西条side
如月同盟が分裂しつつある。行動パターンを分析した俺はそう結論を出す。
どうやらサイバー流を最終的にどうするか…壊滅までもっていくのか、適当な所で手打ちか、でもめているらしい。
愚かな。青写真が無い状態で、サイバー流に戦いを仕掛けるとは。戦術家として、一定の統率力は認める。
勢力圏を手堅く堅守出来る、優秀ではある。
ちょうどよく戦力が二分している以上…まずは突出している、過激派の壊滅から始める。
俺は集められる限りのサイバー流の門下生を集め、指示を伝える。
「過激派は、重装武者ベン・ケイや永続魔法を用いて勝利するデッキが多い。だからこれを使え」
ベン・ケイ使いの飯守に対しては装備魔法を奪い取れる罠カード、力の集約を。
永続魔法系の効果ダメージを与える上田への対策として、デス・ウォンバットという効果ダメージ対策のモンスターや、砂塵の大竜巻やツイスターなどの魔法・除去カードを支給。
「それと、連中の所持が確認されていないが俺が作成した予想カードリストだ。参考にしろ」
俺はベン・ケイ使いの予想カードリストに、キラー・トマト、竜殺しの剣、稲妻の剣、融合武器ムラサメブレード、幸運の鉄斧といったカードが記しておいた。
それを見た門下生が声を上げる。
「おいおい、何だこのリストは!デーモンの斧とか、魔導師の力を警戒すべきだろう!というより、知らないのか?」
「飯守はドーピングや凶暴化の仮面と言った使い勝手の悪い装備魔法を使用していることから、カードプールが貧弱であると予想される。無論、その手のカードを所持している可能性もあるが…。可能性は低い。」
デュエルに勝てば有利になる世界で、強力なカードを温存する決闘者などまず居ないからな…。
俺が渡された紙を見ながら、門下生達は相談する。
「本当に、これで勝てるんだろうな?」
「今は、従うしかないって」
そんな中、門下生の一人が抗議の声を上げる。
「おいっ!命令通り配置につくが…あんたはどこに待機するんだ?」
「…基本、ここに待機するつもりだが。」
「俺達に戦わせて、自分は高みの見物かよ!」
「基本、と言ったはずだ。過激派の中に一人だけ、暗黒界と宣告者を混ぜる意味不明なデッキを使うツインテールの小娘がいる。俺がそいつの相手をする。」
それを聞いた女性陣…集まった門下生の二割ほどだが…がひそひそと話を始める。
「何?女狙い?」
「仕方ないわよ、だって童貞臭いじゃん」
「でもさぁ、指揮権を預かるってことは次期エリートってコトよね?ツバつけとこうかな?」
割と聴力が良い俺は、顔色が変わるのを何とか堪えて指示を出す。
確かに俺は童貞だが…それを本人のいるところで言うあたり、性格がねじ曲がっているにも程がある。
そういう事を見抜けるとは相当経験豊富なんですね、という皮肉を言いたくなったがぐっとこらえる。
一応、サイバー流の仲間だからな。これが敵なら容赦なく皮肉を浴びせるところだ。
「俺に従えば、勝たせてやる。このまま、如月同盟に敗北してはサイバー流での居場所が無くなるぞ。それでもいいのか!」
不承不承、という形ではあれど、サイバー流の門下生は俺の指示に従う。
ちぃっ、俺に統率力があればもっと楽なのに…。童貞臭い、か。ツインテールのクラスメイトにも言われた事だが、女性というのはそういうのがわかるのか?
いっそのこと、スモーク眼鏡をかけ、チャラチャラした金属製のアクセサリーでもつければ童貞臭くなくなるかもしれない。
その手の物は嫌いなのだが、一度試してみるべきか?
想定通り、連日の勝利で慢心していた過激派は対応できず…俺の策で追い詰められていく。
その連絡を聞きながら、俺は地図の上に置いた将棋の駒を動かして壊滅への仕上げをしていると、一人の門下生が駆け込んでくる。
俺の作戦に疑問を抱いていたが、ベン・ケイ使いの飯守の使用カードが予想カードリスト通りだった事でこいつは俺を信頼するようになった。
「西条さん!七階堂さんが!」
「何?!」
国会では失言製造マシーン、企業家としては強欲な守銭奴、決闘者としては未だにタイミングを逃すを理解できない無能!そいつが、自ら前線に出たというのか?!
慌ててアジトから出撃し、現場に駆け付ける俺だが。
「何だ、美亜(みあ)さんか。」
戦っていたのは七階堂議員の娘、今時古臭いおかっぱ頭で貧相な体つきの七階堂 美亜(ななかいどう みあ)だ。
相手は…ツインテールの女か!訳の分からないデッキを使うという…。
「私のターン、ドロー!手札から、サイバー・ドラゴンを特殊召喚!ここで魔法カード、パワー・ボンドを発動!手札のサイバー・ドラゴン2体を融合!サイバー・ツイン・ドラゴンを融合召喚!」
「サイバー・ドラゴンが3枚揃っているなら、サイバー・エンド・ドラゴンを出せばいいじゃない。持っていないの?」
「関係ない!サイバー・ツイン・ドラゴンでセットモンスターを攻撃!」
「メタモルポットのリバース効果発動!互いに手札をすべて捨てて5枚ドロー!手札から捨てられた、暗黒界の刺客カーキの効果発動!サイバー・ツイン・ドラゴンを破壊!」
「モンスターを破壊するなんて、それでもデュエリストなの!効果破壊なんてせず、戦闘破壊だけで戦いなさいよ!」
「勝手に言っていなさい。」
「まぁいいわ…これで終わりよ、サイバー・ドラゴンでダイレクトアタック!そして速攻魔法、リミッター解除を発動!」
「罠発動!ガードブロック!」
リミッター解除まで使った攻撃は凌がれた事で、美亜は再融合で再びサイバー・ツイン・ドラゴンを蘇生。ターンエンドと共にパワー・ボンドにより2800のダメージを受ける。
返しのターンで陸奥はスナイプストーカーを召喚。効果は外れたが、暗黒界の策士グリンの効果で再融合は破壊。そのままダイレクトアタックで負けてしまった。
「そ、そんな…」
「七階堂、俺は予想される逃走経路の一つに待機するよう命じていたはずだが?」
「み、皆が戦っているのに、私だけ安全な所で待機なんて!私もサイバー流の一員よ!だから共に肩を並べて」
「サイバー流の一員を名乗るなら、全体の指揮を任されている俺の命令に従え!そもそも、ツインテールの相手は俺がするから手出し無用、とミーティングで話していたはずだが。」
抗議の声をなおも上げようとする議員の娘を、目線だけで黙らせた俺はデュエルディスクを構える。
まったく、ツインテールの女か…忌々しいッ!
「あんたが指揮官なら、ここで叩き潰すまでよ!」
攻防が続くが…
「ターンエンド!サイバー流にしては、随分盾に縋るわね。」
「俺のデッキは他のサイバー流とは少々毛並みが違う…俺のターン、ドロー。来たか…速攻魔法、異次元からの埋葬を発動、除外されているサイバー・ヴァリーを全て墓地に戻す。そして罠発動!ボーン・フロム・ドラコニス!」
「なっ?!墓地の光属性・機械族が…除外されていく?!」
「召喚条件を無視して現れろ!サイバー・バリア・ドラゴンッ!」
「こ、攻撃力800のはずなのに、どうして攻撃力が4000に…!」
「バトルだ!暗黒界の魔神レインを打ち砕け!」
「罠発動!光の召集!手札を捨てて、墓地から緑光の宣告者を手札に戻す!手札から捨てられた、暗黒界の刺客カーキの効果発動!サイバー・バリア・ドラゴンを…破壊出来ない?!」
「残念だが、ボーン・フロム・ドラコニスで特殊召喚したモンスターは、このカード以外のカード効果を受けない。というわけで、終わりだ!」
俺が操るサイバー・バリア・ドラゴンが、ツインテールの女のエースモンスターである暗黒界の魔神レインを打ち砕く!
これで、過激派の壊滅は完了。仕上げとして、構成員のリストとアジトの位置を探る必要があるが…、過激派を尋問したところで素直に白状しないだろう。
となれば、裏切りを誘発するまで。
西条sideout
速見side
私達如月同盟のアジトは沈痛な空気に包まれている。過激派が暴走して壊滅、戦力が半減してしまったからだ。
わずかに帰還した者も、脱退を表明してしまった…
いまの所、如月同盟の意思はまとまったが、それ以上に失った物が大きい。過激派は比較的腕が立ち、サイバー流の門下生相手に渡り合える実力者が揃っていた。
それを一気に喪失し、拘束された事は純粋に痛手であり…、勢力圏の維持も困難。
「姫。こうなった以上、別の所で再起を図りましょう!俺の故郷は、犬上村という閉鎖的な村ですが、村人の結束が固いです!ここならサイバー流も手出しは」
「馬鹿な!如月同盟結成の地であるここを捨てたら、御終いだ!ここは動かず、守りを固めて…」
「その守り切る事すら困難じゃないか!」
「そういえば、ミズガルズ王国には伝説の決闘者、城之内克也氏が居るはず…。彼に国際電話をかけて、サイバー流の現状を訴えて帰国して貰えば」
「彼がミズガルズ王国に行っている以上、事情があるに決まっている!協力してくれるわけが無いだろう!」
拠点を守るべき、落ち延びて再起を図るべき、外部の助力を乞うべき…。
意見が割れている中、どれが最善なのか私は決めかねていた。
どうする、どうすればいい…?
速見sideout
???side
俺は安藤。如月同盟の一員だ…。だが、俺はある人物と接触することにした。
「これが、如月同盟のアジトと残りの構成員のリストだ」
「よくやってくれた、安藤。」
いけ好かないイケメンだが…どことなく童貞臭くて、親近感を感じる西条が笑みを浮かべる。
「これで、俺をサイバー流に入れてくれるんだな?」
「そうだ。サイバー流のデッキを受け取るがいい。」
「へ、へへへ…。今のサイバー流に勝てる勢力なんてどこにもない…」
「君は正しい選択をした。ようこそ、サイバー流へ。」
過激派はやられちまったし、残った連中も方針を巡ってバラバラ。このまま壊滅するぐらいなら、情報を売ってサイバー流で栄達を求めるべきだ。
安藤sideout
速見side
過激派が壊滅してから二日後。サイバー流は猛攻を仕掛けてきた。
この攻撃で終わらせるとでも言いたげな物量戦。
その前に、残った如月同盟は瞬く間に切り崩されていった…。
「姫、こちらに!」
「…すまない、五反田。私が至らないばかりに…」
アジトや構成員のリストは、過激派を尋問なりして聞き出したのだろう。
時ここに至って、私は見通しの甘さを思い知らされた。
座してサイバー流に飲み込まれるか、抗うか。圧倒的な規模を誇るサイバー流に対して余りにも準備不足であることは分かっていた。
それでも、私は行動を起こした。誰かが、サイバー流の『正しい・リスペクト・デュエル』に待ったをかけねばならないから。
(私は、どうすればよかったのだ?)
首を振って、考えを振り切る。こうなった以上、構成員を一人でも多く連れて再起を。
「これはこれは我らが姫では無いですか」
「安藤?」
構成員の安藤だ。
そんな彼がカードを提示する。サイバー・ツイン・ドラゴンのカードを。
思わず絶句する私をかばうように、五反田が前に出る。
「?!お前っ!」
「今のサイバー流に勝てる勢力など無い。それはお前も今回の一件でよくわかっただろう?長い物には巻かれろ!」
「断る!サイバー流のリスペクトデュエルは間違っている!」
「正しい事に価値なんて無い。力こそが正義だ!」
そう、か…。安藤、それがお前の出した結論か…。
「姫、ここは俺が!後で合流します」
「任せたぞ。私は退路を確保する!」
私は裏切り者の相手を五反田に任せ、退路を確保しに向かう。
逃走経路はいくつか用意している。まず一つ確保してしまえば、そこから包囲網を打ち崩せるはず!
速見sideout
五反田side
裏切った安藤は支給されたサイバー流デッキを改造、レベル4で攻撃力1900~2000の通常モンスターなどを採用したハイビートデッキを構築していたが…。
こういうデッキに対して、俺のデッキは真価を発揮する!
「デス・ラクーダを反転召喚して1枚ドロー!さらにステルスバードを反転召喚して、効果発動!これで終わりだ!」
「この俺が五反田如きにぃいいいい!」
サイクルリバースデッキで裏切者を何とか撃破した五反田は、先に向かった姫と合流しようとする。
だが、向かった先で見た物は。
ぐったりと倒れている4人のサイバー流門下生。
姫は逃走経路を封鎖していた門下生を蹴散らしたようだが、直後に他の逃走経路を封鎖していた門下生が駆け付けていたようだ。
だが、時間を稼がれた事で、新手がやってきていた…。
五反田sideout
速見side
どうやら、リーダー格が出て来たらしい。こいつだ、こいつさえ倒せば活路は開く!
魔法・罠カードを除去できるXYとXZを採用している光属性・機械族デッキだったが、それも撃破した。
「これで終わりだ!」
「罠発動!ボーン・フロム・ドラコニス!墓地の光属性・機械族モンスターを除外して、手札のレベル6以上の光属性・機械族を召喚条件を無視して特殊召喚!現れろ、サイバー・レーザー・ドラゴン!除外した光属性・機械族は全部で8体、よって攻撃力と守備力は4000!」
こんな方法で、サイバー・レーザー・ドラゴンを出すだと!だが、それならばアビス・ソルジャーで手札に戻すまで!
「バトル終了、メインフェイズ2に入り」
「言っておくが、ボーン・フロム・ドラコニスで呼び出したモンスターは、ボーン・フロム・ドラコニス以外のカード効果を受けない」
?!光属性・機械族を次々と墓地に送っていたのは、この為か…!
「ターン、エンド…」
まだだ!攻撃を受けてもライフは残る!守りを固め、その間に打開策を引き当てれば…。
「俺のターン、ドロー!バトルだ、サイバー・レーザー・ドラゴンでアビス・ソルジャーを攻撃!」
「くうううっ!」
「速攻魔法発動!サイバー・ロード・フュージョン!除外されている3体のサイバー・ドラゴンをデッキに戻し…現れろ、サイバー・エンド・ドラゴン!」
「?!」
ここで、サイバー・エンド・ドラゴンが…!
敗北が確定してしまったが、それでも私は凛とした態度を崩さず毅然とにらむ。
志半ばで倒れるとしても、膝は付かないッ!
速見sideout
西条sideout
事前に首領格について、ある程度情報を調べ上げていた俺だが、この状況で折れない心に好感を抱く。
戦力が半壊、裏切者も出ている状況でなお、逃走経路を確保すべく門下生を蹴散らす実力。
俺と彼女が手を組めば、サイバー流内部での地位を確固たる物に出来るだろう。
そうすれば、俺の本来の計画…サイバー流を外側から倒すのではなく、中から変える、という計画を進める事が出来る。
具体的には、サイバー・ランカーズとなり、ゆくゆくは才災勝作を蹴落とす事で『正しい・リスペクト・デュエル』を改めさせるという目標に実現性が出てくる。
そのためには身柄を七階堂では無く、俺が確保しておく必要がある…。
「降伏しろ。そうすれば、才災様には如月同盟の首領はお前では無くて、ツインテールの女だと報告する。だから」
「断る!」
即座に速見は拒否。意思は固く、そうそう前言撤回はしなさそうだ…。残念だ。俺は攻撃宣言を行う。
「…サイバー・エンド・ドラゴンでセットモンスターに攻撃!」
攻撃が炸裂する直前。彼女は別の所を見ると、小さく口を動かした。『逃げろ』、か…
おそらく、そこに他のメンバーがいて、指示を出したのだろう。
小さな足音が遠ざかっていくが、俺は追わなかった。
「西条様!おお、片付けましたか!わはは、サイバー流に逆らうからこんな目に合」
あとからやって来た恥知らずな門下生を、俺はにらみつける。それだけで、そいつは黙った。
俺は通信機を取り出し、全員に指示をだす。
「俺だ。如月同盟の首領は倒した。この戦いは我々サイバー流の勝利だ!現在、デュエル中のサイバー流門下生に通達する!サレンダーを呼びかけ、従った者には危害を加えるな。また、デュエルを行っていないサイバー流門下生は、付近の気絶したサイバー流の門下生を連れ、即座に撤退を開始せよ。」
その通達に、門下生の一人が反対意見を述べる。
「馬鹿な!ここで残党を叩き潰すべきだ!」
「駄目だ。如月同盟の壊滅という戦略的目標は達成した。これ以上の追撃は、我々サイバー流の誇りに傷をつける事になる。正しい・リスペクト・デュエルに乗っ取っていないデッキを使う連中といえど、リスペクトを守っていない相手に対して何をしても許されるというわけでは無い。」
この指示に対して参加していたサイバー流門下生に不満はあるものの、俺の指示に従った。
確かに、残党を追撃すれば大きな戦果を上げれるが…残党が残っていた方が再起を図った際に倒すことで再度功績を上げる事が出来る。
場合によっては情報を横流ししてサイバー・ランカーズへの刺客に仕立て上げる事も出来る。
と思っていたら、七階堂美亜が勝手に追撃を始めたという連絡が入った。待機しろと言ったのに勝手に行動、撤退しろと言ったのに追撃!
しかも敗北したという連絡も入り、俺は内心頭を抱える…。無能な働き者は害悪というが、まさにその通りだ…。
西条sideout
五反田side
同時刻。
やや離れた地点で、途中で合流したメンバーと俺は息をつく。
追撃してきたおかっぱ頭のサイバー流門下生を、俺は難なく倒す事が出来たが、むなしいだけだった。
「…くそっ!」
「五反田、俺は童美野街に向かう。お前も一緒に来ないか?」
「…そういう気にはなれない。」
「わかった。達者でな」
この後、俺と分かれたメンバーはサイバー流に対抗できる力を求め、光の結社に入ったという噂を聞いたが、光の結社がうろんな組織に思えたので俺は参加しなかった…。
五反田sideout
七階堂side
「如月同盟のリーダー、速見信乃の身柄を確保しました。」
「おお、よくやってくれた!」
「恐れながら、彼女をどうするつもりですか?」
「決まっている。このデッキを使って、サイバー流の門下生とデュエルして貰うのだ。」
「拝見しても?」
「構わない。」
西条君は、デッキを確認する。
「な、なんだこれは…融合、パワー・ボンド、融合呪印生物-光、未来融合フューチャーフュージョン、フュージョン・ゲートが入っていないぞ!これでは融合召喚も出来ない!というより、フォトン・ジェネレーター・ユニットやアタック・リフレクター・ユニット、ボーン・フロム・ドラコニスはどこに?」
「入れていない。」
「完全に死に札じゃあないか…リミッター解除も無い、サイバー・オーガが入っているが一枚だけでは意味がない!これはデッキではない!」
「デッキだ。40枚以上のカードで構築しているのだからな。話は以上か?」
「…ええ、失礼しました。」
ふぅ、ようやく納得したか。
さてと。サイバー流のリスペクト精神を持たない決闘者崩れには、カードが応えてくれないという実証を行ってもらうとするか。
良い見せしめになる上に、ストレス発散になる。上に立つ私のようなエリート層はこうみえて、色々と気苦労が多いのだから。
七階堂sideout
???side
その日の夕方。海馬コーポレーションにて。
俺は上司に報告をしていた。
「というわけで、サイバー流に対して立ち上がった如月同盟は壊滅しました、磯野様。こちらが詳細な報告書になります。」
「そうか…報告ご苦労、海老原(えびはら)」
「はっ。」
海馬コーポレーションの出世レースを勝ち上がり、この度直属となった俺の労を磯野様は労ってくれた。
「恐れながら、質問をしても?」
「構わない。」
「何故、如月同盟に支援をなさらなかったのですか?我々が動けば」
「社長が支援をするべきではないと判断された。理由は、首領である速見信乃に『青写真』がない事だ。」
確かに、統率力はあったが長期的な目標が無かった事で壊滅に追い込まれている…。
長期的な目標を立てる事が出来て、根回しが出来る戦略家が仲間にいれば話は違っただろうが。
「では、どうするのですか?サイバー流を」
「新人を見つけ出し、サイバー流への刺客とする。戻ってきて疲れているだろうが、仕事だ。これらのカードを使いこなせる子供を見つけ出せ。まずは海馬コーポレーションが保護している子供から始めるがいい」
「わかりました!早速取り掛かります!」
磯野様が提示したカードの束には、新しく開発されたチューナーモンスター、X-セイバーエアベルンがあった。
レベルの合計か…。どうすればいいのかさっぱり見当もつかない。子供なら柔軟な発想で何か思いつくかもしれないな…。
海老原sideout
というわけで、前日譚を送りました。カリスマ性がある戦術家でも、長期的な目標を定める「戦略」が無ければ組織を立ち上げても分裂してしまいますし、長期的な目標を立てて謀略を巡らせる事が得意な戦略家でも、カリスマ性が無ければ組織を立ち上げることが出来ません。
アンチリスペクト物だとこういう組織を話に組み込むのが難しくて、本編には絡ませる事が出来ませんでした…。というのも、アカデミアが「孤島」なので、本土でこういう活動をしていても「遠い場所での戦い」になり、アカデミアに入学しているであろう主人公と関わらせるのが非常に難しいからです。
ゴッズのアカデミアのように本土にあれば、昼間は学生、夜は如月同盟で活動という二重生活とか出来ますし、主人公を見かけた海野幸子ちゃん辺りが後をつけて事情を知って関わっていく…といった展開も出来るのですが、孤島は無理です。
そもそも、GXのデュエルアカデミアでこういった組織を立ち上げたら校則を増やすとかして潰しに来るかと。例えば「既存のクラブと集会は全て解散、再結成には教員に申請して許可を得る事、許可のない集会を行った生徒は退学」などで。
西条は中からサイバー流を変える計画を立てていましたが、支持基盤を確立出来ずに頓挫しました。
この後、速見さんは七階堂と紙束同然のサイバー流デッキでデュエルする事になりますが、七階堂がフィールド魔法、フュージョン・ゲートを発動するというポカをやらかしてくれたおかげでサイバー・エンド・ドラゴンを融合召喚して勝利、逃げおおせる事に成功しますが、その後はサイバー流に立ち向かう組織を立ち上げることなく、ひっそりと過ごします。