「それーで、全員集めてどういうつもりなのーね?」
「クロノス校長。ちょっと彼女たちの話を聞いてください」
クロノス新校長、樺山先生、響先生、猫崎俊二と光里、そして十代、三沢…。
部外者ではあるが、武藤双六さんにも来ていただいている。
透子義姉は久々に出会えた恭一と一緒に過ごすと言って立ち去った。
立ち去る前に、義姉から聞いた話に出て来た、メガ・サイバー流の門下生に心当たりのある人物がいる俊二。
居たら話がややこしくなるか邪魔になるだけなので、ナポレオン教頭は外した。
「…当方は、光海。影丸光海。」
「?!影丸理事長の…」
「孫にあたる。当方は光の結社に所属している。ある人物の行方を占ってもらう対価として入ったが…。今回の結界を巡る騒動について、斎王美寿知様の事情を話す。」
「斎王というーと、今アカデミアに来て居るエド様のマネージャーなノーネ」
「美寿知様は彼の妹。しかし、ある時兄に『破滅の光』という存在が憑依し、世界の破滅を目論む邪悪な人格が宿ってしまった。」
原作知識とすり合わせていく俊二。
「ふーむ。しかし、ドミノ街に結界を張ったのはどういう事じゃ?」
「…『破滅の光』は、遊城十代を警戒しており、彼を倒そうとしている」
「このドロップアウト…いや、最近は成績も少しずつ上がってきていますーガ…。」
警戒するような大物か?と訝しく思ってしまうクロノス校長。
「美寿知様は、破滅の光を油断させるために遊城を倒し、その功績を持って破滅の光と対峙。結界を張って逃げられない状態して倒そうとしていました。」
「ううむ。よくわからん。破滅の光という闇の人格…いや、光の人格か?それを倒すのが狙いなら、敵の敵は味方、遊城君と手を組めるのでは?」
「破滅の光も警戒していて、容易に接触出来ない状況。そのため、当方が指揮を採り、雷丸達が結界を維持して罠を張った…。」
「しかし、何故その事情を今になって話してくれたんだ?」
「結界を張るためには入念な準備が必要。新たに張りなおしたところで罠にかけられるとは思えない…。こうして失敗した以上、当方に出来る事は情報の提供のみ」
「…影丸。斎王の兄ちゃんを助けるには、破滅の光を倒すしか無いんだな?」
「…当方はそれを行いたかったが、ここまで入念に準備してこの有様。当方達は戦いを託すしか出来ない。」
やや沈黙が訪れる。急展開すぎてついていけない者、何とか事情を飲み込もうとする者、現状を把握し、次について考えをめぐらす者。
「…そろそろ失礼する。」
光海は立ち上がると、歩き出す。
それに続いて、雷丸も一礼して去る。
ふと、ある事に三沢は気づく。
「…そういえば、万丈目は?」
直後、俊二の顔色が変わる。
この状況なら、仕掛ける事は出来るはずだ。
「私も行くわ!それと俊二、才津元教頭がメガ・サイバー流を率いて襲撃してきたそうよ。」
「…となると、あいつもいるかもしれないな。」
俊二は荷物から、デッキの一つを取り出す。
教材用として試験的に組んだ物だが…。
光海が真実を話し始めた頃。
別の場所で、万丈目は包囲されていた。
「フッ、随分と警戒されているようだな。」
「ええ、その通りです。万丈目さん。貴方にも光の結社に入っていただきたい。」
「断る!宗教がらみは、庄司兄さんがうるさいからな。」
「フフフ…。では、頼みますよ。早乙女さん」
現れたのは、小柄な少女。
「何だ?」
白を基調とした、中世ファンタジー風の衣装に身を包んでいる。縁取りは金色だ。
スッと顔を上げる少女。
この世のすべてに絶望したような、そんな印象を受ける瞳。
「僕とデュエルだよ。」
「…後悔させてやる!」
「「デュエルッ!!」」
万丈目 ライフ4000
手5 場
レイ ライフ4000
手5 場
「僕の先攻、ドロー!僕は魔法カード、光の援軍を発動。デッキの上からカードを3枚墓地に送り、ライトロードハンターライコウを手札に加える。」
「フン」
超電磁タートル、強欲な壺、聖なるバリア-ミラーフォース-が墓地に行く。
「モンスターをセット、ターンエンドだ」
万丈目 ライフ4000
手5 場
レイ ライフ4000
手5 場 セットモンスター
「俺のターン、ドロー!俺は魔法カード、死者への手向けを発動!手札の闇よりいでし絶望を捨てて、セットモンスターを破壊!」
「ライコウが!」
「さらに、ライフを800払い、早すぎた埋葬を発動!蘇れ、闇よりいでし絶望!装備魔法、巨大化を装備!これで攻撃力は5600!」ライフ4000から3200
「……」
「バトルだ、いけ、闇よりいでし絶望!」
「墓地の超電磁タートルを除外して、バトルを終了!」
「ターンエンドだ」
万丈目 ライフ3200
手2 場 闇よりいでし絶望 早すぎた埋葬 巨大化
レイ ライフ4000
手5 場
「僕のターン、ドロー。ライトロードマジシャンライラを召喚。このカードを守備表示に変更して、効果発動。僕は早すぎた埋葬を破壊」
「ちっ!」
「ターンエンド。デッキの上からカードを3枚墓地に送る」
ライトロードパラディンジェイン、ライトロードサモナールミナス、ライトロードプリーストジェニスが墓地に行く。
万丈目 ライフ3200
手2 場
レイ ライフ4000
手5 場 ライラ
「俺のターン、ドロー!魔法カード、天使の施しを発動!カードを三枚ドローして、手札のおジャマジックとヘル・ポリマーを捨てる。おジャマジックが墓地に行ったことで、デッキからおジャマイエロー、グリーン、ブラックを手札に加える。」
「手札は6枚だけど、半分が通常モンスター。」
「俺は、アームド・ドラゴンLv3を召喚!バトルだ、アームド・ドラゴンLv3で、ライラを攻撃!」
「破壊される。」
「メインフェイズ2だ!行くぞ、俺は魔法カード融合を発動!手札のおジャマ3兄弟を融合!現れろ、おジャマキング!」
「守備力3000」
「効果発動!お前のモンスターゾーンを3か所、使用不能にする!」
「…だとしても。」
「ふっ、さらに永続魔法、地盤沈下を発動!これでお前のモンスターゾーンを二か所、使用不能にする!どうだ!これが俺様が考えた、対S召喚戦略だ!」
モンスターゾーンを全て使用不可能にすればいい。それが、万丈目の出した答えだった。
実戦でも通用する。そう確信していたのだが…。
万丈目 ライフ3200
手0 場 アームド・ドラゴンLv3 おジャマキング 地盤沈下
レイ ライフ4000
手5 場
「僕のターン、ドロー。速攻魔法、サイクロンを発動。地盤沈下を破壊。」
「なっ?!」
「そして、墓地にライトロードが4種類いるとき、裁きの龍を特殊召喚できる。効果発動、ライフを1000払って、このカード以外の場のカードを全て破壊する。」
「っつ!」
「僕はもう一体、裁きの龍を特殊召喚。これで終わり。二体でダイレクトアタック!」
「うわああああああっ!」ライフ3200から200、200から0
ライフが尽きた万丈目に、白い靄がまとわりつく!
「フフフ…。これで良い。後は…」
破滅の光は、さらなる策謀をめぐらす。
美寿知が企んでいる事には気づいている。命令通り倒せればよし、自分に反旗を翻すなら兄ともども洗脳するまで。
万丈目と早乙女レイがデュエルを始める数十分前。
万丈目を探し、走り回っていた俊二はある一団と遭遇する。
「?!才津元教頭。」
「猫崎!お、お前さえ!お前さえいなければ!サイバー流は健在だったんだ!それをよくも!皆!囲め!」
あっという間に包囲される俊二と光里。
「…丸藤翔は居るか?」
「翔君。相手をしてあげなさい」
かなり嫌がっていたようだが、他の門下生に引っ張られるように前に押し出される。
「何なんスか!」
「…アカデミアを辞めて、どれぐらい成長した?」
「お前には関係無いッス!ちなみに僕は今では、このメガ・サイバー流の実技担当最高責任者ッス!」
「奇遇だな。俺はデュエルアカデミアの実技担当最高責任者だ。」
丸藤翔の顔が怒りと嫉妬に染まる。
同じ肩書といっても分かっているのだろう。落ちぶれたサイバー流の残党と、立て直りつつあるアカデミアでは差がある事を。
「…デュエルしないか。」
「断るッス!S召喚なんか、卑怯ッス!」
「S召喚はしないデッキ。お前と同じ、ビークロイドデッキだ」
それを聞いた才津が顔を歪めて笑う。
「本当だな?だったら翔君!デュエルしなさい!」
「ええっ?!」
「S召喚がないなら、猫崎俊二など一ひねり!君はそう言ってくれた!今こそ、その実力を見せてくれ!」
どうやら、自分がいない所で大言壮語していたらしい。負けるのは怖い。だが、手に入る栄光と名声に目がくらんだようで、前に出てくる翔。
「「デュエルッ!!」」
翔 ライフ4000
手5 場
俊二 ライフ4000
手5 場
「先攻は譲るッス」
「そうか。俺の先攻、ドロー!永続魔法、王家の神殿を発動!これにより、1ターンに1度だけ、罠カードを伏せたターンに発動出来る。」
とうとう、この世界でもエラッタされてしまった王家の神殿を俊二は発動する。
リシドさんはどう思っているのかは不明だが、辛い人生を送ってきた彼は個人的に幸せになってほしいと俊二は思っている。
「カードを1枚伏せ、この罠カードを発動する。トラップトリック!」
「な、なんなんスか?!」
「この効果で、俺はデッキから通常罠、チェーン・マテリアルをゲームから除外し、同名カード、チェーン・マテリアルをセットする。ここでフィールド魔法、メガロイド都市!」
「め、メガロイドシティ?!」
「効果発動!このカード以外の自分フィールドのカード1枚を対象として発動できる!そのカードを破壊し、デッキから「ロイド」カード1枚を手札に加える。俺は今セットしたチェーン・マテリアルのカードを選択!この効果にチェーンして、チェーン・マテリアルを発動!これにより、融合召喚に決められたモンスターを手札・墓地・デッキから除外することで融合召喚が出来る!そして、メガロイド都市の効果で、デッキから、ビークロイド・コネクション・ゾーンを手札に加える。そしてビークロイド専用魔法、ビークロイド・コネクション・ゾーンを発動!」
俊二はデッキから決められたモンスターを除外する。
「トラックロイド、エクスプレスロイド、ドリルロイド、ステルスロイドを除外して、スーパービークロイド-ステルス・ユニオンを融合召喚!カードを二枚伏せて、ターンエンド!」
翔 ライフ4000
手5 場
俊二 ライフ4000
手1 場 スーパービークロイド-ステルス・ユニオン 王家の神殿 メガロイド都市 伏せ2
「そんな物が、ビークロイドデッキの可能性ッスか?」
「そうだが」
「トラップトリック、必要ッスか?王家の神殿でチェーン・マテリアルを発動すればいいじゃないッスか」
翔の言葉に、メガ・サイバー流の門下生は同調する。
「言われてみればその通りね」「何だよ、大層な事を言っておいて」「いっけー!シンクロ召喚が無い猫崎なんて、敵じゃないってことを思い知らせてやれ!」
あきれ果てて声が出ない光里。
分かっていないのか?トラップトリックを入れる事で。
【ビークロイド】デッキの戦術の一つ、チェーン・マテリアルを実質6枚投入できるため、安定性が上がる事に。
「僕のターン、ドロー!魔法カード、強欲な壺を発動するッス。カードを2枚ドロー!よし!魔法カード、パワー・ボンドを発動っス!手札のドリルロイド、スチームロイド、サブマリンロイドを墓地に送り、スーパービークロイド-ジャンボドリルを融合召喚するッス!」
「よし、いいぞ!翔君!猫崎の場にいるのは、攻撃力3600どまりのスーパービークロイド-ステルス・ユニオン!」
才津の言葉に勢いづく翔。
「これで終わりっス!バトル!スーパービークロイド-ジャンボドリルで、スーパービークロイド-ステルス・ユニオンを攻撃っス!」
これで終わり、か。ライフは残るはずだがあの表情とセリフから手札の一枚をリミッター解除と推測する俊二。
「罠発動!重力解除!!場のモンスターの表示形式を変更する!」
「なっ?!」
「進入禁止!No Entry!!も良いカードだと思うが、この辺りは好みの領域だろう。さて、どうする?」
「ぐっ、うううううっ…」
「パワー・ボンドを主軸に置くなら、攻撃を確実に通す必要がある。」
「うるさいッス!僕はカードを1枚伏せ、デス・ウォンバットを召喚してターンエンドっス!」
「ならエンドフェイズに、永続罠発動!スキルドレイン!ライフを1000払い、場のモンスター効果は無効になる。パワー・ボンドのリスクを受けてもらう」ライフ4000から3000
「うわああああああああっ!」ライフ4000から1000
翔 ライフ1000
手1 場 スーパービークロイド-ジャンボドリル デス・ウォンバット 伏せ1
俊二 ライフ3000
手1 場 スーパービークロイド-ステルス・ユニオン 王家の神殿 メガロイド都市 スキルドレイン
「くっ!猫崎!お前は相手のモンスター効果を無効にするような、リスペクトに反するカードを使ってなんとも思わないのか!」
「才津元教頭は、そうやって相手の戦術を否定する行為にリスペクト精神があるとお思いで?」
「私に否定されるような、戦術を使う方に問題がある!」
論争に、門下生が口をはさむ。
「待ってください!才津師範!」
「何だね?」
「いやその…スキルドレインで無効になっていますよね?猫崎のステルス・ユニオンも」
「言われてみればそうね。何がビークロイドデッキの可能性よ!」
「自分で自分の利点を消していたら世話ないぜ!」
罵倒を浴びる中、俊二はため息をつく暇も惜しんでカードを引く。
こうして対峙していると思う。初手サイバー・エンド・ドラゴンをやってくる門下生は、なんだかんだ言って運命力を持ち、まともだったのだと。
「ビークロイド・コネクション・ゾーンで融合召喚したスーパービークロイドは、カード効果では破壊されず、カード効果も無効にならない。スーパービークロイド-ステルス・ユニオンを攻撃表示に変更。そしてスーパービークロイド-ステルス・ユニオンの効果発動、デス・ウォンバットを装備カードにする。」
「僕のモンスターが!」
デス・ウォンバットを吸収するステルス・ユニオン!
「バトル!スーパービークロイド-ステルス・ユニオンで、スーパービークロイド-ジャンボドリルを攻撃!」
「はぁ?スーパービークロイド-ステルスユニオンが攻撃する時、その攻撃力は半分になるっスよ!そしてジャンボドリルの守備力は2000ッス!」
「所詮、片手間で使ったデッキに本家本元が勝てるわけ無いんだ!」
「プレイングミスかよ」
「リスペクト精神が無いからこんな事になるのよ!」
周りの門下生の野次を無視する俊二。
「メガロイド都市の効果発動!自分の「ロイド」モンスターが戦闘を行うダメージ計算時に、デッキから「ロイド」モンスター1体を墓地へ送って発動できる!その戦闘を行う自分のモンスターはそのダメージ計算時のみ、元々の攻撃力と元々の守備力が入れ替わる。デッキからスチーム・ロイドを墓地に送り、ステルス・ユニオンの攻撃力と守備力を入れ替える。よって攻撃力は3000!」
「うわああああああああっ!」ライフ0
ライフが尽き、無様に倒れる翔。
だが、起き上がって喚き始める。
「ふ、ふざけるんじゃないッス!お前、片手間で僕の、ボクの!最も好きなデッキまで汚して!どこまでボクを馬鹿にすれば気が済むんスか!」
「他人が使う事で、見えなかったものが見えてくる時がある。相手を批判・否定して貶めるより、自分を研鑽したほうが身のためだ。パワー・ボンドは確かに強力だが、リスクも大きい。お前には、こういう戦い方が向いていると俺は思う」
「決めつけるんじゃないッス!」
光里が口をはさむ。
「…ジャンボドリルはスキルドレインで場のモンスター効果が無効になっている中、3000の攻撃力で貫通効果を持つ上に、破壊耐性を持った状態で戦える。十分な性能じゃあ無いかしら?」
「そうだな。激流葬で相手モンスターだけ除去するという方法も使える。攻撃力が足りないなら、表示形式を変更すればいい。丸藤、これは最近発売されたパックに入っていたカードだ。お前ならきっと俺以上にビークロイドデッキの可能性を引き出せる。だから。」
俊二はデッキからメガロイド都市のカードを取り出すと、翔に差し出す。
だが、翔はその手に平手打ちを行い、それを見ていた才津が叫び出す。
「翔君は、君達のようなリスペクトに反する戦い方をするぐらいなら、負けを選ぶ誇り高い決闘者なんだ!」
しかし、周りのメガ・サイバー流の門下生はひそひそと話している。
どうにも、同じロイドデッキを使っておきながら負けた翔に対して思うところがあるらしい。
かつてサイバー流から追い出された光里は、その空気を敏感に感じ取っていた。
「…なら、通してもらう。」
俊二は改めて万丈目を探しに向かうが、PDAにメールが入る。
内容を見た俊二は、大きくため息をつくと光里にも見せる。
「…こうなってしまったのね」
『…明日の朝9時。遊城十代一人で、海馬ドームに来てもらう。来なければ、万丈目の無事は保証できない。』
この事は万丈目グループには絶対に知られてはいけない。
万丈目グループが光の結社を壊滅させてくれたらよいが…万丈目グループが取り込まれたら手に負えなくなる。