴァリーの効果発動!オフリス・スコーピオとこのカードを除外して二枚ドロー!さらにダーリング・コブラともう一体のヴァリーを除外して二枚ドロー!」
異次元へ消えていく捕食植物たち。
どうやら、カテゴリーとしてはまだ確立していないらしい。融合をサーチする以上、もしもこの捕食植物がカテゴリーとなればおそらくは融合召喚が主軸になるだろう。
ここからどう動くのか、透子は才花という娘のプレイングを見守る。
「…カードを一枚伏せ、ターンエンド」
才津 ライフ4000
手0 場 サイバー・ツイン・ドラゴン サイバー・ツイン・ドラゴン サイバー・ツイン・ドラゴン
才花 ライフ4000
手5 場 サイバー・ヴァリー 未来融合(1) 伏せ2
「私のターン、ドロー!バトル!サイバー・ツイン・ドラゴンで攻撃!」
「サイバー・ヴァリーをゲームから除外して、1枚ドロー!バトルフェイズは終了!」
「想定通りです!メインフェイズ2に入ります。魔法カード、光の護封剣を発動。次のターンにキメラテック・オーバー・ドラゴンが出てきますが、そのデメリット効果で貴女の場のカードは全て無くなります。オーバーロード・フュージョンがあるなら、先ほどのターン使っているでしょう。このドローで引き当てたところで攻撃はさせませんよ!」
才津 ライフ4000
手0 場 サイバー・ツイン・ドラゴン サイバー・ツイン・ドラゴン サイバー・ツイン・ドラゴン 光の護封剣(3)
才花 ライフ4000
手6 場 未来融合(1) 伏せ2
「私のターン、ドロー!スタンバイフェイズ、キメラテック・オーバー・ドラゴンを特殊召喚!そして効果発動にチェーンして永続罠発動!暗闇を封じるマジックミラー!このカードがフィールド上に存在する限り、フィールド上・墓地で発動する闇属性モンスターの効果は無効化される。」
「む、無効になるなら、攻撃力も…いや、たしかその永続罠はチェーンブロックを作る効果だけ、無効にする…」
「そう。よってデメリット効果だけ無くなり、攻撃力は8800のまま!」
「ぐっ。こ、こんなコンボがあるとは…だ、だが!私の場には光の護封剣があります!」
虚勢を張る才津。
「ライフを500払って速攻魔法発動!ツイスター!これで光の護封剣を破壊!」ライフ4000から3500
「あ、あああああ~!」
最後の障害を取り除かれ、才津の戦意が消失する。
ツイスターはサイクロンより比較的安く手に入るカード…。デッキを捨てられたために投入しているのだろうと推測する透子。
「バトル!キメラテック・オーバー・ドラゴンで、サイバー・ツイン・ドラゴンを攻撃!」
「う、うわあああああああっ!」ライフ0
ライフが尽きた才津は茫然とする。
こんなはずでは無かった。サイバー流から追いだされる際に、サイバー・ランカーズに支給する為に保管されていたサイバー・ドラゴンの派生カードを、サイバー流の施設から盗み出した。
だから、デッキパワーは格段に上がっている。なのに、何故。
何故、元門下生に、サイバー流デッキでもない相手に負ける?
才津には、わからなかった。
「…まだ続けますか?」
「あ、当たり前です!私は、メガ・サイバー流師範ですよ!」
「なら、次は僕が相手だ!」
「いいでしょう、ですが先攻は貰いますよ!」
「「デュエルッ!!」」
才津 ライフ4000
手5 場
才光 ライフ4000
手5 場
「私のターン、ドロー!サイバー・ドラゴン・コアを召喚!デッキからサイバー・リペア・プラントを手札に加えます。魔法カード、機械複製術を発動!デッキから二体のサイバー・ドラゴンを特殊召喚!魔法カード、融合を発動!場のサイバー・ドラゴン・コアとサイバー・ドラゴンを融合!来なさい、サイバー・ツイン・ドラゴン!」
「これで墓地にサイバー・ドラゴンが行った…」
「サイバー・リペア・プラントを発動!サイバー・ドラゴンを手札に加えます。さらに融合を発動!場のサイバー・ドラゴンと手札のサイバー・ドラゴンを融合!サイバー・ツイン・ドラゴンを融合召喚!」
「サイバー・ツイン・ドラゴンが二体…」
「魔法カード、サイバー・レヴシステムを発動!墓地のサイバー・ドラゴンを特殊召喚!魔法カード、融合回収を発動!墓地のサイバー・ドラゴンと融合を手札に戻し、発動!場と手札のサイバー・ドラゴンを融合!来なさい、サイバー・ツイン・ドラゴン!」
やや手順は違うが、またしてもサイバー・ツイン・ドラゴンを3体並べる才津。
そんな彼を見ながら、様子見を兼ねて一体だけ出しておけばいいのにと思う透子。
「ターンエンドです!」
才津 ライフ4000
手0 場 サイバー・ツイン・ドラゴン サイバー・ツイン・ドラゴン サイバー・ツイン・ドラゴン
才光 ライフ4000
手5 場
「僕のターン、ドロー!竜魔導の守護者を召喚!」
「?!な、何ですかそのモンスターは!」
「効果発動、召喚・特殊召喚に成功した場合、手札を1枚捨てて発動できる!デッキから「融合」通常魔法カードまたは「フュージョン」通常魔法カード1枚を手札に加える!僕は手札のモンスターカード、ジェイドナイトを捨てて効果発動、デッキから次元融合を手札に加える!」
「むむっ」
そうか、次元融合も融合のカードか。
あれ、次元融合って一体何を『融合』しているのだろうか?考え込む透子。
「魔法カード、ワン・フォー・ワンを発動!手札のシャインエンジェルを捨てて、デッキからサイバー・ヴァリーを特殊召喚!魔法カード、機械複製術を発動!デッキからサイバー・ヴァリーを二体特殊召喚!そしてサイバー・ヴァリーとサイバー・ヴァリーを除外して二枚ドロー!さらにサイバー・ヴァリーと竜魔導の守護者を除外して二枚ドロー!!」
「またしても手札補強を…」
「フィールド魔法、フュージョン・ゲートを発動!手札のサイバー・ドラゴン三体を除外融合!現れろ、サイバー・エンド・ドラゴン!さらにライフを2000払って、次元融合を発動!除外されているサイバー・ドラゴン3体とサイバー・ヴァリーを特殊召喚!」ライフ4000から2000
「まさか、二体目のサイバー・エンド・ドラゴンを…」
「いいや。サイバー・ヴァリーの効果発動、サイバー・ドラゴンとサイバー・ヴァリーを除外して、二枚ドロー!よし!バトルだ!サイバー・エンド・ドラゴンで、サイバー・ツイン・ドラゴンを攻撃!速攻魔法、リミッター解除を発動!これでサイバー・エンド・ドラゴンの攻撃力は倍になる!」
「う、うわあああああああっ!」ライフ0
またしても敗北する才津。
一度目は偶然と思えた。だが、これは一体どういう事だ?
サイバー・ランカーズのブロック代表クラスならばあり得る。だが、相手は有望株ではあった門下生でしか無い。
才光と才花。彼らは猫崎俊二とのデュエルを経て、朧気ながら掴んだ物がある。
手札消費を抑え、カードを温存する。OCGのカードアドバンテージという概念。
光里はそれを、俊二の傍で見続ける事で習得した。
才光と才花は、それを才獏に鍛えられた事で自身の物として昇華する事が出来た。同時に、『リスペクト』精神についても改めて考えた。
自分達がサイバー・ドラゴンを大事にして、サイバー流というビートダウンデッキを愛するように、相手にも大事なカードがあり、好きな戦術がある。
それを受け入れる事こそ、『リスペクト』精神であると。
「才津元教頭、そしてメガ・サイバー流の門下生達。聞いてくれ!」
「デュエルとは、勝敗を決する以上に!自分と練り上げたデッキ、そして相手と相手が練り上げたデッキ!」
才光の言葉に、才花が続く。
「そこに込められた素晴らしい想いがある事を確かめ合うもの!それが、リスペクト精神なの!」
「だからもう、相手の戦術を否定するのはやめよう!その行為の何処に『リスペクト精神』があるというんだ!」
感心する透子。リスペクト精神云々については、義弟の嫁からある程度聞いていたが…。
この二人は彼らなりに『リスペクト精神』を見出したようだ。
「く、くううううっ!!」
「才津元教頭。リスペクト精神が無いと言っている姿こそ、リスペクト精神に欠けているのではないでしょうか?」
「今一度、顧みて下さい!」
そんな才光と才花に対し、大声をあげる者が居た。
「ふざけるんじゃないッス!」
「…丸藤?」
「才光も、才花さんも、卑怯ッス!」
「どこが?除去カードもコントロール奪取もしていないわよ?」
「僕たちは才災師範の正しい・リスペクト・デュエルに乗っ取った範囲で、勝つ為の戦術を練り上げた。」
「うぐっ…そ、それは、あの、ええと」
言葉に詰まる丸藤翔。
うつむいていた才津は、ここで決断をする。
「翔君、こ、ここは撤退だ!」
「わ、分かったッス!皆-、引き上げッス~!アカデミアと光の結社を共倒れさせるッスよ~!」
丸藤翔が偉そうに陣頭指揮を取り、メガ・サイバー流達は逃げていく。
「…なぁ、才津元教頭は分かってくれたかな?」
「わかってくれたと思いたいわ。」
そういうと、二人はデッキから数枚のカードを取り出し、サイドデッキのカードと入れ替える。
透子は彼らが新たに入れたカード名をちらりと視認する。激流葬、神の宣告、月の書といったカードだった。
「貴方たち、もしかしてアカデミアの卒業生?だったら」
「俺達はサイバー流を騙ってカードを破り捨てたという、厚釜(あつかま)という少年たちを探してここまで来た。」
「それに、今のアカデミアの実技を担当しているのが猫崎なんでしょう?光の結社とやらと揉めているみたいだけれど、手を貸す気にはなれないわ。知り合いだけど、友人じゃあ無いの」
かなり不仲なようだ。
透子は才光に目を向ける。
「才花が拒否している以上、僕も同意見だ。」
説得は難しいようだ。才光と才花は去っていく。
サイバー流ではあるが、先ほどのデュエルを見て迂闊に手を出すのは危険と判断したらしく…光の結社達は包囲せず、それを見過ごす。
「報告します。サイバー流の残党、メガ・サイバー流を処理しました。はい…わかりました。任務に戻ります」
信者の一人が通信を入れ終わり、険しい目を向ける。
三つ巴の戦いから、乱入者達は居なくなった。となれば頑張るしかない。