猫シンクロ使いが行く遊戯王GX!   作:交響魔人

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サイバー流に支援する後援者達の思惑と、サイバー流のオリジナル設定が登場します。

政界・財界に次ぐ勢力としてカードゲーム界の名前が上がるほど勢いがあるなら、こういう動きが原作でもあったかもしれません。
勿論、そんな動きを海馬瀬人が座視するとは思えないので、色々と手を打っていたと思いますが。


第7話!ノース校との交流戦と、サイバー流の秘密

 才災師範のS禁止令は解除された。ペガサス会長と海馬オーナーの圧力があったらしい。

 デュエルアカデミアには、姉妹校がある。その一つ、ノース校との交流試合が行われる。

 アカデミアから代表となる生徒が選ばれる事になったのだが…。

 

 

「学園代表を決めるために、猫崎君には才光君とデュエルして貰います。」

「わかりました。」

 

 出てくるのはまた、サイバー流の門下生なんだろうなぁ。隣室のオシリスレッド生が昨夜騒いだせいで寝不足の猫崎はぼんやり考える。

 出てきたのは、癖のある茶髪のサイバー流の門下生、才光だ。

 

「君が猫崎君か。こうしてデュエルするのは初めてだけど、よろしくお願いします。」

「…こちらこそ、よろしくお願いします。」

 

 礼儀には礼儀で返す猫崎。

 

 

 

「「デュエルッ!!」」

 

猫崎 ライフ4000

手5 場 

才光 ライフ4000

手5 場 

 

 

「行きます、僕の先攻、ドロー!フィールド魔法・フュージョン・ゲートを発動し、効果発動!手札のサイバー・ドラゴン三体を除外して融合!現れろ、サイバー・エンド・ドラゴン!」

 

 今回はこういうパターンか。と思いながら眺める猫崎。

 

「速攻魔法、異次元からの埋葬を発動!除外されたサイバー・ドラゴン三体を墓地に戻す。速攻魔法、サイバネティック・フュージョン・サポートを発動!ライフを半分払い、手札・場・墓地から機械族の融合モンスターカードに決められた融合素材モンスターを除外することで、融合素材に出来る!墓地のサイバー・ドラゴン三体を除外し、現れろ、サイバー・エンド・ドラゴン!」ライフ4000から2000

 

 

『よし!行け才光!』

『いいわよ!サイバー・エンド・ドラゴンが二体!これなら行けるわ!』

『リスペクトデュエルで、猫崎の卑怯者を粉砕だぁ!』

 

「僕はこれでターンエンドです。」

 

 

 

猫崎 ライフ4000

手5 場 

才光 ライフ2000

手0 場 サイバー・エンド・ドラゴン サイバー・エンド・ドラゴン フュージョン・ゲート 

 

 

「俺のターン、ドロー!俺はレスキューキャットを召喚!効果発動!このカードを墓地に送り、デッキから異次元の狂獣とX-セイバーエアベルンを特殊召喚!行くぞ、レベル3の異次元の狂獣にレベル3のエアベルンをチューニング!S召喚!現れろ、氷結界の龍ブリューナク!」

 

 前世で猫崎が初めて手に入れた、思い出深いSモンスターが現れる!

 

「レスキューキャット一枚から、S召喚までつながるなんて…。実家の押し入れにレスキューキャットが36枚あるけれど、S召喚が広まったら価値が上がるかなぁ?」

「…俺は氷結界の龍ブリューナクの効果発動!1ターンに1度、手札を任意の枚数捨てる事で、捨てた枚数分だけ相手の場のカードを手札に戻す!」

「ええっ?!」

「手札を2枚捨てて、サイバー・エンド・ドラゴン二体をバウンスする!」

 

 

 ブリューナクがブレスを放つと、才光の場のサイバー・エンド・ドラゴン達が氷漬けになり、消滅していく!

 

「僕のサイバー・エンド・ドラゴンが!」

 

『卑怯だぞ!』

『正々堂々と戦え!』

『モンスター効果でバウンスするんじゃ無いわよ!』

『卑怯者!攻撃力を上げて立ち向かえ!』

『才光やめろ!こんなデュエルは無効だ!』

 

 あーもう。猫崎はデュエルを終わらせる事にした。

 

「バトル、氷結界の龍ブリューナクで、ダイレクトアタック!」

「うわああああああっ!」ライフ0

 

 

 デュエルは猫崎が制した。だが、これで当然終わりではない。

 

「猫崎君。今の君のデュエルからは、相変わらず対戦相手へのリスペクト精神が感じられませんでした。楽しいですか?」

「楽しいですよ。相手に勝つ事で、自分が優位に立てるので。」

「ほう?一生懸命出したサイバー・エンド・ドラゴンをバウンスモンスターなどというカードで対処して、恥ずかしく無いのですか?」

「デュエルモンスターズにおいて、妨害されない等という事はあり得ません。幾多の妨害を掻い潜って、コンボを、切り札で勝利する。相手を妨害するカードが無いならともかく、あるのにあえて使わない事こそ相手へのリスペクトが足りないのでは無いでしょうか?」

「ブリューナクでしたか?そんな卑怯なカードを使えば、誰でも勝てます。」

 

 

 ブリューナクを使えばだれでも勝てる?

 …前世で【BF】デッキを使って【レプティレス】に猫崎は負けた事がある。

 悔しかったが…それ以上にカードパワーの差を覆した、相手のデュエリストレベルに感動した。

 …もしかして、俺って前世だと弱い?公式戦でも一回戦負けばかりで結果出した事無い…。

 

「このターンで決められるまで機会を伺ってから、サイバー・エンド・ドラゴンで攻撃するというプレイングをするとか、サイバー・エンド・ドラゴンを守る為の防御カードを入れればいいのでは無いですか?」

「何故そんな事をしないといけないのですか!そもそもバウンスを使うなんて、対戦相手への敬意が足りません!」

「…バウンスが卑怯というなら、強制脱出装置などの汎用罠でブリューナクをバウンスすればいいのではないでしょうか?」

「話になりません!一週間の停学を命じます!」

「わかりました。」

 

 言葉が通じても話が通じない。

 それにしても、一応年長者相手にこの態度は無いな…。反省。

 

 

 代表は、才光というサイバー流の門下生に決まった。その事にサイバー流門下生の才花が喜んでいた…

 というより、あの二人が付き合っていた事に少し驚く猫崎。

 

 

 

 

 

 その夕方。

 猫崎と才波は、デュエルアカデミアのオシリスレッド寮のテレビで、プロリーグの実況を見る。

 

『これにて決着ー!サイバー・ランカーズ佐賀代表、サンダー流伝承者を打ち破りましたー!』

『融合解除を伏せて居ましたが、流石はサイバー・ランカーズ。サイバー・レーザー・ドラゴンをバトルフェイズ中に呼び出して勝利を決めました!』

 

 項垂れる青い髪の青年に対し、拳を突き上げる黒髪サイドテールの女性がテレビに映し出される。

 

「…サイバー・ランカーズ?」

「あ、まだ話していなかったわね。サイバー流の門下生の中には、すでにプロとして活動している人が居るわ。その人達の総称よ。」

「佐賀代表と言っていたが、九州出身者で構成されているのか?」

「違うわ。サイバー・ランカーズは才災師範を頂点に置いたピラミッド型の組織。才災師範のすぐ下に、各ブロック代表が居るの。北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州の8人…。尤も、サイバー流継承者の丸藤亮が、卒業後に関東ブロック代表になる事は決まっているわ。」

「各ブロック代表の下に、各都道府県の代表であるサイバー・ランカーズが居るという事か。」

「そうね。ちなみに、都道府県代表とブロック代表だとサイバー流から支給される交通費とか年間報酬が違う上に、サイバー・ディスクを支給されるわ。」

「サイバー・ディスク?」

「縁取りが銀色で凄く綺麗なデュエルディスクよ!見た目だけでは無くて、魔法カードを封じる電磁波のイカサマが効かなかったり、相手の偽造カードを検知する機能もあるわ!」

 

 随分とあこがれがあるらしく、才波はその見た目と性能について楽し気に語る。

 

「ブロック代表が一度決まったら、各都道府県代表はずっとその下って事か?」

「いいえ。バトルシティ決勝トーナメント進出経験者とのデュエルに勝利か、国内外の年に一度開催される公式大会で優勝、サイバー流に1000万円の上納金を払えば入れ替えデュエルを申請出来るの。それに勝てば入れ替えになるから各都道府県代表のサイバー・ランカーズは虎視眈々と入れ替えを目論んでいるわ。まぁ…大抵返り討ちなんだけど。」

 

 

 聞きながら、この三つの条件だと公式大会優勝が一番手っ取り早いのでは?と思う猫崎。

 

「都道府県代表になるには条件があるのか?」

「あるわよ?各都道府県代表との入れ替えデュエルは、武藤遊戯とデュエルした事がある伝説の決闘者か、才災師範が指定したリスペクト精神に反した決闘者とのデュエルに勝利。後は参加者100名以上の公式大会で優勝、サイバー流に300万円の上納金を払う事で申請出来る。都道府県代表は入れ替えが結構多くて、今の立場すら危うく保身に走っている人も居るわ。」

 

 

 やや考え込んだ後、才波は語る。

 

「後…地元をPRしたいから入れ替わりを狙っている都道府県代表もいるわ。あの佐賀代表はその一人よ。まぁ、今のサイバー流は政界と財界と深いつながりがあるから、地元のPR活動とかは不可能では無いけれど…。」

「そもそも入れ替わるのが大変、という訳か。」

 

 

 

 

 

 猫崎が停学を言い渡されてから8日後。猫崎はノース校との交流戦を見物しにデュエルリングに向かう。

 

 ノース校の代表は…江戸川だ。

 記憶が正しければデビルゾアを使っていたが…。真紅眼はあんなにバリエーションを貰っているのに、何故デビルゾアに新規は来ないのか。

 

 

 

「「デュエルッ!!」」

 

江戸川 ライフ4000

手5 場 

才光 ライフ4000

手5 場 

 

 

「僕の先攻、ドロー!モンスターをセット、カードを二枚伏せてターンエンド」

 

 

 

江戸川 ライフ4000

手5 場 

才光 ライフ4000

手3 場 セットモンスター 伏せ2 

 

 

 

「サイバー流の門下生にしては、地味な一ターン目だなぁ?俺のターン、ドロー!魔法カード、古のルールを発動!現れろ、デビルゾア!」

「攻撃力2600か。」

 

 

『そんな雑魚を出してどうするんだ!』

『とっとと負けろぉ!』

 

 サイバー流の門下生がヤジを飛ばす。

 

「おいおい、リスペクト精神ってのはどこへ消え失せたんだぁ?まぁいい、俺は声援よりブーイングの方が好きだからな。バトルだ、やれ、デビルゾア!」

「破壊されたシャインエンジェルの効果発動!デッキからプロト・サイバー・ドラゴンを特殊召喚!」

「フン、出やがったな!サイバー流のモンスターめ!カードを二枚伏せ、ターンエンド。」

 

 

 

江戸川 ライフ4000

手2 場 デビルゾア 伏せ2

才光 ライフ4000

手3 場 プロト・サイバー・ドラゴン 伏せ2 

 

 

「僕のターン、ドロー!融合呪印生物-光を召喚!」

「そ、そいつは?!」

「効果発動!プロト・サイバー・ドラゴンをリリース。現れろ、サイバー・ツイン・ドラゴン!」

「ちいっ、サイバー・エンド・ドラゴンでは無いが、面倒なモンスターが出てきやがった!」

 

「バトルだ!サイバー・ツイン・ドラゴンでデビルゾアを攻撃!」

「阿呆が!罠発動!メタル化・魔法反射装甲!これで攻撃力と守備力が300ポイントアップ!返り討ちだ!」

「ぐっ!」ライフ4000から3900

 

 デビルゾアがサイバー・ツイン・ドラゴンを返り討ちにする!

 

「…僕はこれでターンエンド」

 

 

 

 

江戸川 ライフ4000

手2 場 デビルゾア メタル化 伏せ1

才光 ライフ3900

手3 場 伏せ2 

 

 

「俺のターン、ドロー!メタル化を装備したデビルゾアをリリース。デッキから現れろ、メタル・デビルゾア!さらにダブルコストンを召喚!バトルだ!いけ、ダブルコストン!ダイレクトアタックだ!」

「永続罠、リビングデッドの呼び声!蘇れ、シャインエンジェル!」

「そのまま攻撃だ!」

「ぐっ、でもシャインエンジェルの効果で二体目のシャインエンジェルを特殊召喚!」ライフ3900から3600

「メタル・デビルゾアで攻撃!」

「二体目のシャインエンジェルの効果で、デッキからプロト・サイバー・ドラゴンを特殊召喚!」ライフ3600から2000

「逃がすかよ!永続罠発動!正当なる血統!蘇れ、デビルゾア!プロト・サイバー・ドラゴンを攻撃しろ!」

「うわあああああっ!」ライフ2000から500

 

「勝負あったな、ターンエンドだ」

 

 

 

江戸川 ライフ4000

手2 場 メタル・デビルゾア ダブルコストン デビルゾア 正当なる血統

才光 ライフ500

手3 場 伏せ1

 

 

「僕のターン、ドロー!魔法カード、貪欲な壺を発動!墓地のシャインエンジェル二体、融合呪印生物-光、サイバー・ツイン・ドラゴン、プロト・サイバー・ドラゴンをデッキに戻して二枚ドロー!」

「フン…ここで手札増強カードを引いたか」

「よし、フィールド魔法、フュージョン・ゲートを発動!プロト・サイバー・ドラゴンを通常召喚!そしてフュージョン・ゲートの効果発動!手札のサイバー・ドラゴン二体と場のプロト・サイバー・ドラゴンを融合!現れろ、サイバー・エンド・ドラゴン!」

「出やがったか、サイバー・エンド・ドラゴン!」

「さらにライフを半分払い、罠発動!異次元からの帰還!戻って来い、2体のサイバー・ドラゴンとプロト・サイバー・ドラゴン!」ライフ500から250

 

 先ほどサイバー・エンドの融合素材となったモンスターが場に並ぶ!

 

「これは、まさか!」

「そしてフュージョン・ゲートの効果発動!プロトとサイバー・ドラゴンを除外し、現れろ、サイバー・ツイン・ドラゴン!バトルだ、サイバー・ツイン・ドラゴンでデビルゾアを攻撃!」

「ぐうううっ!」ライフ4000から3800

「ツイン・ドラゴンでダブルコストンに攻撃!」

「ぐおおおっ!」ライフ3800から2700

「サイバー・エンド・ドラゴンで、メタル・デビルゾアを攻撃!」

「うわあああああっ!」ライフ2700から1700

 

「終わりだ!サイバー・ドラゴンでダイレクトアタック!」

「ぬおおおおおおっ?!」ライフ0

 

 江戸川を下し、サイバー流の門下生、才光が勝つ。

 

 

「今年も本校の勝利ですな。市ノ瀬校長。」

「フン。それにしてもサイバー流の師範が貴方とは。」

「ほう。その門下生に負けた生徒の校長が言いますかな?」

「…一つ、教育者の先達者として忠告しておきましょう。今のままでは、サイバー流は失墜しますよ。では。」

 

 負け犬の遠吠え。そう、才災は受け止める。

 

 

 

 

 

 

 ノース校との交流試合があった数日後の夜。東京湾の夜景を見渡せるホテルの20階。

 豪奢なプレジデントルームに、数人の男がいる。

 

 イタリア製や英国製のスーツに身を包み、高級なソファに座っている。この部屋で国産なのは、男たちの肉体だけだ。

 

「…カードゲーム界の調整は順調なようだな。」

「ああ、サイバー流か。前の師範を追い出し、才災が後を継いだ事で実にやりやすくなった。」

「カビの生えたサイバー流の教えに意味などない。大事なのは」

「我々の利益になるか否か、だ。鮫島はそれがまるで分っていなかった。」

 

 男達は、政界、財界、報道機関、宗教界の重鎮である。

 彼らは、近年目覚ましく力を伸ばしたカードゲーム界の統制を目論んだ。その時、眼をつけたのがサイバー流だった。

 

 リスペクト精神を掲げた高潔な流派。

 人気の高い彼ら一派に支援を提示したが、鮫島師範は言いなりになることを拒んだ。

 そのため引退に追い込み、言いなりになる駒である才災を師範まで登らせた。

 

 男たちにとって、才災の曲解したサイバー流の教えは実に都合が良い。

 「リスペクトに反する」という錦の御旗で、相手を批判し、否定して封じ込める。

 発展目覚ましいカードゲーム界を効率よく支配するツールとして、彼らは選んだ。

 

 

「鮫島から才災に変わってから、門下生は右肩上がりで上昇している。」

「結構。カードゲーム界を制するのは時間の問題だな。」

「だが、ペガサス会長と海馬瀬人が動き出したらしい。」

 

 その名前に、苦々しい顔になる男たち。

 

 

「あの野良犬か。フン、剛三郎が残した遺産を破壊しおって。」

「ペガサスとて大人しく引退していればいい物を。」

「なんでも、新たな召喚方法とやらを考案し、それのテスターを送り込んでいるとか。」

「才災の学園にか?」

 

 頷く男。

 

「何を考えている。才災をそのテスターとやらが倒せるとでも?」

「そのテスターとやらに秘密があるのでは?」

「奴の実家について調べさせたが…家柄は古いだけで大した名家ではない。」

「しかし、新たな召喚方とやらが気になる。」

「なんでも、レベルの足し算だそうだ。」

「足し算!はっ、次はなんだ、引き算と掛け算と割り算か?」

 

 笑う男たち。

 

「今まで通り、融合召喚を主軸にしておけばいい。新たな波など、カードゲーム界にも、この国にも不要だ。」

 

 

 

 

 

 

 男たちが歓談しているフロアから三階下の高級レストランにて。

 才災校長とデュエル・アカデミアの教員、そしてサイバー流の関係者は、ふぐ刺し、ふぐ鍋、ふぐの唐揚げなど高級な河豚料理を堪能していた。

 

 

「いやぁ、才災校長が各界の有力者とお近づきなおかげで、私どももごちそうにありつけます。」

「インダストリアルイリュージョン社のペガサス会長はケチですからね、社員だった私でもこんな豪華な晩餐会など一回もありませんでした。」

「こうして好物の河豚をいつでも食べれるようになったのは、才災校長のおかげです。」

 

 もみ手をしながら笑う教員。

 口元には燦然と輝く金歯、そして左手にはダイヤとプラチナの指輪が光り輝く。

 

 他の教員も愛想笑いを浮かべる。

 そんな彼らを見渡し、才災は自尊心を大いに満たす。

 

 

「才災師範、先日頂いたレアカードですが…。」

「おお!娘さんへのプレゼントにしたと聞いているが。」

「おかげさまで、アークティック校における成績もぐんと伸びました。先日開かれたという大会では、ペガサス会長の前でヨハンとかいう男子生徒とデュエルしたのですが…。」

「惜しくも敗れたか。まぁ、そういう事もある。」

 

 鷹揚に言いながら、日本酒を飲む才災校長。

 

「おやおや、真紅眼の黒竜、デーモンの召喚、メテオ・ドラゴンとその融合体を頂いておきながら…。」

「そう言うな。そのヨハンという生徒が一枚上手だっただけだろう。ゴルフ場の建設はどうだ?」

「はっ、そちらは抜かりなくオープンします。会員権はご用意させていただきますので…。」

 

 

 ふと気になったのか、男の一人が口を開く。

 

「才災師範は、ゴルフもたしなまれるのですか?」

「なんだ、知らないのか?才災師範は元々多趣味な方だ。アウトドアからインドアまで、幅は広い。別荘を訪れた時に拝見したジオラマは素晴らしい出来だったし、一緒に行った釣りではこんな大物を釣り上げておられた。」

「ほほぅ…そのようなお方だから、今の地位があるのですな。いやはや、感服しました。」

 

 

 揉み手をしながら、才災師範を持ち上げる男。

 それに追従するように、周りの男達も吉報を伝える。

 

 

「サイバー流の弁当屋も、好調ですぞ。」

「サイバー・サイダーの売れ行きは、既存の炭酸飲料市場を席捲しつつあります。」

「サイバー流が出資した温泉旅館とホテルが近々オープンしますぞ!これでさらに収益が増えますな!」

 

 多角経営している、他の事業も好調と聞いて才災校長は満足げに頷く。

 

 才災はプロリーグでデュエルをする前に、好物のカツオの漬けを使った『銀火丼』で気合を入れた。

 その時の想いから、サイバー流の新たな経営に外食産業を始め、これをメインメニューに据えた。

 これも今では大当たり。サイバー流の重要な財源になっている。

 

 こうやって得た資金で、サイバー流の門下生に年に一度の合宿旅行も行っている。

 すべては順調だ。それもこれも、サイバー流の、リスペクト精神に則った門下生を大事にしているからだ。

 

 

 ふぐの白子料理が運ばれてくる。

 

「この席も後援者の先生方が設けてくれたものだ。存分に楽しむぞ!」

 

 才災校長は、我が世の春が永遠に続くと確信していた。少なくとも、この時では。


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