学園祭。ブラマジガールがオシリスレッド寮のコスプレデュエル大会に参加する事を知っている猫崎だが…。
彼女が居るのに別の女性を見に行く気はないので、光里と一緒に過ごす事を優先していると。
「…あれ?」
「どうしたの?」
視線の先には、神楽坂とその隣に同年代の可愛らしい少女が隣におり、その近くにサングラスを掛けて紫色の髪の妙齢の女性が居た。
「誰なんだろう、あの人。おーい、神楽坂!」
「猫崎先輩?」
「知り合い?」
従妹が聞き、叔母が反応した事で神楽坂は答える。
「海馬コーポレーションが開発したシンクロ召喚のテスターをしていて…七精門の鍵を守護している一人です。先日もセブンスターズの一人、百野真澄を破っています。」
「初めまして。猫崎俊二です。」
「私は才波光里。」
「私は桜咲フローラ。この子は娘の美夜。」
一礼する少女。
「…きれいな肌ですね。」
同性である才波が思わずつぶやいてしまう程、三児の母親であるフローラの肌は美しかった。
「俺の従妹と叔母なんだ。」
「…あまり似ていないように見えるが。」
「ええ。この子の母親の弟の妻だから、私は神楽坂家と血はつながっていないわ。」
フローラの発言を聞き、猫崎は納得する。
「ふと思ったんだが、神楽坂。」
「何ですか?」
「古代の機械巨人をどこで手に入れたんだ?あれはすごいレアカードだろう?」
「それは…その。」
それは、猫崎の前世において謎だった事。
クロノス教諭しかほぼ使っていないレアカードを、一生徒が所持していた理由は作中で触れられていない。
第一話の時から時間がたち値段が下がった、という説もあるが…。クロノス教諭と神楽坂以外に使用者がGXの作中に登場しなかった以上、仮説でしかない。
美夜がちらりと母親を見たことで、猫崎は気づく。
「…もしかして、貴女が所持していたカードですか?」
「え、ええ。そうよ。前の職場で貰った大事なカードなの。」
「どこにお勤めだったのですか?」
光里はその話に食いつく。
「すでに倒産したとはいえ、外資系の企業ですから内密に。」
「あれ?宗教関連って言っていませんでしたか?」
甥っ子を軽く睨むフローラ。
神楽坂の発言で、猫崎の中でピースが嵌る。
・社員が古代の機械巨人を手に入れられる程の資産をもつ大企業
・DMからGXの間に倒産している
・宗教関連
画面越しの知識しか持っていない、転生者である猫崎が導き出せる答えは少ない。
「…パラディウス社?」
どの企業だろうか?と考え込んでいた光里は、愛する人がボソリと呟いた言葉を『聞き逃してしまう』。
神楽坂と美夜は、それぞれ失言してしまったと反省していたこともあり、『聞き逃す』。
同時に、猫崎はフローラの口角が上がると同時に瞳がドロリと濁った事で、その答えが正しかったことを悟る。
また、フローラも目の前の青年に対する警戒心を跳ね上げる。
彼女からすれば…
・海馬がオーナーの学校において、七精門の鍵の守護者に選ばれている。
・新しい召喚法のテスターであり、海馬との繋がりが深い。
・わずかな発言からパラディウス社では?と真相にたどり着ける洞察力を持っている。
もはや、何かしらの釘を刺す等、口止めをせねばならなくなった。
「ねぇ、少し話し合わないかしら?」
「ちょっと!」
「ご心配なく。私は生涯、夫以外の男を異性としてみる気は無いの。貴方だって3人の子持ちの人妻に手を出す気にはなれないでしょう?」
「大丈夫だ。少し行ってくる。」
その場に残った三人は顔を見合わせていたが…ややあって、学園祭を見て回る事にした。
―――――
「この辺でいいか。」
「そうね…。本題に入るわ。私からの要求はただ一つ。海馬に私の事を話さない事。」
「何故だ?元パラディウス社の一員だったとしても海馬コーポレーションで出世できるはず」
「私はダーツ様に忠誠を捧げた。ダーツ様の掲げた星の救済という崇高な儀式を邪魔した海馬の下につくのも、今さら敵対するのもお断り。」
「貴女は、この世界を滅ぼしたいと思っているのか?」
「ダーツ様でさえ成し遂げられなかった事を、今更私如きに出来るわけがないし、するつもりもない。私は所詮、敗軍の将。敗者には敗者の身の振り方があるわ。」
どうやら、そこまで危険人物ではないようだ。ダーツに心酔している忠臣だろうと、世界のリセットを目論まないなら問題はない。
猫崎は海馬への報告をしないことを決めた。
そうなると、猫崎の前世における「遊戯王デュエルモンスターズのファン」としての興味が沸く。
画面では描写されなかった事を知れる機会。
「わかりました。ところで、貴女は計画実行の時…誰と交戦しましたか?」
「私が戦ったのはバクラよ。」
「…え?」
猫崎はぽかんと口を開ける。
それは、画面の向こう側にいた人間には知りえない情報。
「知らないのも無理は無いでしょうね。隠蔽工作を入念にしたから。」
「バクラと?闇人格の方は世界を滅ぼそうとしていたはず。共闘出来たのでは?」
「バクラと共闘?無理ね、こちらは究極の闇のゲームに不可欠な記憶の石板を凍結させ、神のカードを奪った。究極の闇のゲームを目論んでいたバクラとの敵対は明白だった。」
いわれてみれば、その通りだ。あのバクラがオレイカルコスの結界と欠片を渡され、ドーマの走狗に成り下がるなどありえない。
そもそもビートダウンよりも搦手を得意とするタイプだ。猫崎は納得する。
「どうやってバクラと戦ったのですか?」
「元グールズの一員で、ラーのコピーカードを持っていたレフタに旅券とオレイカルコスの欠片とオレイカルコスの結界を与えて襲撃。旅券を奪わせて祖国へ誘い込み、骨塚にレアカードを与えて送り込み。あとは私の同僚が直接戦ったり、私自身、バクラとやりあったわ。」
なるほど。
そういえば、ダーツが世界を滅ぼそうとしたのは3000年前に古代エジプトを破滅に追いやった名もなきファラオ、神官セト、バクラの魂が現代に蘇ったから。
遊戯&海馬に加えてバクラまで参戦してはダーツの勝率はさらに下がるだろう。
…特に、オレイカルコス・ミラーにより呼び出された「ミラーナイトトークン」。オレイカルコスに囚われた魂、表遊戯、城之内、舞、ペガサスの魂。
それをバクラ相手に展開した所で、バクラは何の躊躇いもなく破壊しようとするはずだ。
話をしつつ、フローラは自分が行った事について全く知らなかった様子を猫崎が示していることで。
海馬の最側近ともいうべきこの青年が知らないなら、海馬自身も知らないだろうという確証を持つ。
「貴女は最初から捨て駒だったのでは?」
「心外ね。この計画は私自ら立案して、ダーツ様に進言したものよ。」
「そんなことをせずとも、バクラの魂を奪ってしまえば…」
「知らないの?千年リングにはパラサイト・マインドがあるわ。」
「あっ?!」
「本体を封じ込めれば、分身体が動き出す…。私たちドーマでさえ、バクラの分身体の所在を全て把握していなかった。神のカードを奪われ、究極の闇のゲームが行えない上に本体の魂が行動不能となれば…もはやなりふり構わず分身の一つが合流を図るはず。」
「……」
「私の計画はこうよ。バクラが足止めをされていた事に気づいた時点で手遅れ。ダーツ様による星の救済で、人類も、邪悪なバクラの魂も分身もオレイカルコスの力でリセットする。そうなれば…今よりも良い世界が創造される。偉大なるダーツ様の名のもとに。」
改めて、パラディウス社の強大さを思い知る猫崎。
バクラを足止め出来る作戦を立案し、実行出来る幹部を「使い捨て」に出来るとは。
そりゃあ、こんな幹部がゴロゴロいるなら海馬剛三郎とて「ドーマには手を出すな」と忠告する。
「昔話はこれぐらいでいいかしら?」
「ありがとうございます。実に興味深い話でした。」
「だったら、今の話をしましょうか。シンクロ召喚のテスターであり、鍵の守護者に選ばれた貴方とデュエルしてみたいわ。」
「今の話を聞いて、俺もあのバクラと渡り合った元パラディウス社の幹部とデュエルしてみたくなりました。」
「あら。貴方もバクラを高く評価しているの?彼はバトルシティ決勝トーナメントの初戦敗退よ?」
「デュエルキングが、神のカードを持っていない相手に神のカードを使わなければ倒せなかった相手ですよ。」
「そうね…。彼の蹴りは陣痛よりも痛かったし。」
マジ?となる猫崎。
男として生を受けた以上、陣痛とは無縁の人生を送っているが、その痛みが凄まじい事を知識として知っている。
場所を変え、室内に移動。
机の上にデッキを置くフローラ。
デュエルディスクでデュエルする気だった猫崎は意外そうな表情を浮かべる。
「悪いけど、オレイカルコスの結界を使う以上、デュエルディスクは使わない。海馬コーポレーションに情報が洩れるから。」
「そうですね。では、よろしくお願いします。」
前世でのデュエルを思い出し、懐かしい気分になる猫崎。
そんな猫崎を「幼少期はデュエルディスクが手に入らなくて、こうして遊んでいたんだろうな」とフローラは勘違いした。
元パラディウス社のバリバリ武闘派女幹部であっても、目の前の青年が「OCGからやってきた転生者」である事は見抜けない。
こればかりは、ダーツであっても見抜くのは不可能だろう。
―――――
「「デュエルッ!!」」
猫崎 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
フローラ ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「先攻は、コイントスでいいかしら?」
「どうぞ。」
コイントスの結果、フローラが先攻を取った。
「私の先攻、ドロー。発動せよ、フィールド魔法、オレイカルコスの結界!」
「引き当ててきた?!」
「永続魔法、冥界の宝札と進撃の帝王を発動。魔法カード、増援を発動。天帝従騎イデアを手札に加えて通常召喚!」
前世の知識で知っているカードが出てきた事で猫崎は呆然とする。
その反応を見てフローラは『海馬の手駒だからカード効果を知っている』と推測する。
「効果発動、デッキから同名カード以外の攻撃力800/守備力1000のモンスター1体を守備表示で特殊召喚。デッキから、冥帝従騎エイドスを守備表示で特殊召喚!冥帝従騎エイドスの召喚・特殊召喚に成功したターン、私は通常召喚に加えて1度だけメインフェイズにアドバンス召喚が可能。2体の従騎をリリース、古代の機械巨人をアドバンス召喚!オレイカルコスの結界により攻撃力は500ポイントアップ!」
一ターンで最上級モンスターの召喚。
「…そして、冥界の宝札で2枚ドロー…ですね。」
「ええ。カードを2枚伏せてターンエンド。」
猫崎 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
フローラ ライフ4000
手1 フィールド 古代の機械巨人
魔法・罠 冥界の宝札 進撃の帝王 伏せ2
「俺のターン、ドロー!召喚僧サモンプリーストを召喚!」
「召喚成功時に、守備表示になるわね。」
「ええ。手札の精神操作を捨てて、デッキからレスキューキャットを守備表示で特殊召喚。効果発動、このカードを墓地に送り、デッキからX-セイバー エアベルンと、異次元の狂獣を特殊召喚!」
「モンスターを3体並べたわね。」
「俺は、レベル4とレベル3の異次元の狂獣に、レベル3のチューナーモンスター、エアベルンを墓地に送る事で、レベル10のA・O・Jディサイシブ・アームズをシンクロ召喚します。」
エクストラデッキからカードを取り出そうとする猫崎に、フローラは待ったをかける。
「待って。テキストを確認させてくれないかしら?」
「どうぞ。」
テキストを熟読し、納得するフローラ。
「チューナーと、チューナー以外のモンスター2体。だから三体のモンスターが必要。シンクロ召喚は特殊召喚の一つということでいいわね?」
「その通りです。」
「チェーンブロックは?」
「作りません」
「では、モンスターが3体並んだところで発動したいカードがあるわ」
「わかりました。」
「レスキューキャットの効果処理後に罠発動、無力の証明。私の場にレベル7以上のモンスターが存在する場合、相手のレベル5以下のモンスターをすべて破壊する。」
「なっ?!」
発動された罠を見て、猫崎は3体のモンスターを墓地に置く。
「低レベルモンスターのレベルを合わせて高レベルモンスターを呼び出す…。ならば、高レベルを出される前に対処する。」
手札のイージーチューニングをちらりと見つめた後、猫崎はカードを伏せる。
「カードを2枚伏せて、ターンエンド!」
猫崎 ライフ4000
手2 フィールド
魔法・罠 伏せ2
フローラ ライフ4000
手1 フィールド 古代の機械巨人
魔法・罠 冥界の宝札 進撃の帝王 伏せ1
「私のターン、ドロー!墓地の冥帝従騎エイドスを除外して効果発動、デッキから二体目の天帝従騎イデアを特殊召喚。イデアの効果発動、デッキから二体目の冥帝従騎エイドスを特殊召喚。二体をリリースして、2体目の古代の機械巨人をアドバンス召喚。冥界の宝札で2枚ドロー。さて。」
じっと猫崎を見つめるフローラ。
効果を知っている猫崎はこのタイミングで動く。
「バトルフェイズ開始時に罠発動、和睦の使者!」
「逃がさないわ、カウンター罠、魔宮の賄賂。さぁ、1枚ドローしなさい。」
「……。」
無表情でカードを引く猫崎。【猫シンクロ】にバトルフェーダーや速攻のかかしは入れていない。
「バトル、二体の古代の機械巨人でダイレクトアタック。」
「…俺の負けです。」ライフ4000から1000、1000から0
デュエルに勝ったフローラは、自分の場のカードをデッキに戻してシャッフルする。
猫崎もカードをデッキに戻し、シャッフルした後に提案する。
「…もう一度、デュエルしてくれませんか?」
「構わないわ。負けっぱなしは性に合わないでしょう?」
「無力の証明は予想外でした。」
「あら、そう?勉強になったわね。それでは…」
―――――
「「デュエルッ!!」」
猫崎 ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
フローラ ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「俺の先攻、ドロー!レスキューキャットを召喚!このカードを墓地に送り、デッキからXセイバーエアベルンとコアラッコを特殊召喚!レベル2の地属性、コアラッコにレベル3の地属性、エアベルンをチューニング!シンクロ召喚!ナチュル・ビースト!」
「その言い方、召喚条件として地属性の制約があるのね。」
「はい。カードを2枚伏せてターンエンド。」
猫崎 ライフ4000
手3 フィールド ナチュル・ビースト
魔法・罠 伏せ2
フローラ ライフ4000
手5 フィールド
魔法・罠
「私のターン、ドロー!魔法カード、汎神の帝王を発動!」
「ナチュル・ビーストの効果発動!デッキの上からカードを2枚墓地に送り、魔法カードの発動と効果を無効にして破壊!」
「なるほど、シンクロモンスターというのは何かしらのモンスター効果があるわけね。」
まぁ、例外はなくはないが。前世だと大地の騎士ガイアナイト、ナチュル・ガオドレイク、スクラップ・デーモンは効果を持たないシンクロモンスターだ。
あれから増えては…居ないだろう。
「墓地の汎神の帝王の効果発動、ゲームから除外してデッキから3枚の帝王魔法・罠を見せ1枚を相手が選び、そのカードを手札に加える。私が選択するのはこの3枚!」
「…帝王の烈旋を。」
三枚とも同じカードだったため、さほど感情をこめずに猫崎は告げる。
「速攻魔法、帝王の烈旋を発動。」
「ナチュル・ビーストの効果発動、デッキの上からカードを2枚墓地におくり、魔法カードの発動と効果を無効にして破壊!」
「待って。1ターンに1度の制限が無いの?」
「ええ、ありません。俺のデッキ枚数が2枚以下になれば話は別ですが。」
「地属性が必要とはいえ、強力ね…。ならば、天帝従騎イデアを通常召喚!デッキから、冥帝従騎エイドスを守備表示で特殊召喚!」
「この流れは…。」
「二体の従騎をリリース、絶対服従魔人をアドバンス召喚!」
「ここで絶対服従魔人…?」
意外なカードが出てきた。決して使いやすいカードではないが。
「チェーンはありません。」
「カードを1枚伏せてターンエンド!」
猫崎 ライフ4000
手3 フィールド ナチュル・ビースト
魔法・罠 伏せ2
フローラ ライフ4000
手2 フィールド 絶対服従魔人
魔法・罠 伏せ1
伏せカードを睨む猫崎。禁じられた聖杯であれば使われてもナチュル・ビーストで止めれる。他にあるとすればスキルドレイン、か?
火霊術の可能性もあるが、それでもライフは残る。
「俺のターン、ドロー!召喚僧サモンプリーストを召喚!手札の大寒波を捨てて、デッキからレスキューキャットを特殊召喚!」
動きはない。となればスキルドレインでは無いはず。
「レスキューキャットを墓地に送り、X-セイバー エアベルンとライトロード・ハンター・ライコウを特殊召喚!」
「ここで罠発動!トラップ・トリップ!デッキから通常罠を除外し、同名カードを伏せる。伏せたカードはそのターンに発動できるわ!帝王の凍志を除外して、デッキから帝王の凍志をセット!」
デッキをシャッフルするフローラを見ながら、猫崎は狙いを悟る。
「…レベル4のサモンプリーストとレベル2のライコウに、レベル3のエアベルンをチューニング!シンクロ召喚!ミスト・ウォーム!」
「レベル9もあるのね。」
「効果発動、絶対服従魔人とその伏せカードを手札に戻す!」
「チェーンして罠発動!帝王の凍志!私のエクストラデッキが0枚の場合、私のアドバンス召喚したモンスター1体を選択して発動。選択したモンスターの効果は無効となり、このカード以外のカード効果を受けない!」
これを通せば、「あらゆるカード効果を受けない」3500打点という大型モンスターが成立する。
そうなれば、イージーチューニングで打点を上げて突破するしか手がない。
「カウンター罠、魔宮の賄賂!帝王の凍志の発動と効果を無効にして破壊!そして相手は1枚ドローする!」
「…。」
カードを引くフローラ。
その表情は変わらないが、猫崎はこの攻撃は阻止されないと確信をもつ。
「バトル!ミスト・ウォームとナチュル・ビーストでダイレクトアタック!」
「私の負け、ね。」ライフ4000から1500、1500から0
―――――
互いに一勝一敗。
猫崎はフローラが容易な相手ではないと知り、フローラもまた、猫崎の強さを理解する。
「貴女の事は、海馬オーナーには話さないと改めて確約します。」
「そうして欲しいわ。仕事をしていた頃より、子育ての方が大変なの。」
おまけに、上司が海馬なんて、ね。
その呟きを猫崎は否定する気にはなれなかった。割と海馬の部下をやるのはキツイ。給料は良いのだが。
「ところで、貴女はサイバー流を知っていますか?」
「初代師範の『マスター』とは知り合いよ。」
「となると、鮫島師範ですか?」
「あら、彼は二代目よ?」
「えっ?初代はどんなデッキを…?」
「神獣王バルバロスやメタル・リフレクト・スライムに突然変異を使ってツインやエンドを出す【変異カオス】よ?」
うわぁ、となる猫崎。
「対戦したことは?」
「17戦9勝8敗。神の宣告は三積みだし、スケープ・ゴートのトークンをサウザンド・アイズ・サクリファイスにしたり、トークンを攻撃表示にして強制転移。それから…」
9期帝王サポート積んだ古代の機械巨人+原作オレイカルコスの結界相手に、【変異カオス】で鍔迫り合いが出来るサイバー流初代師範の実力に戦慄する猫崎。
まぁ…そういう除去カードを使う人なら、似非ペクトを掲げる才災に手を貸すことはないだろう、と猫崎は判断する。
「それにしても、今のサイバー流はずいぶん変わってしまったわね。」
「才災校長はバーン、カウンター罠、コントロール奪取を否定するようになっています。妨害札は対戦相手へのリスペクトに反するから、と。」
「彼の経営手腕は評価するけれど、そういう話を聞くとダーツ様は正しかった、という気持ちになるわ。」
ダーツによって心の闇を克服した新しい人類による世界が作り上げられれば、モーメントの逆回転も起きず、ダークネスの侵攻も起きないだろうが…。
ふと、猫崎は思いついた。
「…今から約200年後に今の人類は滅びる」
「えっ?」
「どう思いますか?」
「あら、そうなの。」
「…動揺しないんですね。」
「ええ。滅びるなら滅びればいい。人類は多くの種族を絶滅に追いやった。人類の番が来るだけでしょう?」
「ご結婚なされて、お子さんもいらっしゃいます。それでも人類は滅びればいい、と?」
「おかしなことを言うのね。ドーマの幹部だった私に、幸せな過去があるとでも?」
「それは…。」
ダーツは自作自演で部下を集めていたが…。
考えてみれば、そうではない部下も当然いるはずだ。
「詳しく話すつもりはないけれど。穏健な保守派の父と母は改革派の過激派に殺された。彼らは私も殺そうとした『大儀のため』に。だから私もダーツ様の『星の救済』という『大儀のため』に世界をリセットしようと思った。」
「今は、違うんですよね?」
「そうね。私はパラディウス社を寿退社したけれど、夫や義理のご両親や親族と過ごして…。世界の問題がある部分だけならまだしも、世界全部を纏めてリセットしようというのは間違っていたのかもしれない。今では、そう思うようになった。」
「だったら、何故人類が滅びると聞いて、何も感じないのですか!」
「幸運の女神に後ろ髪は無い。ダーツ様の救済を拒んだ結果、滅びるなら滅べばいい。」
ゾッとするような冷たい眼。
前世を含めて悪意に満ちた目はそれなりに見てきたが、それでも慄然とする寒気とプレッシャーを帯びていた。
これは、歴史を改変して人類の存続を目論むイリアステル側につくことはなさそうだ。
「…貴女は、密かにパラディウス社を復興させる計画を進めていたりしますか?」
「そんなつもりは無いわ。今の生活で満たされているもの。」
というわけで、久々の更新&神楽坂の背景を深堀した回でした。
OCGの知識持ち&海馬コーポレーションの後ろ盾を持っている転生者の猫シンクロと互角に渡り合える現地人フローラ。
ドーマの幹部は伊達ではありません。
…遊戯王GXの二次でドーマ所属だったオリジナルキャラクターが登場する作品は私が知る限り一つしか知りません。
ドーマの元幹部、となると扱いは難しいですが。
Q:原作準拠の二次創作で登場していた百黒 剛健(ひゃっこく ごうけん)が神楽坂に絡んでこないのはなぜ?
A;似非ペクトに染まったアカデミアに、【黒魔導の執行官】使いの居場所なんてあるわけないじゃないですか。
…二次創作でも黒魔導の執行官使いはほとんど見かけないんですよね。まぁ、ライフ4000の環境なら削り切れてしまうデッキなので、扱いが難しい…。
Q:この世界線において、海馬に身バレを恐れているフローラがアカデミアに来たのは何故?
A;似非ペクトを掲げているサイバー流が海馬コーポレーションと対立しており、身バレの可能性が少ない為、義理の息子になるであろう甥っ子の様子を見に来たのが真相です。